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[資料番号] 00078
[題  名] 新たな裁量労働制の在り方(労働省研究会報告・企業労使ヒヤリング概要)
[区  分] 労働基準

[内  容]

(参考資料)

第1 企業・労使ヒアリング概要

 当研究会では、専門業務型裁量労働制の運用の実態や企画業務型裁量労働制に対する労使の意見を把握し、指針の策定に当たっての参考とするため、専門業務型裁量労働制導入企業2社(A、B社)、企画業務型裁量労働制導入予定企業2社(C、D社)、労使団体(日本労働組合総連合会、日本経営者団体連盟)からのヒアリングを実施した。その際、労働組合があるA、B社については、企業側のみならず労働組合関係者からも意見を聞き、C社からは同社の労働組合が実施したアンケート調査結果の提供を受けた。その概要は、以下のとおりである。

mokuji

1 A社(専門業務型裁量労働制導入企業)
2 B社(専門業務型裁量労働制導入企業)

3 C社(企画業務型裁量労働制導入予定企業)
4 D社(企画業務型裁量労働制導入予定企業)
5 日本労働組合総連合会
6 日本経営者団体連盟



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1 A社(専門業務型裁量労働制導入企業)


(事業内容)


 印刷インキ、顔料、プラスチック着色剤、接着剤、ワックス、金属缶用塗料、印刷関連機械、その他の製造、販売

(従業員数)

 2,749名(平成10年3月末現在)

(1)導入の目的

 従来の研究開発から脱皮した自由で独創的な研究開発を支援する仕組みとし、賃金決定について時間の長さによるのではなく、成果主義的視点を導入することにより、創造的業務に相応しい就労環境を整備するため。

(2)導入の時期

 昭和62年4月 A研究所に導入  平成 9年4月 残りの6研究所に導入

(3)制度の概要

イ 適用労働者

 日常の主たる業務として研究開発を行っている4等級(大卒4年目(26歳程度)相当)以上の基幹職能の者であって、研究テーマを独力で設定し、遂行できることが要件となる(年間研究報告、研究計画書で判断)。研究者の指示によって業務遂行する研究補助員、分析・試作・事務の業務を行う者、幹部職能以上の者には適用しない。7つの研究所の人員132名のうち、76名が対象となっている。
 新卒者は4等級昇格後、中途採用者は3か月の研修期間後、研究所長が認定し、人事部の承認を得る。労働組合とは、年度始めに対象者氏名を協定して、その後対象者となった者については新たに追加を行うという形で個人名を確定する。必ずしも対象者全員を認定しているわけではなく、同一年次であっても能力面等の理由で適用されない者もいる。
 また、例えば、研究所での製品の開発が終了し、工場での製造段階に入り、技術者と共に従事する場合は、適用者を一時的に工場での通常勤務パターンに合わせ、通常の時間管理に切り替える措置も行っている。次のテーマが決まり研究所に戻る場合は裁量労働制を再適用している。

ロ 労働時間管理

 みなし労働時間は7時間30分(所定労働時間)。A研究所においてはカード管理システムを導入しており、事業場に滞在した時間の把握が可能。他の研究所においても、カード管理システムがないものの、守衛が常駐する出入口を通ることでこの滞在時間は把握することが可能となっている。
 研究所内での実働時間は、休日・深夜労働を除き把握していない。

ハ 業務指示

 3か月程度につき1回、進捗状況のチェックを行う。

ニ 評価システム

 評価システムは他の部門と特には変えていない。「能力開発対話カード」 で目標設定をして、途中で上司との対話あるいはフィードバックを行いながら人事考課制度と一体として運用している。実績、取組姿勢(意欲態度)、能力の3点で評価を行って処遇(昇給、昇格、賞与)に反映させている。

ホ 賃金制度

 年齢給、職能給、手当(家族手当、住宅手当)の構成。裁量労働制適用者には研究手当として毎月5万円(従来の時間外手当の20時間相当)を支給している。
 昇給に関しては、職能給の習熟昇給で、段階表で成績によって5号、4号又は3号昇給する(標準は4号昇給)。賃金の職能給の号差は、4等級(大卒4年目(26歳程度)相当)から6等級まででも非常に小さな額であり(4等級565円〜6等級855円)、あまり毎月の賃金では差がつかない。
 賞与については、基本給比例部分が7割で、成績分が3割としており、成績分については、7段階の等級別成績配分係数を設けている。年間の賞与格差は4等級で、約10万円、6等級でも約16万円と比較的小さく、賃金の成果の側面については、今後、検討の余地があるとしている。

