18年改正労働安全衛生法
・安全衛生管理体制の強化関係条項(解説)
■HOMEPAGE
■改正労働安全衛生法〔H18改正〕のすべて
18年改正労働安全衛生法
安全衛生管理体制の強化関係
17条〜19条(安全衛生委員会の活性化),
10条(総括安全衛生管理者の職務の追加),11条(安全管理者選任時のカリキュラム研修の義務づけ),60条(職長教育にリスクアセスメント関係の科目追加)
〔安全衛生管理体制関係条項の改正のねらい〕
1 安全衛生委員会等の活性化は、労働災害防止のための有効な手段であるが、現実には、報告事項を中心として毎月定期的に開催されるだけのものとなっている事業場も多く存在している。
安全衛生委員会については、委員の選出、審議事項、決定事項の扱い方等委員会のあり方全体の見直しが必要である。(17,18,19条関係)
2 労働災害防止において、経営トップの活動が重要であることは各種調査、ヒヤリング等の結果からも明らかである。現行法制上も、総括安全衛生管理者は、事業場のトップがこれに当るべきものであり、総括安全衛生管理者の取組を促進させるための対策が必要である。(10条関係)
3 (近時)わが国の大規模製造事業場においてさえ、安全衛生管理に関して、組織の縮小、担当者の兼務の増大、労働災害防止に関するノウハウの継承の不十分さ等の状況が認められている。(*これが回って、さらに担当者の実務能力が低下を招くという循環さえ認められるのである。)
安全管理者はもとより、安全管理の中核である。さらに、今後は、事業場においてリスクアセスメントの実施、マネジメントシステムの導入、構築等において重要な役割を担うことが予定されている。したがって、安全管理者に対して、選任時において、安全衛生管理の実務を適切に処理するために必要な知識等を付与する教育を実施し、一定の実務能力を担保することが必要である。(11条関係)
4 職長等に対する安全衛生教育の内容を充実(リスクアセスメント等安全衛生に関する新たな知識の獲得等)させることが必要である。(60条関係)
〔改正のポイント〕
1 安全衛生委員会の活性化対策として、次の改正が図られたこと。(17,18,19条関係)
(1) 安全衛生委員会の権限強化(調査審議事項の追加)
「危険性・有害性の調査及びその結果に基づく措置に関すること」、「安全衛生計画の策定及び当該計画の実施・評価・改善に関すること等」を調査審議事項として追加した。
(2) 安全衛生委員会等の議事録概要の周知義務が規定されたこと。
2 総括安全衛生管理者の取組を促進させるため、(1)安全衛生方針の表明に関すること、(2)危険性・有害性の調査及びその結果に基づく措置に関すること、(3)安全衛生計画の策定及び当該計画の実施・評価・改善に関すること等を総括安全衛生管理者の職務として追加することとした。(10条関係)
3 安全管理者の資格要件として、厚生労働大臣が定める研修を修了したことを追加したこと。(11条関係、本条はH18.10.1施行)
4 職長等に対する安全衛生教育事項として、危険性又は有害性(=リスクアセスメント)の調査等に関することを追加した。(60条関係)
17条〜19条 安全衛生委員会等の活性化
法令
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説明 (19.2.24付施行通達の引用)
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労働安全衛生法(本条項に改正なし) (安全委員会) 第十七条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。 一 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること。 二 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること。 三 前二号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止に関する重要事項 2 安全委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員(以下「第一号の委員」という。)は、一人とする。 一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者 二 安全管理者のうちから事業者が指名した者 三 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者 3 安全委員会の議長は、第一号の委員がなるものとする。 4 事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。 5 前二項の規定は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときは、その限度において適用しない。 (衛生委員会) 第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。 一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。 二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。 三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。 四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項 2 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。 一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者 二 衛生管理者のうちから事業者が指名した者 三 産業医のうちから事業者が指名した者 四 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者 3 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを衛生委員会の委員として指名することができる。 4 前条第三項から第五項までの規定は、衛生委員会について準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「第一号の委員」とあるのは、「第十八条第二項第一号の者である委員」と読み替えるものとする。 (安全衛生委員会) |
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〔労働安全衛生規則〕 |
