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[資料番号] 00009
[題  名] 「化学物質等の危険有害性等の表示制度」の解説・指針
[区  分] 衛生管理

[内  容]
化学物質等の危険有害性等の表示制度の解説と指針


【資料内容】
(1)化学物質等の危険有害性等の表示制度の解説
(2)「化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針」(平成4年7月1日労働省告示第60号)


解説

(1)本制度においては,国,化学物質等の譲渡提供者及び取扱い事業者がそれぞれの役割を果たすことが求められています。

イ.国の役割

化学物質等の危険有害性やそれに応じた取扱い方法等を的確に記載するための化学物質等安全データシート(MSDS),容器等への表示(ラベルの貼付)等に関する基準を定める。

ロ.化学物質等の譲渡提供者の役割

国が定めた基準に基づき,表示を行い,当該化学物質等の取扱い事業者に提供する。
ここでいう表示とは,危険有害化学物質等については,MSDSの交付及び容器等への危険有害性の種類等の表示であり,それ以外の化学物質等については容器等に名称を表示する。

ハ.化学物質等の取扱い事業者の役割

MSDSを活用し,安全衛生教育等の事業場における総合的な安全衛生管理に役立てると共に,「容器等の表示の内容を関係労働者に周知し,当該化学物質による労働災害の発生防止に役立てる。

(2)化学物質等安全データシート(MSDS)

危険有害性を有する化字物質等を譲渡提供する事業者が相手先の事業者に交付するMSDSは,その事業場における総合的な安全衛生管理に役立てるもので,取り扱う化学物質に関するできる限り幅広いデータが必要といえます。具体的には次の事項が記載されていることが必要です。

 イ.名称              へ.貯蔵又は取扱い上の注意
 ロ.成分及びその含有量       ト.事故時等における応急措置
 ハ.物理化学的性質         チ.MSDSを作成した者の氏名(法人名)及び住所
 ニ.危険有害性の種類        リ.そのほか労働省労働基準局長が定める事項
 ホ.危険有害性の内容及び程度

このMSDSの対象となる化学物質の範囲については,当面,表1(省略)の「指針別表の危険有害性に該当する化学物質等」としていますが,これ以外の化学物質についても,参考通達中の文献の調査や「化学物質等の危険有害性試験基準」に基づく試験の実施により,情報を積極的に入手することがより望ましいものです。
なお,MSDSの様式は特に決められておらず任意ですが,その記載例を別添1(省略)に示しておりますので、作成の際は参考にしてください。

(3)容器等の表示

 危険有害性を有する化学物質等を譲渡提供する事業者が,容器に入れ,又は包装して譲渡提供する場合は、次の事項を表示することが必要です。これは,化学物質が原因となる労働災害を防止するためには,化学物質を取り扱う労働者が関係情報を熟知した上で適切に取り扱うことが不可欠であるからです。

 イ.名称              ホ.貯蔵又は取扱い上の注意
 ロ.成分及びその含有量       へ.表示した者の氏名(法人名)及び住所
 ハ.危険有害性の種類        ト.そのほか労働省労働基準局長が定める事項
 ニ.人体に及ぼす作用

危険有害化字物質等の容器等への表示については,当面,労働安全衛生法ほかの関係法令に基づく表示が行われていれば足りるものとされます。
なお,危険有害化学物質等以外の化字物質等については,名称のみを表示すればよいことになっています。













「化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針」
(平成4年7月1日労働省告示第60号)

 (目的)
第1条 この指針は、化学物質等(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第2条第3号の2に規定する化学物質及び化学物質の混合物をいう。以下同じ。)の危険又は有害な性質等についての表示に関し必要な事項を定めることにより、化学物質等の危険又は有害な性質等について事業者、労働者その他の関係者の理解を深めるとともに、化学物質等に関する適切な取扱いを促進し、もって化学物質等による労働災害の防止に資することを目的とする。

 (譲渡提供者による化学物質等安全データーシートの交付等)
第2条 化学物質等で危険又は有害なものとして別表に掲げる性質(以下「危険有害性」という。)を有するもの(以下「危険有害化学物質等」という。)を譲渡し、又は提供する者は、譲渡し、又は提供する相手方に、当該危険有害化学物質等に係る次の事項を記載した文書(以下「化学物質等安全データシート」という。)を交付するものとする。ただし、危険有害化学物質等を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する場合であって、当該容器又は包装が主として一般消費者の生活の用に供するためのものであるときについては、この限りでない。
 1 名称
 2 成分及びその含有量
 3 物理化学的性質
 4 危険有害性の種類
 5 危険有害性の内容及び程度
 6 貯蔵又は取扱い上の注意
 7 事故時等における応急措置
 8 当該化学物質等安全データシートを作成した者の氏名(法人にあっては、その名称)及び住所
 9 前各号に掲げるもののほか、労働省労働基準局長が定める事項

2 危険有害化学物質等を譲渡し、又は提供した者は、譲渡し、又は提供した後において、当該危険有害化学物質等に係る前項各号に掲げる事項に変更が生じた場合には、当該変更について、譲渡し、又は提供した相手方に、速やかに、通知するものとする。

 (譲渡提供者による表示)
第3条 危険有害化学物質等を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、当該容器又は包装(容器に人れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供する場合にあっては、当該容器。次条において同じ。)に、当該危険有害化学物質等に係る次の事項を表示するものとする。
 1 名称
 2 成分及びその含有量
 3 危険有害性の種類
 4 人体に及ぼす作用
 5 貯蔵又は取扱い上の注意
 6 当該表示をした者の氏名(法人にあっては、その名称)及び住所
 7 前各号に掲げるもののほか、労働省労働基準局長が定める事項

