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[資料番号] 00055
[題  名] 中小卸売・小売業、飲食店の魅力ある職場づくりに向けて−労働省研究会報告
[区  分] その他

[内  容]
【資料のワンポイント解説】
1.わが国に限らず、卸売・小売業並びに飲食店の就業者は多数である、一方、小零細企業の占める割合も高く、小売、飲食店の年間実労働時間は2000時間を超える(97年)など就業条件の整備が進んでいない。(法制度の上でも、大半を占める10名未満の事業所には週46時間制特例が未だ適用されている。)
2.また、非正規従業員への依存度も57.5%と高い。
3.この報告書は、小売業、飲食店の将来に向けて、現状で考えられる現実的な「提言」を示している点で参考になろう。雇用店長の労働時間・健康管理の改善、店長のマネジメント能力の客観評価基準や資格整備などにも言及している。




労働省・中小企業労働福祉推進会議報告書
−−−中小卸売・小売業、飲食店における魅力ある職場づくりの形成に向けて−−

第1部 中小卸売・小売業、飲食店の現状(略)
第2部 中小卸売・小売業、飲食店の現状と課題(略)
第3部 提言「魅力ある職場づくりの形成に向けて」

1.労働時間等について

(1)労働時間短縮に向けた業務の効率化,営業時間等の見直し・労働時間管理の適正化

 優秀な人材の確保が事業所の最も重要な課題となっており,そのためには,他産業に比べて長く,また,労働者が最も希望する労働時間の改善を図ることが必要である。
 このため,事業所においては,業務の効率化や人員の適正配置等について見直しを行っていくとともに,非正規従業員の有効活用を図っていくことが必要である。
 また,労働力の確保が難しい曜日や時間帯においては,顧客ニーズも考慮しつつ,営業時間そのものを短縮する,隔週で営業するなど営業時間そのものの見直しについて踏み込んで検討していくことも望まれる。
 なお,ショッピングセンターにおいては,集客力を高めるために営業時間が画一的に定められる傾向が強いが,テナントとして多くの小規模小売店が出店しており,その営業時間の設定に当たっても,各テナントの顧客ニーズ,労働力確保の状況等も踏まえた営業時間の多様化について検討していくことが必要である。また,ショッピングセンターのテナント等については,大店法の廃止等により今後営業時間の延長等が進むことが考えられるが,その際においても労働基準法の労働時間規制に十分留意の上行われることが必要であり,交替制動務シフトや変形労働時間制の導入等の取組が求められる。
 行政においても,それらの取組に対する支援を行うとともに,労働時間管理の適正化に関する指導を行うことが必要である。


(2)特例措置対象事業所における労働時間短縮

 小売業,飲食店の大半を占める労働者10人未満の事業所については,労働基準法において現行週46時間労働制の特例措置が認められているが,事業所の中には,労働時間の短縮について,その必要性を認識しているものの,コスト上昇に対応できない,売上が減少すること等を理由に特例措置の維持を求める声もある。一方,労働者からは特例措置の見直しを求める声が出されている。
 この特例措置のあり方については,労働時間法制の見直しに関する中央労働基準審議会建議(平成9〔1997〕年12月11日)において,「水準及び実施時期について平成11〔1999〕年3月末までに結論を出すことが適当」とされているところであり,これらの意見を踏まえた検討が求められる。
 なお,労働時間の短縮は活力とゆとりある勤労者生活を実現し,余暇や家庭生活の充実を図るために大変重要である。また,人材の確保の観点からも重要である。
 このため,行政においては,中小小売業,飲食店における適切な労働時間管理を支援していくことが重要であり,小規模小売業,飲食店等の個々の事業所について労働時間短縮促進法等に基づく指導や,情報提供等による援助を行うことが重要である。


(3)元日営業における配慮

 元日営業については,既に一部の大規模小売店等で実施されており,これらとの競争上の観点や,顧客のニーズがあり営業日として重要であること,大規模小売店等の元日営業の進展に伴いこれらにテナントとして入居している場合には大規模小売店の営業に合わせてやむを得ず元日営業に踏み切らざるを得ない場合もあることなどから,小規模小売店,飲食店においても元日営業を行うことが必要になることが考えられ,それぞれの企業の判断において行われることとなる。
 しかしながら,顧客サービス等の観点のみならず,労働条件の向上という観点も重要であり,年間総労働時間の短縮は大きな課題となっていることから,元日営業を行う場合であっても,人員配置,勤務体制の見直し,代休の付与等により労働時間が増加することがないように適正な労働時間管理を行うことが必要である。
 このため,行政としても,事業主に対して適正な労働時間管理を行うよう啓発指導を行い,年間総労働時間の短縮の促進に努めることが重要である。


