|
平成9年度産業労働事情調査−−速報−−(労働省政策調査部産業労働調査課)
○調査対象など
調査対象は、30人以上を雇用する民営企業のうちから無作為抽出した約4,500企業(有効回収率86.0%)。
平成9年8月末現在の状況について調査したもの(調査に用いた委託業務及び業務の分類については、次表を参照)。
別表
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
部門 業 務 業 務 の 事 例
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(事務・管理)
○人事管理 採用に関する電話応対・資料発送・面接等、人事評価基準の策定等、人事データ管理等
○教育訓練・研修 社員研修.生涯教育の実施、研修会の企画、開催等
○福利厚生 福利厚生施設(保養所、食堂、社員寮等)の管理運営等
社員健康支援(健康相談、健康増進等)
○経理 給与計算、税務関係・会計関係事務
○その他の事務管理 社会保険事務、電話取次・受付・秘書等の渉外事務、事務機器操作、備品.郵便等の管理、法律関係事務、官公庁への届出・申請等
(情報処理)
○情報処理.システム開発 調査、研究に伴うデータ入力等、ソフトウェア開発、情報処理システムの構築・運用、社内ネットワークの運用等
(生産等)
○製造、建設 製品部品の製造・加工・組立・検査等、在庫管理等、部材調達、建設工事等
○機器点検・保守 機械.設備(ボイラー、エレベーター、空調等)の点検.整備・保守
○物流 荷物の梱包、配送等、倉庫管理等
(その他)
○研究開発・設計 調査研究、医療研究・臨床検査、技術開発、試作設計等
○広告・マーケティング 広告・宣伝の企画・制作・実施、商品の市場調査、信用調査等、通信販売の調査カタログ作成等
○営業・販売 商品の受注.発注、発送、商品販売、販売支援、商品の説明、実演、商品管理等
○施設管理関係 警備、清掃、ゴミ収集・処理等
○対個人サービス 構内案内、売場案内等、顧客サ一ピス、託児サービス等
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
注:業務委託とは、自社の業務の処理を外部(他社)に委託することをいい、いわゆるアウトソーシングだけでなく、外注や請負等も含む。ただし、派遣労働者による業務処理は除く。
調査結果の概要
1 委託業務
(1)委託の導入割合
現在、業務の処理を他企業等へ委託している企業割合は49.9%と約半数の企業で導入している。これを企業規模別にみると、1,000人以上規模(76.9%)、300〜999人規模(59.1%)、100〜299人規模(52.5%)、30〜99人規模(47.7%)と規模が大きいほどその割合は高く、規模による格差が大きい。
また、産業別にみると、電気・ガス・熱供給・水道業(87.2%)、製造業(59.2%)、建設業(58.5%)、金融・保険業(56.6%)の順となっている。運輸・通信業及び卸売・小売業、飲食店はいずれも35.0%で他の産業に比べ低い導入割合となっている。
(2)委託している業務の内容
イ.委託している業務
委託している業務(複数回答)の導入割合をみると、「製造、建設」業務(54.8%)、「物流」業務(39.4%)、「機器点検・保守」業務(38.0%)、「施設管理関係」業務(31.3%)、「経理」業務(26.4%)、「情報処理・システム開発」業務(22.8%)の順となっている。
これを企業規模別にみると、導入割合の高い「製造・建設」、「物流」、「機器点検・保守」、「施設管理関係」業務ではいずれの規模も導入割合が高い。一方、比較的規模間格差がみられる業務では、「経理」業務は小規模企業で導入割合が高く、「情報処理・システム開発」、「福利厚生」業務は規模が大きくなるほど導入割合が高く、1,000人以上規模では他の規模に比べ特に高くなっている。
いずれの産業においても該当する業務が多い「事務・管理」部門について産業別にみると、委託の導入割合が高い「経理」業務は、卸売・小売業、飲食店、運輸・通信業、金融・保険業で他の産業に比べ高くなっている。「人事管理」業務は、金融・保険業、不動産業、電気・ガス・熱供給・水道業で高く、「教育訓練・研修」業務は、電気・ガス・熱供給・水道業、建設業、金融・保険業で高く、「福利厚生」業務は、金融・保険業、電気・ガス・熱供給・水道業で高くなっている。金融・保険業は「事務・管理」部門のいずれの業務も導入割合は高くなっている。
ロ.業務委託の開始時期
