18年改正労働安全衛生法31条の2(解説)

 ■HOMEPAGE
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18年改正労働安全衛生法
31条の2

2 元方事業者等を通じた安全衛生管理体制の実現
(3)施設・設備の管理権原に関する安全衛生対策(発注者等による危険有害情報の提供)




〔31条の2新設のねらい〕

1 近年、事業運営についてアウトソーシングが進行する中で、化学物質を製造し、又は取り扱う設備の改造、修理、清掃等の仕事の外注も多く行われているが、発注者等が自ら把握している設備の状況等の情報を請負人に十分に知らせないまま発注したことによる一酸化炭素中毒、爆発、火災等の労働災害が発生している。
 このため、一定の危険有害な化学物質を製造し、又は取り扱う設備の改造、修理、清掃等の仕事の発注者等が、当該仕事による労働災害を防止するため必要な安全衛生に関する情報を請負人に提供する仕組みが必要である。

2  発注者からの危険有害情報の提供に問題があり発生した事故・災害事例として、例えばつぎのようなものがある。

発生状況 直接原因 発注者の情報提供に係る問題点
 一酸化炭素発生プラントの定修工事において、5系列ある一酸化炭素発生装置のうち2系列を稼動させた状態で、停止している系列に設置されているバルブへの自動駆動装置の取り付け工事を行っていた。
 元請の作業員が、当該工事中、当該バルブを開けたため、バルブの下流側の配管に滞留していた一酸化炭素が逆流し、洗浄塔のマンホールから一酸化炭素が流出し、一酸化炭素中毒になった。

1 配管内に一酸化炭素が存在していることを元方事業者が把握していなかったこと。

2 洗浄塔に接続されているバルブが二重に閉止、又は閉止板が施されていなかった。

1 作業について注意すべき事項

・稼動している系列があり、配管内は一酸化炭素が滞留しているのでバルブを開けると作業箇所に一酸化炭素が流出すること。
・バルブ操作を行う時は、発注者が立ち会うこと。

2 注文者が講じた安全又は衛生に係る措置

・バルブは二重に閉止され、又は閉止板が施されていること。
・一酸化炭素が流出するおそれがあるバルブは、施錠されていること。

 屋外に設置されているフェノール樹脂接着剤(トルエン、メタノール等を含有)の貯蔵タンクから屋内の接着剤塗布室に接着剤を供給する配管を増設するための工事を行っていた。
 請負業者が当該配管の溶接作業を行っていたところ、配管を通じて溶接箇所に接着剤成分の揮発性ガスが流入し、溶接の火花が着火源となってタンク内に伝搬し、タンクが爆発した。

1 配管の溶接作業を行うに際して、貯蔵タンクと配管を接続したまま溶接作業を行ったこと。

2 貯蔵タンクに可燃性ガスが存在し、配管を通じて漏洩することを知らなかったこと。

1 作業について注意すべき事項

・タンク内に接着剤から発生する可燃性ガスが滞留していること。
・火気作業を行う場合は、作業箇所に可燃性ガスが漏洩していないことを確認すること。
・火気作業を行う時は、事前に許可を受けること。

2 注文者が講じた安全又は衛生に係る措置

・タンク配管のバルブは、二重に閉止され、又は閉止板が施されていること。

 製紙工程において発生する臭気ガス(硫化水素を含む)の回収装置の部品交換作業を行っていたところ、臭気ガスが回収装置に接続しているバイパス配管を通じて回収装置内に入り、開放していたマンホールから作業箇所に漏洩し、硫化水素中毒となった。

1 バイパス配管のバルブは、閉止されていたが、二重閉止等の措置を講じていなかったため、系の圧力が一時的に上昇した際に、バイパス配管から硫化水素を含むガスが流入したこと。
 なお、発注者はメインの臭気ガス配管には閉止板を事前に取り付けていた。

2 バイパス配管が存在し、硫化水素を含むガスが漏洩するおそれがあることを元方事業者が知らなかったこと。

1 作業について注意すべき事項

・メイン配管のほかに、バイパス配管が存在し、バルブを開けると臭気が流入すること。

2 注文者が講じた安全又は衛生に係る措置

・バルブは二重に閉止され、又は閉止板が施されていること。


〔改正のポイント〕


1 大量漏えいにより急性障害を引き起こす化学物質、引火性の化学物質等を製造し、又は取り扱う設備の改造、修理、清掃等の仕事で、設備の分解等の作業を伴うものの発注者等は、労働災害を防止するため、当該化学物質の危険性・有害性、当該作業について注意すべき事項等の情報を文書等により請負人に提供しなければならないこととした。