(4)店長の就業時間の改善,健康管理の充実

 店長・経営者の多くは,代わりを努める者がいないことや労働者の不足等の理由から,就業時間が長く,休日がとれない者も多く,健康を損なう要因としても懸念される。
 このような状況を改善するためには,副店長(店長代理)の育成等,代わりとなる者を育成するような方向での人材育成を行っていくことが重要である。また,労働力不足や労働者の欠勤に対処すべく,魅力ある職場づくりや労働者教育,雇用管理の改善に力を入れることが重要である。
 また,小売業や飲食店の雇用店長(従業員である店長)について,企業は適正な就業時間管理を行っていくことが極めて重要である。さらに,労働安全衛生法に基づく一般健康診断の実施及びその結果に基づく健康管理を行うことに加えて,トータル・ヘルスプロモーション・プラン等心身両面の健康保持増進対策を行っていくことも重要である。
 行政においても雇用店長の就業時間のあり方や健康保持増進対策の支援に向けて検討していくことが望まれる。


2.高年齢者雇用について

(1)高年齢者雇用に向けた積極的な取組と働きやすい環境整備

 中小小売業,飲食店においては,高年齢者活用のメリットを十分考慮した上で積極的に高年齢者雇用に取り組むことが重要であり,高年齢者の働きやすい環境整備について検討していくことが必要である。
 このため,業界団体や行政においては,諸外国の小売店のレジ等でみられる座りながら顧客に対応する販売方式(セルシット方式)の普及,高年齢者にも優しいPOSシステム等の開発等,中小小売業,飲食店における高年齢者の働きやすい環境整備のあり方について調査研究を行い,これを幅広く情報提供するなど,高年齢者雇用における事業所の取組を支援していくことが重要である。


(2)高年齢者の就業体験制度の検討

 小売業,飲食店における高年齢者の雇用を支援していくためには,例えば,他産業で就労している中高年齢者が定年後に中小小売業,飲食店へ円滑に再就職できるよう,在職中に中小小売業,飲食店で就業体験できるような制度(仮称シルバーインターンシップ)についても業界団体等において検討していくことが望まれる。


(3)高年齢者の健康確保に対する支援

 中小小売業,飲食店における高年齢者雇用を促進していくためには,高年齢者を雇用した場合の適切な健康管理の在り方について検討していくことも必要である。
 また,高年齢者の健康確保のためには,若年時から適切に健康管理を行い,積極的に健康づくりを進めていくことが重要であり,中小小売業,飲食店においてもそのための取組が求められるが,行政においても,産業保健活動の活性化や労働者の自主的な健康づくりに対する施策の充実,地域産業保健センターの機能の強化等を図り,中小小売業,飲食店で働く労働者の健康確保について支援していくことが重要である。


3.パートタイム労働者雇用について

(1)主戦力であるパートタイム労働者等を中核に据えた雇用管理の実施等

 小売業,飲食店においては,パートタイム労働者が基幹的な労働力としての役割を担いつつあり,事業所の戦力化ニーズは高い。しかし,一般労働者との賃金格差は長期的に見ると拡大傾向にある。
 このようなことから,小売業,飲食店においては,パートタイム労働者が基幹労働力であることを十分に認識し,主戦力であるパートタイム労働者を中核に据えた雇用管理を実施していくことが重要である。
 このため,長期にわたり勤務する基幹パートタイム労働者については,能力評価を通じて適正に処遇することにより,有効活用を図っていくことが求められる。専門小委員会が実施した小売店・飲食店雇用管理調査においても,非正規従業員の戦力化を指向している事業所では,昇進・昇格制度,人事考課制度,定期昇給制度,賞与・報奨金制度,退職金制度など,非正規従業員の働きぶりや能力を処遇に反映することが可能な制度を導入している。これにより,パートタイム労働者の仕事,処遇に対する満足度が高まるとともに,一層の戦力化によって店長や正規従業員の負担の軽減にもつながり,双方にとってプラスとなると期待される。
 また,流動性の高い短期パートタイム労働者については,即戦力にすることが求められることから効果的な業務マニュアルの作成等を行っていくことが必要である。
 こうした状況を踏まえ,行政においては,業務マニュアルの作成や処遇制度の改善等に取り組む事業所に対し支援していくことが重要であり,パートタイム労働者の雇用管理の改善を推進するための各種助成制度について,その内容の充実を図り,利用しやすいものとしていくとともに,利用促進に向けた情報提供を行っていくことが必要である。


