HOMEPAGE 640/480
安全衛生管理

9次防労働災害防止計画
21世紀を担う人々が安全で健康に働ける職場の実現を目指して


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1 計画のねらい基本的考え方これまでの取組本計画の基本方針
2 計画の期間
3 計画の目標
4 労働災害防止のための課題
労働災害の動向
  業種別(/建設業製造業陸上貨物運送事業第三次産業)/規模別年齢別災害の種類別
労働者の健康確保
  職業性疾病化学物質健康の保持増進
安全衛生管理をめぐる課題
  新しい視点に立った安全衛生管理手法自主的管理の推進
転換期の産業社会における安全衛生面の課題
  高年齢労働者精神的ストレスへの対応快適環境新技術就業形態の変化規制緩和国際動向への配慮

5 重点対象分野における労働災害防止対策
  業種別対策(/建設業陸上貨物運送事業第三次産業
  特定対策機械設備交通労働災害爆発・火災
6 労働者の健康確保
  職業性疾病化学物質職場における健康確保対策ストレスマネジメント健康づくり快適な職場環境
7 安全衛生管理対策の強化
  中小規模事業場安全衛生管理手法自主的活動人的基盤の充実高年齢労働者外国人労働者
8 安全衛生行政の展開
  ・新たな行政展開
  情報提供体制の整備調査研究行政体制労働災害防止団体国民安全への貢献
  調査研究の推進国際的視点


      労働災害防止計画
      「21世紀を担う人々が安全で健康に働ける職場の実現を目指して」(平成10年3月24日公示)


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1 計画のねらい


(1)基本的考え方

 働く人々の安全と健康を確保することは、労働福祉の基本であり、また、国民的課題である。
 このような前提の下に、事業者は、自ら設定した職場環境において、労働者の安全と健康を確保しなければならず、労働者も、自らの役割を自覚して、事業者が行う安全衛生活動に積極的に参加することが必要である。
 労働災害は、関係者の努力により長期的には着実に減少してきているが、従来型の災害を中心に、今なお、年間60万人もの労働者が被災し、死亡者も2,0 00人を超えている。
 一方、現在、我が国産業社会は、内外にわたる環境や構造の大きな変化に直面しており、情報化、サービス経済化に伴い働き方が変化し、高年齢者や女性、若者を始めとして様々な働き方を求める労働者が増加するなど、労働者の就業形態の多様化が進行するとともに、個々の事業場においても、技術革新等により機械設備を含めた職場環境が大きく変化してきている。
 このような変化は、企業の安全衛生への取組、労働者の安全衛生意識、職場環境において求められる安全衛生水準等に影響を及ぼし、今日の我が国の安全衛生対策に新たな課題を与えるものである。
 本計画は、このような状況を踏まえ、我が国における労働災害防止対策の基本的事項を示すものである。


(2)これまでの取組

 労働災害防止対策の実効を上げるには、政府、事業者等関係者が一体となって、総合的かつ計画的に実施する必要があることから、政府は、自らの施策を明らかにするとともに事業者等の自主的活動のための指針を示すため、労働災害防止計画を策定している。
 このような趣旨から、昭和33年、産業災害防止総合5か年計画が策定されて以来、8次にわたって労働災害防止計画が定められてきたが、昭和30年、40年代の第1次から第3次の計画では、最低労働条件を定める労働基準法の下で、多発する死傷災害の防止が最も重要な課題であった。
 昭和47年に労働安全衛生法が施行された後の第4次から第8次の計画では、より高い安全衛生水準の確保が課題として取り上げられ、特に最近は、労働災害を防止することはもとより、健康保持増進対策、快適職場形成等の課題も取り上げられてきている。
 このように労働安全衛生対策は、最低基準の確保を図りつつ、国民のニーズに応じてより高い安全衛生水準を確保することに展開してきつつあり、今後もこのような方向性を継続する必要がある。


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(3)本計画の基本方針

 本計画は、以上の点を踏まえ、21世紀の我が国を担う人々が安全で健康に働ける職場を実現するため策定したものであり、国際化、高度情報化の進展にも配慮しながら、主に次のような課題に対応しようとするものである。

@ 死亡災害の撲滅

 一人一人の労働者は、皆、家族を持ち、家族を支え、社会においてそれぞれに役割を担うかけがえのない存在であることから、労働者の生命が損なわれるようなことは、あってはならないことである。
 しかしながら、一年間に60万人もの労働者が被災し、死亡者数も、昭和56年に3,000人を下回って以来、減少傾向にあるものの、平成8年においても2,363人を数えており、16年間、2,000人台にとどまっていることから、まず、このような状況を打破し、死亡災害の大幅な減少を図る。

A 中小企業における安全衛生の確保

 我が国全体の安全衛生水準は、着実に向上してきているが、中小企業における安全衛生管理は、必ずしも十分なものとは言えず、中小企業の労働災害発生率は、大企業に比べて高くなっている。このため、労働災害防止措置の履行確保を図るとともに、中小企業の自主的な努力や集団的な取細を促進するなど適切な支援を実施する。

B 高齢社会の進展に伴う安全衛生の確保

 我が国は、世界に類を見ない少子・高齢社会に向かいつつあり、高年齢者の就業がますます増加し、各職場における高年齢者の占める割合が増加していくことが見込まれる。高年齢労働者にあっては、労働災害の発生率が高く、また、健康診断の有所見率も高いが、このような高年齢労働者が安心して働き、その能力を十分に発揮することが社会の活力につながる。
 これまで一般的な安全衛生対策に加える形で高年齢労働者を対象とした安全衛生対策を講じてきたが、今後は、若年労働者と高年齢労働者が混在して同じ作業に従事することを前提として、安全衛生対策を講じていく。

