英国規格協会安全衛生管理システム規格
BS8800
【資料のワンポイント解説】
1,本資料は、英国規格協会が1996年に公表した安全衛生管理システムに関する規格BS8800である。
2,実は資料出所の確認ができていない。おそらく、日本の安全衛生管理システム検討作業のため、参考資料とし仮訳されたものではないかと思われる。翻訳著作権等の問題もあるが、BS8800がISOの安全衛生マネジメントシステム検討過程で重要な位置をしめる文書であることから、掲載することとした。
BS8800
1 適用範囲
本英国規格は、次の事項に関する手引きを考える。
a) 労働安全衛生(OH&S)マネジメントシステムの開発
b) 他のマネジメントシステム規格との関連
本指針は、あらゆる規模の組織によって、かつ活動の性質とは無関係に使用されるために立案されている。本指針は、その適用が特定の組織の状況と必要性に比例することを目指している。
本英国規格は、それ自身でOH&S性能基準を規定しないし、一般的マネジメントシステム設計に関する詳細な手引きを提供することを目指してもいない。
2 情報的引用規格
本英国規格は、情報又は手引きを提供する他の出版物について引用する。本規格の発行時に最新であるこれらの出版物の版を裏表紙の内側に記載するが、最新版を参照することが望ましい。
3 定義
本英国規格の目的においては、次の定義を適用する。
3.1 事故
死亡、健康傷害(3.8項参照)、傷害、損害又は他の損失の原因となる予期しないできこと。
3.2 監査
活動及び関連結果が計画された制度に合致してるか否か、及びこれらの制度が効果的に実行されていて、組織の方針及び目的の達成のために適っているか否かを判定するための、系統的及び、可能な場合は独立の検証(3.6項参照)。
参考:「独立」という言葉は、ここでは、組織の外部を必ずしも意味していない。
3.3 外部要素
組織の管轄外であって、安全衛生問題に影響を及ぼし、適切な時間枠内で考慮することが必要な影響力。例えば、規制、工業規格。
3.4 危険
人的傷害、又は健康傷害(3.8参照)、資産の損害、環境への被害、又はこれらの組合せの面から危害の潜在性をもつ原因又は状況。
3.5 危険の特定
危険(3.4参照)の存在の認識、およびその特性の明確化のプロセス。
3.6 安全衛生の目的
組織が達成を目指して自身で認定し、可能な場合定量化するべき、OH&S性能面からの目標
3.7 健康監視
更なる障害の可能性を排除又は減少させるため、措置を論じることができるように、労働関連健康障害(3.8参照)の徴候又は症状を見出すための人の健康の監視。
3.8 健康障害
人の労働活動又は環境によって起きたか、又は悪化したと判定される健康障害。
3.9 潜在事故
事故につながる潜在性をもつ予期しないできこと。(3.1項参照)
3.10 内部要素
組織内にあって、安全衛生方針を遂行する能力に影響を及ぼすことがある力。例えば、内部の再編成、文化。
3.11 管理システム
所定の業務を確実に実行するため、又は指定された結果を達成又は維持するために、その構成要素が組織的に相互に作用する。要員、経費資源、方針、手順のあらゆる複雑性のレベルでの複合物。
3.12 組織
法人であるか否か、官営か民営かを問わず、自体の機能及び管理を有する会社、事業、商店、企業、機関又は協会又はその一部。1つ以上の運営単位をもつ組織については、1つの運営単位を1組織として定義してもよい。
3.13 リスク
指定された危険なできことが発生する可能性及び結果の組合せ。
3.14 リスクアセスメント
リスクの大きさの推定、及びリスクに耐えられるか、又はリスクを許容できるかの決定の総合的なプロセス。
3.15 状況確認
OH&Sマネジメントシステムの公式評価
3.16 目標
安全衛生の目的(3.6参照)から発生し、その目的を達成するために満たすことが必要である、可能ならば定量化される、組織に関連する詳細な性能の要求事項。
4.0 序文
4.0.1 一般事項
本指針のすべての要素は、OH&Sマネジメントシステムに組込むことが望ましいが、個々の要素を適用するべき方法と範囲は、組織の規模、その活動の内容、組織の運営上の危険及び条件のような要素に依存する。
4.0.2 初回状況確認
監査 → | 初回状況確認 | ← 性能測定からのフィードバック |
| ↑ 方針 | |
組織は、OH&Sの管理のための既存の制度の初回状況確認を実施することが望ましい。進捗を測定することができるベースラインを提供する情報ばかりでなく、現行のシステムの適用範囲、妥当性、及び実行に関する決定に影響する情報を提供するために、この確認を行うことが望ましい。初回状況確認は、「我々は今どこにいるのか」という質問に答えるものであることが望ましい。
この確認は、既存の制度を次のものと比較することが望ましい。
a)OH&Sマネジメント問題を扱う関連する法律の要求事項
