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1 日経連「教育特別委員会」(二十一世紀の就職採用研究会)がインターンシップについての考え方をとりまとめ報告。これは、先に示された文部・通産・労働三省の『インターンシップの推進に当たっての基本的考え方』に対する日経連のコメントである。
2 この中で日経連は、新たに、3項目についての基本姿勢を明確化しているが、インターンシップ制度を健全な姿でわが国に定着させていくという観点から見て、おおむね、妥当な見解であろう。
3 昨年10月に当方の「SPOT情報&ニュースno46−1997.10.14」に『インターンシップ制度の導入と、、報酬決定・労災保険の適用問題』として掲載した記事を参考までに、末尾に再掲した。
インターンシップ制度、企業側の指針提起(日経連)
1 インターンシップに関する基本的な考え方について
先般、文部・通産・労働の三省から『インターンシップの推進に当たっての基本的考え方』が発表された。これまでインターンシップの推進を提起してきた日経連としては、産学連携のもとに行われ、学生に対し就労感を身に付けさせる教育の一つとしての指針が示されたと認識している。今後、わが国の高等教育機関で本格的に行われる契機になるものと評価したい。
インターンシップは大学等における教育の一環として行われるべきもので、軸足はあくまでも大学になければならない。したがって、企業としては、自主的な判断のもとに受け入れを決定するものであるが、大学と連携を図ることにより、産業界の新たな動向やニーズを反映できること、大学の教官や学生により深い理解を促す契機になること、職業意識の高い学生は就職後の企業にとって活かされることになる等の効用もあり、インターンシップへの理解と支援を期待したい。
2 「中間とりまとめ」において指摘された事項に関する日経連のコメントについて
三省による「中間まとめ」のなかで指摘された事項のうち、次の三点は、日経連として基本姿勢を明確にしておくことが望ましいと考えられ、コメントする。
(1)インターンシップの形態について
「企業が大学等と無関係に実施するプログラムに学生が個人的に参画する場合」も望ましい形態として取り上げられた。しかしながら日経連としては、インターンシップは大学等における正規の教育課程として位置づけられること、または、大学等の正規科目でないにしても少なくとも学校行事や課外活動として位置づけられることが求められる。すなわち、ここでいうインターンシップは、あくまで、大学等が教育の一環として主体的に行い、これを企業等が支援していく産学協同のプログラムであると認識すべきである。したがって、前記のケースは、企業が善意で人材の育成の観点から実施しているのか、いわゆるアルバイトそして学生を雇用しているのか明確でなく、誤解を招きかねないため好ましい形態とはいえない。
(2)学生の送り出し、受け入れに関する機構について
「中間まとめ」では、インターンシップの実施を希望する大学等の情報とインターンシップの受け人れを可能にする企業等の情報の提供を行うことにより、マッチングが円滑に行われるようにするための仕組みを整備することが必要であるとしている。一例として、各地域毎に産官学による協議会の場を活用し、情報交換等を行うと指摘している。
この点に関し日経連としては、全国各地に傘下の地方経営者協会組織があり、インターンシップの受入に関心を有する企業の紹介は積極的に行う所存である。
(3)インターンシップと就労(アルバイト)の区別について
三省による「中間まとめ」はあこの点について指摘していないが、労働省の「まとめ」では、この区別が不明であると、報酬や就業条件について取り扱いに問題が生じる可能性があり、また労働関係法令の遵守について問題が生じるおそれがあるとしている。労働省では、インターンシップにおける学生の労働者性について、「一般にインターンシップにおいての実習が見学や体験的なものであり、使用者側から実務に関わる指揮命令を受けていると解されない等、使用従属関係が認められない場合は労働基準法第九条に規定される労働者に該当しないもの」との通達を出している。
この点に関し日経連としては、「大学が正規に教育の一環として行うインターンシップ(単位の取得有無にかかわらず)については労働者性はない」ものとする旨の通達作成を関係省庁に働きかけたい。
なお、参考までに労働者性のない事例として、これまでに「商船大学、及び商船高等専門学校の実習生の労働者性について(昭和五七年二月十九日基発一二一号)」という労働省文書がある。
インターンシップ制を、単なるアルバイト体験とは違ったものとして定着させるには、企業 【以下は参考】 企業が単独で実施するインターンシップ 大学等が「教育課程として単位付与を行うインターンシップ制度」を有し、企業は大
参考「労務安全情報センター、SPOT情報&ニュースno46−1997.10.14」から転載
インターンシップ制度の導入と、、報酬決定・労災保険の適用問題
8月26日の日本経済新聞が
「広がるインターンシップ制」としてつぎのように報じている。
「学生が実際に職場で仕事を体験できるインターンシップ制度の導入が、大企業だけでなく
中堅、ベンチャー企業にも広がり始めた。・・インターン制度のメリットは、学生が現実の
体験を踏まえて進路を決定できるようになる点。・・半面、問題点も少なくない。企業が報
酬や経費をどの程度支払うのが適当か、就業中のケガに保険が適用されるかなどについて、
早急に煮詰める必要がある。」(以上要約)
サイドにかなり負担が生じようが、適切な位置づけを与えて定着させたい制度である。
しかし、現在までの導入例をみると日本経済新聞が指摘するように、法務面での位置づけに
かなりの混乱が見られるようだ。
例えば、「あるメーカーのそれは、5日間の研修であり、また、ある企業のそれは、3ヶ月
の店舗業務の実地体験」であったりと、実態も一様でない。後者の例では、報酬も時間当た
り500円と報じられたりしている。
実は、インターンシップ制に対する法の適用解釈は複雑なものではないのだが、運用の実態
判断に多少の困難を伴うことがある。運用が一定のパターンに集約され定着するなら、問題
は解決すると思われる。
以下は一般論(参考)として、ご理解を願います。
(本来は大学等との提携のないものはインターンシップの名称で取扱わない方が混乱を回避
できるのであるが、、、)
この場合は、つぎの二類型にわけて考える。
(1)ごく短期の工場・研究所見学のような位置づけのインターンシップ制は、労働契約の
範疇に入らないのが通常であろう。報酬の取決めなどには自由度があるが、就業中のケガに
は労災保険が利かないので別途、補償保険を事前に手当しておく必要があろう。
(2)3ヶ月の店舗業務の実習などラインに組み込まれて実地体験のようなものになると、
労働契約の締結とみなされるケースが多かろう。最低賃金額(東京では、10月1日からは
679円)未満のインターンシップ報酬契約は違法となるが、就業中のケガには労災保険が
適用されることになろう。
学等との契約として学生を受け入れる場合
この場合は、労働契約とはみなされない。報酬は任意であるが、本来、報酬支払という概念
はなくてよい。大学等と企業は、災害補償についてあらかじめ責任範囲を明確にしておくこ
とが重要である。
なお、大学等の教育課程には組込まず、大学行事や課外活動として推奨するという位置づけ
のものは、「企業が単独で実施するインターンシップ」の取扱に準じて対応することが妥当
であろう。