C 新しい安全衛生管理手法の導入

 最近の安全衛生管理の実態をみると、安全衛生管理のベテラン担当者の退職等に伴い、その安全衛生に係る知識や労働災害防止のノウハウがうまく継承されていないといった問題が指摘されている。
 また、我が国の事業場の大部分を占める小規模事業場では、一般に安全衛生に関する知識等を有する人材も十分ではなく、安全衛生管理体制が整っていないところも少なくないと考えられる。
 このようなことから、個人的能力に左右されることが少ない連続的、継続的な安全衛生管理手法、事業場外部の専門家・機関を総合的に活用して各種安全衛生対策を進めるための仕組みづくり等新たな視点に立った安全衛生管理手法の開発・導入を進める。

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D 最近における業務上の心身の負担の増大等に対応した労働衛生対策の推進

 国民生活は、豊かになってきたものの、依然として、じん肺、有機溶剤中毒等の職業性疾病は後を絶たず、また、最近では、一般健康診断結果において何らかの指摘を受ける労働者が増加している。
 今後、産業社会が大きく変化していく中で、業務の質的変化等による心身の負担の一層の増加が懸念されており、我が国社会の健全な発展という観点からも、職業性疾病予防はもとより、職場においてより積極的に労働者の健康の確保を図っていくことが求められている。このため、産業保健推進センター、地域産業保健センター、労災病院等産業保健に係る機関のネットワーク化を図る等により、産業保健サービスを広く提供する。さらに、誰もが働きやすい快適な職場環境の形成を進めていく。

E 原点に立ち返った安全衛生意識の高揚

 経済活動のグローバル化が進み、企業の世界的競争が激化する中で、生産性の向上、効率化が重視される余り、安全衛生対策が看過されることが懸念されている。
 また、長期的に労働災害が減少し、労働災害を体験した人が減ってきたこともあり、個々の労働者の安全衛生に関する感度の低下も考えられるので、特に若年層を中心に安全衛生への関心を高めていくことが求められている。
 このため、事業者、労働者の安全衛生意識のレベルがかつて多くの労働災害を経験した時代のレベルに低下することのないよう、改めて原点に立ち返って安全衛生意識の高揚を図るとともに、一般国民を含め、広く労働災害防止の重要性を訴えてもいく。


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2 計画の期間

 平成10年度を初年度とし、平成14年度を目標年度とする5か年計画とする。
ただし、この計画期間中に労働災害防止に関し、特別の事情が生じた場合は、必要に応じ計画の見直しを行うものとする。
 また、計画期間中において、適宜、計画の進捗状況を把握し、これに基づき対策の推進を図るものとする。


3 計画の目標

@死亡災害については、年間2,000人台で一進一退を繰り返している現状を打破し、その大幅な減少を図ること
A計画期間中における労働災害総件数を20%減少させること
Bじん肺、職業がん等の職業性疾病の減少、死亡災害に直結しやすい酸素欠乏症、一酸化炭素中毒等の撲滅を図ること
C産業保健サービスの充実等労働者の健康の保持増進及び快適な職場環境の形成を推進することを目標とする。


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4 労働災害防止のための課題

 労働災害防止のための課題は、次のとおりであり、これらに対応した具体的な対策については、「5重点対象分野における労働災害防止対策」から「7安全衛生管理対策の強化」までに、また、それらを円滑に実施するための体制等については、「8安全衛生行政の展開」にそれぞれ示す。

(1)労働災害の動向等からみた課題

 労働災害は、昭和36年を頂点として長期的に減少してきている。しかし、なお、毎年60万人もの労働者が被災し、そのうち休業4日以上の死傷者が16万人を占めている。また、今なお毎年2,000人を超える労働者が死亡している。特に、死亡災害については、昭和56年に初めて3,000人を割って以降、16年間2,000人台で推移しており、大きな減少が見られない。
 また、一度に3人以上が被災する重大災害は、年間200件前後で推移しており、減少の傾向が認められない。

イ 業種別労働災害発生状況

(イ)建設業

 建設業における労働者数は、全労働者の約1割に当たるが、労働災害については、全産業の休業4日以上の死傷災害の約3割、死亡災害の約4割を占めている。
 建設業における労働災害防止では、元方事業者が重要な役割を担っているが、大手総合工事業者よりも中小地場総合工事業者が元請となっている現場において多発している。
 災害の種類別では、墜落・転落災害が死亡災害の約4割を占め、また、建設機械による災害が約2割を占めている。
 このほか、砂防・治山工事における土石流災害などのように一時に多数の労働者が被災し、社会的に注目される重大な災害が多発する状況にある。

(ロ)製造業

 製造業においては、休業4日以上の死傷災害で全産業の約3割、死亡災害で全産業の約2割、一度に3人以上が被災する重大災害で全産業の約3割を占めている。労働災害の種類別でみると、死亡災害では交通労働災害が全体の約2割を占め、休業4日以上の死傷災害では、機械設備による挟まれ・巻き込まれ等の災害が全体の5割近くを占めている。また、重大災害では、交通労働災害や爆発・火災災害が多い。