ヘ 健康に関する措置

 勤務が連続24時間を超える場合は、健康管理上、12〜24時間の休息 (無給)を取ることを協定している(徹夜した場合は、勤務した時間と休息した時間を本人に確認する。)が、実績はない。
 一般的な社内の健康管理体制(健康診断、社内診療所)、安全衛生委員会等で対応している。
 上司の部下管理が重要であるとの認識から、上司が健康状態の確認等を行っている。

ト 苦情処理

 裁量労働制適用者に対する特別の苦情処理システムは設けていない。労働組合との間の苦情処理に関する協約に基づき労働組合に相談した場合は、その内容が人事部まで上がってくる。社内相談員(カウンセラー)制度、年1回職場の活性度を測るための自己申告制度を設けており、自由記入欄に書かれた意見については人事部でフォローする。


(4)労働組合の裁量労働制についての考え方

 労働時間について、会社にいる時間は実際やや増加しているが、時間的な使い方の自由度が上がってきており、精神的余裕から、意識としては負担にはなっていないという意見がある。
 フレックスタイム制から裁量労働制への移行で、時間活用の方法に変化がないことからすれば、単に裁量労働制が時間管理の問題だけではなく、仕事の進め方に大きな変化をもたらすというところの認識が、十分行き渡っていないという印象を労働組合として持っている。
 また、全社的に目標管理制度を導入しているが、裁量労働制の適用者とそれ以外の普通の時間管理で働いている労働者と同じであるところは今後の課題である。
 新たな裁量労働制の導入拡大に対しては、制度の趣旨に沿った認定基準を労使で考えていく必要があるとの考えである。
 
 






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2 B社(専門業務型裁量労働制導入企業)



(事業内容)

 電子部品・材料・機器の開発、生産、販売

(従業員数)

 4,489名(平成10年3月末現在)


(1)導入の目的


 研究開発など創造的な業務に従事する労働者に対して、ふさわしい環境を提供するため。量から質へ、仕事の評価の観点を転換するため。これらにより、研究開発部門組織活性化のきっかけとするため。

(2)導入の時期

 平成2年11月

(3)制度の概要

イ 適用労働者

・ 導入当時〜平成10年3月
 非管理職で主任、係長、上級研究員といった役職者のうち、部門長の推薦に基づき人事部長が適用を認めた者で、本人の同意を得られた者に適用していた(50〜60名に適用)。

・ 平成10年4月〜
 新設の「高度専門職掌」(従来、管理系列職掌一本だったものを、高度で専門的な能力を持った社員の活性化を図るという目的で管理系列職掌職と分離して設けたもので、人事の複線化の一環である。)に格付けされる者全員。
 ただし、管理職相当は除く。同職掌への格付けに当たっては、裁量労働制の適用についてのみ個別同意を得るのではなく、その他の労働条件を含め、同職掌に格付けされることについての本人意志の確認をしている。適用者の範囲の見直しについては、成果及び本人の業務遂行の状況等を判断し、年1回実施している。
 平成10年12月1日現在で適用者は22名(研究開発従事者の2%弱)。

ロ 労働時間管理

 みなし労働時間は9時間。労働時間の把握については、深夜業、休日出勤以外は行っていない。
 また、1か月に3日を限度として在宅勤務を認めている(前日までに所属長に届け出ることが必要)。在宅勤務内容の報告義務は課していない。

ハ 業務指示

 業務執行は、労働者に全面的に委ねているが、研究テーマは会社及び部門の方針に基づき、部門長との協議の上、決定される。
 また、場合により、業務遂行の手段等についてのアドバイスは上司が行っている。

ニ 評価システム

 評価システムについては、基本的には一般従業員の評価システムと同じである。ただし、評価要素について、専門知識、課題形成力といった専門性、自律性を重視する要素を取り入れていること、また、目標管理制度に基づく達成度の反映を大きくすることで、より成果主義の色彩を強めている。
 半年ごとのMBO(目標管理制度)を採用している。

ホ 賃金制度

 月例給与においては、基本給×18%の裁量労働手当を支給。賞与については同レベルの一般スタッフ社員に比べて高めの設定としており、対象期間の本人の業績により支給額に大きく差がつく体系となっている。