(2)退職金制度,社会保険制度等への加入促進

 パートタイム労働者の定着促進のためには,例えば退職金制度や特別休暇,健康診断等の面でも,勤務の実態を踏まえ,できるだけ正規従業員と同様の取り扱いを行っていくことが必要である。
 特に退職金制度については,パートタイム労働者が最も希望する制度であり,事業主はその点を十分認識する必要がある。退職金制度の導入に当たっては,中小企業退職金共済制度がパートタイム労働者について掛金の特例を設け,パートタイム労働者の加入しやすい制度になっていることから,この活用が効果的である。
 また,社会保険制度については,パートタイム労働者の中には,被扶養者の社会保険との兼ね合いで社会保険に加入することを望まない者も見受けられるところであるが,そのことを理由に,事業主は全てのパートタイム労働者を社会保険に加入しなくてもよいというわけではなく,要件を満たすパートタイム労働者については,十分な説明を行い,必ず加入手続を行うことが必要である。
 こうした状況を踏まえ,行政においては,パートタイム労働者の退職金制度や社会保険制度等への加入に向け,事業主に対する指導,啓発を進めていくことが重要である。特に中小企業退職金共済制度については,パートタイム労働者の加入促進に向けた一層の啓発を進めていくことが必要である。


(3)通常の労働者との均衡・均等を考慮した処遇・労働条件の確保

 パートタイム労働者の能力を有効に活用していくためには,通常の労働者との均衡・均等を考慮した処遇・労働条件の確保を図って行くことが重要である。
 パートタイム労働法においては,パートタイム労働者の労働条件の確保や雇用管理の改善について,その就業の実態,通常の労働者との均衡等を考慮するよう努めることを事業主の責務としている。しかしながら,パートタイム労働法に規定されている「通常の労働者との均衡等」を具体的にどのように考慮すべきかについての指標(物差し)が形成されておらず,具体的な取組につながりにくいという問題も指摘されている。これについては,異なる賃金形態間の比較や職務の異同に係る評価等について技術的・専門的事項を整理した上で取り組んでいく必要がある。
 このような状況を踏まえ,比較のための物差しづくり及び処遇の均衡・均等に対して労使が取組しやすくするため,行政として情報提供等一定の支援を行うことが必要であり,このため労使を含めた検討の場を設置し,技術的・専門的な検討を行っていくことが重要である。


(4)パートタイム労働者の相談・講習等に対する支援

 今後も主婦や高年齢者を中心としたパートタイム労働者の増加が見込まれる中で,パートタイム労働者が気軽に相談や講習が受けられる公的機関の一層の整備とその機能の充実を図っていくことも必要である。
 特に,今後パートタイム労働者の職域や責任を拡大していく事業所が増加することが予想される中で,パートタイム労働者を有効に活用していくため,就業経験に乏しいパートタイム労働者に対しては,就労に当たっての心構えや基礎知識を付与し,就労意欲を高めることが重要であり,これにより,パートタイム労働者の労働条件の向上や労使のトラブル防止にもつながることが期待される。
 現在,パートタイム労働者の職業紹介を専門に取り扱うパートバンクやパートサテライトが設置され,就労希望者に対して職場適応向上のための指導や職業相談,職業教室等を実施しているが,より多くの地域に設置していくとともに,就労に関する基礎知識の習得や職場適応向上のための講習会を開催するなどして,その機能の充実を図っていくことが必要である。


