18年改正労働安全衛生法66条の6(解説)

 ■HOMEPAGE
 ■改正労働安全衛生法〔H18改正〕のすべて


18年改正労働安全衛生法
66条の6
労働者の健康情報の保護(情報の開示)




〔66条の6新設のねらい〕

 労働安全衛生法に基づく健康診断の結果は、労働者の個人情報でもあるが、一般健康診断に限って本人への通知が事業者に義務付けられている。個人情報の保護に関する法律の趣旨も踏まえると、特殊健康診断の結果についても本人に対して通知を行うようにすることが必要である。(情報の開示)

〔改正のポイント〕

 特殊健康診断の結果について、現行の一般健康診断の通知と同様、労働者への通知を義務付けたこと。

法令
説明 (19.2.24付施行通達の引用)
労働安全衛生法

健康診断の結果の通知)
第六十六条の六 事業者は、第六十六条第一項から第四項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。


T 6 特殊健康診断の結果の通知(第66条の6関係)

(1) 従来から健康診断結果の通知が義務付けられている定期健康診断等に加えて、特殊健康診断等についてもその結果の通知を義務づけたこと。
(2) 通知は、総合判定結果だけではなく、各健康診断の項目ごとの結果も通知する必要があること。
(3) 通知の方法としては、健康診断を実施した医師、健康診断機関等から報告された個人用の結果報告書を各労働者に配布する方法、健康診断個人票のうち必要な部分の写しを各労働者に示す方法等があること。
(4) 今回の改正により新たに通知の対象となる健康診断は、法の施行の目(以下「施行日」という。)以降に行われたものであること。
(5) 通知した旨の事実は、記録しておくことが望ましいこと。

 

〔労働安全衛生規則〕

(健康診断の結果の通知)
第五十一条の四 事業者は、法第六十六条第四項又は第四十三条、第四十四条若しくは第四十五条から第四十八条までの健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。


 

W 第2 11 健康診断の結果の通知(第51条の4関係)

(1) 雇入れ時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断、結核健康診断に加え、労働衛生指導医の意見に基づく臨時の健康診断、給食従業員の検便、歯科医師による健康診断の結果の通知についても、遅滞なく行わなければならないものとしたこと。
(2) 「遅滞なく」とは、事業者が、健康診断を実施した医師、健康診断機関等から結果を受け取った後、速やかにという趣旨であること。



 


〔有機溶剤中毒予防規則〕

(健康診断の結果の通知)
第三十条の二の二 事業者は、第二十九条第二項、第三項又は第五項の健康診断を受けた労働者に対し、 遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

〔鉛中毒予防規則〕

(健康診断の結果の通知)
第五十四条の三 事業者は、第五十三条第一項又は第三項の健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

〔四アルキル鉛中毒予防規則〕

(健康診断の結果の通知)
第二十三条の三 事業者は、第二十二条の健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

〔特定化学物質障害予防規則〕

(健康診断の結果の通知)
第四十条の三 事業者は、第三十九条第一項から第三項までの健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

〔高気圧作業安全衛生規則〕

(健康診断の結果の通知)
第三十九条の三 事業者は、第三十八条の健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

〔電離放射線障害防止規則〕

(健康診断の結果の通知)
第五十七条の三 事業者は、第五十六条第一項の健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

〔石綿障害予防規則〕

(健康診断の結果の通知)
第四十二条の二 事業者は、第四十条第一項から第三項までの健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

〔じん肺法施行規則〕

(じん肺健康診断の結果の通知)
第二十二条の二 事業者は、法第七条から第九条の二までの規定により行うじん肺健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該じん肺健康診断の結果を通知しなければならない。

 

*法令表記のうちアンダーライン部が、平成18年改正の行われた箇所である。




「平成16年9月労働者の健康情報の保護に関する検討会報告書」

 H18.12.27今後の労働安全衛生対策について(建議)の元となった「平成16年9月6日労働者の健康情報の保護に関する検討会報告書」において、本条(66条の6)に関連する記述として、次のような箇所が認められる。(労務安全情報センター記)



2.  労働者の健康情報保護についての基本的な考え方

○健康情報は、個人情報の中でも特に機微な情報であり、労働者の権利として、特に厳格に保護されるべきものであることから、事業者は、情報提供する範囲を必要最小限にするなどの配慮を行い、その適正な取扱いが図られなければならない。
○しかし、事業者は、安衛法やその他の関係法令により、労働者の安全と健康の確保のために必要な措置を講ずる責任を有するとともに、裁判における判例等によれば、民事上の安全配慮義務を果たすことを期待されているため、法の許す範囲で、労働者の健康状態、病歴に関する情報など医療上の個人情報を幅広く収集し、必要な就業場所の変更、労働時間の短縮等の措置、作業環境測定の実施や施設・設備の設置・整備等の措置を講ずるために活用することが求められている。
○事業者は、以上のように労働者の健康を確保するために、健康診断等を実施し、労働者の健康情報を取得するだけでなく、その結果に基づき適切な措置を講じるために、その健康情報を医師等のほか、必要に応じて関係者に対して提供し、対応を協議することが求められる場合もあり、その際に労働者のプライバシーに抵触する可能性がある。
○以上のことから明らかなように、事業者が健康情報を取り扱う際には、労働者の健康保持のために健康状態を把握する義務と、不必要に労働者個人のプライバシーが侵害されないように保護する義務との間での均衡を図ることが求められている。
○こうした基本的考え方を具体化するため、検討会は、事業者が労働者の健康情報を取り扱う際に遵守すべき事項や方向性について引き続き検討を行った。

3.  労働者の健康情報を取り扱うに際しての事業者の義務等
(5)  本人への開示
○安衛法上、一般健康診断については、健康診断の実施後にその結果を本人へ通知する義務が規定されているが(同法第66条の6)、特殊健康診断の結果についても、労働者の権利として同様の通知義務を規定するべきである。


〔最終更新日-H18.3.30 労務安全情報センター〕