18年改正労働安全衛生法57条,法57の2,100条(解説)
■HOMEPAGE
■改正労働安全衛生法〔H18改正〕のすべて
18年改正労働安全衛生法
化学物質管理の推進
57条 (1) 表示等
57条の2 (2) 文書の交付
100条 (3) ばく露関係情報の届出
〔化学物質管理の推進関係条項〜57条、57条の2、100条の改正のねらい〕
1 職場における化学物質管理の充実を図るためには、事業者に対して個々の化学物質の危険性・有害性、取扱上の注意事項等の情報がより明確に提供されることが必要である。
国際的にも、事業場の容器等に危険性・有害性の程度等に基づく絵表示を付すこと等を内容とするGHS国連勧告がなされている。また、化学物質を取り扱う事業者は、交付されたMSDS(化学物質等安全データシート)等に基づき自主的対策を講ずることが必要である。(57条、 57条の2関係)
2 中小企業等では、化学物質管理が十分には行われていない。そこで、国は未規制の化学物質について、その作業内容、従事労働者数、密閉系での使用等のぱく露関係情報を収集する仕組みを整えることによって、独自にリスク評価を行い、必要なリスク管理を行うことの必要性が指摘されている。(100条関係)
〔改正のポイント〕
1 容器等への表示・MSDSの交付について、現在対象になっている有害性のあるものに加え、危険性のある化学物質が追加された。また、容器又は包装に表示しなければならない事項として、注意喚起語並びに安定性及び反応性に関する事項を追加。さらに、絵表示の容器等への表示が義務付けられた。(第57条関係、本条はH18.12.1施行)
2 文書の交付等により通知しなければならない事項として、危険性又は有害性の要約、安定性及び反応性に関する事項、適用される法令等を追加した。(第57条の2関係、本条はH18.12.1施行)
3 厚生労働大臣が定める物のガス、蒸気又は粉じんにぱく露するおそれのある作業に従事させたときは、当該物のぱく露の防止に関し必要な事項について、所轄労働基準監督署長に報告しなければならないこととされた。(100条関係/条文改正なし=安規95条の6が新設される形での改正)
57条 化学物質管理の推進 (1)表示等
法令
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説明 (19.2.24付施行通達の引用)
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労働安全衛生法 (表示等) 第五十七条 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条第一項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあつては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。 一 次に掲げる事項 イ 名称 ロ 成分 ハ 人体に及ぼす作用 ニ 貯蔵又は取扱い上の注意 ホ イからニまでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項 二 当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの 2 前項の政令で定める物又は前条第一項の物を前項に規定する方法以外の方法により譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項各号の事項を記載した文書を、譲渡し、又は提供する相手方に交付しなければならない。 |
T 4 化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善(第57条及び第57条の2関係) 化学物質を取り扱う作業において、その物質の危険性や有害性を知らずに行っていたことによる爆発、火災、中毒等の災害が発生しており、事業者による適正な化学物質の管理を促進することが必要である。
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〔労働安全衛生規則〕 第三章 機械等並びに危険物及び有害物に関する規制 第三十二条及び第三十三条 削除 (表示する者の氏名等) 第三十四条 法第五十七条第一項第一号ホの厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。 一 法第五十七条第一項の規定による表示をする者の氏名(法人にあつては、その名称)、住所及び電話番号 二 注意喚起語 三 安定性及び反応性 |
W 第1 4 化学物質等に係る表示 (1) 容器又は包装に表示しなければならない事項として、注意喚起語並びに安定性及び反応性に関する事項を追加したこと。(第34条) W 第2 8 化学物質等に係る文書交付制度の改善 (1) 容器・包装等に表示しなければならない事項(第31条から第34条まで関係) 別途示すところによること。 |
57条の2 化学物質管理の推進 (2)文書の交付
法令
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説明・解釈
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労働安全衛生法 (文書の交付等) 第五十七条の二 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第五十六条第一項の物(以下この条において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第二項に規定する者にあっては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。 ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。 一 名称 二 成分及びその含有量 三 物理的及び化学的性質 四 人体に及ぼす作用 五 貯蔵又は取扱い上の注意 六 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置 七 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項 2 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、前項の規定により通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により、変更後の同項各号の事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方に通知するよう努めなければならない。 3 前二項に定めるもののほか、前二項の通知に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。 |