ヘ 健康に関する措置

 年1回の全従業員に対する定期健康診断に加え、定期健康診断の半年後に簡易健康診断を実施している。

ト 苦情処理

 現在まで適用者からの苦情の実績はない。


(4)労働組合の裁量労働制についての考え方

 評価のされ方や評価の結果の賃金への反映のされ方、また、裁量労働制が適用されていても定型的な業務を処理しなければならない場合があることについて、改善してほしいという意見がある。
 
 




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3 C社(企画業務型裁量労働制導入予定企業)



(事業内容)

 通信機器、コンピュータその他電子機器及び電子デバイスの製造及び販売並び    にこれらに関連するサービスの提供

(従業員数)

 40,084名(平成10年3月末現在)


(1)「Vワーク」導入の目的

 増大するホワイトカラー比率、グローバル化の中で、欧米企業、アジア企業との開発競争上、ホワイトカラーの働き方は非常に重要な役割をもち、生産性の向上が必要である。
 一方、従業員の側からも処遇に関する疑問が出てきており、社内で隔年実施しているオピニオンサーベイ(社員の意識調査)においても、「個人の評価制度を改善して欲しい」「評価をオープンにしてほしい」「賃金、昇進等において処遇差をつけて欲しい」等の意見が出ている。そこで、賃金の尺度を時間から成果へとシフトし、これに応じて働き方・働かせ方を変えることを目的として、新たに「バイタル(V)ワーク(定額残業制)」を導入した。

(2)「Vワーク」導入の時期

 平成 9年4月 スタッフ・営業部門の主任約1,400名に導入(適用率:90%強)
 平成10年4月 全社の主任約7,000名に本格導入 (適用率:75.6%)

(3)「Vワーク」制度の概要

イ 適用労働者

 主任クラス(おおむね入社8年目くらい)、約7,000名(従業員の24%くらい)が対象。適用者は上司により確定する。適用に関して、適用者本人の同意を取っている。労働組合に対しては、リストを通知している。
 除外制度については、基本適用除外として、休職の者、制度にそぐわない者、個別適用除外として制度の趣旨に合わない業務等に従事している者(成果と労働時間の関連が高い業務等に従事する者)がある。時間外の超過申請があまりに続くような実態になると、Vワークから外れてもらっている。

ロ 労働時間管理

 従来、月額給与+時間外給与という主任の賃金について、時間外労働については毎月、定額の「Vワーク手当」を支給し、自主的な時間配分の下、手当の範囲内で仕事を完遂させる(定額残業制度)。全員一律定額(おおむね20時間相当)。
 ただし、現行の勤務体系、具体的には労働時間やフレックスタイム制等の制度すべては、そのまま維持される。労働時間が時間外に及ぶ(手当分を超過する)場合には、進捗状況をよく上司に相談し、超過申請を行い賃金の清算が行われる。休日労働については別清算をしている。

ハ 賞与、目標管理制度、評価システム

 賞与で成果応分の報奨を明示的に実現したいということで、賞与制度、目標管理制度をこれに合わせて変更した。
 賞与については、従来も、基本賞与と業績部分があり、査定により決まっていた。改定後は、目標管理をベースに成果フォローを行い、業績部分の実際の金額を明示するようにした。目標管理については、上司と部下の2WAYマネジメント(上司・部下により、目標確認および評価、評価の本人への伝達を行う目標管理制度)教育の推進を積極的に進め、目標設定、業績評価のフィードバックを行っている。

ニ 健康に関する措置

 診療所(健康管理センター)の利用促進を図る。深夜業や休日労働をした場合にはこれを把握して、上司にフィードバックし、チェックをさせている。



(4)労働組合の「Vワーク」制度についての考え方

  ・ Vワークで働くことで意識や働き方がどのように変化したか

   「より成果を重視するようになった」 20%

   「以前より働いている時間を意識しなくなった」 19%

   「仕事にメリハリをつけ、切りがよいときは早く帰宅するようになった」  15%

  ・ 今後、仕事の進め方、働き方を今までとどう変えていこうと考えているか

   「今までも効率や成果を意識していたので、これからも変わらない」 41%

   「これを契機に、より効率や成果を意識して仕事に取り組もうと考えている」  24%

                    (労働組合アンケート調査結果による)
 
 