4.雇用について

 雇用調整を余儀なくされている中小卸売業においては,できるだけ雇用の維持を図り,労働者が失業を経ずに労働移動できる環境整備に努めることが重要である。このため,必要な場合には,雇用調整助成金や能力開発給付金制度の活用も視野に入れつつ雇用維持努力を進めていくことも必要である。
 行政においては,出向・再就職の斡旋により失業を経ずに労働者の受け入れや送り出しを行う事業主,事業転換や事業再構築により雇用の維持を図る事業主,労働者への教育訓練を行う事業主等に対する支援措置を活用するなど,労働者の雇用維持・安定のための施策を展開していくことが重要である。


5.能力開発、人材育成について

(1)小売業業界で評価される資格の整備

 販売スペシャリストの養成や店長クラスのマネジメント能力の向上を図るためには,客観的な資格制度の存在が極めて有益であり,消費者の信頼に応えることができるだけでなく,販売職のキャリアアップやモラールアップにもつながり,また,円滑な労働移動にも資するものである。
 現在,小売業における資格としては,小売商(販売士)や商品装飾展示技能検定,食料品スーパー・オペレーション技能審査等の公的資格のほか,民間で実施している任意資格制度,企業が独自に行う社内検定制度がある。また,店長クラスのマネジメント能力向上については,各企業において独自に研修制度を設けて実施しているところもあるが,統一した資格は整備されていない。
 このため,顧客のニーズにあった商品を的確に把握し,提供できる販売スペシャリストとしての能力や技能,店舗の運営管理に関する店長クラスのマネジメント能力については,客観的基準で評価できる統一した資格を整備していくことが必要であり,業界団体等において,例えば,商品別の販売スペシャリストの資格や店長クラスのマネジメントに関する資格の整備について検討していくことが望まれる。

(2)飲食店を対象とした職業能力開発制度の整備

 飲食店の発展のためには,ファミリーレストラン等の店長クラスが店舗の運営管理について専門的知識を習得できる能力取得制度や,本部等の管理部門に従事する者が総合的な管理業務に関する能力向上のための制度の整備について,業界団体や行政が一体となって取り組んでいくことが重要である。


(3)中核となるパートタイム労働者の育成のためのOJTマニュアルの作成等

 限られた時間の中で中核となるパートタイム労働者を効果的に育成していくためには,店長・経営者が仕事をしながら,パートタイム労働者の能力向上やモラールアップを図ることができる体制づくりについて支援していくことが重要である。
 そのためには,業界団体や行政において,業種別,業務別のOJTマニュアルの作成や情報提供等の指導援助を行うことが必要である。

6.福利厚生について

(1)福利厚生の充実に向けた取組

 福利厚生制度の充実に向けては,まず,退職金制度の整備が重要である。中小の事業主では個々に独自に制度を設けることが困難な実状を踏まえると,事業主の相互共済の仕組みと国の援助による中小企業退職金共済制度をはじめ,商工会議所等が行う特定退職金共済制度などの各種の共済による退職金制度を,個々の事業主のニーズに応じ,活用することが効果的と考えられる。
 また,福利厚生については,中小規模の個々の事業所単独では取組にくい面があることから,共同で福利厚生制度の整備を進めていくことが効果的であり,市区町村に設置されている中小企業勤労者福祉サービスセンターを積極的に利用して行くべきである。
 さらに,労働者の貯蓄や持ち家といった財産づくりを目的とする勤労者財産形成促進制度(財形制度)についても積極的に導入して行くべきであり,事務負担の軽減を図ることができる事務代行制度の活用が望まれる。
 行政においては,中小企業退職金共済制度のより一層の普及に取り組むことが必要である。また,今般,特定退職金共済制度との間で労働者が移動した場合には,退職金を通算して受給できる制度が創設されたところであるが,この通算制度が円滑かつ積極的に活用されるよう制度の普及等を図っていくことが求められる。
 中小企業勤労者福祉サービスセンターについては,設立促進を図るとともに,中小小売業,飲食店の利用促進に向けて,勤労者のニーズにあった事業の展開,より一層の情報提供が行われるよう指導援助に努めることが必要である。


