次の資料 前の資料

[資料番号] 00034
[題  名] 労働者派遣業務の対象を、自由化!−−−中央職業安定審議会が建議
[区  分] その他

[内  容]
労働者派遣事業法見直し
中央職業安定審議会の建議



【資料のワンポイント解説】
1、中央職業安定審議会は5月14日、労働者派遣事業法の改正に関する建議を行った。
2、建議のポイントは、派遣対象業務を現行の26業務から、原則自由化するとしたこと。この点に労働団体が猛反発、今後の審議拒否を表明する事態となっている。一方、派遣期間の上限を1年とし更新を認めない(1年を超える更新を行った派遣先は、労働者の希望した場合雇用するよう努める=努力義務を課す)、とする内容については、使用者団体から実情に合致しないとの批判がでている。
3、労働者保護の強化も盛り込まれているが、窓口は職業安定機関。どちらかというと、苦情・トラブル処理を得意とする機関ではないだけに実効面での不安も残りそうだ。
4、いたる箇所に、労・使の代表委員の反対意見が付してある異例の建議。






第1、適用対象業務関係

1、適用対象業務のあり方について

(1)多様な形態での就労に係る労働者のニーズへの対応等労働力需給両面からのニーズ、労働者派遣事業についての新たな国際基準を示すILO第一八一号条約第二条の趣旨等を踏まえると、労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でない業務以外は適用対象業務とすること(いわゆるネガティブリスト方式を採用すること)が適当である。

(2)また、新たに適用対象とする業務について派遣期間を厳しく制限し、専門的な知識等を必要とする現行制度における適用対象業務と明確に区分し厳正に適用すべきとの意見を踏まえ、それぞれの派遣期間について異なる取り扱いとするが、労働者保護のための措置についてはそれぞれに共通のものとして適用すべく、その充実を図ることが適当である。

2、適用対象業務の範囲について

 現行制度において労働者派遣事業の適用が除外されている、@港湾運送業務及び建設業務A事業の実施の適正を確保するためには労働者派遣により派遣労働に従事させることができようにすることが適当でないと認められる業務のほか、新たに、Bその業務に従事する労働者の就業条件を確保するためには労働者派遣により派遣労働者に従事させることができるようにすることが適当でないと認められる業務についても、「労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でない業務」とし、それ以外の業務については適用対象業務とすることが適当である。
また、A及びBに該当する業務については、労働者の就業条件の確保の観点等からの検討が必要であることから、あらかじめ中央職業安定審議会の意見を聴いた上で定めることが適当である。
労働者代表委員から、我が国における労働力の需給調整は社外工、季節工、パートなどによって相当程度機能しており、新たに臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策としての労働者派遣事業を設ける必然性はないとの意見があった。
雇用主代表委員から、適用除外業務とする場合には、同基準に該当するための十分な論拠が必要であり、範囲は限定されるべきとの意見があつた。
労働者代表委員から製造業の生産工程ラインに従事する業務及び企業における人事・労務管理の業務を適用除外業務とすることが適当であるとの意見及び雇用主代表委員からこれに反対する総見があつた。


第2、派遣期間関係

1、派遣期間のあり方について

 派遣期間については、社会経済情勢の変化への対応、労働者の多様な選択肢の確保等の観点から、常用層用の代替のおそれが少ないと考えられる臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策として労働者派遣事業制度を位置づけるとの基本的な考え方に基づき、原則として派遣期間を一定の期間に限定することが適当である。

2、派遣期間について

(1)常用雇用の代替防止の観点から、原則として、派遣先は同一業務について一年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないとすることが適当である。

(2)(1)の派遣期間の制限を超える労働者派遣の受け入れの防止を図る観点から、派遣期間の制限の効果を徹底するため、次のような措置を講ずることが適当である。
 @(1)に違反する派遣先は、派遣労働者の希望があれば、当該派遣労働者を雇用するよう努めなければならないこと。
 A派遣先が(1)に違反する場合には、派遣先に対する労働大臣の勧告及び公表の対象とすること。

(3)現行の労働者派遣法の適用対象業務である専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務等について労働者派遣を行う場合には、常用雇用の代替のおそれが少ないことから、現行の派遣期間の制限のあり方を維持することが適当である。