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4 D社(企画業務型裁量労働制導入予定企業)




(事業内容)

 医家向け総合医療品の輸入・製造販売

(従業員数)

 928名(平成10年12月20日現在)
 専門業務型裁量労働制は導入してはいないが、定額残業制をとっている。
 労働組合はない。


(1)「定額残業制」導入の目的

 評価は時間ではなく結果により行われるという考えの浸透のため。自主性を    発揮させ、自主的創意工夫による効率化の推進。

(2)「定額残業制」導入の時期

 平成5年4月

(3)「定額残業制」の概要

イ 適用労働者

 一つの事業部の非管理職全員(全員が企画的業務を行っている。単純業務     は派遣労働者が行っている。)。

ロ 労働時間管理

 出勤日管理や出退勤管理をしている。残業時間は1か月20時間として取     り扱っている。

ハ 評価システム

 目標管理制度(Challenge & Reviewプログラム)を導入して、その評価を直接賃金(昇給)に結びつけている。
 Challenge & Reviewプログラムは、組織優先課題及び目標の徹底、社員の自律的なパフォーマンス及び開発計画の自己管理、公正な評価等をねらいとして設けられた制度である。
 目標の設定に当たっては、本人が具体的業務目標「パフォーマンスプラン」を設定し、上司との面談により確定する。別に自己開発計画を作成するが、評価には影響させない。
 評価については、四半期ごと、6か月後、1年後、上司と面談し(「レビュー・フィードバックミーティング」)、フィードバックを行っている。目標に係る環境等が変化した場合は、目標そのものの変更も話し合いの上、可能となっている。
 また、評価時期ごとに一次評価者による「評価力調整会議」を実施している。一次評価者は、自分の部下だけの評価を行うため、評価結果を互いに提示し合い、客観的に調整することで、評価力のばらつきを防止し、評価する視点を共有することで、一次評価者の評価力の向上を図っている。このことは、評価結果の公平性、社員からの納得性を深めることに直接結びついている。

ニ 賃金制度

 全社員年俸制を採用している(年俸=職務期待給+業績給)。
 業績評価が業績給に反映される。
 制度適用者にはおおむね1か月残業20時間に相当するものとして手当を     支給している。
   シニアスタッフ 月額50,000円
   スタッフ    月額20,000円

ホ 健康に関する措置

 (全従業員に対して)週1日、健康相談日を設けている。毎週水曜日午後1時から3時まで保健室へ産業医が来社する。社員は自由に相談に行くことができる。35歳以上の社員は、全員年1回の人間ドック受診義務があり、全カルテを産業医がチェックし、異常者には呼び出して注意、指導を行っている。

ヘ 苦情処理

 導入事業部内で苦情処理制度を導入している。事業部内で人事担当者へ直     接苦情を申し出るシステムとなっている。現時点では、苦情の実例はない。

ト 効果及び課題

 ・ 所定労働時間内に密度の濃い仕事をする習慣がついた。
 ・ できる社員に仕事が集中するという現象が避けられないので、仕事の割り     振りについての管理職教育が課題である。


(4)企画業務型裁量労働制について

イ 導入予定事業場

  本社

ロ 適用予定労働者の範囲

  定型的な業務で本人の意思、創意工夫によって労働時間を変えることが不可能な職種以外は全て。

ハ 指針の策定に当たっての要望事項

  無組合企業で、新たに労使委員会のような労使による労働条件の話し合いの場を設けることは困難ではないかと考える。
 
 





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5 日本労働組合総連合会




(1)企画業務型裁量労働制に関する基本的スタンス

 イ 対象労働者の保護を図ることが必要

  ・ 働き過ぎの防止
  ・ 実際の労働時間を反映したみなし時間の設定
  ・ 公正、公平、透明性、納得性を確保した評価制度

 ロ ホワイトカラー一般に拡大しないよう対象業務、対象労働者の厳格な適用

  ・ 実際に業務遂行の手段と時間配分の決定権限があるか否かが判断基準となるべき。


(2)導入が可能と考える労働者の範囲、対象事業場、対象業務等

 イ 業務のみで判断するのではなく、実際に業務の遂行手段と時間配分の決定権限を有している労働者とすべき。

 ロ 専ら、高度で、専門的で、創造的な能力を必要とする業務に従事していて、対象業務において裁量権限を有している労働者。「専ら」については、1日の労働時間のうち、相当程度の時間(例えば4分の3)以上その業務に従事していることを明確にする。