W 第1 1 (4) 安全委員会の調査審議事項として、危険性又は有害性等の調査等のうち安全に係るものに関すること、並びに安全衛生に関する計画(安全に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関することが含まれるものとしたこと。(第21条) W 第2 4 安全委員会、衛生委員会等 (1) 安全委員会の付議事項(第21条関係) 事業場における安全衛生水準の向上には、事業場トップ及び労働災害防止の当 事者であり現場を熟知している労働者が参画する安全衛生委員会等(安全委員会、衛生委員会及び安全衛生委員会をいう。以下同じ。)の活性化が必要であることから、安全委員会の調査審議事項に、危険性又は有害性等の調査等のうち安全に係るものに関すること、並びに安全衛生に関する計画(安全に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関することが含まれることとしたこと。 |
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(衛生委員会の付議事項) 第二十二条 法第十八条第一項第四号の労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項には、次の事項が含まれるものとする。 一 衛生に関する規程の作成に関すること。 二 法第二十八条の二第一項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。 三 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること。 四 衛生教育の実施計画の作成に関すること。 五 法第五十七条の三第一項及び第五十七条の四第一項の規定により行われる有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。 六 法第六十五条第一項又は第五項の規定により行われる作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。 七 定期に行われる健康診断、法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行われる臨時の健康診断及び法に基づく他の省令の規定に基づいて行われる医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。 八 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。 九 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。 十 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。 十一 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。 |
W 第1 1 (5) 衛生委員会の調査審議事項として、危険性又は有害性等の調査等のうち衛生に係るものに関すること、安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること、長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること並びに労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関することが含まれるものとしたこと。(第22条) W 第2 4 安全委員会、衛生委員会等 (2) 衛生委員会の付議事項(第22条関係) ア 事業場における安全衛生水準の向上には、事業場トップ及び労働災害防止の当事者であり現場を熟知している労働者が参画する安全衛生委員会等の活性化が必要であることから、衛生委員会の調査審議事項に、危険性又は有害性等の調査等のうち衛生に係るものに関すること、並びに安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関することが含まれることとしたこと。 イ 第9号は、脳・心臓疾患の労災認定件数が高い水準で推移しており、事業場において労使が協力して長時間労働による健康障害の防止対策を推進する重要性が増していることから、衛生委員会等の付議事項として、「長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること」を明記したものであること。 なお、この対策の樹立に関することには、 @ 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止対策の実施計画の策定等に関すること A 面接指導等の実施方法及び実施体制に関すること B 第52条の3第1項及び第52条の8第3項に規定する労働者の申出が適切に行われるための環境整備に関すること C 面接指導等の申出を行ったことにより当該労働者に対して不利益な取扱いが行われることがないようにするための対策に関すること D 第52条の8第2項第2号に規定する事業場で定める必要な措置に係る基準の策定に関すること E 事業場における長時間労働による健康障害の防止対策の労働者への周知に関することが含まれること。 ウ 第10号は、精神障害等の労災認定件数が増加しており、事業場において労使が協力してメンタルヘルス対策を推進する重要性が増していることから、衛生委員会等の付議事項として、第8号とは別に、「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」を明記したこと。 なお、この対策の樹立に関することには、 @ 事業場におけるメンタルヘルス対策の実施計画の策定等に関すること A 事業場におけるメンタルヘルス対策の実施体制の整備に関すること B 労働者の精神的健康の状況を事業者が把握したことにより当該労働者に対して不利益な取扱いが行われるようなことがないようにするための対策に関すること C 労働者の精神的健康の状況に係る健康情報の保護に関すること D 事業場におけるメンタルヘルス対策の労働者への周知に関することが含まれること。 エ 衛生委員会等において長時間労働による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策について調査審議するに当たっては、医学的及び専門的な見地からの意見が重要であり、その構成員である産業医や衛生管理者の積極的な関与が必要であることから、事業場においては、産業医や衛生管理者について、その適正な選任はもとより、衛生委員会等への出席の徹底を図り、その役割が適切に果たされる必要があること。また、衛生委員会等において調査審議を行った結果、一定の事項について結論を得た場合については、これに基づいて着実に対策を実施するなど、事業者はこの結論を当然に尊重すべきものであること。 オ 常時50人以上の労働者を使用する事業場以外の事業場においては、衛生委員会等の調査審議に替え、第23条の2の関係労働者の意見を聴くための機会を利用して、長時間労働による健康障害防止対策やメンタルヘルス対策について労働者の意見を聴取するように努め、その意見を踏まえつつこれらの対策を樹立することが必要であること。また、衛生に係るこれらの対策の担当者として衛生推進者又は安全衛生推進者の活用に努めることも必要であること。 |
