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[資料番号] 00092
[題  名] 第9次雇用対策基本計画(平成11年8月)
[区  分] その他

[内  容]

【資料のワンポイント解説】

1.「第9次雇用対策基本計画」(平成11年8月13日閣議決定)
  厳しい雇用環境のもと、従来以上に国が打ち出す「雇用対策」の内容が問われています。
  平成7年12月19日閣議決定の「第8次雇用対策基本計画」は、その計画期間を平成7年度から平成12年度までの6年間としていたことから、
  当初予定より、2カ年程度の前倒し、内容修正として「第9次計画」が出たことになります。
  今回の計画は、計画期間を「1999年から21世紀初頭までの10年間程度とする」としています。

2.第8次と第9次の比較では、まず、計画の課題の設定に次のような相違があります。
  第8次「
経済社会の変革期において雇用の安定を確保するとともに、労働者が可能性を主体的に追求できる社会、安全して働ける社会を実現するための環境整備を図ること」
  第9次「労働市場の構造変化に的確に対応して、
積極的に雇用の創出・安定を図り、人々の意欲と能力が活かされる社会の実現を目指すこと」
  この辺りにも、両計画の力点の置き方端的に現れているといえるようです。

  第9次計画は、上記課題の達成に向けたその重点事項を、次の4点に置いています。

  第1は、経済・産業構造の転換に的確に対応して、雇用の創出・安定を図ること
  第2は、個々人の就業能力(エンプロイアビリティ)を向上させるとともに経済社会の発展を担う人材育成を推進すること
  第3は、人々の意欲と能力が活かされる社会の実現を目指すこと
  第4は、国際的視野に立って雇用対策を展開していくこと


3.この種の文書に目を通すのは、なかなか骨が折れる作業ではありますが、読めば、「なるほど」と思うことも多くあります。
  事実、この「第9次雇用対策基本計画」もかなりページ数があります。章・節単位に目次からリンクを貼ってありますので、御利用下さい。



第9次 雇用対策基本計画
今後の労働市場・働き方の展望と対策の方向


目 次


T 計画の基本的考え方
 1 計画の課題
 2 計画の期間

U 雇用の動向と問題点
 1 最近の特徴
 2 今後の雇用動向と問題点

V 雇用対策の基本的事項
 1 雇用の創出・安定
 2 経済社会の発展を担う人材育成の推進
 3 労働力需給調整機能の強化
 4 高齢者の雇用対策の推進
 5 若年者の雇用対策
 6 個人が主体的に働き方を選択できる社会の実現
 7 安心して働ける社会の実現
 8 特別な配慮を必要とする人達への対応
 9 国際化への対応

(参考)2010年頃の完全失業率の見直し



雇用対策基本計画        


T 計画の基本的考え方

 21世紀初頭の10年間は、我が国において、初めて労働力人口の減少が現実のものとなるとともに、経済のグローバル化、情報化やサービス経済化の一層の進展、規制改革などにより経済・産業構造が大きく転換する時期である。

 このような環境変化の下で、適切な経済運営によって良好な雇用の機会の創出・確保を図るとともに、労働力需給のミスマッチの拡大を抑制するために、職業能力開発の推進、失業なき労働移動の実現、労働力需給調整機能の強化、65歳までの雇用の確保、若年者雇用対策などが大きな課題である。

 また、少子・高齢化の進展、女性労働者の増加、若年層を中心とした勤労者意識の多様化等に対応して、個人が主体的に多様な働き方を選択でき、安心して働ける社会をつくっていくことが重要である。

 現在、我が国の経済・雇用情勢はかつてないほど厳しい状況にある。政府としては、これらの諸課題に取り組むとともに、経済の回復、雇用の改善を早期に実現し、国民の雇用や生活に対する不安の払拭に努めなければならない。このため、民間企業による雇用の創出と迅速な再就職の推進、国、地方公共団体による臨時応急の雇用・就業機会の創出などの緊急の雇用対策を政府を挙げて迅速かつ効果的に実施することとしたところである。

 本計画の役割は、その課題、雇用の動向と問題点、雇用対策の基本的事項を示し、今後10年程度の間の政策目標と政策手段を明らかにすることにある。

 今後、政府は、雇用問題が今まで以上に産業、地域、社会保障、教育など極めて広範な諸問題と密接なかかわりを持つようになることを踏まえ、これら関連諸施策との緊密な連携を取りつつ、本計画に従って、雇用対策の一層の拡充と迅速・着実な推進に努め、目標の達成を目指す。

 本計画の重点は、

 第1は、経済・産業構造の転換に的確に対応して、雇用の創出・安定を図ること
 第2は、個々人の就業能力(エンプロイアビリティ)を向上させるとともに経済社会の発展を担う人材育成を推進すること
 第3は、人々の意欲と能力が活かされる社会の実現を目指すこと
 第4は、国際的視野に立って雇用対策を展開していくこと

 である。


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1 計画の課題

(1)労働力需給構造等の変化

 今後の労働市場は、次のような点から、大きな変化に直面することが見込まれる。

 第1は、労働力の需要面における変化である。

 (経済成長)

 今後の中長期的な経済成長の見通しについては、実質経済成長率はバブル崩壊前のような高い率を期待することはできない。労働力人口の伸びは既に鈍化しつつあり、2005年頃を境に減少に転じるものと見込まれ、成長率に対する労働力供給の寄与は見込めなくなろう。こうした中、経済社会全体での効率性が高まるとともに、個人の能力を最大限に発揮できる経済社会が実現され、生産性向上が全体を牽引する形で新しい経済成長の姿が実現することになろう。

 経済成長は国の経済の活力を維持していくために重要であるが、労働の観点からも、労働者にとっての選択肢が増え、より希望や意欲にそった働き方が可能となるためには、労働力需給の基調としては、供給よりも需要の方がやや上回っている方が望ましく、そのためにも経済成長は重要である。


 (情報化やサービス経済化による経済・産業構造の転換)

 技術革新、中でもコンピュータ、データ通信等の情報通信技術の導入、活用による情報化は、企業、家庭、地域社会、教育、環境など経済・社会のあらゆる場面に大きな影響を及ぼす。最近では、インフラ基盤整備、規制改革等により、様々な産業において、高度な情報通信システムを活用して経営の効率化や新たな事業展開を図る動きがみられ、今後も情報化関連の市場は拡大していく。

 この情報化関連のほかに、医療・福祉、生活文化、流通・物流、環境関連などの分野の発展によって、産業構造は、製造業等からサービス業等にウェイトが移っていくものと見込まれる。

 情報化の進展に伴う労働力需要への影響は、生産体制や業務の効率化により雇用機会を減少させる側面を持ち、雇用の形態でも組織のフラット化などの影響があると考えられる。一方で、既存製品の品質向上や新製品の開発、低価格化による消費の増大を通じて雇用・就業機会を生み出すとともに、特に新技術・産業にかかわる専門的・技術的職業従事者など良好な雇用・就業機会を生み出す側面も持っている。


 (諸外国との経済的結びつきの深まり、外資系企業の増加等)

 経済社会のグローバル化に伴う我が国企業の海外進出や製品輸入の増大等は、今後とも国際的な分業化を促し、我が国の産業構造を大きく変化させることが予想される。また、「外国為替及び外国貿易法」の改正等の規制改革により、我が国に進出するいわゆる外資系企業が増加し、我が国における雇用創出に寄与するとともに、能力主義的な賃金制度の導入など企業の人事・労務管理諸制度に影響を与えるものと考えられる。

 専門的、技術的分野の外国人労働者については、有能な人材の確保、外国人固有の知識や発想、海外取引の円滑化などの観点から企業のニーズが高まっており、今後国際化の下で、需要はより高まるものと見込まれる。



 (経済構造改革等による豊かな国民生活の実現、雇用・就業機会の増大)

 現在の我が国の経済システムは高コスト構造となっており、これが規制改革の推進や商慣行の是正、技術革新の促進等によって改善されれば、内外価格差の解消等による実質所得の向上、消費者に対する多様な商品やサービスが提供されることを通じたより豊かな国民生活の実現とともに、新たな経済分野の拡大、既存産業における国内生産の増加などにより雇用・就業機会の増大も期待される。

 政府は、1997年以降「経済構造の変革と創造のための行動計画」等を閣議決定し、経済構造改革を推進しているところである。同行動計画では、医療・福祉分野など新規・成長15分野で2010年までに1995年に比べて約740万人程度の雇用が増加すると見込んでいる。



 (産業競争力強化策と雇用面への影響等)

 我が国経済を自律的な成長軌道に乗せるため、需要面の対策だけでなく、経済の供給面の体質を強化し、産業の競争力を強化することが重要であり、事業の再構築、技術開発などに取り組む必要がある。その際、労使が十分に話し合い、労働者の理解と協力を得て産業の競争力強化を進めること、また、政府が雇用面への影響を把握し、失業の予防、雇用の安定のため的確な対応に努めることが重要である。

 なお、産業競争力強化の一環として、企業の組織変更を円滑に実施するためには、それに伴う労働関係上の問題への対応について、幅広い観点から検討していく必要がある。



 第2は、労働力の供給面における変化である。


 (少子・高齢化の進展)

 我が国の高齢化は、世界に例をみない速度で急速に進み、21世紀初頭には「団塊の世代」が60歳台前半層に差し掛かることなどから、総人口の約3人に1人が、また、労働力人口の約5人に1人が60歳以上の高齢者となることが見込まれる。

 一方、高齢者雇用の現状をみると、60歳以上定年制が1998年4月より義務化となり、実施企業比率はほぼ100%となっているが、希望者全員について65歳までの継続雇用を実施している企業は約2割にとどまっている。また、高齢者の希望する就業形態は、フルタイム、パートタイム、任意就業など多様になっている。

 他方、出生率の継続的な低下による少子化の進行は、住宅・土地においてゆとりが生じるなどの指摘もある反面、労働力人口全体の減少と年齢構成の変化につながり、経済活力の低下のおそれがあるなど、将来の我が国の経済社会の在り方そのものに大きな影響を与えることが見込まれる。

 今後とも、経済社会の活力を維持、発展させていくためには、高齢者の高い就業意欲が活かされ、その有する能力が十分に発揮されることが必要不可欠となる。

 また、公的年金制度等の改革が議論されているところであり、こうした制度変更による労働力供給の変化も予想される。高齢者の雇用の現状が、依然として厳しく、また、今後60歳以上の労働力人口が大幅に増加することが見込まれる中で、高齢者の雇用機会の確保が一層重要な課題となってくる。



 (女性労働者の増加)

 女性の労働力率は、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「男女雇用機会均等法」という。)が施行された1985年以降、いずれの年齢層でも上昇してきている。特に25〜29歳層においては、大学・短大進学率の上昇、職業意識の変化などを背景に、1985年の54.1%から1998年には69.2%に上昇している。

 また女性は、かつては景気後退期には就業意欲を喪失し、労働力率が低下する動きがみられたが、1970年代後半以降、景気後退時に非労働力化する動きが弱まってきており、女性の就業意欲の高まりがうかがえる。

 女性の希望する就業パターンをみると、従来どおり結婚や出産等により一時労働市場から退出するが再び就職する「再就職型」を希望する者が最も多いものの、子供ができても就業を続ける「継続就業型」を希望する者もかなり増加してきている。

 仕事と育児の両立は時間的、体力的にも負担が大きいことから「再就職型」を選択した結果、男性に比べて正規・フルタイム以外の形態で就業する者の割合がかなり高くなっている。また、再就職後に、それまでの専門的知識・技術やキャリアを十分活かせる機会が少ないなどの問題もある。

 このため、育児等を行いながら継続就業できるよう、職業生活と家庭生活との両立を支援するとともに、育児、介護後の再就職の際にも、フルタイム、パートタイムを問わず良好な就業機会を確保できるような環境整備を図ることが今後の重要な課題である。



 (若年層を中心とした勤労者意識の多様化)