 ハ 入社したばかりの労働者や入社後2〜3年の労働者の労働者に裁量権は通常考えられず、一定の勤続・経験年数も考慮すべきである。

 ニ 業務の遂行手段と時間配分の裁量権をもつには、通常の労働者と地位や資格等に違いを有することが考えられ、賃金上の優位性ももっていることが必要である。

 ホ 「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」は業務部門を指すのではなく、それらが一体的、総合的なものでなければならない。

 ヘ 「事業運営上重要な決定を行う事業場」について、本社機能を有している等のイメージではなく、常任役員がいて事業運営に関する戦略的な事項を決定しているなどの厳格な基準を示すべき。

 ト 使用者に許される「包括的指示」の内容と、使用者が「指示してはならない」内容の客観的に判断されるものを具体的例示で明らかにすべきである。

 チ 長時間労働の実態があるところで、裁量労働制を認めると、労働時間規制の存在意義がなくなるため、対象とする業務の労働時間の実態も考慮に入れることが必要。


(3)あるべきみなし労働時間の考え方

  みなされる時間は、当該業務の遂行に必要とされる時間ないし、平均的時間とすべき。

(4)必要と考える導入手続

 イ 労使委員会について

  ・ 賃金労働条件等の調査審議する事項を裁量労働に限定し、労働組合の権限を代替することのないようにすべきである。
  ・ 労使委員会の協議を実質的なものにする観点から、調査審議に資する資料等の提供、情報開示、説明義務を使用者に義務づける必要がある。
  ・ 労働者代表に当該対象労働者を含めるようにする。
  ・ 労使委員会は労働基準法上の規定で設けられたものであり、通常の労働組合活動とは性格を異にするものである。したがって、労使委員会への出席を     はじめ労使委員会のための活動(労使委員会に臨む労働側の協議、労働者からの意見聴取、労使委員会の経過報告や周知等)について賃金を保障するこ     とが必要。
  ・ 労働者委員を指名する過半数労働者代表の選出について、立候補、投票等に必要な時間等について、便宜供与ではなく、使用者の保障措置が必要。
  ・ 労働者代表委員の信任投票
   労働組合の役員選挙の際に、役員が労働者代表委員の併任をすることについての選挙も同時にできることとすべき。
  ・ 労働組合の役員の任期は2年が多いことから、任期は2年以内とすること。
  ・ 労使委員会の全会一致とは構成員全員か出席者全員か整理が必要。
  ・ 労使委員会の定数の考え方を明確にする。
  ・ 労使委員会の座長(仮称)の決め方を明確にする(例えば、ある一定期間ごとに労使が代表する。)。
  ・ 議事録確認を労使双方が行う。
  ・ 労働者代表が反対したことに対する使用者による制裁、労働者代表個々への工作の禁止。また、それらが判明した場合は労使委員会を認めない。
  ・ 決議する内容を決めるに当たっての対象労働者の意志を表明する機会を確保する。決議の見直しは労働者の一致が必要か、それとも一人でも要求ができるか明らかにする。

 ロ 個別同意事項について

  ・ 対象労働者の同意は、包括的同意ではなく、個別同意でなければならない。また、適用途中での離脱も同意に含むこととすべきである。
  ・ 同意に当たり、対象労働者への評価制度、処遇等の説明、情報開示が必要。
  ・ 同意したことの証明とその保存。
  ・ 不同意による不利益取扱いの禁止。
    (「不利益取扱い」とは、解雇、配置転換、減給、降格等とし、労使委員会での発言内容、苦情を持ち込んだことによる「不利益取扱い」もこれに準ずる。)


 ハ 労働時間管理について

  38条の時間計算に根拠をおいているということは、実労働時間の把握と肉体的・精神的負荷に視点をおいた結果であると考えるならば、時間管理を適切に行うようにすべきである。タイムレコーダーによる日々の労働時間、拘束時間の把握、また、在宅労働等を考慮して、労働者個人の日誌(健康状態も含む)等による把握等、労働時間の管理方法について明確にする。