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〔労働安全衛生規則〕 第三十四条の二の四 法第五十七条の二第一項第七号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。 |
W 第1 4 化学物質等に係る文書交付制度 (2) 文書の交付等により通知しなければならない事項として、危険性又は有害性の要約、安定性及び反応性に関する事項、適用される法令等を追加したこと。(第34条の2の4) W 第2 8 化学物質等に係る文書交付制度の改善 (2) 文書の交付等により通知しなければならない事項(第34条の2の4関係) 別途示すところによること。 |
100条 化学物質管理の推進 (3) ばく露関係情報の届出
法令
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説明・解釈
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労働安全衛生法(本条項に改正なし) (報告等) 第百条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。 2 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、登録製造時等検査機関等に対し、必要な事項を報告させることができる。 3 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。 |
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〔労働安全衛生規則〕 (有害物ばく露作業報告) |
W 第1 7 有害物ぱく露作業報告 事業者は、労働者を厚生労働大臣が定める物のガス、蒸気又は粉じんにぱく露するおそれのある作業に従事させたときは、当該物のぱく露の防止に関し必要な事項について、所轄労働基準監督署長に報告しなければならないものとしたこと。(第95条の6) W 第2 19 有害物ぱく露作業報告(第95条の6関係) 労働者の化学物質へのぱく露の程度やその広がりを推定し、健康障害の発生のおそれがある作業等を把握して、リスクが特に高い作業等についてはリスクの程度に応じた適正な健康障害防止対策が図られるようにするため、事業者が、労働者に健康障害を生ずるおそれのある物(以下「ぱく露作業報告対象物」という。)を製造し、又は取り扱う作業場において、労働者を当該物のガス、蒸気、又は粉じん(以下「ガス等」という。)にぱく露するおそれのある作業(以下「ぱく露作業」とい う。)に従事させたときには、事業者は、厚生労働大臣が別途定めるところにより、労働者が従事した作業の種類、事業場における換気設備の設置状況等のぱく露防止に関し必要な事項について、所轄労働基準監督署長に報告しなければならないこととしたこと。 (1)ぱく露作業報告対象物 ぱく露作業報告対象物は、原則として法第57条の2の通知対象物の中から別途厚生労働大臣が定めるものであること。 (2)対象作業 ぱく露作業報告対象物のガス等にぱく露するおそれのある作業とは、ぱく露作業報告対象物を製造し、又は取り扱う作業場において、ガス等の発散源に係る作業又はその近傍での作業であって、労働者が発散源からのガス等にぱく露するおそれのあるものをいうものであること。 なお、ぱく露作業報告対象物が密閉式の構造の設備で取り扱われており、又は隔離室での遠隔操作の作業等労働者が当該物のガス等にぱく露するおそれがないと考えられる場合は、報告する必要はないこと。 (3)事業場の範囲 報告は事業場単位で行うものであること。報告を行う事業場の範囲は、昭和47年9月18目付け基発第91号「労働安全衛生法の施行について」の第2の3における事業場の範囲と同一であること。労働者が建設現場等の事業場外において一定の期間塗装作業等に従事する場合の建設業における事業場の適用については、昭和63年9月16目付け基発第601号の2「建設業における労働基準法の適用単位について」を参照すること。 (4) 有害物ぱく露作業報告書(様式第21号の7関係) 有害物ぱく露作業報告書は、ぱく露作業報告対象物ごとに作成するものであること。また、ぱく露作業の種類を記載する場合における、「ガス等の発散源の近傍での作業」の種類を記載する際は、発散源に係る作業と同一の作業として取り扱うものとすること。 なお、作業の種類が多岐にわたり記載しきれないときは、続紙を使用すること。 (5) その他 有害物ぱく露作業報告は、一定期間におけるぱく露報告対象物の製造又は消費量が一定以上の事業場ごとに行うこととしているが、これらの範囲、有害物ぱく露作業報告を行う時期等については、別途厚生労働大臣が定めるところによるものであること。 |
*法令表記のうちアンダーライン部が、平成18年改正の行われた箇所である。
「平成16年8月今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書」
H18.12.27今後の労働安全衛生対策について(建議)の元となった「平成16年8月今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書」において、本条(57条、57条の2、100条)に関連する記述として、次のような箇所が認められる。(労務安全情報センター記)
3 今後の安全衛生対策の在り方(提言)
(1) 事業者による自主的な安全衛生への取組を促進するための環境整備
ア 危険・有害要因の特定、低減措置等の推進
(ウ)化学物質管理の推進
化学物質に関する管理については、「職場における労働者の健康確保のための化学物質管理の在り方検討会」(座長:櫻井治彦(慶庵義塾大学名誉教授))において次の検討結果を得たところであり、こうした仕組みの導入を図るべきである。
危険・有害性を有する化学物質について、絵表示等を求めた化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS国連勧告:TheGloballyHarmonizedSystemofClassincationandLabellingofChemicals)との整合性を確保しつつ、作業場の容器への危険・有害性に応じた絵表示等によって、個々の化学物質の危険・有害性、取扱上の注意等を一層明確にし、事業者の適切な管理を促進することが必要である。
さらに、これらの表示、化学物質等安全データシート(MSDS:Material SafbtyDate Sheet)に基づく事業者の自主的な労働災害防止措置の明確化等も必要である。
〔最終更新日-H18.3.30 労務安全情報センター〕