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(委員会の会議) 第二十三条 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月一回以上開催するようにしなければならない。 2 前項に定めるもののほか、委員会の運営について必要な事項は、委員会が定める。 3 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知させなければならない。 一 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。 二 書面を労働者に交付すること。 三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。 4 事業者は、委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを三年間保存しなければならない。 |
W 第1 1 (6) 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会の議事の概要を労働者に周知させなければならないものとしたこと。(第23条) W 第2 4 安全委員会、衛生委員会等 (3) 委員会の議事録の概要の周知(第23条第3項関係) 安全衛生委員会等の透明性を確保するため、事業者は、安全衛生委員会等の開催の都度、遅滞なく、その議事の概要を労働者に周知させなければならないこととし、その方法として、法第101条第1項に基づく労働者に対する法令等の周知の方法と同様の方法(改正省令による改正前の安衛則第98条の2)を定めたこと。 |
10条 総括安全衛生管理者の職務の追加
法令
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説明・解釈
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労働安全衛生法(本条項に改正なし) (総括安全衛生管理者) 第十条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管 理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を 管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。 一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。 二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。 三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。 四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。 五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの。 2 総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければ ならない。 3 都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業 務の執行について事業者に勧告することができる。 |
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〔労働安全衛生規則〕 (総括安全衛生管理者が統括管理する業務) |
W 第1 1 (1) 総括安全衛生管理者が統括管理する業務として、安全衛生に関する方針の表明に関すること、法第28条の2第1項の危険性又は有害性等の調査等(以下「危
険性又は有害性等の調査等」という。)に関すること並びに安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関することを定めたこと。(第3条の2) W 第2 1 総括安全衛生管理者が統括管理する業務(第3条の2関係) 事業場における自主的な安全衛生活動の促進には、事業場トップの積極的な取組が必要であることから、総括安全衛生管理者が統括管理する業務について、具体的に、安全衛生の方針の表明に関すること、危険性又は有害性等の調査等に関すること並びに安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関することを定めたこと。 |
11条 安全衛生担当者の教育の充実
法令
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説明・解釈
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労働安全衛生法(本条項に改正なし) (安全管理者) 第十一条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のう ちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二 十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の 措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。 2 労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理 者の増員又は解任を命ずることができる。 |
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〔労働安全衛生規則〕 (安全管理者の資格) |