業務委託を導入している企業の業務委託の開始時期(複数回答)について業務全体でみると、「平成2年以前」は84.7%、「平成3年〜5年」は7.9%、「平成6年以降」は9.8%であった。
いずれの業務も平成2年以前に委託を開始した企業が6割を超えている。
一方、平成3年から5年に委託業務を導入している企業は、「対個人サービス」業務(16.7%)、「情報処理・システム開発」業務(15.3%)、「福利厚生」業務(13.7%)が他の業務に比べ割合が高く、平成6年以降に委託業務を導入している企業は、「人事管理」業務(33.7%)、「対個人サービス」業務(28.0%)、「教育訓練.研修」業務(22.6%)、「営業、販売」業務(22.2%)が他の業務に比べ高い割合となっている。
ハ.委託先
平成3年以降の業務委託について、その委託先を業務全体でみると、「その他の会社」は78.5%、「関連会社」は13.5%、「子会社」は7.4%であった。
業務別でみるといずれの業務も「その他の会社」が多く15業務のうち13業務が7割を超えている。
次に委託先別に委託業務の内訳をみると、「子会社」に委託しているものでは、「福利厚生」業務、「機器点検・保守」業務、「営業、販売」業務が、「関連会社」に委託しているものでは、「研究開発・設計」業務、「情報処理・システム開発」業務が他の業務に比べ高い割合となっている。
ニ.委託している業務内容
平成3年以降の業務委託について、委託している業務内容を業務全体でみると、「もともと自社の業務であった」は74.5%、「もとから自社の業務ではなかった」は24.7%であった。
いずれの業務も「もともと自社の業務であった」ものが多く、そのうち「営業・販売」業務(94.9%)、「物流」業務(92.1%)は9割を超えている。
一方、「もとから自社の業務ではなかった」ものは、「福利厚生」業務(47.7%)、「情報処理・システム開発」業務(44.4%)、「機器点検・保守」業務(42.0%)で4割を超え他の業務に比べ高い割合となっている。
ホ.委託業務の専門知識等の必要性
平成3年以降の業務委託について、高度な専門知識・技術の必要性の有無をみると、「必要あり」は54.8%、「必要なし」は44.9%であった。
また、業務別では「研究開発・設計」業務、「情報処理・システム開発」業務、「教育訓練・研修」業務、「経理」業務、「機器点検・保守」業務は高度な専門知識等を必要とする割合が高く、「物流」業務、「施設管理関係」業務、「製造、建設」業務は特に必要としない割合が高い。
へ.契約金額の最も多い業務
平成3年以降の業務委託について、部門別に最も契約金額の多い業務をみると、「事務・管理」部門では、「教育訓練・研修」(36.0%)業務、1経理」(28.8%)業務、「生産等」部門では、「製造、建設」(78.0%)業務、「その他」の部門では、「施設管理関係」(49.8%)業務となっている。
企業規模別にそれぞれの部門をみると、「事務・管理」部門では、1,000人以上規模が「福利厚生」業務、300〜999人規模及び100〜299人規模が「教育訓練・研修」業務、30〜99人規模は「経理」業務がそれぞれ最も高い割合となっている。「生産等」部門では、「製造、建設」業務、「その他」の部門では「施設管理関係」業務がいずれの規模も最も高い割合となっている。
(3)業務委託による組織面、労働面への影響等
イ.委託の効果
平成3年以降の業務委託について、業務委託の効果として何等かの効果があったとする企業が97.7%であった。
その顕著だった効果(複数回答)をみると、「専門知識・技術・人材の不足の補充」(45.1%)、「人件費の削減」(30.6%)、「業務量の変動に対する弾力的な対応」(23.5%)等であった。
企業規模別にみると、「人件費の削減」、「経営資源・人材の主たる業務への集中化」を挙げた企業では、規模が大きいほどその割合が高く、特に1,000人以上規模では「人件費の削減」が47.1%と最も高い。一方、「結果として売上高が増加」を挙げた企業は、300人未満の規模で高くなっている。