 転職希望率は景気や労働力需給の状況によって大きく左右されるが、1970年代以降これが傾向的に高まっており、特に若年層で割合が高く上昇幅も大きい。

   また、最近の勤労者の意識をみると、若年層を中心として一つの会社に長く勤め続けようとする意識が弱まり、多様な働き方を希望する者が増え、また、専門職志向の強まりがみられる。働く目的としては、所得を得るために働くとする者が最も多いものの、その割合は減少している。一方、職業選択の際に、自己能力発揮の可能性及び仕事への充実感が重要視されている。

   こうした意識の変化により転職が増加するとすれば、構造的・摩擦的要因による失業の増大をもたらす可能性があり、若年者に対する総合的な雇用対策の必要性を高めている。



 (外国人労働者の動向)

 経済社会の国際化等に伴い、我が国で就労する外国人労働者は1990年以降増加傾向にあり、その全体数は就労を目的とした在留資格の外国人、不法残留者に日系人その他を加えて、1998年約67万人(労働省推計)と1990年時の約2.6倍となっている。なお、これ以外に、多くが不法就労していると考えられるが、その数を把握できない不法入国者等も相当数存在すると考えられる。

   外国人労働者のうち専門的、技術的分野で就労可能な在留資格を有する者で外国人登録を行っているものは、1998年約11.9万人で、在留資格「興行」で就労する外国人労働者を除けば、1990年以降増加している。南米諸国の日系人等、すなわち、「定住者」「日本人の配偶者等」及び「永住者の配偶者等」の在留資格の外国人のうち、日本で就労している外国人は、1998年約22.1万人(労働省推計)となっている。また、「技能実習制度」に基づき、研修後、雇用関係の下で技能等の修得を開始した者も年々増加している。他方、その多くが不法に就労していると考えられる不法残留者は、1990年以降急増し、その後、関係省庁による不法残留、不法就労対策もあって、1993年をピークに漸減傾向となったものの、1999年は約27.1万人と依然として高い水準で推移している。

   今後、経済社会の一層の国際化等に伴い、我が国で就労する専門的、技術的分野における外国人労働者の増加が見込まれるとともに、開発途上国への技能等の移転を図るための技能実習に対するニーズの増加も見込まれる。また、アジア諸国の通貨危機の影響が残る中、我が国と近隣諸国間の経済水準の格差を背景として、これらの国々からの労働力送出圧力が強くなる可能性がある。



(2)計画の課題

 (労働市場の構造変化への対応)

 我が国の雇用失業情勢は、依然として厳しい状況にあり、また、今後においては、経済・産業構造の転換、少子・高齢化等の構造的変化により、労働市場は需給両面にわたり大きな変化に直面することから、次のような考え方の下に的確な雇用対策を実施する必要がある。

 第一に、積極的に雇用の創出・安定を図る必要がある。雇用の創出・安定は、国政上の最重要課題であり、雇用の創出・安定なくして経済や社会の安定を図ることは困難である。今後、グローバル化、産業構造の転換等によって失われる雇用の量や範囲が従来以上に拡大することになるものと考えられ、これを上回る良好な雇用の機会を創り出していかなければならない。このため、政府全体で、規制改革、新規・成長産業の振興等を通じた新事業の創出、展開を支援することにより、民間の活力や創造性による一層の雇用機会の創出が図られるようにしていく必要がある。併せて、新しい雇用機会へ失業を経ないで円滑に労働移動ができるための環境整備も重要である。

 また、構造変化が進む過程では、雇用面において短期的にはマイナスの影響が出やすいため、失業者が大量に発生する危険がある場合には雇用対策を迅速に実施し雇用の改善を図るとともに、生産性の向上を図りつつ民需主導で経済成長を維持することが必要であることから、民需主導の回復が明確になるまでの間は機動的な財政、金融政策の実施など適切な経済運営に努める。社会資本の整備は、雇用の創出・確保の観点からも重要であり、今後は、特に環境、情報通信、医療・福祉、バイオテクノロジーなどの分野に重点を置き、整備を進めていくことが必要である。

 なお、最近リストラクチャリングや人員削減を発表する企業が、株価や企業に対する格付け面で評価されるような風潮が生じてきているが、企業が安易な雇用調整を行わず、雇用を創出、確保することは、企業の社会的責務であると同時に、企業にとっても、優秀な人材の集まる魅力ある企業を目指して長期的な観点から人材の確保・育成を図ることは、その生産性を向上させ、安定的な発展に資するものと考えられる。したがって、投資家を中心とした企業評価だけでなく、今後社会全体からの評価の重要性についても、認識を深めていく必要がある。

 第二に、女性や高齢者、障害者なども含めて、すべての人々が意欲と能力に応じて働くことのできる社会の実現を目指していくことが必要である。規制改革や行政改革が進み新しい行政の在り方が問われ、勤労者の意識が多様化していく中で、自己選択・自己責任の下に、個々人が主体的に行動できる社会を目指すとともに、意識や希望の変化に応じた多様な選択肢のある社会をつくっていく必要がある。また、雇用の分野におけるいわゆるセイフティ・ネットについては、単に最低限の生活を確保するというナショナル・ミニマムだけではなく、人々の再挑戦しようという意欲を支える積極的な意味でのセイフティ・ネットを構築することが重要である。

 その際、パートタイム労働、派遣労働、在宅就労、契約労働、テレワーク、SOHO(スモール・オフィス、ホーム・オフィス)、ワーカーズ・コレクティブやNPOにおける就業など多様な働き方が今後増加していくと見込まれることから、雇用であるかどうかにかかわらず、安心して働くことのできる条件の整備を図るとともに、働き方の多様性を認めあうような社会をつくることも必要である。



 (計画の課題)

 したがって、本計画の課題は、「労働市場の構造変化に的確に対応して、積極的に雇用の創出・安定を図り、人々の意欲と能力が活かされる社会の実現を目指すこと」とする。

 特に、本計画期間においては、上記のように労働市場が大きな構造変化に直面する中で労働力需給のミスマッチが拡大し失業が更に増大する可能性があるため、適切な経済運営に努めるとともに、新規雇用機会の創出、職業能力開発や職業能力評価の充実、労働力需給の調整機能の強化を図ること等により、完全失業率については、できる限り低くするよう努める必要がある。



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2 計画の期間

   本計画の対象期間は1999年から21世紀初頭までの10年間程度とする。




 


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U 雇用の動向と問題点

1 最近の特徴


 (最近の経済の動向と雇用失業情勢)

 我が国経済は、1997年度の消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減が予想以上に大きく現れ、その後回復に向かったものの、同年秋以降の金融機関破綻による金融システムへの信頼低下やアジア経済・通貨危機等の影響があり、景気は減速・停滞を続けた。その後、1998年11月の過去最大規模の経済対策等の効果が浸透し、景気はこのところやや改善している。また、1999年第1四半期の経済成長率が1年半ぶりにプラス成長となるなど明るい動きも見られる状況となっている。なお、1997年度の実質GDP成長率は△0.4%、1998年度も△2.0%程度と2年連続でマイナス成長となった。

 雇用失業情勢は、経済の動向を受けて、1998年以降完全失業率が急速に上昇するなど厳しさを増してきた。直近の状況は、1999年6月の有効求人倍率は0.46倍と前月と同水準で過去最低で推移し、完全失業率も4.9%と過去最高を更新するなど、厳しさを増している状況にある。特に、倒産、解雇等の非自発的な理由による離職失業者が、高水準となっている。雇用者数は、17か月連続で大幅に減少しており、労働力需要は依然として弱含みのままである。

 また、失業の理由別にみると、6月の完全失業者329万人のうち、非自発的理由による離職者が118万人、自発的に離職する者が103万人、新たに労働市場に参入した者が79万人となっている。さらに、1999年2月の労働力調査特別調査により、非自発的理由による離職者の内訳をみると、定年などによる者が26万人、倒産や解雇等による者は76万人となっている。

 1998年以降、職業別には管理職や事務職といったホワイトカラーで、また、産業別には製造業だけでなく、建設業、卸売・小売業,飲食店、サービス業といった非製造業においてもこれまでになく雇用過剰感が高まっている。この結果、残業規制、中途採用の削減・停止、出向といった雇用調整を実施する企業の割合が高まっている。

 年齢・性別の雇用失業情勢をみると、男女ともに15〜24歳の若年層は完全失業率が最も高いものの、有効求人倍率は高くなっている。また、出産、育児期に当たる25〜44歳の女性の完全失業率は、男性と比べかなり高くなっている。45歳以上の中高年層は若年層と比べて完全失業率は低いものの、有効求人倍率は低水準であり、一度職を離れると再就職が難しい状況となっている。さらに、男性の60〜64歳層は完全失業率が高い上に有効求人倍率も低くなっているなど特に厳しいものとなっている。

 新規学卒者の就職状況をみると、大学・短大等の就職率は低下しており、1998年度には、92.0%(大学卒)、88.4%(短大卒、女性のみ)と、厳しい状況となっている。

 地域別の雇用失業情勢をみると、南関東、近畿の大都市圏と北海道、九州で完全失業率が高く、有効求人倍率も低い水準となっている。

 雇用失業情勢は極めて厳しい状況にあり、雇用は景気に遅れて回復する傾向があることからも、当面は厳しい状況が続くと考えられる。

 この外、主要な労働力関係指標の推移をみると、就業者の産業別の動向については、1995年から1998年にかけて、第1次産業では24万人、第2次産業では75万人の減少となったが、第3次産業では145万人増と大きな増加を示した。特に、サービス業における増加が顕著であり、119万人の増加を示している。

 従業上の地位別の動向についてみると、自営業主、家族従業者は、製造業を中心に減少がみられ、全体の雇用者比率は1995年の81.5%から、1998年には82.4%に高まった。

 労働力人口に占める高年齢者(55歳以上層)比率は、1995年の21.9%から、1998年には23.1%に上昇し、高齢化が進展した。

 女性の労働力率は、1995年の50.0%から、1997年には50.4%とやや上昇したものの、景気後退の影響もあり1998年には50.1%まで低下した。



 (労働移動の動向)

 労働移動については、おおむね横ばい傾向にある。平均勤続年数は長期化しており、入職率、離職率ともバブル期よりは、低い水準で推移している。

 しかし、転職希望率は傾向的に上昇しており、1997年には初めて10%を超えた。
 これは、若年層を中心とした転職意識の高まりによると考えられ、また、働き方の多様化も進むことが見込まれることから、今後労働移動は増加するものと考えられる。



 (労働時間の動向)

 労働時間の動向をみると、年間総実労働時間は、1993年の1,913時間から1998年には1,879時間と着実に減少している。また、完全週休2日制は緩やかに普及しており、何らかの週休2日制の適用を受ける労働者の割合は、1997年で95.4%となっている。しかし、週休2日制の形態別にみると、完全週休2日制の割合は、60.9%で、特に中小零細企業で普及が遅れている。

 なお、1997年4月から、一部の事業所を除き、週40時間労働制が全面適用となり、大部分の事業所において週40時間労働制が達成されている。



 

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2 今後の雇用動向と問題点


(1)今後の労働力供給と就業構造等の見通し

 (労働力人口の見通し)

 労働力人口は、1998年の 6,793万人から2005年までに約60万人増加し、その後2010年までに約 120万人減少するものと見込まれる。また、増減の推移をみると、1990年から1998年まで年率 0.8%の増加であったのに対し、1998年から2005年までは年率約 0.1%と伸びが鈍化し、その後2010年まで年率約 0.4%の減少となる。

 若年層(15〜29歳)の労働力人口は、今後若年人口が減少するため、1998年の1,631万人から2010年までに約 400万人の大幅な減少が見込まれる。
 これに対して高年齢層(55歳以上)の労働力人口は、1998年の 1,570万人から2010年までに約 380万人程度の大幅な増加が見込まれる。これらの結果、高年齢層の労働力人口が全体に占める割合は、1998年の23.1%から2010年には約29%へと高まり、労働力の高齢化が一層進展することとなる。

 女性については、ほとんどの年齢階級で労働力率が上昇し、いわゆるM字カーブの凹が小さくなることにより、女性の労働市場への参入が引き続くものと見込まれる。



 (就業者数の見通し)