(2)ショッピングセンター等における福利厚生施設の整備,改善

 ショッピングセンター等の商業集積においては,個別のテナントは小規模でも施設全体としては規模が大きいケースが多く,個々の事業所が単独では確保することが難しい休憩室や更衣室,食堂,保健室等の福利厚生施設については,商業集積を単位として設置していくことが重要である。
 また,既存の施設についても共同で利用できる快適な環境を維持していくことが必要である。
 このため,行政においては,ショッピングセンター等商業集積における小規模事業所の労働者の快適な職場環境の形成のため,休憩室,更衣室,保健室等の福利厚生施設等について,共同利用を含め必要な改善のための具体的手法等を周知するなど,商業集積における職場環境の快適化の促進を図ることが重要である。
 また,現在,事業共同組合等や個別中小企業者の労働者の福利厚生を確保するため,中小企業労働力確保法に基づく中小企業雇用環境整備奨励金や雇用促進融資制度等があるが,この制度の一層の周知,活用を図ることが必要である。さらに,ショッピングセンター等商業集積を単位とした安全衛生活動を促進し,共同で利用できる設備や機器(休憩室等の分煙設備,空気調和機等)の整備を促進するため,中小企業の安全衛生活動を支援する事業の周知,活用を図っていくことも必要である。

7.労使関係について

(1)よりよい労使関係に向けた取組

 非正規従業員が多い小売業,飲食店においては,一般的に非正規従業員の勤続年数が短く,一日の勤務時間も短いため,職場内のコミュニケーションが希薄になりがちである。このため,非正規従業員の定着率を高めるためにも,店長や正規従業員,非正規従業員同士の人間的な関係を作っていくことが重要であり,事業所においては,気持ちよく仕事ができる職場の雰囲気づくりを進め,コミュニケーションの場をつくるとともに,職場における意見や不満等についてフォローアップできる体制の整備を行っていくことが必要である。


(2)労働相談機関の機能の充実

 中小小売業,飲食店における労働組合員の組織率が低下し,労政事務所等における労働条件等についての相談が増加している中で,労働組合のない中小小売業,飲食店の労働者が気軽に相談できる機関(労政事務所,労働基準監督署・労働条件相談センター,雇用促進事業団・雇用促進センター,職業安定所・パートバンク,21世紀職業財団地方事務所,商工会等)の役割は今後ますます重要となってくる。
 このため,行政においてはこれらの相談体制の整備とともに機能の強化を進めていくことが求められる。特に,これらの相談機関においては,土日や深夜に勤務する労働者が多い小売業,飲食店の実態を考慮し,相談時間の延長を行うなど利用しやすい窓口に向けた改善を図っていくことも必要である。

8.その他

(1)中小小売業,飲食店の立場に立った施策の周知,手続の簡素化

 中小小売業,飲食店が労務管理の改善を進めていくためには,各種の助成制度を積極的に活用していくことも効果的である。しかしながら,事業所の中には助成制度についての知識がなく利用できなかったり,手続面での煩わしさから利用しにくい面があると言われている。
 このため,行政においては,申請手続の簡素化や,より利用促進ができる懇切丁寧なパンフレットの作成等に努め,より一層の情報提供を行っていく必要がある。
 また,これらの事業所に対する情報提供や申請手続事務の負担軽減等については,例えば社会保険労務士等を積極的に活用することも効果的であり,社会保険労務士等の今後の活躍も期待される。
 さらに,労務管理の改善に対する事業主の意識の高揚を図るためには,就業規則の作成について,現在義務のない事業所への啓発活動を一層充実していくことも必要である。


(2)関係省庁の連携

 現在,労働省では中小企業の魅力ある職場づくりを支援するため,中小企業労働力確保法に基づく助成制度や,労働条件改善のための事業,能力開発やパートタイム労働者の雇用管理改善の事業など様々な施策を実施している。また,中小企業庁においても,魅力ある商店街づくりに向けての支援や,中小小売店支援のための様々な施策を実施している。
 これら両省庁の施策をより効果的に実施していくために,労働省と中小企業庁の連携協力,都道府県レベルにおける両関係機関の連携協力がより一層望まれる。
 なお,景気の低迷状態が長引き,雇用情勢も悪化する中で,現在,中小企業は大変厳しい状況にあり,金融面や雇用面についての中小企業に対する各種支援施策の一層の充実,活用が望まれる。
 また,雇用創出を図るため,ベンチャー企業等新分野展開を目指す中小企業が行う人材の確保・育成,魅力ある職場づくりの活動等に対する一層の支援や,規制緩和,新規参入の促進策の一層の推進などが望まれる。