(ハ)陸上貨物運送事業

 陸上貨物運送事業においては、近年、貨物輸送量の増加や事業の新規参入に係る規制緩和に伴って、事業場数、労働者数共に増加し、また、輸送サービスの多様化により、作業内容等も変化してきている。休業4日以上の死傷災害で全産業の約1割、死亡災害で全産業の約2割を占め、この数年間、労働災害の発生件数の減少率が低く、特に死亡災害は増加傾向で推移している。
 労働災害の種類別では、死亡災害の約7割を交通労働災害が占め、また、休業4日以上の死傷災害では、荷役作業中の墜落・転落災害や荷の落下等による災害が多く発生している。

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(ニ)第三次産業

 第三次産業(交通運輸業、陸上貨物運送事業及び港湾貨物運送事業を除く。以下同じ。)においては、サービス経済化の進展により、事業場数、労働者数共に増加しており、休業4日以上の死傷災害で全産業の約3割、死亡災害で全産業の約2割を占め、しかも休業4日以上の死傷災害では、第三次産業の占める割合が年々増加している。
 第三次産業全体でみると、死亡災害の約5割を交通労働災害が占め、休業4日以上の死傷災害の約2割を転倒による災害が占めているが、多種多様の業種が集まっている第三次産業では、労働災害の発生態様は業種によってそれぞれ異なっているため、それに応じた対策が必要である。

ロ 事業場規模別労働災害発生状況

 労働者数が300人未満の中小規模事業場において全労働災害の約9割が発生している。
 また、労働者数100人から299人の規模と労働者数30人から49人の規模の事業場の災害発生率を労働者数1,000人以上の規模の事業場と比較すると、それぞれ5倍、8倍となっており、事業場規模が小さくなるに従って労働災害の発生率が高くなっている。

ハ 年齢別労働災害発生状況

 休業4日以上の死傷災害の災害発生率を被災者の年齢別にみると、30歳台が最も低く、年齢が高くなるに従って高くなっており、50歳台では、30歳台に比べ約2倍となっている。また、20歳未満の若年労働者でも災害発生率が高くなっている。
 さらに、50歳以上の状況をみると、労働者数は全労働者数の約3割であるにもかかわらず、休業4日以上の死傷者数は全体の5割近くを占め、しかも、その割合も増加する傾向にある。

ニ 災害の種類別労働災害発生状況

 労働災害を災害の種類別にみると、休業4日以上の死傷災害では、墜落・転落災害、機械等による挟まれ・巻き込まれ災害が多い。また、死亡災害では、墜落・転落災害、交通労働災害がそれぞれ全死亡災害の約3割を占めている。


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(2)労働者の健康確保をめぐる課題

イ 職業性疾病の発生状況

 じん肺については、いまだに新規有所見者が発生しており、トンネル建設作業、アーク溶接作業などのほか、窯業等の製造業についても、引き続き、じん肺対策に取り組むことが必要である。また、既にじん肺有所見となっている者についても、じん肺の進行及び合併症を防止するために適切な健康管理が求められている。
 腰痛については、広く様々な業種、作業において、年間5,000件以上発生している。また、OA化はますます進展すると見込まれ、VDT作業に伴う健康影響が懸念される。

ロ 化学物質による健康障害の予防対策の必要性

 酸素欠乏症、硫化水素中毒、一酸化炭素中毒、有機溶剤中毒等の急性疾病は、死亡災害や重大災害につながることが多く、発生件数も増減を繰り返している。特に、一酸化炭素中毒及び有機溶剤中毒は、建設業で多発している。また、化学物質に係る法定特殊健康診断における有所見者数は、年間約3万人に及んでいる。これらのことから、関係事業者に基本的措置の徹底を図る必要がある。
 さらに、廃棄物処理業におけるダイオキシン発生のように、人への健康影響が強く危倶され、社会的に大きな問題となるものも出てきている。
 これらの化学物質以外にも、現在5万種を超える化学物質が労働の現場で使用されており、しかも毎年多数の新規物質が職場に導入されている。これらの中には、2-ブロモプロパンのように、その後の新たな知見によって有害性が判明したものもある。
 このような現状の中で、職業がんを含めた化学物質による健康障害を予防するには、まず、事業者がその事業において取り扱う化学物質の有害性等を正しく把握して、対策を講ずる必要がある。そして、事業者のこのような取組を促進するため、既存の有害性情報等の伝達の促進を図るとともに、有害性等が明らかになっていない化学物質については、国際的動向に配慮しつつ、関係者が協力して発がん性試験等の有害性調査を進めていく必要がある。

ハ 健康の保持増進の必要性

 最近の一般定期健康診断結果をみると、平成8年では有所見となった者が38%にも及んでおり、その中で、脳血管疾患や虚血性心疾患などにつながる所見を有する者も増加している。
 脳血管疾患や虚血性心疾患等の発症・進行には生活習慣が深く係わっているが、日常業務を超えた特に過重な業務に従事した場合、その作業に関連して基礎疾患が急激に著しく増悪し、これらの疾病が誘発されることもあり、それらの予防を重視する観点から労働者の適切な健康管理や健康保持増進の重要性が改めて指摘されてきている。
 心の面では、仕事や職場生活で悩みやストレス等を感じる労働者が57%にも上っており、心の健康を守ることが重要な課題となっている。
規模別でみると、小規模事業場では、大規模事業場よりも相対的に労働者の高齢化が進んでいること等により、大規模事業場に比べて健康診断の有所見率が高くなっているにもかかわらず、それらの健康診断の実施率は低く、また、健康づくりに対する取組も必ずしも十分とは言えない状況にある。