b)組織内で得られるOH&Sマネジメントに関する既存の手引き
c)組織の業務部門及び他の適切な部門における最善の実施要領及び実行(例えば、関連するHSC産業諮問委員会及び同業者団体の指針から)
d)OH&Sマネジメント注ぎ込んでいる既存の経営資源の効率および効果
有効な出発点は、既存のシステムをこれらの手引きに照らして見なすことであろう。附属書では、組織が重要な活動を確実に盛り込むことを手助けする情報を提供している。初回状況確認からの情報は、計画プロセスで使用してもよい。
4.1 0H&Sの方針
| 初回及び定期的状況確認 ↓ | |
監査 → | 方針 | ← 性能測定からのフィードバック |
| ↑ 組織化 | |
組織の最高幹部経営者は、そのOH&S方針を明確にし、文書で定め、是認することが望ましい。経営者は、その方針に次の誓約を確実に含めることが望ましい。
a)ビジネス性能の欠くべからざる部分としてOH&Sを確認すること。
b)最小限として法的要求事項への適合を伴う高レベルのOH&S性能を達成し、実行においては費用効果の改善を継続すること。
c)方針を実行するために妥当で適切な経営資源を投入すること。
d)内部的な通達によると限定する場合でさえ、OH&S目的を設定し、公表すること。
e)最高幹部経営者から第一線の監督者レベルまで、ライン部門管理の主要な責務としてOH&Sマネジメントシステムを位置づけること。
f)組織のすべてのレベルでその理解、実行及び維持を確実なものとすること。
g)方針及びその実行に関与させるための従業員の参加及び協議。
h)方針、管理システム及び方針に対する適合監査の定期的見直し
i)すべてのレベルの従業員が適切な教育・訓練を受け、その業務と責務を実行するために能力を持つことを確実なものとすること。
4.2 計画
| 方針 ↓ | |
監査 → | 計画 | ← 性能測定からのフィードバック |
| ↑ 実行及び運営 | |
4.2.1 一般事項
計画された活動の成功又は失敗を明確に見ることができることは重要である。このためには、OH&Sの要求事項を特定すること、並びに何を行うべきか、だれの責任か、それをいつ行うか、及び望ましい結果を規定する明確な性能基準を設定することが必要である。
実際には、職務を組織化すること、計画すること及び実施することは一部重複することが認められているが、それでもなお、次の重要な分野に対応する必要がある(付属書C参照)。
4.2.2 リスクアセスメント
組織は、危険の特定を含むリスクアセスメントを実施することが望ましい(付属書D参照)。
4.2.3 法律及びその他の要求事項
組織は、リスクアセスメントに加えて、組織に適用される法的な要求事項、及びOH&Sマネジメントに該当すると組織が同意するその他の要求事項を特定することが望ましい。
4.2.4 0H&Sマネジメントの準備
組織は、次の重要な分野を含めるように手配することが望ましい。
a)組織がその方針を実施するための要員及び経営資源を含め、総合的な計画書及び目的
b)その活動を安全に、かつ法的要求事項に従って管理するために、十分なOH&S知識、技能及び経験をもつか、又はそれらを利用する。
c)4.3.2項で特定されたリスクを管理し、4.3.3で特定された要求事項を満たすために準備を実施するような運営上の計画書
d)4.3.6項に記載されている運営上の管理活動のための計画
e)性能の測定、是正措置、監査、及びマネジメント・レビューのための計画(4.4.1、4.4.2、4.4.4及び4.5項参照)
f)必要であるが示された是正措置の実施
4.3 実行と運営
| 計画 ↓ | |
監査 → | 実行及び運営 | ← 性能の測定 |
| ↑ 点検及び是正措置 | |
4.3.1 構成と責任
労働安全衛生の究極的な責任は最高経営者にある。そこで、最良の実施方法は、OH&Sマネジメントシステムを適切に実行することを確実にすること、及び組織内の運営のすべての場所及び領域で要求事項に合わせて実行することを確実にする特別な責任を最高幹部経営レベル(例えば、大規模な組織においては、取締役会又は執行委員会のメンバー)の一人に割当てることである。
組織のすべてのレベルで、各人は次のようである必要がある。
a)管理する人々、自分自身、共に働く人々の安全衛生に責任をもつ。
b)管理する活動によって影響を受ける人々の安全衛生の責任を認識する。例えば、契約者及び一般の人々。
c)行為又は無為がOH&Sマネジメントシステムの効果に与えうる影響を認識する。
幹部経営者は、OH&S性能の継続的な改善に積極的に参加することによって、その関与を手本として実証することが望ましい。
4.3.2 教育・訓練、認識及び能力
組織内の全てのレベルでの必要な能力を明らかにし、必要な教育・訓練を組織化するような手配を、組織は行うことが望ましい。