 今後、経済のグローバル化の進展や規制改革等による競争の活発化により、労働生産性が向上し、労働力需要は弱含み傾向になるものと見込まれる。

 就業者の産業別の構成比をみると、第1次産業、建設業、製造業、卸売・小売業,飲食店については、低下が見込まれ、サービス業等においては上昇が見込まれる。

 職業別の構成比をみると、販売従事者、技能工、製造・建設作業者については低下が見込まれ、専門的・技術的職業従事者、事務従事者については上昇、運輸・通信従事者については現在とほぼ同水準で推移するものと見込まれる。



 (働き方の多様化)

 経済・雇用構造の変化や価値観の多様化を反映して、労働者の働き方も変化し、パートタイム労働、派遣労働等多様な働き方を選択する者が増加している。企業側からすると、事業環境の変化に機動的に対応できることや、知識、技術、経験のある即戦力の労働者を採用できるというメリットがあり、一方、労働者側からすると、自らの能力を活かして自由な時間に働けるというメリットがあることから、これらの働き方は今後も拡大するものと見込まれる。

 さらに、この2つの形態以外にも、在宅就労、契約労働、テレワーク、SOHO、ワーカーズ・コレクティブやNPOにおける就業などの新たな働き方が増加すると見込まれる。また、これまではホワイトカラー職種に就いていた大卒の労働者の一部が、今後は産業構造の変化や少子化の進展、意識の多様化を背景に、製造、サービスの現場などブルーカラー職種にも就くことが起きるものと見込まれる。



 (長期継続雇用の変化等)

 就業形態の多様化が進む一方で、企業の多数は長期継続雇用を維持するとしており、基幹的な雇用者を中心に今後も我が国における基本的な就業形態であり続けると考えられる。しかし、グローバル化や規制改革による企業間競争の激化、産業構造の変化などに伴い、労働移動が増加し、また、働き方の多様化が進むことによって、全労働者に占める長期継続雇用型の労働者の比率は低下するものと考えられる。



 (雇用調整システムの変化)

   これまで、我が国企業は景気の変動や産業構造の変化に対して、残業時間の調整、配置転換や出向、パートタイム労働者の増減といった労働投入量の調整を中心として雇用調整を行ってきた。今後、グローバルな競争の激化、景気変動の振幅の拡大や長期化等に対応するためには、労使の合意の上で、賃金プロファイルを見直すことや、同一世代内の賃金の分散を能力や業績に応じて拡大させること、

  さらには、総額人件費の見直しなど、賃金による調整もこれまで以上に用いられ、雇用調整がより弾力的に行われるようなシステムへ変わっていくものと見込まれる。



(2)今後の雇用をめぐる問題点

 今後の労働力供給、就業構造等が以上のように見通される中で、本計画期間中に次の3つの問題点によって、失業の更なる増加、ひいては経済社会全体への影響が生じる可能性がある。



 (労働力需給のミスマッチの拡大)

 労働力需給のミスマッチは、今後次のような理由により拡大することが懸念される。

 グローバル化に伴って競争が激化するにつれ、産業構造の変化のスピードが速まり、産業間の労働力需給の不均衡が拡大することが見込まれる。

 また、産業構造の変化や情報化、技術革新が進む中で、単純、定型的な業務を中心に、今後縮小する職業がある一方、企業が労働者に求める職業能力が高度化、専門化していくことが見込まれる。このため、労働者の希望する職業が無くなったり、労働者の持つ技能が陳腐化するスピードが速くなるものと考えられる。現状でも、職業別の有効求人倍率をみると、専門的・技術的職業が比較的高い一方で、事務的職業、管理的職業が低くなっているなど職業間でばらつきがみられる。

 さらに、今後は、少子化により新規学卒者の供給が減少し、他方、高年齢層については、労働力供給が増えるため、現在のように若年者への労働力需要は旺盛、高齢者への労働力需要は乏しいという状況が続けば、年齢間の需給の不均衡が更に拡大するものと見込まれる。



 (若年層の失業の増加による経済社会への影響)

 若年層については、完全失業率の持続的な高まりによって、技能形成、能力開発に重大な支障が生じることが懸念されるのみでなく、時間の経過とともに失業者の多いコーホート(同時出生集団)がそのまま高い年齢層へ移っていくことにより、マクロレベルでの労働生産性や活力の維持など経済や社会全体への影響が生じる可能性がある。



 (経済構造改革、経済の供給面の体質強化等による雇用への影響)

 経済構造改革、経済の供給面の体質強化等様々な改革を進める過程で、雇用の量的な面では、一部の既存分野において効率化等を通じて労働力需要が減少し、新たな経済分野の拡大が既存分野における雇用機会の減少に遅れて起こる場合、あるいは、新規分野へ労働移動が円滑に行われない場合には失業問題が顕在化するおそれがある。また、質的な面では、労働者の意に反した非正規雇用の増大、賃金等労働条件の低下の懸念がある。

 こうした失業問題は、労働者にとって生活が不安定になるばかりでなく、人的資源が有効に活用されないといった社会的損失も伴うものであり、構造改革等を進めるに当たっては、その雇用に及ぼす影響にも十分注意を払いつつ、これに伴う労働移動ができる限り円滑になされるように対処していく必要がある。


 
 

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V 雇用対策の基本的事項



 (今後の雇用対策の重点的な方針)

 今後の雇用対策を推進するに当たっては、次の4つの方針を重点に具体的施策の強力な展開を図るものとする。

 第1は、経済・産業構造の転換に的確に対応して、雇用の創出・安定を図ることである。

 このため、良好で長期的に働くことができる雇用機会の創出・確保を雇用政策の目標の基本としながら、失業した場合には再就職先が早期に見付かるようにすることが最も重要である。

 具体的には、政府全体で、規制改革、新規・成長産業の振興等を通じた新事業の創出、展開を支援することにより、良好な雇用の機会を創出するよう努めるとともに、あらゆる年齢層で円滑に労働移動が行われるよう、失業なき労働移動への支援を強化する必要がある。その際、民間における雇用機会の創出の促進を基本とする。さらに、労働力需給のミスマッチを解消し、失業期間の短縮が図られるよう、公共職業安定機関と労働者派遣事業、民営職業紹介事業等の民間の労働力需給調整機関とがそれぞれの特性、機能を活かして適切に需給調整の役割を果たすようにし、また、必要な連携、協力を行うことにより労働市場全体の需給調整機能の強化が必要である。

 第2は、個々人の就業能力を向上させるとともに経済社会の発展を担う人材育成を推進することである。

 産業構造の変化等に伴い、労働力需給のミスマッチの拡大が懸念される中で、労働者の就業能力の向上を目指し、労働者が企業内部だけでなく企業外でも通用する能力を習得できるように支援することを通じて、雇用の安定を図るとともに、今後の経済社会の発展を担う高度で専門的な職業能力を有する人材を育成していくことが、ますます重要になってきている。また、高齢化の進展に伴い、職業生涯の長期化が見込まれるところであり、生涯にわたる職業能力開発が必要とされるところである。このため、労働者一人一人が職業生涯を通じて自発的な職業能力開発に取り組むことができるように支援していくとともに、職業能力の適正な評価を積極的に推進する必要がある。また、企業における職業能力開発が推進されるための環境を整備するとともに、産業界において必要とされる人材の育成を図るための施策を推進する必要がある。さらに、教育の分野においても創造性豊かな人材を育成するための施策の充実を図る必要がある。

 第3は、人々の意欲と能力が活かされる社会の実現を目指すことである。

 活力ある高齢社会の実現のため、長年培った知識や経験が活かされる高齢期の雇用・就業機会が確保され、すべての意欲と能力のある高齢者が65歳まで働ける仕組みを構築していくこと及び社会参加ができることが重要である。また、性別にかかわらず、個人が主体的に職業選択を行い、能力を十分に発揮し、充実した職業生活を送ることができるようにすること、育児や介護を行う労働者が、職業生活と家庭生活とを両立できるようにすることが重要である。さらに、健康で安心して働ける職場を実現すること、多様な働き方を可能とする環境を整備することが必要である。

 第4は、国際的視野に立って雇用対策を展開していくことである。

 雇用問題が国際的な重要課題として、主要国首脳会議(サミット)を始めとした国際会議の場等で取り上げられるなど雇用問題は国際的な取組が必要な重要課題であり、また、国際的な人の移動がより活発化することが今後とも予想されることから、国際社会の変化に、雇用政策の面からも十分対応することが求められる。

 このため、雇用問題を始めとする社会労働問題の解決に向けて、国際機関の活性化、相互連携等に積極的に貢献していくとともに、人づくりを中心とした労働・教育分野における国際協力を積極的に推進していくことが必要である。また、対日投資促進に向けた積極的な支援や、生産拠点の海外移転等に伴う雇用問題の発生をできる限り回避するなど企業の海外進出に伴い発生する問題に対し適切に対応していくことも重要である。さらに、専門的、技術的分野の労働者は積極的に受け入れることとするが、いわゆる単純労働者の受入れについては、十分慎重に対応するという我が国の外国人労働者の受入れについての基本方針を堅持しつつ、外国人労働者及び事業主双方が安心して利用できる公的職業紹介、職業相談体制の充実、雇用管理の改善を図るとともに、不法就労の是正を図ることが必要である。



 (行政体制の整備等)

 今後我が国の労働市場が大きく変わっていくことが見込まれることから、変化の状況を的確に把握、分析し、労使を始め国民にその成果を広く提供し、また多様化し、複雑化する政策課題に的確に対応できるよう、中央省庁再編や地方分権に伴う組織再編を踏まえ、行政体制の整備に努めるとともに、雇用対策に関する地方公共団体との密接な連絡協力体制を確立することが必要である。

 政策手法については、その効果についての評価を行い、経済社会情勢の変化に応じて見直す努力をするとともに、併せて、NPOやワーカーズ・コレクティブを活用することなど、新たな雇用政策の手法を検討していくべきである。また、政策効果を評価するシステムを体系的につくっていくことも今後検討すべき課題である。


 

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 (基本的事項)

 

1 雇用の創出・安定



(1)新規事業展開等による雇用創出

@ 適切な経済運営による経済成長の確保

 雇用の創出・安定を図り、国民の将来の雇用に対する不安を払拭するためには、生産性の向上を図りつつ、民需主導で経済成長を維持することが必要であり、このために、構造改革に積極的に取り組むとともに、民需主導の回復が明確となるまでの間は、機動的な財政、金融政策の実施など適切な経済運営に努める。

A 雇用創出のために必要な環境の整備

 雇用の創出に資する新規事業展開や創業を促進するため、規制改革による新規事業創出の機会の拡大、新規事業への資金供給の円滑化のための金融・資本市場の整備、創造的中小企業に対する支援、独創的な研究開発の推進と科学技術の創造及びその成果の社会への還元が円滑に行われるための環境整備、新規事業者の人材確保に資する労働市場の整備等に努める。

B 中小企業における雇用機会創出のための支援の積極的実施

 雇用創出の担い手である中小企業の成長・発展を支援することは雇用機会の創出のためには必要不可欠であり、とりわけ、創業、異業種への進出を行う中小企業の人材確保に対する支援についてはこれまで以上に充実していくことが必要である。このため、1998年12月に改正された「中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律」(以下「中小企業労働力確保法」という。)に基づき、中小企業の人材確保・育成、魅力ある職場づくりの活動を支援することにより、中小企業における雇用創出を図る。

C 新規開業支援による雇用機会創出

 近年、廃業率が開業率を上回る逆転現象が生じ、事業所数が減少しているが、今後、労働者の雇用の安定を図るためには、新規開業を支援し、新たな雇用機会の創出を図る必要がある。しかし、新規開業に当たっては、雇用管理に係る知識・ノウハウの蓄積が欠けているために、様々な課題を抱えている場合も多い。このため、中小企業労働力確保法に基づく助成金等の支援施策のほか、雇用管理改善セミナーの開催等を通じた雇用の面からの総合的な支援施策を展開し、雇用機会の創出を図る。

D 起業家支援

 自ら起業して、その能力を発揮し、自己実現を図ろうとする人材は今後も増加が見込まれるが、従来あまり起業を行ってこなかった女性、高齢者、学生の場合、事業アイデアはあるものの、起業に必要な知識や経験が乏しく、また担保力、信用力が不足していること等から起業、事業運営の様々な場面で困難に直面するケースが少なくない。