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(3)安全衛生管理をめぐる課題

イ 新しい視点に立った安全衛生管理手法の必要性

 これまでに、事業場における安全衛生管理体制や活動の在り方については、法令等の整備も進み、一応の確立を見ており、長期的な労働災害の減少もその成果と言える。
 しかし、これまでの安全衛生管理は、労働災害が多発した時代を経験し、災害防止のためのノウハウを蓄積した者により、その維持・向上が図られてきたが、最近、これらの者が退職等により異動する場合に、この安全衛生管理のノウハウが事業場において十分に継承されず、事業場の安全衛生水準が低下し、災害発生につながるのではないかということが危惧されている。
 さらに、これまで無災害であった職場でも、「災害の危険性かない安全な職場」であることを必ずしも意味するものではなく、労働災害の危険性が内在していることから、この潜在的危険性を下げるための努力が求められている。
 他方、安全衛生管理に関する十分な知識、ノウハウを有する者が不足し、あるいは、そのような人材を自ら確保することが困難な事業場も少なくないことから、中小規模事業場で労働災害が多発する原因の一つには、こうした問題があると考えられる。
 これらのことに対応するために、新しい視点に立った安全衛生管理手法が求められている。

ロ 労使による自主的安全衛生の推進等の必要性

 労働災害を防止するためには、経営者が積極的に安全衛生管理活動を展開するとともに、これに応じて労働者一人一人が積極的に職場の安全衛生管理に参画することが必要であり、そのような場として安全衛生委員会が設けられているが、その活動は必ずしも活発でない状況にある。
 また、労働災害の減少を図るためには、直接労働者を指揮し、まとめ役を務める職長等の役割が重要である。


(4)転換期の産業社会における安全衛生面の課題

 我が国産業社会は、転換期にあり、労働安全衛生問題にも重大な影響を与えることが予想されることから、次の点に留意しつつ、対策を講じていく必要がある。

イ 高年齢労働者等への配慮

 21世紀初頭には、労働力人口の約5人に1人が60歳以上の高年齢者になると見込まれている。こうした中で、今後、社会を支える側に回る高年齢者が元気に安心して働けるような条件を整える必要がある。
 また、雇用における男女の均等な取扱いが進むに従って、女性の就業はますます増加し、その就業分野も拡大するものと見込まれる。
こうした状況にかんがみ、これまでの安全衛生基準についても、今後、高年齢労働者等の増加を念頭に置き、高年齢労働者等を含めたすべての労働者が安心して健康で働けるようにすることが求められている。

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ロ 増大する精神的ストレス等への積極的対応

 OA機器の導入による事務処理に関する作業態様の変化やFAの導入による作業の高度化と調整、保全作業の複雑化を始め、労働環境が大きく変化していく中で労働者のストレスがますます増大していくことが懸念され、積極的な対応が求められている。


ハ 快適な職場環境の形成

 技術革新等の急速な進展等により、職場における作業態様や労働環境が目まぐるしく変化し、疲労やストレスを感じている労働者が多く、また、今後、高年齢者の増加、女性の就業分野の拡大、就業形態の多様化が見込まれる中で、労働安全衛生法等で定められた最低基準を満たすのみならず、すべての労働者にとって働きやすい快適な職場環境の実現が必要である。



ニ 新技術等への対応

 新技術、新材料等は、生産性の向上や生活の利便をもたらす反面、コンピュータ制御による自動生産システムや建設用ロボットを用いた大型建造物の施工システム、超微粉取扱工程等の導入に際して労働災害や有害性情報の乏しい化学物質による健康障害などが懸念される。


ホ 就業形態等の変化への対応

 近年、パートタイム労働、派遣労働、アルバイト等の形態で就業する労働者の比率は、全産業、全企業規模で共通して増加している。平成8年には19.8%に達しており、就業形態の多様化が進んでいると考えられる。また、情報通信システムの発達は、テレワーク等の新しい就業形態を実現しつつある。さらに、各企業では、下請・外注化、分社化などのいわゆるアウトソーシングが進んでいる。
 特に、派遣労働については、派遣元事業主と派遣先事業主のいずれの安全衛生も不徹底となってしまう等の問題が懸念される。
 このような就業形態の多様化が安全衛生管理に及ぼす影響及び問題点を把握し、必要な対策を講ずる必要がある。

へ 規制緩和への対応

 市場原理と自己責任原則の時代においても、労働者の安全と健康は、事業者の責任において確保されることが前提であり、このための規制の必要性は変わらない。
 しかし、経済社会の変化や技術の発展に対応し、安全衛生水準の低下をもたらさないよう留意しつつ、規制の内容を見直し、適切なものにしていく必要がある。

ト 国際動向への配慮

 安全衛生対策を進めるに当たっては、経済のグローバル化に伴い、国際的動向に配慮することが必要である。
 さらに、海外との間で人の往来も頻繁になってきている。外国人労働者、技能実習生は、今後も増大していくと見られ、言葉の違い等に配慮した安全衛生の確保について適切な対応が求められている。海外進出企業については、日本人労働者及び現地労働者の安全衛生確保に配慮する必要がある。また、我が国の安全衛生分野のノウハウ、経験等を開発途上国等へ移転することが求められている。