4.3.3 対話
組織は、適切な場合、下記のための準備を確立し、維持することが望ましい。
a)OH&Sの情報について、効果的で、かつ公開の対話
b)専門家の助言及びサービスの提供
c)従業員の参加及び協議
4.3.4 0H&Sマネジメントシステムの文書化
文書化は、組織に対して成功するマネジメントシステムの実施を可能にさせる上で、重要な要素である。OH&Sの知識を集めて、保持する上でも文書化は重要である。しかし、文書化は、効果および効率に対しては必要な最小限に維持することが重要である。
OH・&Sの計画書を完全に実施することを可能にするために、十分な文書を利用でき、その文書が組織の必要性に比例していることを、組織は確実なものとすることが望ましい。
4.3.5 文書管理
文書が最新の状態であり、組織が意図する目的に適用できることを確実なものとするように、組織は手配することが望ましい。
4.3.6 運営上の管理
その広い意味におけるOH&Sを、組織を横断して、かつその業務の規模又は内容がどうあっても、すべての活動に完全に組み入れることが重要である(付属書B参照)。方針の実行及び効果的なOH&Sマネジメントのための組織化において、組織は、活動を完全に、かつ4.2.4に定めた準備に従って実施することを確実にするように手配し、次のことを行うことが望ましい。
a)管理構成において、責任及び責務の割当てを明確にする。
b)人々がその責任を実行するための必要な権限を確実にもたせる。
c)その規模及び内容に相応しい適切な経営資源を割当てる。
4.3.7 緊急時の準備と対応
組織は、予見可能な緊急事態のための緊急事態対応計画書を確立し、かつその影響を緩和するように手配することが望ましい。
4-4 点権と是正措置
| 実行及び運営 ↓ | |
監査 → | 点検及び是正措置 | ← 性能測定からのフィードバック |
| ↑ 経営者のレビュー | |
4.4.1 監視と測定
性能の測定は、OH&Sマネジメントシステムの効果に関する情報を提供するための重要な方法である。適切な場合、定量的及び定性的な測定の双方を考慮することが望ましく、組織の必要性に合わせることが望ましい(付属書E参照)。
性能の測定は、方針及び目的が満たされる範囲を監視する手段であり、次の2項目を含む。
a)例えば、監視及び検査によって、例えば、労働安全シスチム、労働許可等のOH&Sの準備への適合を監視する性能の能動測定
b)事故、ニアミス、健康障害、潜在事故、及び欠陥のある安全衛生性能の他の経時的証拠を監視する性能の受動測定
4.4.2 是正措置
欠陥を見出した時には、根本的な原因を特定して、是正措置を講じることが望ましい。
4.4.3 記録
組織は、法律および他の要求事項への適合を実証するために必要な記録を保持することが望ましい。
4.4.4 監査
労働安全衛生性能の日常的な監査に加えて、OH&Sマネジメントシステムのすべての要素のより深く限界的な評価を可能にする定期的監査が必要である(図1に含まれている)。
監査は有能で、かつ監査される活動から可能な限り独立している人によって実施することが望ましいが、組織内から選ばれた人によって実施してもよい(付属書F参照)。
監査は完全である必要があるが、その手法は、組織の規模及び危険の内容に合わせることが望ましい。
時に応じて、かつ種々の理由のために、監査には、次の質問を含む必要がある。
a)組織の総合的なOH&SマネジメントシステムはOH&S性能の必要な標準を達成することができるか。
b)組織は、OH&Sに関するすべての義務を遂行してしているか。
c)OH&Sマネジメントシステムの長所と短所は何か。
d)組織(又はその一部)は、実行すると主張してしていることを実際に実行して、達成しているか。
監査は広範にわたり、状況に応じた選ばれた主題に取り組むことがある。監査結果をすべての関係書に通知することが望ましく、必要に応じて是正措置を講じることが望ましい。
4.5 マネジメント・レビュー
| 点検及び是正措置 ↓ | |
内部要素 → | 経営者のレビュー | ← 外部要素 |
| ↑ 方針 | |
組織は、その必要性に従って、OH&Sマネジメントシステムの定期的確認の頻度及び適用範囲を定めることが望ましい。この確認では、次の事項を考慮することが望ましい。
a)OH&Sマネジメントシステムの総合的性能
b)個々のシステム要素の性能
c)監査の成果
d)組織の構成の変化、未決の法律、新技術の導入等の内部及び外部要素
また、欠陥を是正するために必要な措置を特定することが望ましい。
安全衛生管理システムは、内部及び外部要素に対応、または適応するように立案することが望ましい。マネジメント・レビューも先を見る機会を提供する。組織は、上記の(a)から(d)の情報を、リスクを最小化する組織の能動手法を改善し、かつビジネスの性能を改善するために使用することができる。