 こうした状況を踏まえ、起業を希望する女性に対しては、女性歴史未来館(仮称)において、総合的な起業、事業運営に関する情報提供を行うとともに、きめ細かな相談の実施、女性起業家のネットワーク化を推進する。また、女性起業家のための低利融資制度の活用を図る。

 また、新規学卒者の就職環境が大変厳しい状況にある一方で、学生の仕事に対する意識については、単に所得の獲得ではなく、自己実現、能力発揮を重視する方向に大きく変化してきており、就職だけではなく、起業を志す学生も多い。このため、起業を志す学生の意識啓発を行うとともに、起業に関するノウハウを提供することにより、新規学卒者が自ら起業して就業の場を得ることを支援する。

 さらに、年齢にかかわりなく働き続けることができる就業の場として、高齢者の自営開業を促進する。

 加えて、起業家精神を有し、高度な技術を身に付け、それを事業化できるような能力を有する人材の育成を図るため、小中高校生を対象とした起業家精神を涵養する教材の開発・普及や成功した起業家等を活用した特別非常勤講師制度、企業等における教員の長期社会研修等の活用の推進、大学において、ベンチャービジネス関連の教育の充実を図る。また、産業界の現状や実際に起業した者と接する機会の拡大の観点から共同研究などを通じた産学官連携を一層推進する。

E 新規産業創出につながる学術・科学技術研究の推進や国等の研究成果の活用

 生命科学や情報科学技術などの雇用の創出や新産業の創出が期待される分野について、研究拠点を整備・充実するなど先端的学術・科学技術研究の推進を図る。また、大学、国立研究所等における研究成果の活用のため、産学官共同研究、特許化、民間企業への情報提供、企業化開発、民間へのあっせんや技術移転機関の設立の支援等の取組を行うことなどを通じ、民間への移転を積極的に推進することにより新産業の創出を図る。

F 雇用・労務管理の創意工夫による雇用創出

 事業所における業務体制の改善を行うとともに、必要に応じて短時間労働者の活用を図ることを含め労働能率の増進を図る等雇用・労務管理の創意工夫を、いわゆるワークシェアリングも視野に入れ、関係労使の充分な話合いの下で行うことにより、労働時間等労働条件の改善に資するだけでなく、雇用の創出等を図ることが今後重要性を増すものと考えられる。このため、労使の話合いを促進するなど、雇用・労務管理の創意工夫による雇用創出等に向けての気運の醸成を図る。

G NPOの活用

 利潤動機にそぐわず、公的サービスのみでは対応することができない新たな社会的有用財・サービスを供給する主体として、NPOの果たす役割は今後大きくなり、広く社会を支える役割を果たすものと見込まれる。このことを通じて新たな雇用も誘発される可能性があると考えられる。このため、緊急雇用対策として、希望するNPOについては、NPOの管理・運営に従事する専従要員の円滑な確保を支援するとともに、2001年度末までの臨時応急の措置である緊急地域雇用特別交付金を活用して、NPOへの事業委託(有償ボランティアを含む。)を積極的に進め、事業の必要に応じてNPOが能力開発、ボランティア適応訓練等を実施することにより、人的基盤の整備を図るとともに、NPOに関する情報提供等を実施する。

H 政労使一体となった雇用の創出・安定の取組の推進

 かつてないほど厳しい経済・雇用の状況を打破していくためには、政労使が率直に意見交換を行い、三者が一体となって雇用の創出・安定策を推進していく必要がある。このため、現下の情勢を克服するまでの間、政労使三者による「政労使雇用対策会議」を開催することにより、雇用の創出・安定に努める。

 また、地域に根ざした雇用の創出・安定のための対策をきめ細かく実施することができるよう、都道府県や地域レベルにおいても、事業主団体、労働組合、関係行政機関等からなる会議を開催し、政労使一体となった取組の推進を図る。



(2)成長分野における雇用創出

@ 「経済構造の変革と創造のための行動計画」の着実な実施による新規・成長15分野の育成

 今後成長が期待される医療・福祉関連分野、生活文化関連分野、情報通信関連分野など15分野について、「経済構造の変革と創造のための行動計画」に従って、規制改革、諸制度の改革、研究開発、経済構造改革に資する社会資本の整備等各般の施策を関係省庁の有機的な連携の下に重点的に推進するなど抜本的な経済構造改革に引き続き強力かつ速やかに取り組む。また、目まぐるしく変化する内外の諸情勢に対応し、同計画の不断の見直しを行いつつ、経済構造改革を強力に推進する。

A 成長分野における雇用創出の推進

 成長分野について雇用機会の増大を促進するため、新規・成長15分野への理解を促進し、当該分野に円滑に入職できるようにするための情報提供、相談・支援、能力開発等の総合的な推進策を講じる。

 加えて、現下の厳しい雇用失業情勢の下で、前倒しして雇用の期待できる民間部門の雇用創出を図るため、関係省庁と産業界との連携の下に、新規・成長15分野を中心として、各分野の事業主が中高年の非自発的失業者等を前倒しして雇用する場合または職場でのOJTを中心とした実践能力訓練を行う場合に、臨時応急の措置として奨励金を支給する。



(3)国、地方公共団体による臨時応急の雇用・就業機会の創出

 雇用・就業機会の創出については、民間企業によるものが基本であるが、現下の厳しさを増す雇用失業情勢に対処するため、1999年6月の産業構造転換・雇用対策本部決定に基づき、国、地方公共団体においても積極的に雇用・就業機会の創出を図ることとしている。

 国は、国自ら、雇用・就業機会の創出を図ることとし、まず、臨時応急の措置として、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」の成立等を機に国の情報公開を一層充実させる観点から、法令、予算等のデジタル情報化を推進することとし、そのための作業を民間企業に委託することとしたところである。今後さらに、雇用・就業機会の創出を図る観点から、行政改革の観点を十分踏まえつつ、業務の民間委託の拡大等に積極的に取り組む。

 また、地方公共団体における臨時応急の措置として、緊急地域雇用特別交付金を創設し、これを都道府県に交付することにより、各地域の実情に応じて、各地方公共団体の創意工夫に基づき、民間企業、NPO等に委託する事業を中心として、緊急に対応すべき事業を2001年度末まで実施し、雇用・就業機会の創出を図ることとしたところである。



(4)失業なき労働移動の支援

@ 人材移動特別助成金の活用

 長引く不況に伴いいったん離職すると直ちにすべての人が再就職できる状況にない中で、できるだけ失業を経ずに新たな就業機会を得ることは、労働者にとって生活の安定が継続されるだけでなく、人的資源の活用の観点からも重要であり、あらゆる層で更に円滑に労働移動が行われることが求められる。

 このため、個別の企業間の失業なき労働移動の円滑化のための人材移動特別助成金制度を臨時・緊急の措置として実施する。

A 業種雇用安定法に基づく失業なき労働移動の支援

 産業構造の転換の進展等の中で、雇用の回復が見込めず、労働移動による雇用調整を余儀なくされる場合には、出向・再就職あっせんにより、労働者ができる限り失業を経ずに労働移動できる環境整備に努めることが必要となる。

 このため、「特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法」に基づき、構造的・中長期的な経済要因により不振に陥り、雇用調整を余儀なくされている業種を機動的に特定雇用調整業種等に指定し、出向・再就職あっせんにより失業を経ずに労働者の受入れ、送出しを進める事業主や労働者に対して移動前後において教育訓練を行う事業主に対する助成金の支給等の支援を行うことにより、産業間・企業間による失業なき労働移動の支援を行う。



(5)景気循環に対応した雇用の維持・安定対策

 景気循環による一時的な雇用需要の減少に対して、労働者の雇用の安定、職業能力の有効発揮、技能の継承等の観点から、企業において雇用の維持を図ることが重要である。このため、雇用調整助成金の機動的、弾力的運用を図る等により教育訓練や休業等による企業の雇用維持努力に対する支援に努める。

 一方で、構造的な要因により長期にわたり業況が悪化している業種に対しても、雇用調整助成金が支給されることにより労働移動が妨げられているという面もあることから、対象業種について、景気の変動等による一時的な雇用調整への対応という制度の趣旨を踏まえ見直しを行う。



(6)少子・高齢化(労働力人口減少)時代の人材確保対策

 若年労働力が今後大幅に減少することから、女性や高齢者などが活躍できるよう雇用環境の改善や労働条件の向上などの対策を推進する必要性が高まるものと考えられるが、とりわけ中小企業においては、労働条件等について大企業との間に格差が存在し、今後とも労働力を確保していくことは依然として容易でない状況にあることから、中小企業労働力確保法に基づき、中小企業の雇用管理改善の取組を支援する。



(7)介護分野における雇用創出・労働力確保対策

@ 介護分野における新分野展開等雇用創出に向けた支援の創設

 高齢化の進展に伴い、寝たきり又は痴呆で介護を必要とする高齢者が、2010年には 200万人に達すると見込まれており、介護サービスを担う人材に対する需要はますます増大し、重要な雇用創出分野として期待される。

 また、2000年度から導入される介護保険制度は、利用者がサービスを選択する利用者本位の制度であり、高い質と十分な量の介護サービスを確保していくことが必要である。

 このような中で、社会福祉法人も含め、介護分野における新規開業・新分野展開に伴う人材確保、雇用管理改善、能力開発、雇用環境整備といった観点からの支援の実施や、介護労働力の養成施策の充実を図る。

A 介護分野における労働力需給調整機能の整備・充実

 24時間巡回介護の導入など、多様化し、拡大する介護分野の労働市場における円滑な労働力需給調整システムを構築する必要がある。

 このため、介護分野における求人開拓を積極的に実施するとともに、福祉重点ハローワークを中心とした公共職業安定所と福祉人材センター、これら公共機関と民間職業紹介事業者等とのネットワークの構築、短時間・短期労働者に係る需給調整機能の強化等を図る。

B 介護分野で就労する労働者の雇用の安定及び福祉の増進

 現在、ホームヘルパー養成研修修了者が就労しない理由の1つとして、労働条件に対する不満を挙げることができる。このため、従来から実施している福祉共済制度の抜本的な見直し、債務保証制度の充実を図るとともに、介護分野で就労する短時間・短期労働者の安定した就労を促進するための支援策を講ずるなど、介護分野で働く労働者の雇用の安定や福祉の増進を図る。

C 雇用創出・労働力確保の観点からの支援策の在り方の検討

 2000年度から導入される介護保険制度の対象となる介護サービスのほかに、シルバー人材センター、NPO等についても、多様な介護関連サービスの提供に大きな役割を果たすことが期待されているところであり、雇用・就業機会の創出に向けた人材確保、雇用管理改善、能力開発、雇用環境整備といった支援策の在り方について検討を進める。



(8)地域雇用対策の推進

 経済のグローバル化や構造改革の実施は、労働力需給に大きな影響を与え、地域によっては雇用機会の不足が生じる可能性がある。このため、地域の自立と促進等を図りながらも、人口規模や産業構造、就業構造などの地域の特性を踏まえた対策を積極的に講じていくほか、地域の創意と工夫により、地域レベルでの多様な雇用の創出・安定策が図られるよう努める。

 とりわけ、我が国の基幹的産業である製造業等を支えてきた「ものづくり」に係る技術・技能の衰退が懸念されるとともに、その伝承が困難になりつつある。

 「ものづくり」の基盤となる高度な熟練技能が集積している地域においては、高付加価値分野への新事業展開等による雇用機会の創出のための取組を支援する。

 また、農山漁村地域においては、担い手不足等による農林漁業の低迷や過疎化・高齢化による地域社会の衰退が懸念される中、雇用・就業機会の確保等を通じた地域の活性化が重要な課題となっている。このため、基幹産業である農林水産業の振興や地域資源を活用した各種産業の振興等による新たな雇用・就業機会の創出に向けた取組を支援する。

 さらに、過疎地域については、国土保全等過疎地域の役割を踏まえつつ、地域の活性化、雇用構造の改善に資する上で必要な対策を講じる。

 その他、労働者の地方志向の高まりに対応していくためには、人材の移動を円滑に進めていくことが重要である。このため、地方の産業振興対策と連携を図りつつ、地方の雇用情報の提供、きめ細かな職業相談に併せ、地方の生活関連情報の収集・提供を行うことにより、人材の地方への移動を推進するとともに、地方自治体の人材還流対策を支援する体制の整備を図る等魅力ある地域づくりを進める。