W 第1 1 (2) 安全管理者の資格要件として、厚生労働大臣が定める研修を修了したことを追加したこと。(第5条) W 第2 2 安全管理者の資格(1) 安全管理者の資格の見直し(第5条関係) 安全管理者がその職務を的確に遂行する実務能力を担保するため、厚生労働大臣の定める研修を修了した者であることを安全管理者の資格要件に追加したこと。 この資格要件は、労働安全コンサルタント及び改正省令附則第2条に該当する者を除き、既に選任されている者についても課されるものであること。 併せて、必要となる産業安全の実務に従事した経験年数を、大学卒業(理科系統)では3年から2年に、高校卒業(理科系統)では5年から4年に、それぞれ短縮したこと。 (2) 経過措置(改正省令附則第2条関係) ア 改正省令附則第2条に該当する者 改正省令附則第2条は、安全管理者として選任され、その職務を行った経験年数が平成18年10月1日までに通算2年以上である者については、安全管 理者として一定期間職務を行うことにより産業安全に関する一定の知識を得ていると認められることから、安衛則第5条第1号の研修を修了していない場合であっても、法第11条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者(安全管理者として選任することができる者)とすることとしたものであること。 期間の計算の方法については、具体的には次によること。 @ 一の事業場において安全管理者であった者については、安全管理者として選任され、かつ、選任報告が提出された者が該当すること。よって、平成18年10月1日まで継続して安全管理者である者については、選任目が平成16年10月1日以前であるとして選任報告が提出された者が該当すること。 A 複数の事業場において、又は同一事業場において2回以上安全管理者に選任された期間は、通算できること。 B (1)(2)いずれの場合も、安全衛生推進者としての期間は含まないこと。 イ 留意事項 事業者は、改正省令附則第2条に該当する者を安全管理者として選任する場合であっても、法第10条第1項各号の業務の安全に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であって、厚生労働大臣が定めるものを修了させることが望ましいこと。 また、改正省令附則第2条は、経過措置として平成18年10月1日前に従事していた事業場での安全管理者としての活動を継続して認めるという趣旨であることから、同条に該当する者であっても、平成18年10月1日前に経験を有したことのある事業場と安全の態様が大きく異なる事業場の安全管理者として選任しようとする場合には、当該研修を修了させるよう特に努める必要があること。 (3)安全管理者選任報告 ア 安全管理者選任報告を行うに当たっては、様式第3号に同様式裏面備考11に記載の書類を添付するほか、免除科目がある場合は当該免除の根拠となる研修、講座等を修了したことを証する書面を併せて添付すること。 イ 様式第3号裏面備考11の「平成18年10月1日において安全管理者として2年以上の経験年数を有する者であることを証する書面(又は写し)」とは、その者に係る過去の安全管理者の選任について事業者が説明したものであること。 |
60条 安全衛生担当者の教育の充実
法令
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説明・解釈
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労働安全衛生法(本条項に改正なし) 第六十条 事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。 一 作業方法の決定及び労働者の配置に関すること。 二 労働者に対する指導又は監督の方法に関すること。 三 前二号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの |
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〔労働安全衛生法施行令〕 (職長等の教育を行うべき業種) 第十九条 法第六十条の政令で定める業種は、次のとおりとする。 一 (略) 二 製造業。ただし、次に掲げるものを除く。 イ 食料品・たばこ製造業(うま味調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く。) ロ〜ホ(略) 三〜六(略) |
U 第2 3 職長等の教育を行うべき業種(第19条関係) 日本標準産業分類が平成14年3月に改訂され、「化学調味料製造業」が「うま味調味料製造業」に改称されたことに伴い、用語の整備を行ったものであり、改正前後で職長等の教育を行うべき業種の範囲に変更はないものであること。 |
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〔労働安全衛生規則〕
3 事業者は、前項の表の上欄に掲げる事項の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる者については、当該事項に関する教育を省略することができる。
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W 第1 1 (7) 職長等に教育を行わなければならない事項として、危険性又は有害性等の調査等に関することを追加したこと。(第40条) |
*法令表記のうちアンダーライン部が、平成18年改正の行われた箇所である。
「平成16年8月今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書」
H18.12.27今後の労働安全衛生対策について(建議)の元となった「平成16年8月今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書」において、本条(安全衛生管理体制の強化)に関連する記述として、次のような箇所が認められる。(労務安全情報センター記)
2 職場における安全衛生をめぐる現状
(3)職場における安全衛生活動の現状
ア 経営トップの取組
労働災害防止において、経営トップの活動が重要であることはもちろんであるが、これを裏付けるものとして、産業事故災害防止対策推進関係省庁連絡会議の中間とりまとめにおいては、産業事故災害防止上の問題点として、経営トップの認識や取組が安全確保を図る上で非常に重要であり、経営トップを中心とした全社的な取組が功を奏している事例が見られる一方、事故が発生した産業施設では危機管理意識が希薄と思われる事例がみられたとされている。