部門別にみると、「事務・管理」部門においては「専門知識・技術・人材の不足の補充」(53.0%)、「人件費の削減」(30.5%)、「人件費以外の業務処理コストの削減」(20.1%)とする企業割合が高い。「情報処理」部門では「専門知識・技術・人材の不足の補充」(79.1%)が高く、次いで「業務量の変動に対する弾力的な対応」(25.0%)、「人件費の削減」(19.5%)となっている。「生産等」部門は「専門知識・技術・人材の不足の補充」(43.4%)、「業務量の変動に対する弾力的な対応」(39.8%)、「人件費の削減」(36.2%)の順となっている。「物流」部門は「雇用管理の負担の解消」(35.6%)、「業務量の変動に対する弾力的な対応」(35.2%)、「人件費の削減」(33.1%)となっている。「その他」の部門は「専門知識・技術・人材の不足の補充」(34.8%.)、「人件費の削減」(31.9%)、「雇用管理の負担の解消」(21.5%)となっている。「物流」部門を除くすべての部門で「専門知識・技術・人材の不足の補充」を挙げる企業が一番多く、そのうち特に「情報処理」部門で高くなっている。
ロ.組織面
平成3年以降の業務委託について、業務委託に伴う組織面の再編成等をみると、「何等かの再編成を行った」は52.1%で、そのうち「担当する組織の廃止」は7.7%、「担当する組織の一部を廃止」は14.6%、「組織の変更を行った」は16.7%であった。また、これまで担当する組織がなかったところで「委託先の窓口等の組織を新設した」は13.1%となっている。
これを企業規模別でみると、「何等かの再編成を行った」企業では、1,000人以上規模で65.8%と他の規模に比べやや高く、そのうち「担当する組織の廃止」を行った企業は、16.0%、「担当する組織の変更」を行った企業は、26.9%であった。また、「委託先の窓口等の組織を新設した」企業は、規模が小さいほど割合が高く、30〜99人規模は15.2%、100〜299人規模は13.0%で、1,000人以上規模の2.5%を大きく上回っている。
部門別にみると、物流部門では「組織の廃止」及び「組織の一部廃止」を行った割合が他の部門に比べ特に高くなっている。
ハ.配置転換等
平成3年以降の業務委託について、業務委託の導入に伴う労働者の配置転換等の状況をみると、「何等かの配置転換等を行った」は40.7%、「配置転換等は行わなかった」は28.6%、「もともと担当する労働者はいなかった」は29.0%であった。部門別にみると、「何等かの配置転換等を行った」は「物流」部門が73.8%で他の部門に比べ最も高くなっている。
また、配置転換等の内訳(複数回答)をみると、「自社内で同種業務への配置転換」は38.8%、「自社内で異なった業務への配置転換」は25.9%であった。また、「委託先へ在籍出向」16.3%、「委託先へ転籍」15.4%等となっている。
これを企業規模別にみると、1,000人以上規模では、出向・転籍の割合が自社内の配置転換の割合を上回り、「委託先へ在籍出向」は59.9%で最も高くなっている。一方、100〜299人規模や30〜99人規模は、自社内で配置転換を行った割合が高くなっている。
部門別にみると、「事務・管理」部門については、「自社内で異なった業務への配置転換」が42.6%で最も高く、また、「委託先へ在籍出向」(21.5%)が他の部門に比べ高い。「生産等」、「物流」、「その他」の部門については、「自社内で同種業務への配置転換」を行った割合はそれぞれ61.9%、41.8%、26.0%で最も高く、「委託先へ転籍」は「物流」、「その他」の部門で他の部門に比べ高くなっている。
二.委託先企業の業務遂行面での優位性(強み)
平成3年以降の業務委託について、委託先の業務遂行面での優位性(複数回答)をみると、「専門的知識・技術・技能を身につけた者の存在」は42.9%、「同一業務の集中化による効率的な遂行」は25.6%、「人件費が割安」は23.0%等であった。これを企業規模別にみると、1,000人以上規模は、「同一業務の集中化による効率的な遂行」(38.3%)を挙げた企業割合が最も高くなっている。一方他の規模は、「専門的知識・技術・技能を身につけた者の存在」を挙げた割合が最も高くなっている。
また、部門別にみると、「専門的知識・技術・技能を身につけた者の存在」の割合が高かった部門は「事務・管理」(62.3%)、「情報処理」(76.8%)、「その他」(34.6%)となっている。
また、「生産等」部門では「人件費が割安」(34.5%)、「物流」部門では「同一業務の集中化による効率的な遂行」(43.7%)の割合が最も高くなっている。
ホ.関与度
平成3年以降の業務委託について、委託した業務への関与度をみると、「業務の進め方全般について受託企業におおむね指示している」は35.9%、「時々状況報告を受け、業務の進め方について必要な指示をしている」は34.2%、「業務の進め方は受託企業にまかせている」は28.2%であった。さらに委託先別にみると、委託先が子会社及び関連会社の場合は「時々状況報告を受け、業務の進め方について必要な指示をしている」とする割合が最も高く、その他の委託先の場合は「業務の進め方全般について受託企業におおむね指示している」割合が高くなっている。