2 前条第2項の規定は、前項の表示について準用する。

3 前2項の規定にかかわらず、危険有害化学物質等に関し第1項各号に掲げる事項の表示について法令に定めがある場合には、当該事項の表示については、その定めによることができる。

第4条 危険有害化学物質等以外の化学物質等を容器に人れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、当該容器又は包装に当該化学物質等の名称を表示するものとする。

第5条 前2条の規定は、主として一般消費者の生活の用に供するための容器又は包装については、適用しない。

 (事業者による化学物質等安全データシートの作成等)
第6条 事業者は、危険有害化学物質等を労働者に取り扱わせるときは、当該危険有害化字物質等に係る化学物質等安全データシートを作成するものとする。ただし、当該危険有害化学物質等について、当該事業者が譲渡され、又は提供を受けた場合は、この限りでない。

2 事業者は、容器に入れ、又は包装した危険有害化学物質等を労働者に取り扱わせるときは、当該容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装した危険有害物質等を労働者に取り扱わせる場合にあっては、当該容器。第4項において同じ。)に第3条第1項各号に掲げる事項を表示するものとする。

3 事業者は、危険有害化学物質等を前項に規定する方法以外の方法により労働者に取り扱わせるときは、当該危険有害化学物質等を専ら貯蔵し、又は取り扱う場所(設備を含む。)に、第3条第1項各号に掲げる事項を掲示するものとする。

4 事業者は、危険有害化学物質等以外の化学物質等であって容器に人れ、又は包装したものを労働者に取り扱わせるときは、当該容器又は包装に当該化学物質等の名称を表示するものとする。

5 事業者は、危険有害化学物質等以外の化学物質等を前項に規定する方法以外の方法により労働者に取り扱わせるときは、当該化学物質等を専ら貯蔵し、又は取り扱う場所(設備を含む。)に、当該化学物質等の名称を掲示するものとする。

6 事業者は、第2条第2項(第3条第2項において準用する場合を含む。)の規定により通知を受けたとき、第1項の規定により化学物質等安全データシートを作成した場合であって当該化学物質等安全データシートに係る第2条第1項各号に掲げる事項に変更が生じたとき、又は第2項の規定により表示をし、若しくは第3項の規定により掲示をした場合であって当該表示若しくは掲示に係る第3条第1項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、速やかに、当該通知、当該第2条第1項各号に掲げる事項の変更又は当該第3条第1項各号に掲げる事項の変更に係る事項について、その書換えを行うものとする。

 (化学物質等安全データシートの掲示等)
第7条 事業者は、危険有害化学物質等を労働者に取り扱わせるときは、第2条第1項の規定により交付を受け、又は前条第1項の規定により作成した化学物質等安全データシート(次項において単に「化学物質等安全データシート」という。)を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける等の方法により労働者の利用に供するものとする。

2 事業者は、危険有害化学物質等を取り扱う労働者について当該危険有害化学物質等による労働災害を防止するための教育その他の措置を講ずるに当たっては、化学物質等安全データシートを活用するものとする。

3 法第17条第1項の安全委員会、法第18条第1項の衛生委員会又は法第19条第1項の安全衛生委員会(以下この項において「委員会」という。)を設置する事業者は、当該事業場において取り扱う化学物質等の危険有害性その他の性質等について、事業者、労働者その他の関係者の理解を深めるとともに、化学物質等に関する適切な取扱いを行わせるための方策に関し、委員会に調査審議させ、及び事業者に対し意見を述べさせるものとする。

 (細目)
第8条 この指針に定める事項に関し必要な細目は、労働省労働基準局長が定める。


別表(第2条関係)
1 爆発性
 火気その他点火源となるおそれがあるものに接近させ、加熱し、摩擦し、又は衝撃を与えることにより爆発する危険を有する固体又は液体の性質をいう。

2 高圧ガス
 圧縮され、又は液化されていることによる危険を有する気体の性質をいう。

3 引火性
 火気その他点火源となるおそれのあるものに接近させ、若しくは注ぎ、蒸発させ、又は加熱することにより引火する危険を有する液体の性質をいう。

4 可燃性
 火気その他点火源となるおそれのあるものに接近させ、酸化を促す物に接触させ、加熱し、又は衝撃を与えることにより発火する危険を有する固体又は気体の性質をいう。

5 自然発火性
 空気に接触させることにより発火する危険を有する性質をいう。

6 禁水性
 水に接触させることにより発火し、又は可燃性のガスを発生する危険を有する性質をいう。

7 酸化性
 当該物質の分解が促される物に接触させ、加熱し、摩擦し、又は衝撃を与えることにより分解が促される危険を有する物質(他の物質を酸化する性質を有するものに限る。)の性質をいう。

8 急性毒性
 人に急性中毒を起こすおそれのある性質をいう。

9 腐食・刺激性
 次のいずれかの性質をいう。
 イ 人の皮膚に不可逆的な損傷を起こすおそれのある性質
 ロ 人の皮膚に紅斑、痂皮又は水腫を起こすおそれのある性質
 ハ 人の目に角膜混濁、虹彩の異常、結膜の発赤又は結膜水腫を起こすおそれのある性質

10 特定有害性
 次のいずれかの性質をいう。
 イ 人にがんを発生させるおそれのある性質
 ロ 微生物に、又は哺乳類の培養細胞に強い変異(その変異が統計的に有意なものに限る。)を発生させる性質
 ハ 人の生殖能力又は胎児の発生若しくは成長に影響を及ぼすおそれのある性質
 ニ ハの胎児の身体又はその機能に異常を生じさせるおそれのある性質
 ホ 人に感作を生じさせるおそれのある性質