(5)必要と考える評価システム、賃金制度

 イ 公平、公正な基準、透明性、納得性を確保したシステムの確立
 
  評価システム、賃金制度およびそのフォローアップシステムについては、会社が一方的に決めるのではなく、労使が協議して決めることを明確にする。

 ロ 高度な専門的、創造的な業務にふさわしい賃金


(6)必要と考える健康・福祉に関する措置

 イ 休日、休暇等によるリフレッシュ策の充実

  ・ 休日労働の制限
  ・ 所定休日、休暇の完全確保、特別休日付与
  ・ 年次有給休暇について連続休暇による完全取得の義務化

 ロ 法定以上の健康診断の実施、深夜業との関係から年2回以上の定期健康診断の実施を義務化する。

 ハ カウンセリングの義務化

 ニ 事業場内安全衛生委員会に健康確保、就業環境の整備の課題を付議する。


(7)必要と考える苦情処理措置

 イ 苦情事項は、業務に関する事項、目標設定、評価、処遇、労働時間、労働条件等すべてを対象にする。

 ロ 苦情処理委員会について
  ・ 労使による常設機関とする。第三者が入る工夫もよいのではないか。
  ・ 申出の窓口、担当者、処理の手順、手続が明らかにされ、労働者に周知されなければならない。

 ハ 苦情処理は、必要に応じて労使委員会の付託事項とし、これに基づいて使用者は迅速に改善を図ることにしなければならない。

 ニ 苦情事項は関係者以外秘密にされなければならない。

 ホ 苦情を持ち込んだことによる不利益取扱いを禁止しなければならない。
 
 






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6 日本経営者団体連盟




(1)企画業務型裁量労働制に関する基本的スタンス

 イ 裁量労働制の拡充が必要

 ロ 裁量労働制の普及を図ることが大切

  ・ ホワイトカラーの業務については、業種・企業により職務形態は多様であり、企業の実態に合わせた制度の構築を可能にすることが制度普及にとって不可欠である。
  ・ 具体的な個々の対象業務・対象労働者の範囲、みなし労働時間やその他労働条件の設定等については、個々の労使委員会での協議に委ねるべきである。
  ・ 細部にわたり使用者を義務づける指針は、企画業務型裁量労働制普及の妨げとなる。指針は新たに使用者に義務づけを行うものではなく、制度の大枠を示す例示にとどめるべきである。指針による新たな義務づけや行政の監督強化は不要であり、制度のフレキシビリティを損なわないような配慮が必要である。

 ハ あるべき裁量労働制の姿はアメリカの「ホワイトカラーイグゼンプション制」

  ・ 今回の企画業務型裁量労働制も「イグゼンプション制」へ向けての第一歩であると考える。


(2)導入が可能と考える労働者の範囲、対象事業場、対象業務等

  対象業務、対象労働者の範囲については、指針において限定すべきではなく、労使の自主的な取り決めを尊重すべきである。
  指針が例示であるならば、次のような例が考えられる。

 イ 対象業務
   (例)人事・財務・経営・総務・法務・税務・経理・特許・広報・株式・技術開発・不動産業務等、幅広い例示が考えられる。

 ロ 対象労働者
   (例)勤続3年ないし5年以上の者、総合職で一定資格以上の者、主任・係長以上の者。

(3)あるべきみなし労働時間の考え方

  各社の労使委員会が実態に応じて取り決めたみなし労働時間を尊重すべきであり、具体的な方法を指針で定めるべきではない。

(4)必要と考える導入手続

  すでに労使委員会の設置やそれに伴う行政官庁への届出等が義務づけられており、これ以上の複雑な手続は制度導入を困難ならしめるため不要と考える。
  使用者から制度導入の提案があった際には労働者側も検討を行うよう、指針で規定すべきである。

(5)必要と考える評価システム、賃金制度

  制度本来の趣旨からは、目標管理制度を基盤にした実績主義の年俸制の導入が望ましい。公平、公正で透明性、納得性のある評価システムが必要である。
  しかし、あるべき賃金制度や評価システムを指針で定めるべきではない。

(6)必要と考える健康・福祉に関する措置

  労働者は自己の裁量により労働時間管理をすべきものであり、健康についても自己管理が原則である。制度導入に当たって、健康診断の回数増、年休増等の義務を指針において企業に課すべきではない。労使委員会の自主的な取り決めを尊重すべきである。

(7)必要と考える苦情処理

  特別な苦情処理制度は必要ない。特別な苦情処理の必要が出てきた場合には、その処理方法、手続については企業の裁量に委ねられるべきである。
 
 



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