労災かくしはなぜ起きるのか
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労災かくし

 


「労災かくし」による検察庁への送検件数の推移

労働安全衛生法第100条及び第120条違反
  平成10年 平成11年 平成12年 平成13年
件数 79件 74件 91件 126件



労災かくしはなぜ起きるのか

 安全管理がなおざりで事故を起こすところとは、取引しないと言われている。死活問題だ。俺の車で医者へ行こう。(治療費は俺がもつ、心配するな。)
 元請はゼロ災めざしてそれこそ本気でやっている。ここで、災害起こしたでは、申し訳ない。黙っておればわからないし、下請として今後の取引に影響があっても大変だ。
 2、3日の打撲だと言っていたのに、、何なのだ、後遺症まで残る災害だったとは。トホホ、今更どうすればいいのだ。
 労災かくしは悪いことだから、自分から言うことは決してありませんが、下請から○○しときましょ!といわれると、つい、ヨロッとしてしまう。私が毅然とした態度をとらなかったのがいけないのです。
 労基署から安全モデル現場だと、ほめられたのはつい先々月のこと。事故報告などできない。下請の労災保険番号を使って下請の資材置き場で発生した事故にしよう。
 会社きっての大規模現場の所長に抜擢されたのだ。この現場はゼロ災に決まっている、いいな。(所長の評価)
 サラリーマンである以上、外のことより、社内の評価が大切だ。
 不法就労の外国人がケガしたが、元請には報告できなかった。
 ケガの大きさにもよりますが、労災のメリット還元金や経営事項審査の「工事の安全成績」のランクアップを意識しないかと言いますと、意識はします。
 公共工事で災害はご法度です。



実態  報告せず80%、虚偽の報告20%
業種  建設業が過半、ついで製造業
発覚の端緒  被災者、家族、同僚からの連絡(8割)、監督官の調査(労災給付請求書があるのに死傷病報告書がないなど。)

発覚後の始末 刑事罰(司法処分=共同正犯、教唆、幇助)及び労災メリット還付金の返還、全工期無災害記録の取消・返還


労災のメリット制の功罪に係る国会審議

第150回臨時国会−労災保健法等の改正に係る付帯決議
「建設業等の有期事業におけるメリット制の改正にあたっては、いわゆる労災かくしの増加につながることのないように、災害発生率の確実な把握に努めるとともに、建設業の元請の安全管理体制の強化・徹底等の措置を図るなど、制度運用に万全を尽くすこと。」

平成12年11月2日参議院労働・社会政策委員会審議より

質疑  メリット制を拡大することによって、当該業種、産業に労働災害防止の努力、ゼロ災害達成への努力と、労災かくし等との間には裏腹の関係にある。この点について、今回の改正に伴って労働省はどのような考えをもっているのか。

政府参考人 メリット制は確かにマイナスの点もあるが、メリットもある。性善説にたてば事業主が災害防止に努力する。

労働大臣  労災かくしの防止については、これまでも労働基準監督署において、臨検監督、集団指導等あらゆる機会を通じて、事業者に対して指導を徹底している。仮に、労災かくしの存在が明らかになった場合には司法処分も含め対処している。今後ともあらゆる機会を通じて、事業者に対し指導を徹底するとともに、新たに建設業等の関係団体に対する指導文書の発出、医療機関用ポスター等の作成、配布、安全パトロール等を活用した啓発等の労災かくし防止の取組を積極的に行う。さらに、労災かくしの対策について行政と労使がともに検討を行う場を設けることを考えている。」












労働災害が発生したときの基本的対処

 ○労働者が労働災害により負傷した場合などには、労災保険給付の請求を労働基準監督署長に行う。(なお、休業4日未満の労災は、労災保険が使えないので使用者が労働者に対し、休業補償を行う。)
 ○事業者は、労働災害などによって労働者が死傷した場合には、労働者死傷病報告(休業4日以上の場合には遅滞なく、休業4日未満の場合には3か月ごとに)を労働基準監督署長あて提出すること。