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5 重点対象分野における労働災害防止対策


(1)業種別労働災害防止対策

 次に掲げる業種別対策を重点的に推進する。また、林業、港湾貨物運送事業その他の災害発生率の高い業種についても積極的に対処していく。

イ 建設業対策

 元方事業者を中心とした総合的な労働災害防止対策の推進を図る。特に、中小地場総合工事業者の専門工事業者に対する安全衛生管理についての指導力を高めるため、新任現場代理人教育及び新規入場者教育の支援等の総合的な施策を実施する。
 また、専門工事業者自身の安全衛生管理能力の向上を図るための施策を推進する。
 墜落・転落災害を減少させるため、不安全行動防止のための対策手法の開発・普及、高所作業を伴わない工法の開発・普及、高機能・簡易な安全帯及び安全ネットの開発・普及、木造家屋等低層住宅建築工事における足場先行工法の普及・定着などを推進する。
 さらに、建設機械等による災害を減少させるため、接触防止のための検知装置の開発・普及等による建設機械等の安全性の向上を図る。
 このほか、上下水道、道路工事における土砂崩壊や砂防・治山工事における土石流災害のような特定の工事における特有の災害に対応するため、工事の種類別に安全ガイドラインの策定・普及を行うなどの安全対策も併せて進める。
 また、粉じん障害の防止についての総合的な対策を推進するとともに、一酸化炭素中毒、有機溶剤中毒等の防止対策の徹底を図る。
 これら労働災害防止対策の実施に当たっては、発注機関の協力が不可欠であり、今後とも発注機関と連携して労働災害防止のための積極的な推進を図っていく。

ロ 陸上貨物運送事業対策

 交通労働災害防止対策の徹底を図るとともに、荷役作業における墜落・転落災害や荷役機械による災害等の防止対策を徹底するため、現場に対して、直接作業指示を行う事業場において、現場の作業状況を的確に把握し、適切な指導を実施する等の安全衛生活動の促進を図る。
 また、複数の事業場が混在して作業を行うトラックターミナルにおける安全衛生管理活動の促進を図る。
 このほか、荷主等に対し、発注条件の適正化の促進を図るとともに、荷の積卸し現場における安全な作業環境の整備促進を図る。

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ハ 第三次産業対策

 交通労働災害防止対策の徹底を図るとともに、安全衛生管理活動の充実を図るため、必要な安全衛生対策について法令事項を含め総合的に取りまとめたガイドラインを業種別に策定し、その徹底を図る。
 また、全国レベルでの業界団体の労働災害防止活動を活性化するため、これらの業界団体に対する支援を行うとともに、当該業界団体が属する業種を対象とした総合的な労働災害防止活動の促進策について検討する。
 さらに、地域レベルにおいて、これらの業種に係る事業者団体等との連絡協議の場を設けるなど、安全衛生活動の促進及び安全衛生情報の周知を図る。
 このほか、安全衛生管理上問題の多い第三次産業の事業場に対して、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等による安全衛生診断を促進する。


(2)特定災害防止対策

イ 機械設備に係る労働災害防止対策

 職場において使用される機械の種類は多岐にわたるとともに、技術革新等により新しい機械も導入されていること等から、すべての機械設備に適用される包括的な安全基準の整備を図る。
 機械設備は、故障や作業者の誤操作があっても安全が確保されることが基本であり、そのためには、機械設備のフェールセーフ化、フールプルーフ化を積極的に推進する必要がある。特にフェールセーフ化については、これまでの技術的ノウハウの集積等を踏まえ、フェールセーフ化の技術指針を策定することにより機械設備の本質安全化を促進する。
 機械設備を使用する事業者が、機械設備に係る災害防止対策を的確に進めるには、その機械設備の機能のみならず、危険情報についても機械設備の製造者から正しく周知される必要があることから、機械設備の危険情報の開示の促進を図る。
 また、プレス機械・木材加工用機械による労働災害は、依然として後を絶たず、身体に障害が残る場合も多いこと等から、これら機械の一層の安全化を図るとともに、当該機械を使用する作業の安全化を促進する。
 さらに、クレーン等については、機体の転倒災害、玉掛けに関する災害等が多発していることから、これら災害の防止対策の充実を図る。

ロ 交通労働災害防止対策

 交通労働災害を防止するためには、事業者は、労働者に単に交通に関する法令の遵守を求めるだけでなく、一般の労働災害防止対策と同様に、事業場において組織的に取り組むことが重要である。このような観点から定められた交通労働災害防止のためのガイドラインの徹底を図るとともに、事業場における交通労働災害防止に係る管理水準の向上のため、交通労働災害防止指導員による個別指導の実施、事例研究会の実施、モデル事業場の育成等の支援の充実を図る。
 さらに、自動車運転業務に従事する者の労働時間管理、健康管理と併せて携帯電話の安全な使用対策の徹底を図るとともに、荷主等に対し、発注条件の適正化の促進を図る。

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ハ 爆発・火災災害防止対策

 化学プラントに係るセーフティ・アセスメントの充実、非定常作業の安全衛生管理の充実、安全衛生管理のノウハウの継承等を含む化学工業における総合的な安全衛生管理の推進を図る。
 また、廃棄物処理業等における爆発・火災災害の防止対策の徹底を図る。
 さらに、粉じん爆発防止対策の充実を図る。