当検討会が行った企業ヒアリングにおいても、経営トップが安全に関して強い姿勢を表明したことによって、安全管理部門の仕事がやりやすくなったという事例があった。また、厚生労働省の大規模製造事業場に対する自主点検結果において全体を労働災害の発生率でみて五分位に分けて比較したところ、事業場のトップが年間の安全管理活動計画の作成に積極的に関与しているとするところは、最も災害発生率が低い第1五分位では75.3%であるのに対して、最も災害発生率が高い第5五分位では65.8%と10ポイント程度の差がみられた。事業場トップが自ら行う他の安全管理活動についても、第1五分位と第5五分位との間で概ね10ポイント程度の差がみられた。事業場のトップが安全活動に関与する項目数が増えるに従って災害発生率が低下する傾向もみられている。
ウ 安全衛生委員会の活動
平成12年労働安全衛生基本調査によれば、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会における議題は、「職場環境の向上に関する検討」、「労働災害の原因及び再発防止対策の検討」等が80%弱であるが、「労働災害防止計画の作成、評価及び見直し」は50%強となっており、安全衛生水準を継続的に向上させるために安全衛生員会を活用することは十分普及していない。
大規模製造事業場に対する自主点検結果によれば、安全委員会において「安全管理体制の検証、見直し」について審議した事業場は第1五分位では68.5%であるが第5五分位では56.6%と、約12ポイントの差があり、「安全に関する新たな規定の作成、改訂」、「設備等の新設・変更を行う場合の安全面からの事前評価等」等、いずれの項目についても第1五分位と第5五分位と間に、10数ポイントの差がみられている。
また、安全衛生委員会で活発な意見交換が行われており、結果が現場の改善に反映しているところの年千人率は4.98であるのに対し、伝達事項や現場等からの報告事項が主体で意見交換は十分行われているとはいえないところの年千人率は7.19であった。総合的な安全衛生管理手法の調査検討(中央労働災害防止協会;平成10年度)によれば、安全衛生委員会の合意事項の80%を実施しているのは、安全衛生員会活動の活発な事業場では78.0%であるのに対し、不活発な事業場では28.5%となっている。
安全衛生委員会の活動についてはマンネリ化が指摘されているが、企業ヒアリングにおいてもマンネリ化を感じているとする事例がみられた。
エ 安全衛生教育の実施状況
平成12年労働安全衛生基本調査によれば、安全衛生教育を実施している事業所のうち、「常用労働者として新しく雇い入れた労働者」に対して教育を行っているのは90.1%であるが、「作業内容を変更したときの関係労働者」では51.1%、「新しく就任した職長、現場監督者、主任等」については27.6%、「新しく就任した安全管理者(安全衛生推進者)」は15.3%となっている。
また、大規模製造事業場に対する自主点検結果においては、現在の安全担当部署のスタッフの知識・経験に係る総括安全衛生管理者の認識について、「十分」としているところの年千人率が4.19であるのに対して、不足しているところの年千人率は8.50 となっている。企業ヒアリングにおいても、管理監督者、特に管理者層の知識が不足しているという指摘があった。安全衛生教育実施計画の作成については、作成している事業場の年千人率が5.05であるのに対して、作成していない事業場は9.72に達している。現場労働者に対する定期的な再教育についてみると、実施している事業場の年千人率は4.81であるが、実施していない事業場は6.55となっている。
3 今後の安全衛生対策の在り方(提言)
(1) 事業者による自主的な安全衛生への取組を促進するための環境整備
ウ 安全衛生委員会の活性化
安全衛生委員会は、事業場のトップが制度的に関与し、かつ労働災害防止の当事者であると同時に現場の状況について最も熟知している労働者が参画する場であり、その活用は労働災害防止に有効であることから、労使が協力して労働災害防止対策を実効あるものにする機能を果たすことが期待されている。しかし、大規模製造事業場に対する自主点検結果によれば、災害の発生率が高い事業場では「安全管理体制の検証、見直し」、「安全に関する新たな規定の作成、検討」等の事項を審議した割合が相対的に低く、報告事項を中心として毎月定期的に開催されるだけのものとなっている事業場も多く存在している。この点については、第10次の労働災害防止計画においても、安全衛生委員会の活動は必ずしも活発でなく、また、労働安全衛生法令で期待されている機能が十分果たされているとは言い難い状況にあると評価している。
そのため、安全衛生委員会の活性化を図るため、委員の選出、審議事項、決定事項の扱い方等委員会のあり方全体の見直しが必要である。
一方、安全衛生委員会は事業場単位で設置されているが、規模の大きい企業では、「全社安全衛生委員会」を設置している場合がある。企業全体の安全衛生に関する事項を労使が話し合うことも有効であることから、中央段階においても安全衛生に関する事項を検討する場の設置を推進することが必要である。
さらに、事業場内における安全衛生活動の効果を上げるためには、労働者の安全衛生対策への理解、協力が必要であることから、事業者の労働災害防止に関する義務の履行を前提とした上で、労働者自らも労働災害防止に関する責任ある行動をとることが必要である。
エ 安全衛生担当者の教育の充実
大規模製造事業場に対する自主点検結果によれば、安全衛生担当スタッフの知識経験の不足感が高い事業場ほど労働災害の発生率が高いことが明らかとなった。この背景として、安全衛生管理組織の縮小、安全衛生管理担当者の兼務の増大、さらに、労働災害防止に関するノウハウの継承の不十分さ等により、事業場における安全衛生管理担当者の実務能力が低下しつつあるという事情が考えられる。衛生管理者、産業医については実務能力が制度的に担保されているのに対し、安全管理の中核である安全管理者については、法的に学歴と実務経験のみで選任されることが許されていることが、その一因と考えられる。安全管理者は、今後、事業場においてリスクアセスメントの実施、マネジメントシステムの導入、構築等において重要な役割を担うことから、安全管理者に対して、安全衛生管理の実務を適切に処理するために必要な知識等を付与する教育を選任時において実施し、一定の実務能力を担保することが必要である。
また、現場の長である監督者(職長等)と組織の長である管理者(部、課長)で安全衛生に関する理解度を比較すると、管理者には十分な教育がなされていないことから安全衛生に対する理解が乏しい場合が多く、現場を知っている管理者も減少している。さらに、現場の作業者も現場の危険・有害性を認識しないまま作業を行っていることから、災害の発生につながる場合がある。
このような状況を改善するために、リスクアセスメント等安全衛生に関する新たな知識の獲得、安全衛生に関する意識の改革及び向上を目指し、管理者を含む職長等や労働者に対する安全衛生教育の内容の見直しを検討することが必要である。
〔最終更新日-H18.3.30 労務安全情報センター〕