 特に、都市生活者の自然及び地方生活への関心の高まり等を背景に、農林漁業への就職、就業のニーズが高まっていることから、こうしたニーズに的確に対応するため、農林漁業への人材移動が的確に行われるよう、農林漁業関係団体や就農準備校等との連携を図りつつ、きめ細かな情報提供、就職相談、職業紹介等の施策を推進する。



 
 

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2 経済社会の発展を担う人材育成の推進



(1)労働者の自発的な職業能力開発のための環境整備

 産業構造の変化が進み、労働移動の増加や企業における能力重視の雇用管理の強まりが予想される中、労働者の雇用の安定を図るためには、労働者が各人の目的、キャリア設計に沿って、現に雇用されている企業のみならず広く産業一般で通用する職業能力の開発、向上に積極的に取り組み、個々人の就業能力の向上に努めることが重要になっている。このため、次の施策を推進する。

@ 相談援助・情報提供体制の整備等

 労働者の自発的な職業能力開発を促進するために、教育訓練コース等に関する情報提供システムを整備するなど情報提供体制の充実を図るとともに、職業能力開発に関する相談援助、情報提供等の総合的な支援体制等の整備を図る。

 また、教育訓練給付を効果的に活用するなど、労働者の自発的な職業能力開発の推進を図る。

A 労働者の取組のための環境整備

 職業生涯の節目において、長期にわたって休暇を取り、能力開発を始めとする様々な活動に自由に取り組めるようにすることが、文化的で活力ある社会づくりに貢献する人材を養成するため、極めて重要である。このため、長期リフレッシュ休暇制度の導入促進等、労働者が自由に職業能力開発に取り組むことができるようにするための環境の整備を図る。



(2)労働者の職業能力の適正な評価

 労働移動の増加が見込まれる中で、労働者の就業能力の向上を図るためには、職業能力を評価できる制度の整備を図る必要がある。

 このため、労働者の職業能力の公正な評価に資するよう技能検定制度について制度的な見直しを行うとともに、民間において行われる職業能力検定について、労働者の職業能力を公正に評価するために適当と認められるものを認定する制度を整備する等の支援を行う。また、企業内において職業能力開発に取り組むことが評価や処遇等に反映される制度の整備について、その労働者への周知を含め、支援を行う。



(3)事業主が行う職業能力開発の推進

 今後の経済社会において、企業が付加価値の高い分野や新規分野への展開を図る上で必要となる人材を育成していくためには、企業における職業能力開発の推進が重要である。また、職業能力開発の推進に当たっては、労働者の選択により多様な職業能力開発に取り組むことができるようにする等の観点にも立った労働者への支援も重要である。このため、事業主が行う職業能力開発について、次の施策を推進する。

@ 職業能力開発に関する情報提供・相談援助の充実

 企業の職業能力開発の目標等を示す事業内職業能力開発方針の作成の推進を図るとともに、職業能力開発に関する各種情報を幅広く提供するように努める。

A 労働者の職業能力開発に対する企業内の支援体制の整備

 企業内に労働者の職業能力開発の相談支援を担当する者を配置するなど、労働者の職業能力開発に対する支援体制の整備を図るとともに、企業内の相談援助体制の整備等に対する援助を拡充する。



(4)公共職業能力開発対策の推進

 現下の厳しい雇用失業情勢に加え、今後産業構造の変化等に伴い労働移動の増加が見込まれる中、解雇等により離職を余儀なくされた人々等の円滑な再就職を促進するためには、職業能力の開発・向上対策を効果的に実施していくことが必要である。このため、雇用失業情勢の変化に即応するとともに、産業構造の変化等に的確に対応した機動的かつ効果的な職業訓練を実施できるよう、民間教育訓練機関の活用を含め、セイフティ・ネットとしての職業訓練の充実を図る。

 また、産業界において必要とされる高度な技能を有する人材を育成するため、先導的かつ高度な公共職業訓練を実施する。

 さらに、地域におけるニーズに的確に対応した職業能力開発が行われるよう、事業主との連携を図りながら、必要な教育訓練機会の提供に努める。



(5)産業発展の基盤である高度熟練技能の維持・継承

 産業の発展を担う優れた技能の維持・継承が促進されるためには、広く国民が技能の大切さ、重要さについて理解を深め、技能が尊重される社会を形成することが必要である。そのため、卓越した技能を有する者等の社会的評価の向上に努めるとともに広く技能尊重気運の醸成を図る。

 また、継承の必要性の高い高度熟練技能、高度熟練技能者を選定するとともに、それらに関する情報の提供、技能継承等への支援、情報提供体制の整備を図る。



(6)産業構造の変化に対応した教育内容の充実

 産業構造が大きく変化する中、自ら主体的に考え、問題を解決し、新しい産業分野を切り開いていく能力を持つ創造性豊かな人間性を養成していくことが必要とされている。このため、産業構造の変化に対応した教育を実施するとともに、課題探求能力の育成を重視し、また専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等の育成を図る。

 また、今後必要とされる人材を養成する観点から、コミュニケーション能力の育成を重視した外国語教育の充実、情報活用能力の育成を図るための体系的な情報教育の充実、起業家精神醸成に向けた教育の充実、高等学校における専門教育の充実、専修学校における職業教育の充実、大学院の充実等により専門的な知識・技術を有する人材の育成を図るとともに、社会人の大学院への積極的な受入れ、放送大学における大学院設置についての検討をするなど、情報通信技術等を活用しつつ、社会人の再教育の機会の拡充を図る。



(7)技術者・研究者の育成

 経済のグローバル化が急速に進展する中において、絶えず技術革新に挑戦し、開拓精神の旺盛な高度の専門能力を有する人材の育成が急務である。そのため、産学連携による大学等の技術者教育に対する外部認定(アクレディテーション)制度を構築しようとする動きに対する支援、技術の変化に柔軟に対応し、より広範な技術者が活用し得る国際的に整合性のとれた技術士制度の構築、試験研究機関等における研究者情報のデータベース化等により、技術者・研究者の育成を図る。



 
 

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3 労働力需給調整機能の強化



(1)官民一体となった労働力需給調整機能の強化

@ 民間労働力需給システムの整備

 民間の労働力需給調整機関について、その活力や創意工夫を活かし、労働力需給調整の役割を有効、適切に果たせるようにする必要がある。
 このため、派遣元事業主による雇用管理や、派遣先による就業管理が適切に行われるよう支援の拡充を図るとともに、派遣労働者、求職者等からの苦情等への対応の充実を図り、必要な指導監督を実施する。

 さらに、民間の労働力需給調整機関間における情報、ノウハウの相互活用が円滑に行われるようにするための体制の整備を図る。

A 民間労働力需給調整機関との連携、協力

 労働力の需給調整を円滑、的確に行えるようにし、労働力需給のミスマッチの解消を図るため、公共職業安定機関と民間の労働力需給調整機関がそれぞれの特性を十分活かしつつ労働力需給調整機能を十分に発揮できるようにするとともに、必要な連携、協力を行う。

B 港湾労働分野における労働力需給システムの強化

 港湾運送事業に係る規制改革の推進の中で、高度な技能を有する者を活用するニーズが高まるとともに、日別の作業量の増減(港湾運送業務の波動性)に、より効率的かつ的確に対応していくことが求められている。

 このため、港湾運送業務の波動性に対応するための企業外労働者を活用する方策として、港湾企業常用労働者派遣制度(仮称)を導入し、港湾労働分野における労働力需給システムを強化する。

C 地域における経済団体等と公共職業安定機関の連携の確保

 公共職業安定機関においては、事業主団体、労働組合等の関係者との求人確保等についての連携、協力等を行うことにより、職業紹介の一層の充実、強化を図る。



(2)公共職業安定機関の情報提供、カウンセリング・職場体験機会提供の機能の強化

 労働力需給のミスマッチのうち、特に情報不足による摩擦的な失業を解消し雇用の安定を図るため、公共職業安定機関において、パソコンやインターネット等最新の情報技術も活用して、求人者、求職者双方が迅速にアクセスできるよう情報提供機能の強化を図ることが重要である。また、ハローワークの持つ情報のみでなく、種々の機関が持つ産業雇用情報が一体となって提供されることが望まれる。

 さらに、倒産やリストラクチャリングによって解雇された中高年離職者など、就職活動に関する知識、手段に乏しい求職者や、仕事の内容や労働条件が大幅に変化するなどのために心理面での準備が必要な求職者に対しては、適切なカウンセリングや職場体験機会を提供することにより、一日も早く再就職できるように努めることが必要である。

@ 情報提供機能の強化

 公共職業安定所の利用者が求人・求職情報等の閲覧をより効果的に行うことにより、求人・求職活動が円滑に行えるよう、自己検索パソコンの導入・活用を推進する。

 また、求人・求職条件の多様化・個別化が進む中で、情報不足による労働力需給のミスマッチの解消を図るため、急速に普及しているインターネットによる求人情報等の提供を早期に全国ベースで実施し、雇用関連情報を求人者、求職者に効果的に提供する。

 さらに、東京及び政令指定都市の人材銀行において、地方のベンチャー企業や地場企業等への就職を希望する人材を登録し、これら求職者に対し、地方の人材銀行等の求人情報の提供や的確な職業紹介を行う。

A 経済団体等の協力の下での職場体験機会提供の機能の強化

 倒産やリストラクチャリングによって解雇された中高年離職者などについては、再就職に当たり、ノウハウや心理面での準備が必要とされることから、経済団体等の協力を得て、職場体験機会の積極的な提供を図る。

B 官民一体となった相談・援助の取組の確保

 中高年ホワイトカラー求職者について、その適性・能力に応じた職業に就職できるようにするため、労働市場における自らの状況や有する職業能力の程度等の客観的な把握、認識を促すとともに、求職活動を行うための知識・ノウハウを付与し、その上で個々の求職者が主体的に求職活動を展開できるようにするための相談・援助の事業を実施する。

 この場合、中高年ホワイトカラー求職者の再就職支援に固有のノウハウや創意を有する民間の職業紹介機関等の機能等を、公共職業安定機関との連携の下に活用する。



 
 

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4 高齢者の雇用対策の推進



(1)長期的な高齢者雇用の在り方

 急速に高齢化が進展する我が国において、その経済社会の活力を維持するためには、できるだけ多くの高齢者が社会に支えられる側から社会を支える側へ回ることが必要である。こうした発想の転換は、国際的な潮流となりつつあり、デンバーサミットを始めとした各種国際会議においても、アクティブ・エージング(活力ある高齢化)の実現ということが提唱されるに至っている。このため、将来的には、高齢者が、意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる社会を実現していくことが必要である。

 我が国においては、急速に高齢化が進展する中で、労働力供給すなわち労働力人口の年齢構成も急速に高齢化していく。こうした状況の中で、仮に、労働力需要の側の年齢構造が変化しないとすると、若年労働力が大幅に不足となる一方で、高齢者に関しては大幅な労働力過剰となる。

 労働力需要の年齢構造を急速に変化させていく上では、従来の雇用慣行の見直しなど様々な課題があり、これらを解決していくためには、労使が率直に話し合い、政労使が協力して段階的な取組を行っていくことが必要である。

 個々の企業においては、従来の人事管理制度の見直しを行いながら、高齢者が働き続けることができるような条件整備を図り、高齢労働力を一層活用していくことが必要となる。

 そして、多くの企業において、年齢よりもその能力に基づく人事管理制度が普及するようになれば、意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる社会の実現に近づいていくものと考える。



(2)向こう10年程度の間における取組(65歳までの雇用の確保)

 向こう10年程度の間における年齢別労働力人口の変化を見ると、29歳以下の労働力人口が約400万人減少するのに対し、60歳以上の労働力人口は、団塊の世代が60歳台に差し掛かること、及び、公的年金(基礎年金部分)の支給開始年齢が引き上がっていくこと等により、約360万人増加することが見込まれている。