6 労働者の健康確保対策

 労働者の健康確保対策については、特に、産業保健関連機関の機能の強化、ネットワークの形成を図りつつ、次のような対策を推進する。

(1) 職業性疾病予防対策

 粉じん障害の防止については、じん肺の発生を防止するための工学的対策と健康管理対策について、長期的な観点に立って総合的な対策を推進する。工学的対策として、プッシュプル型換気装置に係る基準の整備及びその普及並びにじん肺の新規有所見者の発生が多いアーク溶接作業等における作業環境の改善手法の確立を図る。また、製造業などの中小規模事業場を対象として、粉じん障害の防止に関するモデル事業を実施するとともに、トンネル建設作業に従事する労働者の粉じんへのばく露を低減するため、粉じん濃度の測定手法、換気装置等の粉じん対策等について検討し、その徹底を図る。
 さらに、既にじん肺の所見を有する者に対しては、適切な健康管理対策を講じるとともに健康管理教育の実施を定着させる。
 呼吸用保護具については、その性能をより一層確保するため、買取り試験の実施体制を整備する。
 腰痛予防対策については、関係者に対する労働衛生教育の実施を推進する等により、腰痛予防対策指針に基づく対策の定着を図る。
 また、電離放射線による健康障害の防止については、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告等を踏まえ、今後、対策の見直しを行い、その定着を図る。
 騒音性難聴の予防対策については、最近の知見を踏まえ、騒音障害防止のためのガイドラインの見直し等による対策の充実を図る。さらに、VDT作業における労働衛生対策を推進する。


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(2) 化学物質に係る健康障害予防対策

 酸素欠乏症、硫化水素中毒、一酸化炭素中毒、有機溶剤中毒等については、過去の災害事例を活用し、対策の充実を図る。特に、建設業における一酸化炭素中毒、有機溶剤中毒については、その予防のためのガイドラインの周知を図る。
 さらに、専門家による検討結果等に基づき、発がん性、生殖毒性等の有害性が認められた物質に係る職業がん等の健康障害予防対策を推進する。このために、国は、作業環境測定手法、健康診断手法等の調査研究を進める。
化学物質による健康障害を予防するため、事業者は取り扱う化学物質の有害性を把握する必要があり、その確実な実施を図る。
 こうした事業者の取組を促進するため、化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針に基づき、化学物質等安全データシート(MSDS)の作成・交付等の推進を図るとともに、その作成者等に対する教育を実施する体制を整備する。
 また、安全衛生情報センター(仮称)の活用等により、化学物質の有害性情報、災害事例、健康障害予防対策等必要な情報の提供体制の整備を図る。
 そのほか、廃棄物処理業におけるダイオキシン類へのばく露状況等の調査を行い、ばく露防止対策を確立するための検討を行う等業種の特性に対応した未規制の化学物質による疾病予防のための情報の整備及び対策の確立・推進を図る。
 有害性が明らかになっていない化学物質については、日本バイオアッセイ研究センター及び安全衛生情報センター(仮称)と連携しつつ、発かん性、変異原性等の有害性調査を実施し、その結果に基づき関係事業者による適切な管理を推進する。
 また、これら有害性調査を効果的に実施するため、日本バイオアッセイ研究センター等を含めた有害性調査の実施体制を整備する。


(3)職場における着実な健康確保対策

 労働者の心身の健康を確保し、職業性疾病や作業関連疾患を予防するためには、事業場での適切な産業保健活動の実施が不可欠である。そのため、産業医、衛生管理者等の産業保健スタッフの選任の徹底と専門性の向上を図るとともに、健康診断の実施とその結果に基づく適切な就業上の措置の徹底や産業医、衛生管理者による職場巡視等の産業保健活動の活性化を図り、労働者の健康確保を推進する。この際、小規模事業場についても、小規模事業場産業保健活動支援促進事業を活用する等により、健康確保対策の推進を図る。
 また、産業医の勧告に基づく措置が適切に実行できるようにするためにも、産業保健スタッフと労務管理部門や生産部門との連携の強化を図る。
 さらに、産業医その他の産業保健関係者を支援する産業保健推進センター、小規模事業場に対して産業保健サービスを提供する地域産業保健センター、労災病院等のネットワーク化等による産業保健サービス機能の充実・強化を推進する。併せて、産業保健推進センターを計画的に整備し、全国展開を図るとともに、多様な産業保健ニーズに対応した地域産業保健センターの機能の強化を図る。
 また、作業関連疾患の予防に関する普及・啓発を図る。
 なお、これらの健康確保対策の推進に当たっては、健康情報がプライバシーに係る個人情報であることに留意し、その保護に十分配慮する。
そのほか、平成9年4月から全面的に実施された週40時間労働制を基盤として、労働時間の短縮を進めるに当たり、特に労働者の心身両面にわたる健康を維持する観点から、連続休暇の普及拡大等による年次有給休暇の取得促進を図るとともに、疲労やストレスの原因となる長時間残業の削減に努める。


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(4)ストレスマネジメント対策

 増大する精神的なストレスに対する対策として、ホワイトカラーを始めとする様々な職種を対象に、ストレスによる健康障害等の予防のための総合的な調査研究を実施し、その成果の普及を図る。特に、管理監督者に対する研修の充実、労働者自身がストレスを適切にコントロールすることができるような知識の付与等及びストレスに係る相談体制の整備等により、事業場におけるストレスマネジメントの普及を図る。