法令
説明 (19.2.24付施行通達の引用)
労働安全衛生法

第三十一条の二 化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物を製造し、又は取り扱う設備で政令で定めるものの改造その他の厚生労働省令で定める作業に係る仕事の注文者は、当該物について、当該仕事に係る請負人の労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない


T 3 化学物質等を製造し、又は取り扱う設備の改造等の仕事の注文者の講ずべき措置(第31条の2関係)

  近年、業務の外注化が進展する中、爆発等のおそれがある危険有害な化学物質の製造設備などの改造、修理、清掃等の作業の外注が頻繁に行われ、これらの作業を行う外部の建設業者等が、当該設備の中の化学物質の危険性・有害性や、取扱上の注意事項等の情報を十分に知らないまま作業を行っていたこと等による労働災害が発生している。
  このため、一定の危険有害な化学物質を製造し、又は取り扱う設備の改造等の作業を注文する者に対して、当該作業において注意すべき事項等の情報を請負人に提供する義務を課すとともに、注文者から情報提供を受けた請負人は、その関係する情報を下請負人に通知する義務を課すこととしたこと。

 

〔労働安全衛生法施行令〕

(法第三十一条の二の政令で定める設備)
第九条の三
 法第三十一条の二の政令で定める設備は、次のとおりとする
  化学設備(別表第一に掲げる危険物(火薬類取締法第二条第一項に規定する火薬類を除く。)を製造し、若しくは取り扱い、又はシクロヘキサノール、クレオソート油、アニリンその他の引火点が六十五度以上の物を引火点以上の温度で製造し、若しくは取り扱う設備で、移動式以外のものをいい、アセチレン溶接装置、ガス集合溶接装置及び乾燥設備を除く。第十五条第一項第五号において同じ。)及びその付属設備
  特定化学設備(別表第三第二号に掲げる第二類物質のうち厚生労働省令で定めるもの又は同表第三号に掲げる第三類物質を製造し、又は取り扱う設備で、移動式以外のものをいう。第十五条第一項第十号において同じ。)及びその付属設備


U 第1 2 化学物質、化学物質を含有する製剤その他のものを製造し、又は取り扱う設備で、改造等の作業に係る仕事の注文者が労働災害を防止するために必要な措置を講じなければならないものとして、化学設備及びその附属設備並びに特定化学設備及びその附属設備を定めたこと。(第9条の3)

U 第2 2 化学物質等を製造し、又は取り扱う設備で政令で定めるもの(第9条の3、第15条関係)
(1) 第9条の3関係
  ア 化学設備及び特定化学設備は、爆発火災を引き起こす物質及び大量漏えいにより急性障害を引き起こす物質を製造し、又は取り扱っていることから、対象設備として規定したものであること。
  イ 第1号の「化学設備」とは、法第31条の2の政令で定める設備として、整備政令による改正前の労働安全衛生法施行令(以下「旧令」という。)第15 条第1項第5号の「化学設備」に配管を含めたものであること。
  ウ 第1号の「引火点が六十五度以上の物を引火点以上の温度で製造し、若しくは取り扱う設備」とは、引火点が65度以上の物に係る加熱炉、反応器、蒸留器、貯蔵タンク等のうち、加熱、反応、蒸留、固化防止等のため、その内部の温度が引火点以上となるものをいうこと。
  エ 本条の「附属設備」とは、化学設備以外の設備で、化学設備に附設されたも のをいい、その主なものとしては、動力装置、圧縮装置、給水装置、計測装置、安全装置等があること。

 

〔労働安全衛生規則〕

(令第九条の三第二号の厚生労働省令で定める第二類物質)
第六百六十二条の二 令第九条の三第二号の厚生労働省令で定めるものは、特化則第二条第三号に規定する特定第二類物質とする


(法第三十一条の二の厚生労働省令で定める作業)
第六百六十二条の三 法第三十一条の二の厚生労働省令で定める作業は、同条に規定する設備の改造、修理、清掃等で、当該設備を分解する作業又は当該設備の内部に立ち入る作業とする

