療養補償給付の手続について

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<目次>
■手続一覧
■療養補償給付についての説明(「療養の給付」と「療養の費用」)
■療養の給付(現物給付)の請求手続
■治療の途中で、病院等を変更する場合の手続
■療養の費用(現金給付)の請求手続

■療養は治ゆするまで続けられる/『治ゆ』とは?




■手続一覧
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イ 療養の給付
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なにを   ◆療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)(l部)
だれが   ◆被災労働者
いつ    ◆業務上負傷し,又は疾病にかかり,労災病院や労災指定病院等で療養給付を受
      けようとするとき
どこに   ◆治療を受けている労災病院や労災指定病院等を経て所轄労働基準監督署長
その他参考 ◆労災病院や労災指定病院等において傷病が治ゆするまで無料で療養を受けられ
       るという現物給付の制度
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ロ 療養の費用の支給
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なにを   ◆療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)(l部)
だれが   ◆被災労働者
いつ    ◆業務上負傷し.又は疾病にかかり,労災病院や労災指定病院等以外の病院等で
       療養を行ったとき
どこに   ◆所轄労働基準監督署長
その他参考 ◆傷病が治ゆするまでの療養に要した費用を支給する現金給付の制度。請求書に
       は領収書や請求書など療養に要した費用を証明する書類を添付する。
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■療養補償給付とは 目次に戻ります

 ・療養補償給付は、労働者が業務上の傷病により療養を必要とする場合に支給される。
 ・療養補償給付には、「療養の給付」(現物給付)と「療養の費用の支給」(現金支給)の
  2種類あるが、「療養の給付」が原則。
  「療養の費用の支給」は近くに労災指定病院等がないなどの特定の事情がある場合の取扱
  となる。
 ・「療養の給付」は、労災指定病院等において傷病が治ゆするまで無料で療養を受けられる。
  (治療費は直接、病院から監督署長に請求される)
  これに対して「療養の費用の支給」は、労災指定病院等以外で療養を受けた場合や特別の
  事情があって外部から看護婦を雇った場合などで、労働者がその費用を所轄労働基準監督
  署長に請求し支払いを受けるという方法て行われる。
  (労働者は一旦、治療費を立替払いする必要がある。)

 ・療養補償給付の対象には,治療費・入院の費用・看護料・移送費などの通常療養のために
  必要なものは全て含まれてると思ってよい。
  (ただし、まだ一般に治療効果があると認められていない特殊な治療を受けた場合や傷病
  の程度等からみて必要がないと思われるのに付添看護婦を雇ったような場合の費用は支給
  の対象とならないから注意する。)








■「療養の給付」の請求手続 目次に戻ります

 ○請求書の作成
 ・様式第5号「療養補償給付たる療養の給付請求書」を記入し、事業主の証明を受ける。
  事業主の証明の趣旨は、業務上の傷病であるとの証明ではなく,災害発生の原因・状況等
  の事実に相違がない旨の証明とされる。
  (注意!業務上外に関する労使の主張に意見の違いがある場合、証明段階でトラブルが生
  じることがあるので、証明の趣旨については正確な理解が必要。)

 ○請求書の提出
 ・あて先は所轄労働基準監督署長。(ただし、労災指定病院等を経由して)。
  実務的には、労災指定病院等に提出すると考えてよい。


 ○治療の途中で、病院等を変更する場合 目次に戻ります
 ・一般に、患者の転医は自由。
 ・転医する場合、予め、様式第6号「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変
  更)届」を記入し、事業主の証明を受けたうえで、転医先の労災指定病院等を経由して所
  轄労基署長に提出しておく必要がある。








■「療養の費用」の請求手続 目次に戻ります

 ○請求書の作成
 ・様式第7号「療養補償給付たる療養の費用請求書」を記入し、事業主及び診療を担当した
  医師等の証明を受ける。
 ・また、看護や移送に要した費用を請求するときには、領収書や請求書等その費用を証明す
  る書類の添付が必要。

 ○請求書の提出
 ・請求書は、被災者の所属する事業場を管轄する労働基準監督署長あて、提出する。







■療養は治ゆするまで続けられる/『治ゆ』とは? 目次に戻ります
<労災保険法における「治ゆ」の概念>


労働基準監督署では、どのように取り扱っているか(行政解釈)

「治ったとき」とは

 労災保険における傷病が「治ったとき」とは、身体の諸器官・組織が健康時の
状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学
上一般に認められた医療(注1)を行っても、その医療効果が期待できなくなっ
た状態(注2)をいい、この状態を労災保険では「治ゆ」(症状固定)という。

 したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療によりー時的な回復が
みられるにすぎない場合」など症状が残存している場合であっても、医療効果が
期待できないと判断される場合には、労災保険では「治ゆ」(症状固定)と判断
される。