労働安全衛生法第100条
労働安全衛生規則

(労働者死傷病報告)
 第 97条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
 2  前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの期間における当該事実について、様式第24号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。








資料・通達等



基発第687号
平成3年12月5日

 都道府県労働基準局長 殿

労働省労働基準局長

いわゆる労災かくしの排除について

 標記については、平成3年2月「平成3年度労働基準行政の運営について」の第3の2をもって、厳格に対処するよう指示したところであるが、これが具体的な実施については、下記によることとしたので、その的確な処理を図り、いわゆる労災かくしの排除に徹底を期されたい。

1 基本的な考え方
 
 労働安全衛生法が労働者の業務上の負傷等について事業者に対して所轄労働基準監督署長への報告を義務付けているのは、労働基準行政として災害発生原因等を把握し、当該事業場に対し同種災害の再発防止対策を確立させることはもとより、以後における的確な行政推進に資するためであり、労働災害の発生状況を正確に把握することは労働災害防止対策の推進にとって重要なことである。
 最近、労働災害の発生に関し、その発生事実を隠蔽するため故意に労働者死傷病報告書を提出しないもの及び虚偽の内容を記載して提出するもの(以下「労災かくし」という。)がみられるが、このような労災かくしが横行することとなれば、労働災害防止対策を重点とする労働基準行政の的確な推進をゆるがすこととなりかねず、かかる事案の排除に徹底を期する必要がある。
 このため、臨検監督、集団指導等あらゆる機会を通じ、事業者等に対し、労働者死傷病報告書の提出を適正に行うよう指導を徹底するとともに、関係部署間で十分な連携を図り、労災かくしの把握に努め、万一、労災かくしの存在が明らかとなった場合には、その事案の軽量等を的確に判断しつつ、再発防止の徹底を図るため厳正な措置を講ずるものとする。

2
 
 事案の把握及び調査

 労災かくしは、事業者が故意に労災事故を隠蔽する意思のもとに行われるため、その事案の発見には困難を伴うものが多いが、疑いのある事案の把握及び調査に当たっては、特に次の事項に留意し、関係部署間で組織的な連携を図り、的確な処理を行うこと。

(1)

 労働者死傷病報告書、休業補償給付支給請求書等関係書類の提出がなされた場合には、当該報告書の内容を点検し、必要に応じ関係書類相互間の突合を行い、災害発生状況等の記載が不自然と思われる事案の把握を行うこと。
(2) 被災労働者からの申告、情報の提供がなされた場合には、その情報に基づき、改めて労働者死傷病報告書、休業補償給付支給請求書等関係書類の提出の有無を確認し、また、その相互間の突合を行い事案の内容の把握を行うこと。
(3) 監督指導時に、出勤簿、作業日誌等関係書類の記載内容を点検し、その内容が不自然と思われる事案の把握を行うこと。
(4) 上記(1)から(3)により把握した事案については、実地調査等必要な調査を実施し、労災かくしの発見に徹底を期すること。

3

 事案を発見した場合の措置

 労災かくしを行った事業場に対する措置については、次に掲げる事項に留意の上、再発防止の徹底を図るため厳正な措置を講ずること。

(1)

 労災かくしを行った事業場に対しては、司法処分を含め厳正に対処すること。
(2) 事案に応じ、事業者に出頭を求め局長又は署長から警告を発するとともに、同種事案再発防止対策を講じさせる等の措置を講ずること。
(3) 本社又は支社等が他局管内に所在し、同種事案について所轄局署の注意を喚起する必要があると思われる事案、特に重大・悪質な事案等については、速やかに局へ連絡し、必要に応じ関係局間・本省とも連携を図り、情報の提供その他必要な措置を講ずること。
(4) 建設事業無災害表彰を受けた事業場にあっては、平成3年12月5日付け基発第685号「建設事業無災害表彰内規の改正について」をもって指示したところにより、当該無災害表彰状を返還させること。
(5) 労災保険のメリット制の適用を受けている事業場にあっては、メリット収支率の再計算を行い、必要に応じ、還付金の回収を行う等適正な保険料を徴収するための処理を行うこと。


