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1 頚肩腕症候群の発生要因
頚肩腕症侯群の発生の主な要因には,(1)作業姿勢動作等上肢等への負担による直接要因(2)年齢,性,熟練度等の違い,既往症又は基礎疾患の有無等の基礎要因(3)作業量,作業強度,温度照度等症状の発症に影響を及ぼす促進要因、があり,これら要因が複雑に関与し,発生していると考えられる。
職場における頚肩腕症候群を予防するためには,確立された労働衛生管理体制の下で,作業管理,作業環境管理及び健康管理の観点から,これら要因を分析した上でその排除又は軽減に努めるとともに,労働者の健康の保持増進対策を進めることが必要である。
上肢等への負担という点に着目して頭肩腕症候群を予防する観点からは,特に,
(1)上肢等の反復動作の多い作業
(2)上肢等を上げた状態で行う作業
(3)頚部や肩の動きが少ない作業
(4)上肢等の特定の部位に負担のかかる作業
などに留意する必要がある。
2 予防対策(以下は概要、省略があること。)
3−1 作業管理
(1)作業方法の改善
作業方法の変更,機器等の人間工学的な改良などによる上肢等への負担の軽減化
(2)自動化・省力化
作業の全部又は一部の自動化ないし省力化,それが困難な場合には,適切な補助機器等の導入。
(3)作業姿勢・動作
上肢等に負担のかからないような作業姿勢・動作がとれるよう,作業台や椅子等の高さの調節等を行う。
不自然な姿勢で行う作業をできるだけ避ける。
(4)作業休止
作業休止時間を設け,上肢等の適度な運動を行わせる。
(5)作業標準
1日の作業時間,作業量,一連続作業時間等を示した作業標準を策定する。
3−2 作業環境管理
(1)温度・照度等
温度・照度は適切に保つこと。特に,低温環境においては,筋力,作業能率の低下等による上肢等への負担が増加することに配慮する必要がある。
照明は,できるだけ明暗の対照が著しくなく,かつ,まぶしさを生じないようする。
(2)作業空間
動作に支障かないよう十分な広さを有する作業空間を確保する。
(3)設備の配置等
作業設備等については,作業姿勢等を考慮して,配置等に人間工学的な配慮を行う。
(4)その他
精神的な緊張により間接的に筋肉の緊張が高まり,上肢等への負担が増大することかあるので,騒音及び振動の軽減,空気環境の維持等についても十分配慮する。労働者との合意により,必要に応じ,音楽を流す等精神的な緊張を緩和することも有効てある。
3 健康管理
頚肩腕症候群は,他覚的な所見よりも,自覚症状が先行することか多いことから,日常の健康状態の把握及び健康診断における問診が特に重要である。
(1)健康診断等
イ 一般健康診断
頚肩腕症候群予防の観点から,雇入時及び定期の健康診断の際に頚肩腕健康診断問診票(注:問診票の例が示されているが,ここでは省略)を活用する等により,上肢等の各部位に係る既往歴の調査,上肢等の各部位における筋のこり,痛みしびれ等の自他覚症状の有無の検査を含めて実施することが望ましい。
ロ 頚肩腕健康診断
イの結果,医師が必要と認める者については,頚肩腕に関する健康診断を実施することが望ましい。
検査項目の選択に当たっては,関連通達に示されている健康診断項目を参考にする。
(2)健康相談
頚肩腕症候群は,他覚症状よりも自覚症状が先行することから,労働者が健康状態の不調を訴えたときに,随時相談できるような体制を整備することが重要である。
健康相談により,
・上肢等の負担が蓄積している労働者の発見
・自覚症状段階での適切な措置
・頸肩腕症候群についての不安の解消
・日常生活上の健康指導
などが期待できる。
(3)事後措置
健康診断あるいは健康相談の結果,健康保持のために必要があると認めるときは,作業方法の改善,作業時間の短縮,作業環境の整備筆必要な措置を講ずる。
(4)職場体操
作業開始前,作業休止時間及び作業終了後に職場体操を実施する。
4 労働衛生教育等
作業者に対する頚肩腕症候群予防のための労働衛生教育の実施,日常生活を含めた健康保持増進の推進を図る。
(資料)
1 作業のー例
(1)上肢等の反復動作の多い作業
a 手指・手・前腕を早く動かす反復動作の多い作業
・コンピューター,ワードブロセツサー等のOA機器,VDT機器等の操作を行う作業
・その他これに類似する作業
b 筋力を要する反復動作の多い作業
・多量の冷凍漁等の切断・解体等の処理を行う作業
・その他これに類似する作業
c 上肢等の挙上保持と反復動作の多い作業
・製造業における機械等の組立て・仕上げ作業
・手作りによる製パン・製菓作業
・ミシン縫製・アイロンがけ作業
・手話通訳作業
・給食等の調理作業
・その他これに類似する作業
(2)上肢等を上げた状態で行う作業
・流れ作業における塗装,溶接作業
・天井など上方を作業点とする事業
・その他これに類似する作業
(3)頚部,肩の動きが少ない作業
・検査作業(特に顕微鏡や拡大鏡を使った作業)
・その他これに類似する作業
(4)上肢等の特定の部位に負担のかかる作業
・運搬・積み卸作業
・保育,看護,介護作業
・その他これに類似する作業