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労働者派遣法改正案要綱(要旨)
【資料のワンポイント解説】
1,8月5日中央職業安定審議会は、労働者派遣法改正法案の要綱を労働側の反対意見を付して、労働大臣に答申した。
2,この改正法案の要綱に対して、労働側委員は次のような意見(要旨)を表明している。
・労働側委員としては答申案に反対である。
・派遣期間が1年を超える場合の派遣先での雇用責任を義務化。
・労働条件の保証に関する派遣元・派遣先の共同責任の派遣法での明記。
また、派遣元の講ずべき措置等の30条、31条を強行規定に改めること。及び、派遣先が講ずべき措置等の39条に、「派遣先事業主は、派遣労働者の受け入れに際し、派遣労働者が派遣元との雇用契約時に就業条件などが文書で確認され、かつ、社会・雇用労働など各種保険に加入していることを確認し、条件不備の派遣労働者は受け入れてはならない旨を追加し、これを強行規定に改めること。
・就業条件の明示について、実効性の担保策を講じること。
・不合理な派遣契約の中途解除の禁止と派遣先の賠償責任の規定については、指針ではなく、派遣法に規定すること。
・個人情報の保護範囲の明確化と罰則。
3,改正法案は、9月上旬にも国会に提出される予定。
労働者派遣法改正案要綱
(要旨)
1、業務の範囲
(1)何人も、次のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行ってはならない。
イ、港湾運送業務(港湾労働法第二条第二号に規定する港湾運送の業務及び同条第一号に規定する港湾以外の港湾において行われる当該業務に相当する業務として命令で定める業務をいう)
口、建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう)
ハ、警備業法第二条第一項各号に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するために業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として命令で定める業務
(2)労働大臣は、(1)のハの命令の制定又は改正の立案をしようとするときは、あらかじめ中央職業安定審議会の意見を聴かなければならない。
2、許可等の手続の簡素化等
(1)一般労働者派遣事業の許可の申請書及び特定労働者派遣事業の届出書の記載事項の簡素化
一般労働者派遣事業の許可の申請書及び特定労働者派遣事業の届出書の記載事項のうち事業対象業務の種類については、記載を要しない。
(2)一般労働者派遣事業の許可及び特定労働者派遣事業開始の欠格事由の追加
次に掲げる者を一般労働許可及び特定労働者派遣事業開始の欠格事由として迫加する。
イ、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定により、又は刑法の傷害等の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
口、健康保険法、船員保険法、労働者災害補償保険法、厚生年金保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律又は雇用保険法の一定の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
(3)一般労働者派遣事業の許可の基準の見直し
一般労働者派遣事業の許可の基準のうち、労働力の需給の適正な調整の促進のために必要かつ適切であることについて、専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるもの(雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合として命令で定める場合において行われるものを除く)でないことに限定する。
(4)労働者派遣事業に係る変更の手続の簡素化
派遣元事業主が事業所の所在地を変更しようとするときは、遅滞なくその旨を労働大臣に届け出、労働大臣の許可を受けること又はあらかじめ労働大臣に届け出ることを要しない。
3、労働者派遣の期間等
(1)労働者派遣の期間
派遣元事業主は、派遣先が当該派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受けたならば(2)に抵触する場合には、当該抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行ってはならない。
(2)労働者派遣の役務の提供を受ける期間
派遣先は、同一の業務(当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務であって、次に掲げる業務以外のものをいう。以下同じ)について、派遣元事業主から一年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。
イ、次の(イ)又は(口)に該当する業務であって、当該業務に係る労働者派遣が労働者の職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資すると認められる雇用慣行を損なわないと認められるものとして命令で定める業務
(イ)その業務を迅速つ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務
(口)その業務に従事する労働者について、就業形態、雇用形態等の特殊性により、特別の雇用管理を行う必要があると認められる業務
口、事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であって一定の期間内に完了することが予足れているもの
ハ、派遣先に雇用される労働者が産前産後休業及育児休業をする場合における当該労働者の業務その他これに準ずる場合として命令で定める場合における当該労働者の業務
(3)派遣先が(2)に抵触することとなる最初日の通知
派遣先は、派遣元事業と新たな労働者派遣契約締結するに当たっては、あらかじめ、当該派遣元事業主に対し、同一の業務について継続して労働者派遣役務の提供を受けたなら(2)に抵触することとなる最初の日を通知しなけばならない。
(4)労働大臣は、(2)のイ又はハの命令の制定又は改正の立案をしようとるときは、あらかじめ、中央職業安定審議会の意見聴かなければならない。
(5)派遣労働者の雇用
その指揮命令の下に同一の派遣労働者を同一の業務に継続して一年間従事させた派遣先は、その同一の業務に引き続き労働者を従事させる必要がある場合であって、その派遣労働者がその派遣先に雇用されてその業務に従事することを希望するときは、その派遣労働者を雇い入れるように努めなけれほならない。
(6)公表等
労働大臣は、(2)に違反している者に対し、指導又は助言をした場合においては、その者がなお(2)に違反しており、又は違反するおそれがあると認めるときは、当該者に対し、(2)に違反する派遣就業を是正するために必要な措置又当該派遣就業が行われることを防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができ、これに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
4、派遣労働者の就業条件の確保のための措置
(1)労働大臣に対する申告
イ、労働者派遣をする事業主又は労働者派遣の役務の提供を受ける者がこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実がある場合においては、派遣労働者は、その事実を労働大臣に申告することができる。
口、労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者は、イの申告をしたことを理由として、派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(2)相談及び援助
公共職業安定所は、派遣就業に関する事項について、労働者の相談に応じ、及び必要な助言その他の援助を行うことができる。
(3)秘密の厳守
派遣元事業主等は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を漏らしてはならない。労働者派遣事業を行わなくなった後においても同様とする。