基発第68号
平成13年2月8日

 都道府県労働局長 殿

厚生労働省労働基準局長

いわゆる労災かくしの排除に係る対策の一層の強化について

 いわゆる労災かくしの排除については、平成3年12月5日付け基発第687号「いわゆる労災かくしの排除について」(以下「687号通達」という。)に基づき推進してきたところであるが、近年労災かくし事案として労働安全衛生法第100条及び第120条違反で送検した件数が増加しており、このことからも労災かくし事案の増加が懸念されるところである。
 一方、第150回臨時国会における労働者災害補償保険法等の改正に係る審議においても労災かくし対策を徹底すべきであると指摘され、また「建設業等の有期事業におけるメリット制の改正にあたっては、いわゆる労災かくしの増加につながることのないように、災害発生率の確実な把握に努めるとともに、建設業の元請けの安全管理体制の強化・徹底等の措置を図るなど、制度運用に万全を尽くすこと。」との附帯決議がなされたところである。
 こうした状況を踏まえ、今般、本省において、別添1のとおり労働災害防止団体等の長に対し、別添2のとおり建設業事業者団体の長に対し、別添3のとおり事業者団体の長に対し、別添4のとおり全国社会保険労務士会連合会会長に対し、及び別添5のとおり社団法人日本医師会長に対し、労災かくしの排除についてそれぞれ文書要請を行ったところであり、これを踏まえ、都道府県労働局においても、管内のこれら団体(各支部)及び都道府県医師会に対して、同旨の文書要請を行われたい。
 また、当面、687号通達による対応を引き続き推進するとともに、下記により、労災かくしの排除に係る的確な対応を図られたい。

1 事業主、労働者等に対する周知・啓発

 本省から別途配布するポスター及びリーフレットを活用し、労働保険の年度更新のほか、集団指導、監督指導、個別指導、労働保険料の算定基礎調査・滞納整理時等あらゆる機会を通じて、労災かくしの排除に係る周知・啓発を行うこと。
 また、労働災害防止団体や事業者団体が実施する安全パトロールに、都道府県労働局又は労働基準監督署の職員が同行する場合においても、同リーフレットを活用し、事業主等に対し、労災かくしの排除に係る周知・啓発を行うこと。
 さらに、ポスターについては、都道府県労働局・労働基準監督署・公共職業安定所に掲示することはもとより、医師会、関係機関等に対しても、その掲示の依頼を行うとともに、労災かくしの排除に係る周知・啓発の協力を得るよう要請を行うこと。

2

 企業トップへの啓発

 本省においては、中央労働災害防止協会が行う「安全衛生トップセミナー」において、労働基準局幹部が、労災かくしの排除について企業のトップに対して直接要請を行うこととしているところであり、各局においても、局長等局幹部が出席する同旨の会合等において、労災かくしの排除について企業トップに対して直接要請を行うこと。


別添 1〜3(省略)


 

基監発第0726001号
基徴発第0726001号
基安計発第0726001号
基労管発第0726001号
平成14年7月26日

 都道府県労働局長 殿

厚生労働省労働基準局
   監督課長
   労働保険徴収課長
   安全衛生部計画課長
   労災補償部労災管理課長

「労災かくし」の排除に係る対策の推進について

 「労災かくし」の排除については、平成3年12月5日付け基発第687号「いわゆる労災かくしの排除について」、平成13年2月8日付け基発第68号「いわゆる労災かくしの排除に係る対策の一層の強化について」により推進してきたところであるが、依然として労災かくしが多発していることから、下記により、労災かくしの排除に係る周知・啓発等を行うこととするので、遺憾なきを期されたい。

