チェンソー取扱業務の健康管理指針

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チエンソー取扱業務の健康管理指針

チエンソー取扱い業務に係る健康管理の推進について

昭50.10.20 基発第610号


 チエンソーの使用に伴う振動障害の予防については、昭和45年2月28日付け基発第134号「チエンソーの使用に伴う振動障害の予防について」をもってその対策を示し、これについての徹底を図るほか所要の措置を推進してきたところでもある。
 今般、当該業務従事者の健康管理区分に応じた管理を進め、振動障害の予防の適正化を図るため、別添のとおり前記通達のうち作業管理等に関する部分を含めた「チエンソー取扱い業務に係る健康管理指針」を定めたので、関係者に周知徹底を図るとともに適切な指導を行われたい。
 なお、チエンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る健康管理についても、実情に応じて本通達(別添2の「チエンソー取扱い作業指針」に係る部分を除く。)を準用されたい。
 おって、林業の実情にかんがみ、本指針の実効が確保されるためには関係労働者の理解と協力の下に、事業者においての作業の仕組み、労働諸条件の改善が欠かせないので、特にこの点に留意されたい。



チエンソー取扱い業務に係る健康管理指針
 (編注)本文中の管理区分及び事後措置の記述について、表形式に整理(編集)しています。


 本指針は、チエンソー取扱い業務に従事する者の健康管理区分に応じた適切な管理を推進するための基本となる事項を定めたものである。
 事業者は、チエンソー取扱い業務に係る健康診断の結果に基づき、この指針に定めるところにより、管理を行うこと。

1 健康管理の区分

 健康診断の結果に基づき、作業者の健康管理区分を次のように区分する。
管理A  問診、視診、触診において振動の影響とみられる自・他覚症状が認められないか、又は、認められても一時的であり、かつ、末梢循環機能検査、末梢神経機能検査及び筋力、筋運動検査等の所見(以下「検査所見」という。)もおおむね正常の範囲にあり、振動ばく露歴に係る調査結果(以下「調査結果」という。)と併せ、総合的にみて振動による障害がほとんどないと認められるもの。
管理B  [1] 問診、視診、触診において振動の影響とみられる各種の自・他覚症状が認められ、かつ、第一次健康診断及び第二次健康診断の検査所見において正常の範囲を明らかにこえ又は下廻るものがいくつか認められ、調査結果と併せ総合的にみて振動による障害を受け又はその疑いがあると認められるが療養を要する程度ではないと認められるもの。

 [2] 管理Cに該当していたが、その後軽快して療養を必要としなくなったと認められるもの。
管理C  振動による影響とみられるレイノー現象、しびれ、痛み、こわばり、その他の自・他覚症状があり、かつ、問診、視診、触診の所見及び検査所見並びに調査結果と併せ総合的にみて振動による障害が明らかであって、療養を必要とすると認められるもの。

 注1 健康診断と健康管理区分との関係については、別添1の図を参照すること。


 2 管理区分Cの判断に当っては、振動障害の業務上外の認定基準(昭和50年9月22日基発第501号)を参考にすること。

 

2 健康管理区分に基づく事後措置

管理Aの者  別添2の「チエンソー取扱い作業指針」(以下「作業指針」という)に従ってチエンソーを取り扱う業務に従事して差し支えないこと。
管理Bの者  (1) 経過を観察しつつ次の基準に従ってチエンソーを取り扱う業務に従事して差し支えないこと。

 (イ) 作業の組合せを変える等により、1日の取扱い時間を作業指針に示すところよりも少なくすること又は一週若しくは1月の取扱い日数を健康診断を受ける前より少なくすることにより、振動へのばく露を少なくすること。
 この場合において、その程度は振動によって受けた影響及び使用するチエンソーの振動の程度に応じて定めること。

 (ロ) 「作業指針」に示す対策を一層強化すること。

 (ハ) (イ)、(ロ)の措置を講じた後において自・他覚症状の悪化があった場合には、チエンソーの取り扱いを一時中止し、又は健康診断を受けること。

 (2) 管理Cに該当していたが、軽快して療養の必要がなくなった者については、その後医師の指示があるまでの間は、チエンソーの取扱い業務に従事することは避けること。
 なお、第一次健康診断の結果、第二次健康診断を要すると認められた者については、管理区分の決定までの間、管理Bに準じ管理を行うこと。
管理Cの者  (1) チエンソーの取扱い業務に従事することは避けること。