 こうした状況を踏まえると、向こう10年程度の間における高齢者雇用の最重要課題は、労働力人口(労働力供給)の急速な高齢化に対応して、高齢者(特に60歳台前半層)の労働力需要を大幅に高めていくことであるということができる。

 (1)で述べたような将来展望を踏まえると、個々の企業においては、従来の人事管理制度の見直し等を行いながら、向こう10年程度の間において、65歳に向けて定年年齢を引き上げていくことが必要である。

 しかしながら、我が国の年功的な賃金が生活給的な側面も有しているなど、従来の人事管理制度の見直しに当たっては解決すべき問題点も多いことを考えると、当面は、60歳台前半層の高齢者の労働力需要を高めていくために、再雇用による継続雇用、あるいは、他企業への再就職という方策も視野に入れていく必要がある。

 したがって、向こう10年程度の間においては、65歳定年制の普及を目指しつつも、少なくとも、意欲と能力のある高齢者が再雇用又は他企業への再就職などを含め何らかの形で65歳まで働き続けることができることを確保していくこととする。

 このため、事業主が、人事管理制度の見直しや高齢期にも十分に能力が発揮されるようにするための職業能力開発などを行いつつ、定年延長又は継続雇用の拡充に取り組むことを促進していくため、各種の指導・援助を行うこととする。

 また、継続雇用されない定年退職者の再就職が円滑に促進されるよう、事業主に対して、求人開拓や能力開発など各種の支援を行うことを求めていくとともに、国としても、そうした取組に対して助言・援助を行う。さらに、高齢期における再就職を促進していくため、事業主に対して、労働者募集の段階における年齢制限を緩和していくことを求めていくこととする。

 なお、高齢期には、就業意欲や体力が多様化するので、それに応じた様々な形態の労働力需要を生み出すことも必要である。

 このため、短時間勤務の雇用形態を普及させるほか、年齢にかかわりなく働き続けることができる就業の場として、高齢者の自営開業も促進する。

 また、短時間雇用を始めとした普通勤務以外の雇用・就業機会に関するあっせん機能を強化する等の観点から、シルバー人材センター事業等について発展・拡充を図るとともに、高年齢者職業経験活用センターの在り方についても検討を行う。



(3)高齢期に向けた社会参加の促進

 「アクティブ・エージング(活力ある高齢化)」を実現していくという観点から、定年退職後等の高齢者がその知識や経験を活かし、雇用・就業のほかボランティア活動など様々な社会参加を行っていくことを促進する。

 また、定年退職後、それまで培ってきた知識や経験を活かした上で多様な社会参加を行っていくためには、在職中に退職後の準備を行うことが望ましいため、高齢期雇用就業支援センター等において、退職準備活動に対する支援を行う。



 
 

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5 若年者の雇用対策



 若年層においては、転職志向の高まりが顕著であることから、自発的な離職者が多く、他の年齢層に比べ完全失業率も高くなっており、全体の完全失業率を上昇させる大きな要因となっている。また、大都市圏を中心に学校卒業後、進路未決定者を含む無業者が就職者を上回っている例も見られる。中長期的に構造的失業の増加を抑制するためには、若年者の適切な職業選択、円滑な就職促進を図る

 ことが重要であり、学生・生徒や未就職卒業者に対する職業意識啓発対策、就職支援を実施し、専門的な援助や就業体験の拡大を図るとともに、早期離転職を繰り返す若年者に対する再就職支援対策が必要である。このため、次の施策を重点的に実施する。



(1)学校教育も含めた若年者対策

@ 若年者の職業に就くための基礎的な能力の向上

 近年、職業に対する心構えやコミュニケーション能力などの職業に就くための基礎的な能力に欠ける若年者が増加しているのではないかという指摘がある。

 また、産業構造が大きく変化する中で、生涯を通じて自ら主体的に考え、問題を解決し、新しい産業分野を切り開いていく能力を持つ創造性豊かな人材を養成することが課題となっている。このため、学校教育も含め、若年者の職業に就くための基礎的な能力の向上のため社会全体としての対応が必要である。

 このため、初等中等教育段階においては、自ら学び自ら考える力や豊かな人間性などの「生きる力」をはぐくむことを重視して教育内容の改善を図るとともに、望ましい勤労観・職業観や社会人・組織人としての基本的な能力を育成するため、職業教育及び進路指導の充実を図る。

 さらに、若年者を中心としたものづくり離れや熟練技能者の高齢化による後継者不足等の問題に対処し、我が国の製造業等の発展を支えるものづくりに関する技術・技能の担い手となる人材の養成を図るため、関係省庁が連携して、ものづくりに関する教育の充実を図る。


A 高等学校における専門教育の充実

 専門的な知識・技術を有するスペシャリストがこれまで以上に社会に求められている中で、将来のスペシャリストに必要な基礎的、基本的な知識・技術を確実に身に付けさせるよう、専門高校の教育内容の改善充実を図るとともに、産業界における技術革新等に対応した施設設備の整備を進める。特に、専門的な情報技術者や福祉関連業務従事者など今後需要が増大する人材の養成の充実を図る。

 また、専門高校卒業生の継続教育の場を確保するため、高等学校専攻科の整備・充実を図るとともに、大学等高等教育機関への受入れの円滑化を図る。

 さらに、幅広い普通教育と専門教育の科目を選択することができ、自己の進路への自覚を深めさせる学習を重視している総合学科の設置促進を図るとともに、普通科における職業教育の充実を図る。また、就職希望者が自らの希望により、より適切な職業選択ができるよう、就職指導や就職あっせんの在り方について検討する。



(2)若年者の職業意識啓発対策

 若年層において転職志向の高まりが顕著であるが、その背景には職業に対する理解が不足していることなどがあるものと考えられる。離転職は、より良い就業機会を求める行動としてそれ自体を否定的にとらえる必要はないが、適職の選択について計画性に欠ける離転職を繰り返すことは、本人の職業能力の形成に悪影響を及ぼすのみならず、若年労働力が減少する中で、将来の良質な人材の確保にも影響をもたらす。

 こうしたことも視野に置き、地域や産業界の協力を得て、学校教育の各段階において職場体験等啓発的な体験を行う機会を充実し、働くことの意義や職業についての知識が深められるよう、進路指導や職業指導の充実を図る。特に大学、高等学校、専修学校等におけるインターンシップについて、関係省庁が連携しつつ、その積極的な推進を図る。また、若年者に対する職業、産業に関する情報の提供により、様々な職業の実態への理解を深めつつ、適切な職業選択や円滑な就職促進を図る。

 また、高等学校においては、生徒がしっかりとした目的を持って進路を選択できるよう、社会人の活用や教員のカウンセリング能力の向上を図るなど就職指導体制の充実を図るとともに、教員や生徒に対する職業についての情報提供機能の充実を図る。

 さらに、多様で正確な職業情報を継続的かつ体系的に収集・提供し、併せて実際に職業に関する様々な体験機会を提供する職業総合情報拠点として勤労体験プラザ(仮称)を設置し、関係行政機関が連携しつつ、職業や技能の重要性等に対する理解を深める機会をつくり、職業意識の啓発を図るとともに、的確な職業選択への支援や技能を中心とした職業能力開発関連情報の提供等の施策を積極的に推進する。



(3)新卒者、未就職卒業者、早期離転職者に対する就職支援

 大学等の新規学卒者等の就職支援を強力に推進するため、学生等への総合的な就職支援の拠点としての学生総合支援センター(仮称)において、大学等と密接に連携しつつ求人情報他各種就職関連情報の提供、学生等の特性に即した専門的な職業相談、個別カウンセリングの実施、年間を通じた就職面接会の開催など、学生等を始めとした若年者のキャリア形成に資する取組を推進する。

 また、未就職のまま卒業した者について、学生職業センター等で登録し、登録者を対象に企業実習や職業訓練を実施する。さらに、高い完全失業率の背景にある卒業後早期の離転職者の増加に対し相談機能を強化する。



 
 

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6 個人が主体的に働き方を選択できる社会の実現



(1)男女雇用機会均等確保対策

@ 雇用の分野における男女均等取扱いの確保対策の充実・強化

 男女労働者の均等な機会及び待遇を確保し、女性労働者が能力を十分に発揮していくことのできる環境整備を進めるためには、男女雇用機会均等法に基づき、男女の均等取扱いの確保対策の充実・強化を図ることが必要である。このため、機会均等調停委員会の円滑な運営により、男女の均等な機会及び待遇に関する個別紛争の迅速な解決を援助するとともに、男女雇用機会均等法遵守のための積極的な行政指導を展開する。

 また、妊娠中及び出産後も継続して働き続ける者が増加していることから、母体や胎児の健康・安全が十分確保されるよう、妊娠、出産期における母性保護規定の遵守を徹底するとともに、妊娠、出産を原因として、雇用管理面で不利益な取扱いを受けることのないよう企業の望ましい雇用管理の在り方やそのための環境整備に向けての方策等について検討を行う。

A 女性労働者の能力発揮促進のための積極的取組(ポジティブ・アクション) の推進

 社会における固定的な男女の役割分担意識や男性中心の職場慣行などから男女労働者間に生じている事実上の格差を解消し、女性労働者が意欲と能力を十分に発揮できるようにするためには、このような格差の解消を目指した企業の積極的な取組(ポジティブ・アクション)を国として一層促進させるなどの施策を積極的に展開することが必要である。

 このため、まず事業主を始めとする企業トップの理解を深め、各企業における自主的取組を促すため、ポジティブ・アクションの重要性、手法等について周知に努めるとともに、企業における自主的取組を促進するための施策の充実を図る。

 また、国としても、女性の職域拡大につながる能力開発、適切な職業選択を促すための意識啓発、再就職に向けた支援、固定的な性別役割分担意識を解消するための啓発活動等の施策を積極的に推進する。

 とりわけ、働くことに意欲を持ち、種々の困難に直面しつつも、新しい可能性を切り開いていこうとする女性を積極的に支援するため、女性歴史未来館(仮称)を拠点として、女性の能力発揮のための諸事業を総合的に展開する。

B 真の男女平等の実現に向けた取組の推進

 個々の労働者が性別にかかわらず主体的に職業を選択し、充実した職業生活を送ることができるよう、個人の働き方の選択に大きなかかわりを持つ税制、社会保障制度、賃金制度等諸制度・慣行の検討に当たっては、様々な世帯形態間の公平性等を勘案しつつ、個人の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立的なものとするという視点にも配慮する。

 また、雇用の分野における真の男女平等の実現に向け、実質的に男女均等な雇用管理を徹底する方策等について幅広い検討を進める。



(2)仕事と育児・介護との両立支援対策

 少子・高齢化、核家族化等が進展する中で、労働者が仕事と育児・介護を容易に両立させ、生涯を通じて充実した職業生活を送ることができるようにすることは、大きな課題である。また、このことは我が国の経済社会の活力を維持していく上でも、さらに、労働者が安心して子供を産み育てることができる社会を形成していく上でも、重要である。

 このため、労働者の仕事と育児・介護との両立を支援する、次のような取組を推進する。

@ 育児・介護を行う労働者が働き続けやすい環境整備の推進

 育児・介護を行う労働者が、その能力や経験を活かしながら就業を継続するためには、これらの労働者が多様でかつ柔軟な働き方を選択することができる雇用環境を整備することが必要となる。

 このため、育児・介護休業制度、育児・介護休業後の円滑な職場復帰に向けた支援、育児・介護に配慮した勤務時間に関する措置等育児・介護を行う労働者の雇用の継続を図るための制度の充実に向けての検討を行う。また、仕事と育児・介護とが両立できる様々な制度を持ち、短時間勤務、在宅勤務等多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行う「ファミリー・フレンドリー」企業を目指す企業を支援するなど、企業における自主的な取組の促進を図る。

 さらに、育児・介護を行う労働者に対する情報提供、相談、講習、地域における支援事業を推進する。また、育児を行いながら働き続ける労働者のニーズに対応するため、延長保育、低年齢児保育、放課後児童クラブ等多様な保育サービスの整備、幼稚園における未就園児の受入れや預かり保育の推進、保育所との連携の強化などを行うとともに、介護を行いながら働き続ける労働者のニーズに対応するため、地域における支援を含め、介護サービスの多様化、弾力化を推進する。