(5)健康づくり対策

 事業場における健康づくり対策は、事業場の規模、経営基盤、事業者の意識等によって様々な段階にあることから、その段階に応じた取組方策について検討を行う。
 また、健康づくりに対する労働者の自主的な取組を推進するため、現状把握及び要因分析等を踏まえ、労働者の望ましい自主的健康管理の在り方及びその具体的方策、労働者の自主的健康管理に対する国及び事業者の適切なサポート体制等についての検討を行い、労働者の積極的な自主的健康管理を推進する。


(6)快適な職場環境の形成

 高年齢者の増加、女性の就業分野の拡大、就業形態の多様化等に対し、すべての労働者にとって働きやすい快適な職場環境の実現を図るため、作業場の現状や労働者の意見の把握、快適職場推進計画の樹立、当該計画の実施、実施結果の評価等に基づいて、更なる快適化への取組を継続的かつ組織的に行うための管理手法及び管理状況の評価手法を開発し、これを普及する。
 また、職場における喫煙対策のためのガイドライン、快適職場形成のための業種別対策の周知とともに、高年齢者、女性等に配慮した快適化の措置等に関する情報の提供を図る。



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7 安全衛生管理対策の強化


(1)中小規模事業場対策

 中小規模事業場については、労働災害防止措置の履行確保を図るとともに、その自主的安全衛生活動を促進するため、これらの事業場に対して、労働災害防止団体の活動の浸透を図り、併せて、労働保険事務組合、中小企業団体等を通じて広く安全衛生情報の周知を図る。
 また、親企業が中心となった構内、構外の協力事業場を含めた総合的な安全衛生管理活動の一層の推進を図る。
 中小企業集団については、継続的、効果的な安全衛生活動が実施されるよう支援するとともに、個別の中小規模事業場については、自主的安全衛生活動を促進するための安全衛生診断事業及び職場環境を改善するための融資制度の活用を推進する。
 このほか、中小規模事業場の安全衛生活動を総合的に支援する体制を整備する。


(2)安全衛生管理手法の充実・強化

 経営首脳者の安全衛生に関する方針に基づく指導・指揮の下、安全衛生に関する年間計画の作成、安全衛生管理体制の整備、生産ライン各級の管理監督者の安全衛生に関する権限と責任の明確化等生産活動と一体となった安全衛生管理活動を推進するとともに、機械設備の導入、建設工事等の計画段階における安全衛生に係る有資格者の参画の推進等により事前評価の充実等を図る。
 また、安全衛生管理のノウハウの継承の実態、好事例などの把握を行い、安全衛生管理のノウハウの継承を図るためのガイドラインを策定する。
 災害発生の潜在的危険性を減少させ、事業場の安全衛生水準を向上させるために、「計画-実施-評価-改善」という一連のプロセスを明確化した連続的、継続的な安全衛生管理が必要であり、これが的確に行われるための新たな安全衛生管理手法については、労使の十分な検討を踏まえ、その導入を図る。
 さらに、安全衛生管理は、事業者の責任において実施されるべきものではあるが、事業場等の中には、これを十分に果たし得る体制にないところもあることから、こうした事業場については、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントの活用を促進するとともに、労使による災害防止活動を推進するという観点から、労災防止指導員の一層の活用を図る。そのほか、安全衛生管理についてのノウハウや実績を有する事業場外の組織を活用し、各種安全衛生対策を総合的に進めるための仕組みについて検討し、その導入を図る。


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(3)労使による自主的な安全衛生活動の推進

 労使による活発な安全衛生委員会の活動を支援するため、具体的な運営方法、調査審議の進め方等に関する検討を行い、これを踏まえた安全衛生委員会の活動に資するためのガイドラインを策定する。
 また、一定の技能と経験を有し、担当する現場の安全成績が良好な職長等を安全優良労働者として顕彰するなどにより、その社会的評価を向上させ、職長等の安全管理に対するインセンティブを高めるとともに、企業内の安全衛生の中核としての活動の促進を図る。
 さらに、危険予知活動等を普及促進することにより、安全衛生活動の活性化を図る。


(4)人的基盤の充実等

 労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント、作業環境測定士、衛生管理者等の有資格者の増加は、直接的な労働災害防止はもとより、広く安全衛生に関する知識の普及や安全衛生水準の向上に寄与することから、就業分野の拡大が予想される女性も含め、その資格の取得の促進を図る。
 就業制限業務に係る免許等の取得は、技能者の育成という効果もあり、そのための実技教習や技能講習の実施を促進する。
 また、新規採用時から始めて節目節目の教育、特別教育、職長教育、各安全衛生スタッフの能力向上教育の実施を促進する。
 さらに、シミュレーション等の新しい教育技法の活用を図るとともに、安全衛生教育指導者の資質向上のための養成機関の高度化及び各地の安全衛生教育サービス機関の充実・強化を図る。
 安全衛生意識の高い労働者を育てるためには、就業前の教育が効果的と考えられることから、学校段階から労働安全衛生に関する教育、啓発を充実する。
 そのほか、労働災害を防止するためには、労働者の家族も含め、広く国民一般の理解が必要であり、あらゆる機会を通じて労働災害防止の重要性を訴え、協力を求めていく。


(5)高年齢労働者の労働災害防止対策

 労働者の高齢化に伴う労働災害の増加要因に対応するため、高年齢労働者と若年労働者が混在して働く職場における労働災害防止のためのガイドラインを策定し、その徹底を図るとともに、職場における機械設備、作業環境及び作業方法の改善を行う中小企業等に支援を行う。
 また、高年齢労働者が転職等に当たって、必要な安全衛生上の知識と技能を十分に習得できるようにするため、その資格取得等の支援を行う。
さらに、職場の高齢化に対応した安全衛生基準の見直しに関する調査研究を行う。