部門別にみると、「事務・管理」、「情報処理」部門は、委託先が子会社の場合「時々状況報告を受け、業務の進め方について必要な指示をしている」とする割合がそれぞれ66.6%、58.6%と高く、一方、関連会社への委託の場合は「業務の進め方は受託業務にまかせている」とする割合が54.2%、61.8%となり、委託先によって関与-する度合いが異なっている。また、「生産等」部門は、委託先に関係なく「業務の進め方全般について受託企業におおむね指示している」とする割合が高い。「物流」部門では、子会社又はその他に委託した場合は、「業務の進め方全般について受託企業におおむね指示している」は50.0%、59.4%、委託先が関連会社の場合「時々状況報告を受け、業務の進め方について必要な指示をしている」は64.6%と、いずれも何等かの指示をする割合が高くなっている。
(4)委託時の労使協議
平成3年以降の業務委託の導入に際し、労働者側代表との協議状況をみると、「話し合いや報告をせずに導入したケースが多い」は41.2%、「話し合ったケースが多い」は33.0%、「話し合わずに報告のみとしたケースが多い」は23.1%となっている。
これを企業規模別にみると、1,000人以上規模では「話し合ったケースが多い」は44.0%と他の規模に比べやや高いが、1,000人未満の規模ではいずれも「話し合いや報告をせず導入したケースが多い」とした割合が高くなっている。
また、産業別にみると、建設業、不動産業、サービス業、製造業、金融・保険業では、「話し合いや報告をせず導入したケースが多い」とした割合が高くなっている。
(5)労働者数に与えた委託効果
平成3年以降の業務委託について、業務委託が企業全体の労働者数に与えた効果をみると、「増加効果」は9.2%、「減少効果」は20.5%、「増加とも減少ともいえない」は54.9%となっている。「増加とも減少ともいえない」が、いずれの規模においても高く、電気・ガス・熱供給・水道業、金融・保険業を除くすべての産業においても同様である。また、「増加効果」と「減少効果」の割合を比べると、いずれの規模及び建設業を除くすべての産業において 「減少効果」とする割合が高い。
なお、「減少効果」を挙げた企業は規模が大きくなるほどその割合が高く、一方、「増加効果」を挙げた企業は規模が小さくなるほどその割合が高くなっている。
(6)業務委託の今後の方針
イ.今後の方針
全企業について今後(3年程度)の方針をみると、「業務委託を行っていない、また、今後も行う予定がない」は46.8%で割合が最も高く、次いで「現状程度とする」は37.0%で、「積極的に利用していく」(10.8%)と、「縮小又は廃止する」(3.1%)は低い。「積極的に利用していく」場合の内訳をみると、「基幹業務を含め積極的に利用していく」は6.7%、「基幹業務以外に積極的に利用していく」は4.1%となっている。
また、企業規模別にみると、「業務委託を行っていない、また、今後も行う予定がない」とする割合は、規模が小さいほどその割合は高く、一方、「積極的に利用していく」は、規模が大きいほどその割合は高くなっている。産業別にみると、金融・保険業は「積極的に利用していく」が21.6%で、他の産業に比べ割合が高くなっている。
ロ.積極的に利用する業務
今後業務委託を積極的に利用していく企業についてその利用する業務(複数個答)をみると、「製造、建設」業務(50.6%)、「情報処理・システム開発」業務(33.6%)、「物流」業務(30.1%)、「教育訓練・研修」業務(23.7%)の割合が高くなっている。
ハ.業務委託を行わない理由
今後業務委託を廃止する企業及び現在業務委託を行っていない、また今後も行う予定がない企業について業務委託を行わない理由(複数回答)をみると、「自社内に十分な技術と人材の蓄積がある」は63.8%と割合が高く、いずれの規模、産業とも最も高い割合となっている。次いで「委託費用がかかりすぎてコスト削減の期待がもてない」(30.6%)、「業務の標準化、マニュアル化が難しい」(21.7%)の順となっている。一方、「特にない」は33.1%となっている。
また、産業別にみると、運輸・通信業は「余剰人員の発生や再配置が懸念される」(26.2%)、金融・保険業は「企業情報やノウハウの流出が心配である」(22.0%)とした企業割合がやや高くなっている。
2 受託業務(省略)