A 育児・介護等により退職した者のための再就職対策の拡充及び再就職後の能力発揮促進のための支援

 育児・介護等のために退職した者の円滑な再就職を支援するため、企業におけるこれらの者の円滑な再就職を可能とする雇用管理に対する支援が求められている。

 このため、長期継続雇用、年功賃金等のいわゆる日本的雇用慣行が当該再就職希望者に不利に働いている側面があることを念頭に置き、企業におけるこれらの者の能力、経験に応じた再就職を可能とし、積極的に活用するための取組に対する支援等に関し、幅広い視野から検討を行う。

 また、再就職希望者が、その能力、経験を最大限に活かすことができるようにするため、これらの者に対する情報提供、能力開発への支援等を充実する。



(3)多様な働き方を可能とする環境整備

 労働者個人の価値観、ライフスタイル、ライフサイクル等に応じ、短時間勤務、在宅勤務等多様でかつ柔軟な働き方を選択することができるようにするため、企業における雇用管理の実施、定着、適正な労働条件の確保に向けた施策を推進する。

@ パートタイム労働対策の推進

 パートタイム労働については、個々の労働者により主体的に選択され、また、その能力の有効な発揮ができるような良好な就業形態としていくことが重要である。

 このため、パートタイム労働者について、パートバンク、パートサテライト等による需給調整を推進するとともに、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」等に基づき、就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮したパートタイム労働者の適正な労働条件の確保及び雇用管理の改善を図る等の対策を推進する。パートタイム労働者が、通常の労働者としての働き方を選択することが容易となるよう、支援の充実を図る。なお、パートタイム労働者の就業に影響を及ぼしている社会制度、慣行等の在り方については、パートタイム労働者の雇用管理の改善を図るという観点から留意する必要がある。

A 在宅就労対策の推進

 在宅就労については、専門性を活かしつつ自らのペースで柔軟・弾力的に働ける就労形態として大きな期待が集まる一方、契約条件をめぐるトラブルの発生や良質な仕事の確保が困難であることなどの問題点が指摘されている。

 このため、在宅就労の健全な発展に向け、在宅就労の適正な実施を確保するためのガイドラインの策定、周知・啓発を図るとともに、在宅就労者等に対する各種情報提供、相談体制の整備、能力開発・能力評価の在り方の検討等総合的な支援を行う。

B 派遣労働者が広範な分野において、安心して就業できるための環境整備

 労働者派遣事業制度については、派遣労働者が広範な分野において、安心して就業できるよう、労働力需給調整機能の有効、適切な発揮を図るため、社会・労働保険の適用、職業能力開発、派遣先による労働者派遣契約の中途解除、労働者派遣契約違反等の問題に関し、労働者の保護に十分留意して、制度の適正な運営を確保するとともに、その就業の実情、労働条件の確保等の状況を把握、分析し、必要に応じ制度の在り方について総合的な検討を行う。

C 契約労働、テレワーク、SOHO、ワーカーズコレクティブやNPOにおける就業など多様な働き方で働く人の就業環境の整備

 契約労働、テレワーク、SOHO、ワーカーズコレクティブやNPOにおける就業など多様な働き方が今後増加していくと見込まれることから、雇用であるかどうかにかかわらず、安心して働くことのできる条件の整備を図る。

 通勤負担の軽減や就労形態の多様化への対応のため、テレワークについて、シンポジウムの開催等や情報通信機器を備えたテレワーク相談・体験センターの開設を通じてテレワークの普及事業を推進していく。

 また、障害者については、障害の重度化や障害者の高齢化の進展を踏まえ、短時間労働、在宅就労等柔軟で多様な雇用・就労形態により、その障害の特性及び程度に応じた働き方が可能となるよう、これらの働き方に対する支援体制の整備を図る。



 
 

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7 安心して働ける社会の実現



(1)個別労使紛争処理対策

 近年の厳しい経済情勢の下で、企業のリストラクチャリングが進展する一方、企業の人事労務管理制度においても、能力主義・成果主義的な賃金・処遇制度の導入等従来の集団管理から個別管理へ移行しつつある傾向が見受けられる。このような状況を背景として、解雇、労働条件の引下げといった問題はもとより、配置転換、セクシャル・ハラスメント、個々の労働者の業績評価等様々な問題について個別労使紛争が著しく増加しており、今後もこの状況はさらに続くものと見込まれる。

 このような状況から、労働条件に関する個別労使紛争の簡易・迅速な解決を促進するため、都道府県労働基準局において紛争解決援助制度を運用しており、この制度の積極的活用を図ることとする。

 また、今後、この制度の運用状況や都道府県機関、司法機関等による個別労使紛争への対応状況を踏まえつつ、労働関係当事者の立場に立ち、自主解決の支援を含めワン・ストップサービス及び簡易なあっせんサービスの必要性等も勘案し、セイフティ・ネットの一環として、総合的な個別労使紛争処理制度の在り方について検討を進めることとする。



(2)労働条件の明確化と法定労働条件の履行確保

 労働移動の増大や就業形態の多様化等に伴い、労働条件の明確化がより一層求められるとともに、労働条件が不明確なことによる紛争を未然に防止するため、1998年の労働基準法改正により、労働契約の締結の際に書面の交付により明示すべき事項が、賃金に関する事項のみならず労働時間等主要な労働条件に関する事項に拡充されたところであり、その的確な履行を図る。また、産業社会が大きく変化していく中にあって、労働者が安心して働くことができるよう、賃金、労働時間等の法定労働条件の履行確保を図る。



(3)公共職業安定機関の職業紹介

 国の実施する職業紹介は、すべての国民に対して憲法で規定されている勤労権及び職業選択の自由を実質的に保障するための制度的基盤であることから、求人者、求職者に対して無料でサービスを提供すること、また、利用したい人は誰でも公平にこれを利用できることを前提として、今後、きめ細かな相談援助や適職選択の支援のための各種講習の実施、在職求職者への支援、事業主団体等の関係者との求人確保等についての連携、協力などを通じ、職業紹介機能の一層の充実、強化を図る。



(4)雇用保険

 雇用保険制度については、今後、少子・高齢化の進展、産業構造の変化等に伴う労働移動の増加、雇用就業形態の多様化など大きな変化が見込まれる中で、雇用に関するセイフティ・ネットの中核として、その安定的運営を確保しつつ、今後とも、労働者の生活・雇用の安定及び就職の促進に十分な役割を果たしていく必要がある。

 また、現下の厳しい雇用失業情勢の中で、再就職の一層の促進に資する労使の共同連帯によるセイフティ・ネットとして有効に機能していくよう、再就職の緊要度の高い者に対する給付の重点化を図る必要もある。

 このため、本計画期間の前半のできるだけ早い段階で、以上のような視点を踏まえ、給付と負担の両面から所要の検討を加え、必要な見直しを行う。



(5)労働時間対策

@ 労働時間の短縮

 労働時間の短縮は、労働者とその家庭にゆとりをもたらし、職業生活と家庭生活、地域生活との調和に資するものである。また、労働者の心身の健康維持により、仕事の効率や創造性が確保されるとともに、高齢者や女性を含めたすべての労働者に働きやすい職場環境をつくり、結果として中長期的な労働力不足への対応策にもなり得ることから、安心して働ける社会の実現を図る上での最重要課題の一つとなっている。このため、年間総実労働時間1800時間の達成・定着を図るため、i 週40時間労働制の遵守の徹底、ii 年次有給休暇の取得促進、iii 所定外労働の削減を柱として施策を積極的に推進する。

 i 週40時間労働制の遵守の徹底

 週40時間労働制については、1997年4月から全面適用された後、その定着は相当に進んでいるところであり、これまでの指導、援助等の実績を踏まえ、未実施事業所に対しその遵守の徹底を図る。

 ii 年次有給休暇の取得促進

 年次有給休暇の取得促進を図るためには、労使が協力して休暇の意義や在り方について意識を高めるとともに、年次有給休暇取得のための条件整備や環境づくりに努めることが重要である。このため、ゆとり休暇推進要綱を踏まえ、個人別年次有給休暇取得計画表の作成、休暇管理簿による取得日数の管理、計画的付与制度の積極的な活用等労使の取組の促進を図り、その完全取得を目指す。

 iii 所定外労働の削減

 長時間の時間外労働を抑制するため、「労働基準法」に基づく時間外労働の限度に関する基準等の遵守の徹底を図る。また、いわゆるサービス残業などが発生しないよう、企業に対する指導等を通じ労働時間管理の適正化に努める。

 さらに、所定外労働削減要綱により、所定外労働の削減に向けた労使の自主的な取組を促進する。

A 自律的、創造的かつ効率的な働き方の実現

 ホワイトカラーに関しては、企業が仕事の進め方を労働者にゆだねたり、成果による勤務評価を重視する動きがみられ、労働者においても、価値観、ライフスタイルの多様化に伴い、より柔軟で自律的な働き方への志向が強まっており、画一的な時間管理がなじまない状況が徐々に拡大しつつあると考えられ、労働者の職業生活と家庭生活との調和を図りながら、より自律的、創造的かつ効率的な働き方に応じた労働時間管理を進めていく必要がある。このため、労働者が主体的に仕事に向かい、そうした働き方を通じて自己実現を目指したり、創造的な能力が発揮できるよう「労働基準法」に基づく裁量労働制の的確かつ効果的な活用を促進するとともに、フレックスタイム制等の弾力的労働時間制度の導入促進を図ることとし、これらの適切な運用のための指導・援助を行う。



(6)安全と健康確保対策

@ 労働災害防止対策の推進

 職場での安全の確保は、労働者が安心して働くための最も基本的な条件であることから、労使を含め、労働災害をなくすためのあらゆる努力が求められる。

 このため、事業所の安全水準の一層の向上を図り、連続的かつ継続的な安全衛生管理を自主的に行う仕組みとして「労働安全衛生マネジメントシステム」の導入を図る。

 また、労働災害が多発している業種等における労働災害防止対策の一層の推進を図るとともに、技術革新の進展や就業形態の多様化の進行に対応して労働災害防止対策の充実を図る。

A 高齢化の進展、産業構造の変化等を踏まえた、労働者の健康確保対策の推進

 今後、産業社会が大きく変化していく中で、業務の質的変化等による心身の負担の一層の増加が懸念されており、労働者が中高年齢期に至っても健康を保ち、能力を十分発揮できるよう、職業性疾病はもとより、職場においてより積極的に労働者の健康の確保を図ることが求められている。

 このため、事業所における健康確保体制の整備、産業保健活動の支援の充実、健康管理の充実など労働者の健康確保対策の拡充、強化を図る。

 また、労働者が早い時期から、適度な運動、適切な食生活、十分な休養など調和のとれた心身両面にわたる健康的なライフスタイルを確立し、これを継続的に実践していく、心と体の健康づくり運動(トータル・ヘルスプロモーション・プラン:THP)を推進するとともに、労働者が疲労・ストレスを感じることの少ない快適な職場環境の形成を図る。



(7)中小企業労働対策

 中小企業は多くの労働者に雇用機会を提供するとともに、国民経済に対して重要かつ多様な財・サービスの供給を行うなど、我が国経済を支える重要な存在となっている。

 しかしながら、中小企業を取り巻く経営環境は、長引く景気の低迷により厳しい状況が続いているとともに、雇用面でも労働移動の増大、賃金制度や福利厚生制度の多様化など著しい変化が生じており、また、依然として労働条件の改善、人材の育成、福祉の向上等の面で大企業に比べ立ち後れがみられる。

 一方、中小企業は労働者にとって自己実現を可能とする場として期待される存在であり、また、柔軟性、機動性を発揮しやすいなど、大企業にはない魅力を持っている。

 このため、労働者が働きがいとゆとりを感じられる魅力ある職場づくりに向け、労働条件の改善、人材の育成、福祉の向上等中小企業に対する労働施策の一層の充実を図るとともに、中小企業労使が積極的に労働施策を活用するよう促進する。