 (2) 医師の指示により必要な療養をうけること。

 


3 配置時の措置等

 (1) 高年令の者は、一般に振動業務への適応性が小さいとも考えられるので、チエンソーの取扱い業務に新たに就かせることは、望ましくないと考えられること。
 また、現にチエンソー取扱い業務に従事している高年令者については、チエンソーの操作時間の短縮を考慮することが望ましいこと。

 (2) 末梢循環障害、心臓疾患、重度の高血圧、中枢神経及び末梢神経系の障害、重度の運動障害がある者はチエンソー取扱い業務に就かせることは望ましくないと考えられること。


別添1  健康管理系統図(省略)


別添2  チエンソー取扱い作業指針




I 事業者の措置

 事業者は、本指針を確実に守るとともに、本指針が労働者に守られるよう、必要な措置を講ずること。


1 チエンソーの選定について

 (1) 防振機坑内蔵型で、かつ、振動及び騒音ができる限り少ないものを選ぶこと。

 (2) できる限り軽量なものを選び、大型のチエンソーは、大怪木の伐倒等止むを得ない場合に限って用いること。

 (3) バーの長さが、伐倒のために必要な限度を超えないものを選ぶこと。



2 チエンソーの整備について

 (1) チエンソーを定期的に点検整備し、常に最良の状態に保つようにすること。

 (2) チエンソーについては、目立てを定期的に行い、予備のチエンソーを業務場所に持参して適宜交換する等常に最良の状態で使用すること。



3 チエンソー作業の進め方

 (1) 伐倒、集材、運材等を計画的に組み合わせることにより、チエンソーを取り扱わない日を設けるなどの方法により一週間のチエンソーの操作時間を短縮すること。

 (2) 下草払い、小枝払い等は、手鋸、手おの等を用い、チエンソーの使用をできる限り避けること。

 (3) チエンソーを使わない他の作業と計画的に組み合わせ、チエンソー操作時間は、1日2時間以下とすること。

 (4) チエンソーの連続操作時間は、長くとも10分以内とする。

 (5) 大型の重いチエンソーを用いる場合は、1日の操作時間及び一連続の操作時間を更に短縮すること。

 (6) チエンソーを無理に木に押しつけないように心掛けること。
また、チエンソーを持つときは、肘や膝を軽く曲げて持ち、かつ、チエンソーを木にもたせかけるようにして、チエンソーの重量をなるべく木で支えさせるようにし、チエンソーを支える力が少なくてすむようにすること。

 (7) 移動の際はチエンソーの運動を止め、かつ、使用の際には高速の空運転を極力避けること。



4 作業上の注意について

 (1) 雨の中の作業等、作業者の身体を冷やすことは、努めて避けること。

 (2) 防振、防寒に役立つ厚手の手袋を用いること。

 (3) 作業中は軽く、かつ、暖い服を着用すること。

 (4) 寒冷地における休憩は、できる限り暖かい場所でとるよう心掛けること。

 (5) エンジンを掛けている時は、耳栓を用いること。



5 体操の実施について

 筋肉の局部的な疲れをとり、身体の健康を保持するため、作業開始前作業間の適当な時期及び作業終了後に、くび、肩の回転、肘、手、指の屈伸、腰の曲げ伸ばし、腰の回転を主体とした体操及びマッサージを毎日行うこと。


6 通勤の方法

 通勤は、身体が寒さからさらされないような方法をとり、オートバイ等による通勤は、できる限り避けること。


7 その他

 (1) 適切な作業計画を樹立し、これに見合う人員を配置すること。

 (2) チエンソー及び目立ての機材を備え付けるようにすること。

 (3) ソーチェンの目立て、チエンソーの整備及び適正な取扱いについての教育を行うこと。

 (4) ストーブを設けた休憩小屋等を設置すること。

 (5) 防振手袋、耳栓等の保護具を支給すること。



II 労働者の措置

 労働者は、Iの1から6までに掲げる事項を確実に守るとともに、振動障害の予防のため事業者が講ずる措置に協力するように努めること。