 

9 化学設備の改造等の仕事の発注者による請負人への情報提供
(1) 仕事の発注者が(2)の措置を講じなければならない作業は、化学設備及び特定化学設備並びにこれらの附属設備の改造、修理、清掃等の作業で、当該設備を分解するもの又は当該設備の内部に立ち入るものとしたこと。(第662条の3)


23 化学物質等を製造し、又は取り扱う設備の改造等の仕事の注文者の講ずべき措置(第662条の2から第662条の4まで関係)
(1) 第662条の3関係
 ア 本条の規定は、注文者から請負事業者に発注して作業が行われる改造等の仕事のうち、特に、第275条に規定する分解等の作業については、注文者による文書の交付等による請負事業者への情報提供により、未然に労働災害を防止する必要があることから、対象としたものであること。
 イ 「清掃等」の「等」には、塗装、解体及び内部検査が含まれること。
  〔労働安全衛生規則〕

(文書の交付等)
第六百六十二条の四 法第三十一条の二の注文者(その仕事を他の者から請け負わないで注文している者に限る。)は、次の事項を記載した文書(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。次項において同じ。)を作成し、これをその請負人に交付しなければならない
  法第三十一条の二に規定する物の危険性及び有害性
  当該仕事の作業において注意すべき安全又は衛生に関する事項
  当該仕事の作業について講じた安全又は衛生を確保するための措置
  当該物の流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置
 前項の注文者(その仕事を他の者から請け負わないで注文している者を除く。)は、同項又はこの項の規定により交付を受けた文書の写しをその請負人に交付しなければならない
 前二項の規定による交付は、請負人が前条の作業を開始する時までに行わなければならない

W 第1 9 化学設備の改造等の仕事の発注者による請負人への情報提供

(2) 発注者は、製造し、又は取り扱う物の危険性及び有害性、当該作業において注意すべき安全又は衛生に関する事項等を記載した文書を作成し、これをその請負人に交付しなければならないものとしたこと。(第662条の4)


W 第2 23 化学物質等を製造し、又は取り扱う設備の改造等の仕事の注文者の講ずべき措置(第662条の2から第662条の4まで関係)

(2) 第662条の4関係
 ア 本条に基づく文書は、注文者が請負事業者に発注する改造等の仕事ごとに作 成、交付すれば足りるものであり、当該仕事に含まれる個別の作業ごとに作成、交付する必要はないこと。
 イ また、同種の仕事を反復して発注する場合において、既に当該仕事に係る文書が交付されているときは、再度文書の交付を行う必要はないこと。
 ウ 第1号の「危険性及び有害性」には、化学物質等安全データシート(MSDS)又は書籍、学術論文等から抜粋した当該化学物質の危険有害性情報があること。
 エ 第2号の「当該仕事の作業において注意すべき安全又は衛生に関する事項」には、各作業ごとに記載した安全及び衛生に配慮した作業方法、発注者の直接の指示を必要とする作業の実施方法、作業場所の周囲における設備の稼働状況等の具体的な安全又は衛生に関する連絡事項があること。
 オ 第3号の「当該仕事の作業について講じた安全又は衛生を確保するための措置」には、発注者が講じた動力源の遮断、バルブ・コックの閉止、設備内部の化学物質等の排出措置等があること。
 カ 第4号の「当該物の流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置」には、関係者への連絡、火災発生時における初期消火の実施、被災者に対する救護措置等があること。


法令
説明 (19.2.24付施行通達の引用)
労働安全衛生法

(請負人の講ずべき措置等)
第三十二条 第三十条第一項又は第四項の場合において、同条第一項に規定する措置を講ずべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、これらの規定により講ぜられる措置に応じて、必要な措置を講じなければならない。

 第三十条の二第一項又は第四項の場合において、同条第一項に規定する措置を講ずべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、これらの規定により講ぜられる措置に応じて、必要な措置を講じなければならない

 第三十条の三第一項又は第四項の場合において、第二十五条の二第一項各号の措置を講ずべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、第三十条の三第一項又は第四項の規定により講ぜられる措置に応じて、必要な措置を講じなければならない。

4 第三十一条第一項の場合において、当該建設物等を使用する労働者に係る事業者である請負人は、同項の規定により講ぜられる措置に応じて、必要な措置を講じなければならない。

