細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病

■HOMEPAGE

■640/480 ■感染症と労災認定



細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病





イ 「患者の診療若しくは看護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患」(第6号1)

 〔要旨〕
 本規定は、例示されたような病原体にさらされる作業環境下において業務に従事することにより発生する伝染病疾患を業務上の疾病として定めたものであり、旧第33号とほぼ同一である。

 〔解説〕
(イ) 「患者の診療若しくは看護の業務」とは、病院又は診療所において医師の行う患者の診断、検査若しくは治療又は看護婦等の行う看護の業務をいう。

(ロ) 「研究その他の目的で病原体を取り扱う業務」とは、病院又は診療所において診療放射線技師、診療X線技師、臨床検査技師、衛生検査技師等の行う上記(イ)に掲げる業務以外の業務であって、細菌、ウイルス等の病原体によって汚染のおそれのある業務並びに病院又は診療所以外の衛生試験所、医学研究所、保健所等において医師、研究者又はこれらの助手等の行う研究、検査及びこれらの業務に付随する業務であって、病原体によって汚染のおそれのある業務をいう。

(ハ) 「伝染性疾患」としては、コレラ、赤痢、腸チフス、発疹チフス等の法定伝染病のほか、結核、らい、ウイルス性肝炎等がある。

(ニ) なお、病院又は診療所において患者の分泌物又は排泄物等を介して感染したウイルス性肝炎等の伝染性疾患あるいは伝染性疾患ではなくても病原菌にさらされる業務(炊事婦、介助人等)に従事したことにより起きた細菌性中毒等の疾病に対しては、第6号5の規定が適用される。





ロ 「動物若しくはその死体、獣毛、革その他動物性の物又はぼろ等の古物を取り扱う業務によるブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患」(第6号2)

 〔要旨〕
 本規定は、例示されたような獣類の人畜共通伝染病病原体にさらされる作業環境下において業務に従事することにより発生する人畜共通伝染病であるブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患を業務上の疾病として定めたものであり、旧第36号に対応するものであるが、例示疾病が改められた。

 〔解説〕
(イ) 「その他動物性の物」には、動物の骨、内臓等加工していない動物の身体の部分がある。

(ロ) 「ぼろ等の古物」の「等」には、使い古した家具調度品がある。

(ハ) 該当業務としては、例えば、家畜の飼育、獣医の業務、屠殺、皮革製品の製造、刷毛又は筆の製造の業務、廃品回収の業務等がある。

(ニ) 「ブルセラ症」とは、ブルセラ菌に感染して起こる伝染性疾患をいい、これに感染する動物は通常ヤギ、ウシ、ブタ等の家畜であって、これらの病獣等を介してブルセラ菌に感染することにより起こる場合が多い。

(ホ) 「炭疽病」とに、元来はウシ及びヒツジまれにウマ、ブタ、ネコ等が自然感染する疾患であるが、死獣又は病獣からの排泄物等を介して炭疽菌に感染(通常経皮感染、ときに経口感染)することにより起こる伝染性疾恵をいう。

(ヘ) 「ブラセル症、炭疽病等」の「等」には、ペスト、痘瘡等がある。





ハ 「湿潤地における業務によるワイル病等のレプトスプラ症」(第6号3)

 〔要旨〕
 本規定は、病原体の一種であるレプトスピラ(鼠の尿中に排沸された病原体)で汚染された湿潤地における業務に従事することにより発生するワイル病等のレプトスピラ症を業務上の疾病として定めたものであり、旧第34号に対応するものであるが、その例示疾病が改められた。

 〔解説〕
(イ) ここはいう「湿潤地」とは、常時湿潤な状態を保有する土地を意味し、水田地帯や地下水の浸出する炭鉱地帯をいう。

(ロ) 該当業務としては、例えば、炭坑夫及び土木工事従事者の業務、街路清掃、じんあい処理の業務等がある。

(ハ) 「ワイル病」とは、鼠の尿で汚染された水、土壌、食物等を介してレプトスピラに経皮的又は経口的に感染することにより起こる伝染性疾患をいい、黄疸出血性レプトスピラ病とも呼ばれる。

(ニ) 「ワイル病等のレプトスピラ症」の「等」には、黄疸出血性レプトスピラ病以外のレプトスピラ症が含まれ、これには無菌性髄膜炎等がある。





ニ 「屋外における業務による恙虫病」(第6号4)

 〔要旨〕
 本規定は恙虫病のリケッチアに感染する恐れのある地域の屋外における業務に従事することにより発生する恙虫病を業務上の疾病として定めたものであり、旧第35号と同一である。

 〔解説〕
(イ) ここにいう「屋外における業務」とは、恙虫の幼虫に刺されるおそれのある地域の屋外における業務をいう。

(ロ) 該当業務としては、上記(イ)に掲げた関係地域の屋外における土木工事、護岸作業、農業に係る業務等がある。

(ハ) 「恙虫病」とは、野鼠により運搬された恙虫の幼虫(ダニの一種で赤虫とも呼ばれる。)に刺された傷口から、その幼虫の体内に保有されていたリケッチアに感染することにより起こる急性発疹性熱性疾患をいう。





ホ 「1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他、細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病」(第6号5)

 〔要旨〕
 本規定は、第6号1から4までに掲げる疾病以外に、Fこれらの疾病に付随する疾病、A第6号1から4までに掲げる疾病発生の原因因子によるその他の疾病又はB第6号1から4までに掲げる疾病発生の原因心子以外で細菌、ウイルス等の病原体にさらされる作業環境下において業務に従事した結果、発生したものと認められる疾病に対して適用される趣旨で設けられたものである。

 〔解説〕
 第6号1及び2に掲げる疾病のうち、急性伝染性疾患は二次感染を起こすことがあるが、このような二次感染により起こる疾病に対しては本規定が適用される。
 なお、「明らか」の意義については、(2)ワ〔解設〕参照。