(8)勤労者福祉対策

 勤労者は我が国経済の一翼を担っているにもかかわらず、依然としてその生活は必ずしもゆとりと豊かさを実感できるものとなっていない。また、勤労者を取り巻く環境が大きく変化する中で、引退後の生活等将来に対する不安が高まっている。このような状況に適切に対処し、勤労者が安心して生活し、ゆとりと豊かさを真に実感できる社会を作ることが重要な課題である。

@ 確定拠出型年金制度の導入に向けた取組の推進

 老後の所得確保のためには、公的年金に加え、勤労者の自助努力も重要である。このため、現行の確定給付型の企業年金等に加え、新たな選択肢として、確定拠出型年金制度の具体化を図るべく関係省庁間において検討を進めていく。

A 勤労者財産形成制度の充実

 労働者の計画的な財産形成とその成果の活用を支援するため、勤労者財産形成制度の普及促進、充実に努める。

B 中小企業退職金共済制度の普及及び制度の安定的運営、中小企業勤労者総合福祉推進事業の推進

 中小企業における勤労者福祉は大企業に比べると依然として立ち後れがみられる。

 こうした状況を踏まえ、中小企業退職金共済制度については、資産運用のより一層の効率化によりその安定的な運営を図りつつ、確実に退職金が支払われる本制度の一層の普及を図るため、積極的に加入促進に努める。

 また、勤労者と事業主が共同して総合的な福祉事業を実施する中小企業勤労者福祉サービスセンターの設立を推進し、その支援に努める。

C 勤労者のNPO活動、ボランティア活動等社会活動参加のための環境整備

 勤労者が、職場中心から職場、地域、家庭などバランスの取れた、個人が主体的な生活を送ることが可能となるような環境整備が必要である。近年、NPO活動、ボランティア活動等社会活動に対する社会的関心が高まっており、勤労者の間でも社会活動参加に関する意欲が高まっている。このため、企業等に対して勤労者が社会活動に参加しやすくなるような環境整備についての啓発、勤労者が社会活動に参加するきっかけづくり、さらには勤労者に対する情報の提供・相談体制の整備を図る。



 
 

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8 特別な配慮を必要とする人達への対応



(1)障害者雇用対策

 働く意欲と能力を有するすべての障害者が、その適性と能力に応じ、障害のない人々とともに自然に働けるような社会の実現を目指し、関係機関との連携の下に、就業面・生活面を通じた一貫した支援体制の構築を図り、障害者の雇用の促進及び安定のための対策を総合的に推進する必要がある。特に、雇用の立ち後れが見られる重度身体障害者を始め、知的障害者や精神障害者の雇用の促進を図るための取組を促進する必要がある。

 このため、法定雇用率の達成に向けて障害者雇用率制度を適切に運用するとともに、技術革新、雇用環境等の変化に対応した制度の見直しを行っていくほか、各種助成措置の効果的活用、専門家による支援体制の整備等により、障害の特性及び程度に応じた適正な雇用管理や職場環境の改善を行うための企業の積極的な取組を促進する。特に、厳しい雇用失業情勢の中では、その影響を受けやすい障害者の雇用の安定を図るため、雇用率未達成企業を中心に厳正な指導を行うとともに、やむなく離職した障害者に対しては、積極的な求人開拓、各種助成制度の活用等により円滑な再就職を図る。

 障害者の職業的自立に向けては、障害の特性、多様なニーズに対応したより実践的かつ効果的な職業リハビリテーションの充実を図り、障害者に対して就職前の職業準備訓練から就職後の職場適応まで一貫したきめ細かなサービスの提供を行う体制を整備する。さらに、障害者の就職や職場適応を適切に支援していくために、関係機関も含めて職業リハビリテーションに関する人材の養成と資質向上を推進する。

 また、障害の重度化や障害者の高齢化の進展を踏まえ、短時間労働、在宅就労等柔軟で多様な雇用・就労形態により、その障害の特性及び程度に応じた働き方が可能となるよう、これらの働き方に対する支援体制を整備するとともに、適切な就業環境の確保のための条件整備を行う。

 さらに、障害者の社会参加や自立を促進し、安心して就業に挑戦できるよう、養護学校等の在学中から障害のある生徒の職業的自立を一層促進するとともに、障害者が雇用の分野と福祉の分野を円滑に移行できるようにする等、福祉、医療、教育等地域の関係機関のネットワークの形成を積極的に推進し、障害者が地域で生活しながら働き続けるための就業面・生活面を通じた総合的な支援体制を整備する。



(2)日雇、ホームレス対策

 主要大都市においては日雇労働者が一部地区に集中し、労働、民生その他の各分野にわたり複雑かつ困難な問題が生じている。こうしたことから、関係機関の協力の下、各地区の特性に応じ、労働対策や福祉対策等の総合的な対策の推進を図る必要がある。労働対策としては、健全な労働市場の育成に努め、就労あっせんの正常化や青空労働市場の解消を図る。

 一方で、近年、大都市を中心に、道路、公園、河川敷等で野宿生活を送っているいわゆるホームレスが増加して、大きな社会問題となっている。こうした現状を踏まえ、関係省庁及び地方公共団体による連携の下、生活・就労の一体的な相談・自立支援体制の確立を図り、就労意欲のある者に対しては職業相談や公共職業訓練等を実施し、就労による自立に向けた支援を行う。



(3)その他

 同和関係住民の雇用対策としては、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」に基づき、事業の公正な運営にも十分留意しつつ、中高年齢層を中心とする不安定就労者の職業の安定を最重点に、きめ細かな職業指導、職業相談、知識・技能の付与の施策を講ずるほか、就職の機会均等を確保する観点から公正な採用選考システムの確立が図られるよう企業等に対する指導・啓発を推進する等、一般対策の中で実施される雇用施策の効果的な運用に努める。

 ウタリ地区住民の雇用対策としては、各種就職援護措置の活用、きめ細かな職業指導、職業訓練、職業紹介等を実施する。

 中国残留邦人等永住帰国者については、特に、言葉や生活習慣の相違等により、職場への適応が困難な場合が多いことから、日本語教育、生活指導等を行う関係機関との連携の下に、職業転換給付金等を活用し、職業相談、職業訓練、職業紹介等を実施する。



 
 

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9 国際化への対応



(1)国際協力等の推進

 経済社会のグローバル化が進展しており、また、先進諸国において、依然として高水準の失業が継続していることを背景に、サミット、雇用サミットやOECD、ILO等の場で雇用問題が重要議題として取り上げられているところである。

 我が国としても国際会議、国際機関の活動等に積極的に参加し、我が国の立場を主張しつつ諸外国の経験を参考にするとともに、雇用問題を始めとする社会労働問題の解決に向けて、国際機関の活性化、相互連携等に積極的に貢献していくことが重要である。

 また、南北間格差が拡大傾向にある中、開発途上国を始めとする現地の労働者の能力開発、労働条件の向上、職業紹介業務の充実を図ることにより、就業の促進を図ることが必要であり、このことは海外からの我が国への労働力供給圧力の減少にも資することにもなる。このため、開発途上国に対して職業訓練施設の設置・運営等労働者の能力開発に係る専門家を派遣するなどの技術協力を充実するほか、研修生の受入れ等を通じて人づくりなどへの国際協力を積極的に推進する。

 また、地域的な枠組みの中で、域内の経済発展等を目的とするアジア太平洋経済協力(APEC)の人材養成分野の諸活動に対し、積極的な支援を行う。なお、技能実習制度については、開発途上国への技能移転の観点から、研修生送出し国のニーズも踏まえ、対象職種の見直しを行うなど、関係機関と連携し、適正かつ円滑な推進に努める。

 このような対応は機敏に行うことが求められており、その対応を的確かつ円滑なものとしていくため、各国との意見・情報交換を緊密に行うことを始め、諸外国の労働関係情報を迅速かつ正確に収集、分析及び提供することも必要である。

 こうした中、国際間の相互理解の促進のため、また、若年者が国際的な視野を養うことができるよう、ワーキング・ホリデー制度の円滑な運用を図ることも重要である。



(2)外資系企業対策

 経済のグローバル化が進展する中、我が国に進出している外資系企業の数は近年増加している。政府として対日投資を積極的に支援していく方針もあり、今後もその数はさらに増加するものと見込まれる。

 外資系企業の増加は、雇用慣行に影響を与えるとともに、雇用創出に寄与するものと考えられるため、対日投資促進に向け、労働事情に関する情報の海外の企業への積極的な提供の実現を図るとともに、国内における外資系企業に対する人事労務管理等に関する相談及び援助に努める。



(3)企業の海外進出対策

 企業活動の国際化に対応した職業能力開発を支援するため、海外進出企業の現地労働者を訓練できる指導者の養成、現地の労働事情を含めた職業訓練に関する情報提供・相談援助事業等を推進する。また、現地の労働者の能力開発を図るために、海外進出企業や現地経営者団体等との連携の下に、現地労働者に対する研修を実施する。さらに、企業の円滑な海外進出のために、現地の労働条件や雇用慣行等の情報をより迅速かつ的確に収集し、提供する。



(4)外国人労働者対策

 経済社会のグローバル化に伴い、我が国の企業、研究機関等においては、世界で通用する専門知識、技術等を有し、異なる教育、文化等を背景とした発想が期待できる専門的、技術的分野の外国人労働者に対するニーズが一層高まっている。

 このような状況の中で、我が国の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れをより積極的に推進する。

 また、我が国の経済、社会等の状況の変化に応じて在留資格及び在留資格に関する審査基準によって規定される外国人労働者を受け入れる範囲については今後も見直すこととする。ただし、受入れ国としてみた日本には、周辺に巨大な人口を有し、かつ経済的に発展途上にある国が多いことから、巨大な潜在的流入圧力が存在していることに留意すべきである。このため、我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案しつつ、雇用情勢の悪化等我が国の労働市場の状況を反映して的確かつ機動的に入国者数を調節できるような受入れの在り方についても検討する必要がある。

 なお、いわゆる単純労働者の受入れについては、国内の労働市場にかかわる問題を始めとして日本の経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼすとともに、送出し国や外国人労働者本人にとっての影響も極めて大きいと予想されることから、国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対応することが不可欠である。

 また、単に少子・高齢化に伴う労働力不足への対応として外国人労働者の受入れを考えることは適当でなく、まず高齢者、女性等が活躍できるような雇用環境の改善、省力化、効率化、雇用管理の改善等を推進していくことが重要である。

 以上の基本方針に基づき、我が国における外国人労働者の就労環境の一層の整備を図る。そのため外国人労働者の雇用の動向の把握に努めるとともに、公共職業安定機関の外国人求職者等に関する職業紹介、職業相談機能・体制の一層の整備・充実に努め、また、雇用管理の改善を図るための事業主への指導、援助等の一層の充実を図る。特に、留学生については、専門的、技術的分野の外国人労働者の積極的な受入れを推進する観点から、就職支援等の充実を図る。日系人労働者については、違法なブローカーの活動等により雇用面のトラブルが生じやすい点にかんがみ、公的就労経路の充実、雇用管理の改善等により、日系人の適正な雇用が確保されるよう努める。

 不法就労対策については、関係行政機関との連携、協力の下、人権擁護に留意しつつ、悪質な仲介業者や事業主の取締りの強化、事業主への啓発・指導等、的確な措置を講ずるとともに、我が国での適正な就労を促進するため、不法就労外国人を多く送り出している国等において、我が国の外国人労働者受入れ方針、制度等に関する周知、啓発を推進する。

 また、労働基準関係法令等に基づき外国人労働者の労働条件及び安全衛生の確保を図る。

 さらに、秩序ある国際労働力移動を実現するため、関係国際機関、各国政府との国際労働力移動に関する情報交換の促進、連携の強化に努める。





  

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(参考)

2010年頃の完全失業率の見通し



 本計画期間においては、労働市場が大きな構造変化に直面する中で、労働力需給のミスマッチが拡大し失業が更に増大する可能性がある。

 こうした中、2010年頃の完全失業率は3%台後半〜4%台前半と見込まれるが、適切な経済運営に努め、持続的、安定的な経済成長の実現を図るとともに、新規雇用機会の創出、職業能力開発や職業能力評価の充実、労働力需給の調整機能の強化を図ること等により、できる限り低くするよう努める必要がある。