(6)外国人労働者対策

 外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針に基づき、外国人労働者に対する雇入れ時の安全衛生教育等の実施の徹底を図るとともに、外国人労働者雇用事業場について労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等による安全衛生診断を促進する。また、外国人労働者の技能講習の受講機会の拡大を図るとともに、国際安全衛生センター(仮称)における外国語による各種安全衛生情報の提供等に努める。


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8 安全衛生行政の展開


(1) 新たな行政展開

イ 情報提供体制の整備

 労働災害を防止するためには、事業者、労働者が過去の具体的な災害事例とともに、その事業場での作業に係る危険性を十分に把握しておくことが基本であり、特に、経験のない新しい技術、機械、化学物質等を導入する際には、関連情報を入手し、これに基づき、事業場の労使が十分に協議して対処していくことが望まれる。
 また、設計者、製造者、輸入者等がそれぞれの立場で労働災害の発生の防止に努めるためにも、関係情報が手軽に入手できることが望ましい。これを支援するため国においても、安全衛生情報センター(仮称)等を通じて、必要な情報の収集、加工、提供を行う。
 また、労働災害防止の経験・ノウハウの情報を提供することにより、広く国民全般の安全に貢献していく。

ロ 調査研究体制の整備

 最近の労働災害は、機械の大型化・高度化、新しい技術・材料の導入等により、災害発生要因等の調査にも高度の専門性が要求される場合が少なくないことから、産業安全研究所、産業医学総合研究所等の研究機関の調査研究を一層充実するとともに、労働災害の発生に際しては、研究機関等と一体となった災害調査等の実施を図る。
 こうしたことを実現させるために、関係機関、団体を含めた情報ネットワークの強化を図っていく。
 産業安全研究所及び産業医学総合研究所においては、課題が多岐にわたり、かつ、産業技術の発展等に伴い変化するもので.あることから、他分野の専門家との緊密な連携の下に研究を推進するために、外部の専門家等の意見も聴きながら、今後の研究の方向、研究推進の戦略、研究環境の整備等について検討する。また、労働現場で生じている問題を的確に捉え、労働現場に適合した対策を策定するため、事業場等の第一線で活躍している産業医、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等との情報交換を密にし、労働現場のニーズに対応した研究を推進する。

ハ 行政体制の整備等

 産業構造・就業形態の変化等産業社会の変化に対応して、関係法令の整備・充実を図る。
 労働災害の発生率が高い業種に属する事業場、重篤な職業性疾病が発生するおそれのある事業場等に対する労働災害防止のための監督指導、集団指導等を実施する一方、適切な指導援助の実施に努める。また、行政目的を達成するため、監督指導、集団指導の実施体制の充実を図るとともに、技術の進歩等に的確に対応するための職員の研修を充実することにより、効果的かつ効率的な執行体制の整備を図る。

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ニ 労働災害防止団体等の活動の強化

 各労働災害防止団体等の活動の強化を図り、当該団体等を通じて、事業者の自主的労働災害防止活動を促進するとともに、労働災害防止に必要な施策の調査研究を一層充実させる。

ホ 国民安全への貢献

 労働災害防止で培った機械設備等に係るハード対策から管理・教育といったソフト対策までの経験及び組織は、産業設備の保安や公衆安全、家庭内の安全などにも広く通用できるものであることから、これらの分野に対しても積極的に貢献していくこととする。


(2)調査研究の推進

 最近の労働災害の発生状況をみると、第三次産業における労働災害の割合が増加するなど、製造業、建設業等を中心とした従来の労働災害分析手法では、実態を十分に捉えきれないところがあることから、今後、分析手法の研究を進める。
 また、災害の中には労働者の不安全行動によるものが少なくないことから、高年齢者を始めとして作業行動に起因する災害の防止技術の研究開発を進める。
 自動生産システム・自動施工システム等の新技術、超微粉などの新材料に係る安全制御技術・危険性評価技術などの研究開発を推進するほか、フラット・パネル・ディスプレイ(FPD)を用いたコンピュータやワープロ等の作業におけるヒューマンファクター、溶接作業における有害因子複合ばく露を防止するための工学的対策、化学物質のリスク評価及び管理技術等に関する技術的研究を行う。
 さらに、労働災害防止について、効果的かつ効率的な対策を講じていくためには、安全衛生対策と生産性等の関連等、経済的側面からも評価していく必要があることかり、この点に着目した評価手法に関する研究を進める。
 そのほか、今後、就業形態の多様化が進み、労働市場の流動性が高まるとともに、企業そのものの分社化等のアウトソーシングが進行していくと予想される中での安全衛生管理の在り方等について、調査・検討を行う。
 また、最近では、犯罪に巻き込まれ被災する事例も見られており、それに対する対応も検討していく。


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(3)国際的な視点に立った行政展開

 我が国の安全衛生基準について、必要に応じて国際基準に配慮するとともに、国際基準の作成には積極的に参画し、我が国のノウハウを提案していく。
 また、海外進出企業で働く日本人労働者と現地労働者の安全衛生を確保するため、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等の安全衛生専門家の派遣及び海外巡回健康相談の実施を推進するとともに、国際安全衛生センター(仮称)における事業を積極的に展開することにより、安全衛生分野における開発途上国等に対する技術協力を積極的に推進する。





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