 第三十一条の二の場合において、同条に規定する仕事に係る請負人は、同条の規定により講ぜられる措置に応じて、必要な措置を講じなければならない

第三十条第一項若しくは第四項、第三十条の二第一項若しくは第四項、第三十条の三第一項若しくは第四項、第三十一条第一項又は第三十一条の二の場合において、労働者は、これらの規定又は前各項の規定により講ぜられる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。

 第一項から第五項までの請負人及び前項の労働者は、第三十条第一項の特定元方事業者等、第三十条の二第一項若しくは第三十条の三第一項の元方事業者等、第三十条第一項若しくは第三十一条の二の注文者又は第一項から第五項までの請負人が第三十条第一項若しくは第四項、第三十条の二第一項若しくは第四項、第三十条の三第一項若しくは第四項、第三十一条第一項、第三十一条の二又は第一項から第五項までの規定に基づく措置の実施を確保するためにする指示に従わなければならない。


 

 

〔労働安全衛生規則〕


(法第三十二条第五項の請負人の義務)

第六百六十三条の二 法第三十二条第五項の請負人は、第六百六十二条の四第一項又は第二項に規定する措置が講じられていないことを知つたときは、速やかにその旨を注文者に申し出なければならない

 

 

*法令表記のうちアンダーライン部が、平成18年改正の行われた箇所である。






「平成16年8月今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書」

 H18.12.27今後の労働安全衛生対策について(建議)の元となった「平成16年8月今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書」において、本条(31条の2)に関連する記述として、次のような箇所が認められる。(労務安全情報センター記)

2.職場における安全衛生をめぐる現状

(3)職場における安全衛生活動の現状
 ア  
 イ 下請等の協力会社等との連携


 下請等の協力会社等との連携については、産業事故災害防止対策推進関係省庁連絡会議の中間とりまとめにおいて、下請、二次受け業者等が保安関連業務を行う事例が増加しているが、これらの業者に対する安全確保面での連携が十分行われていないおそれがあると指摘されている。
 実際に、注文者が所有する設備の保守点検等を下請に行わせた際に、危険性・有害性に関する情報が提供されなかったこと等の安全衛生管理上の問題があったことに起因する死亡災害も発生しているところである。
 大規模製造事業場に対する自主点検結果によれば、元方事業者と協力会社の災害の発生率を比較すると、千人率が5.09と11.3 と、協力会社が2倍以上高くなっている。さらに、作業間の連絡調整の実施状況をみると、「安全担当を含めて、定期
的に進捗状況の把握及び再調整」、「安全担当を含めて、当初計画段階で調整」を行っている割合をみると、第1五分位が第5五分位を17から18ポイント上回っている。協議組織の設置運営、作業場所の巡視においても同レベルである。
 また、危険に係る情報の伝達方法については、大規模製造事業場に対する自主点検結果によれば、文書と共に工事開始前に必ず現場で工事内容を確認しているところの千人率が4.40であるのに対し、特に知らせていないところでは年千人率が11.8であった。




3.今後の安全衛生対策の在り方(提言)
(2)元方等を通じた安全衛生管理体制の実現


 ウ 施設・設備の管理権原に関する安全衛生対策

 (ア) 注文者による危険有害情報の提供等

 危険・有害性の高い設備についての保守等の作業を外注化する場合、注文者が施設・設備に内在する危険・有害性を請負事業者に知らせないまま発注し、請負事業者が危険・有害性について適切な措置をとらなかったため労働者が保守等の作業中に被災する労働災害が発生していることから、このような災害を防止するため、注文者が請負事業者に、当該作業に関する労働災害の発生を防止するための措置をとる上で必要な危険・有害性に関する情報を提供する仕組み等が必要である。

 (イ) 請負事業者に使用させる施設・設備に関する危害防止措置の確保

 注文者が請負事業者に施設・設備を使用させて作業を行わせる場合、請負事業者が当該施設・設備に関し管理権原を有していないことから、当該施設・設備等に関する労働災害防止のための措置を行う必要性がある場合にも、十分な措置がなされず、関係労働者が作業中に被災することがあるため、使用させる施設・設備の安全性を確保する必要がある。

〔最終更新日-H18.3.30 労務安全情報センター〕