(4)また、労働者の職業生活の全期間にわたるその力の有効な発揮及びその用の安定に資すると認めれる雇用慣行を損なわな場合において労働者派遣行うときについては、常用雇用の代替のおそれが少いことから、(1)及び(2)の特例を認めることが適当である。
労働者代表委員から、臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策とし労働者派遺著業を位置づけるとの観点から、@常用派遣のみとし、同一事業及び同一業務における派遣期間は三カ月程度の短期すべきA本来更新は認めれるべきではないが、継続して一年を超えて更新を行う場合には、派遣先におて雇用することを義務づけるべきとの意見があつた。
雇用主代表委員から、派遣期間の上限を定めるこについて、@派遣期間は本来契約自由の原則によるべきものであり、当事者間合意に基づく更新まで制限されるものでないA派遣期間を制限する場合でも、(1)の原則の下で特例的に(3)のような取り扱いをすることとすべきではなく、現行の派遣期間の制限のあり方に統一すべきであるとの意見があった。
また、雇用主代表委員から、派遣期間の上限を超えた場合の措置について、@努力義務といえども、派遺期間が一年を超える場合に派遣先に雇用義務を課すことには反対A勧告や公表を行う場合には、派遣先が故意にあるいは悪意をもって行っている場合等に制限すべきとの意見があつた。
労働者代表委員から、労働者派遺事業制度を臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策として位置付けるに当たっては、短期の欠員補充や臨時的・一時的な業務等の派遣事由を明確にし制限を設けるべきとの意見があつた。


第3、許可・届出制のあり方関係

1、許可・届出制のあり方について

 一般労働者派遣事業における許可制及び特定労働者派遣事業における届出制については、労働者派遣事業の適正な運営の確保を図り、派遣労働者の就業条件を確保する観点から派遣元事業主に一定の能力を担保する必要性があること、悪質ななブローカー、社会保険等に係る悪質な法令違反をした者への対応の必要性があること等から、これを維持するとともに欠格事由及び許可基準の見直しを行うことが適当である。  また、許可・届出制については、これを維持しつつも、申請負担軽減等の観点から所要の見直しを行うことが適当である。

2、許可基準等の見直しについて

(1)許可等の欠格事由の見直しについて
 悪質なブローカー、社会保険等に係る悪質な法令違反をした者への対応が必要であることにかんがみ、許可等の欠格事由の見直しを行うことが適当である。

(2)許可基準の見直しについて
 一般労働者派遣事業の許可基準の一つとされている労働力の需給調整に係る要件については、必要最小限のものとし、必要な見直しを行うことが適当である。

(3)手続きの簡素化等
 これと併せて、申請負担軽減の必要性等にかんがみ、許可の申請書又は届出書の記載事項から事業対象業務の種類を除外する等必な手続きの簡素化を行うことが適当である。
 雇用主代表委員から、事業参入は本来的には自由でり、許可・届出制は将来的には廃止すべきとの意見があった。
 一方、労働者代表委員から、許可・届出制は、労働者派遣事業が法の趣旨に沿って適正に運営されているか及び労働者保護に係る諸規定が履行されているかをチェックする機能を有していることから、これを維持すべきとの意見があつた。


第4、労働者保護のための措置関係

1、労働者保護のための措置のあり方について

(1)労働者保護のための措置については、それが十分に担保されていないとの実態があることから実効性のある措置を講ずるべきであるとする意見及び平成八年の制度改正により枠組みとしては充実が図られた現行制度を適正に運用すべきとする意見を考慮するに当たり、労働者派遣が派遣元事業主、派遣先及び派遣労働者という「三者間関係」の下に成り立つていることを前提にしつつ、また、適用対象業務についてネガティブリスト方式を採用することにより派遣労働者等からの苦情の増加が予想されることから、労働者保護のための措置を充実させることが適当である。

(2)また、労働者派遣事業に関する新たな国際基準として平成九年六月に採択されたILO第一八一号条約において、個人的な情報の保護、派遣元事業主と派遣先における派遣労働者に対する責任の分担等の労働者保護のための措置が具体的に規定されたところであることから、これらの趣旨を踏まえつつ、労働者保護のための措置を論ずることが適当である。

(3)このような観点から、労働者保護のための措置として、@苦情処理等の適切な措置A派遣労働者の適正な派遣就業に係る措置B個人的な情報の保護のための措置等を講ずることが適当である。

(以下省略)