 ポスター及びリーフレットによる周知・啓発
 労災かくしの排除を呼びかけるポスターを局署及び関係行政機関等に掲示するとともに、医師会の協力を得て労災保険指定医療機関に掲示することにより、周知・啓発を図ること。
 また、同趣旨のリーフレットを活用し、事業者に対し、監督指導、個別指導、集団指導、安全パトロール、労働保険の年度更新に係る説明会、署の窓口指導、労働災害防止団体が主催するトップセミナー等あらゆる機会を通じ、労働者死傷病報告書の適正な提出について、周知・啓発を図ること。
 また、事業主団体等における自主的活動を促進する観点から事業主団体等が自主的に厚生労働省作成ポスターにその名称を付して印刷することを希望する場合には、これを可能とすることとしたので別添により適切に対応すること。


 都道府県及び市町村の広報誌・紙等による周知・啓発

 都道府県及び市町村の広報誌・紙等に労災かくしの排除についての広報掲載を依頼することにより、事業者、労働者はもとより広く一般に対し、労災かくしの排除への周知・啓発を行うこと。


 厚生労働省ホームページによる周知・啓発

 厚生労働省ホームページ上に、新たに労災かくしの排除に係る掲示を行い、(1)労災かくしは法違反であること、(2)労災かくしの排除に係る対策の概要、(3)労働災害発生時に事業者及び労働者が行うべき事項(労働者死傷病報告書の記入及び提出、労災請求手続等)、(4)労災かくしに係る送検事例の周知・啓発を行うこととしていることから、その活用を図ること。


 労災防止指導員の活用による労災かくしの排除

 労災防止指導員は、中小規模事業場等における安全管理及び衛生管理の向上を図り、もって労働災害の防止に資するために都道府県労働局長が任命しているものであるが、労災防止指導員が事業場に対して指導を行う際に併せて労災かくしの排除についての啓発・指導を行うこととするので、労災防止指導員の活動に当たって留意すること。


 労働基準法第87条について

 労働基準法第87条第2項に基づいて、建設業の元請負人が下請負人に対し、災害補償に係る使用者責任を負わせる事例がみられる。
 本規定は、元請負人を使用者とみなすことを基本としつつ、資力のある下請負人に対し、元請負人が書面による契約で補償を引き受けさせた場合、当該下請負人もまた使用者責任を負うこととする旨を規定したものである。
 したがって、本規定を根拠として、資力のない下請負人に使用者責任を負わせることは、その趣旨に反するばかりでなく、元請負人の保険関係に基づく保険給付の請求をさせないで下請負人に災害補償を行わせ、その結果として労災かくしにつながることも懸念される。
 このため、元請人がむやみに下請負人に対して本規定により、災害補償に係る使用者責任を負わせることがないよう、集団指導等の機会をとらえて指導を行うこととすること。


 医療機関に対する周知・啓発

 医療機関に対し、業務上の災害により被災した場合には、労働者災害補償保険の請求について労働基準監督署に相談することを被災労働者に勧奨するよう、労災診療協議会等の機会をとらえ、周知・啓発すること。


 事業者団体、都道府県社会保険労務士会等への要請

 事業者団体等に対し、その構成員である事業者を対象とした文書の発出、機関紙への記事の掲載、総会等各種会合における説明等により、労災かくしの排除に係る周知・啓発のための取組を行うことを要請すること。
 また、各都道府県社会保険労務士会に対し、会員社会保険労務士が、労災かくしの排除の重要性について関係事業場の理解を得るよう協力を要請すること。


 発注機関への働きかけ

 公共建設工事における労災かくしを排除するために、公共建設工事の発注機関に対し、労災かくしに対する基本的考え方を説明し、理解を求めた上で、発注機関として、労災かくしの排除について工事施工業者を指導するよう働きかけを行うこと。