(注1)「医学上一般に認められた医療」とは
労災保険の療養の範囲(基本的には、健康保険に準拠。)として認められたもの
をいう。したがって、実験段階又は研究的過程にあるような治療方法は、ここに
いう医療には含まれない。

(注2)「医療効果が期待できなくなった状態」とは、
その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいう。

 なお、「治ゆ」後に残された欠損、機能障害、神経症状等は障害として障害補
償の対象となるほか、一定の症状は労災保険福祉事業の「アフタケア」の対象と
なる。


<例> 目次に戻ります
 例えば、次のような状態に至ったときは「治ゆ」(症状固定)として扱われる

例l
 切創若しくは割創の創面がゆ合した場合又は骨折で骨ゆ合した場合であって、
たとえ疼痛などの症状が残っていても、その症状が安定した状態になり、その後
の療養を継続しても改善が期待できなくなったとき。

例2
 骨ゆ合後の機能回復療法として理学療法を行っている場合に、治療施行時には
運動障害がある程度改善されるが、数日経過すると、元の状態に戻るという経過
がー定期間にわたってみられるとき。

例3
 頭部外傷が治った後においても外傷性てんかんが残る場合があり、この時、治
療によってそのてんかん発作を完全に抑制できない場合であっても、その症状が
安定し、その後の療養を継続してもそれ以上てんかん発作の抑制が期待できなく
なったとき。

例4
 外傷性頭蓋内出血に対する治療後、片麻痺の状態が残っても、その症状が安定
し、その後の療養を継続しても改善が期待できなくなったとき。

例5
 腰部捻挫による腰痛症の急性症状は消退したが、疼痛などの慢性症状が持続し
ている場合であっても、その症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期
待できなくなったとき。






以上の行政解釈について、平成2年に最高裁判決(支持)
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 判例(小山健治事件について〉

1 事案の概要

(1)原告(小山健治)は、建設会社に大工として雇用されていたが、昭和48
  年9月12日、現場へ通勤のため乗車していた会社のマイクロバスが後続の
  マイクロバスに追突され、受傷した。

(2)原告は、受傷後、病院で診療を受けたところ、「外傷性頚腕症状(休業見
  込日数30日)」の傷病名で診療を受け、その後「頸椎捻挫、パレール症候
  群」等の傷病名で診療を受けていた。

(3)療養補償給付については、昭和54年8月1日から昭和56年2月23日
  までの間は支給されたが、それ以降については敦賀労基署長(被告)より
  「治ゆ」していることを理由に不支給処分を受けた。
  (昭和54年7月31日以前については、自賠貴保険により治療を受けてい
  た。)
   原告はその後も療養を続けており、労働できないものであるから、不支給
  処分は違法であるとして、本件訴えに至ったもの。


2 判決要旨

第一審 昭和62年3月20日福井地裁判決(請求棄却)

(1)昭和56年2月23日の時点においては、本件災害に係る原告の傷病によ
  る症状は固定し、同傷病に対する医学技術による治療効果を期待しえない状
  態になっていたと認定するのが相当である。

(2)労災保険法12条の8第1項1号の療養補償給付は、労働基準法75条に
  より、業務上の負傷等について必要な療養をする場合の補償を行うものであ
  り、労災保険法12条の8第1項2号の休業補償給付は、労働基準法76条
  により業務上の負傷等の療養のため労働することができないために賃金を受
  けない場合の補償を行うものであるところ、同法77条、労災保険法12条
  の8第1項3号等が負傷等のなおった後も精神、身体に障害のあることを当
  然の前提とし、これに対してその程度に応じ障害補償給付を行うこととして
  いることを考慮すれば、療養補償給付及び休業補償給付の場合の「療養」と
  は、負傷等による症状がすべて消退するなど、いわゆる「全治した」状態に
  なるまでのすべての治療等を意味するものではなく、負傷等に対する医学技
  術による治療効果が期待できる間の治療等を意味すると解すべきである。


控訴審 平成1年6月21日名古屋高裁判決(控訴棄却) 目次に戻ります

(1)本件は、災害後15年、症状固定認定後7年を経過した現在も同様の治療
  が継続されているだけであり、障害自体の改善の傾向は見られないことから
  すれば、控訴人の症状は、本質的な治療効果を期待しえない状態にあること
  は明らかである。
  患者が外来を訪れ、症状を訴えて治療を求めれば、医師としては、その症状
  に対応した治療を試みる義務があるから、対症療法的治療が継続しているこ
  と自体は症状固定の判断に反するものではない。

(2)労災保険法に基づく保険給付を行うか否かは、医師の診断結果を参考とし
  つつも、同法の趣旨に則って法的に評価すべきものであって、主治医が治療
  の継続を必要であると診断したとしても、これに拘束される理由はなく、そ
  の他の医師の意見や鑑定の結果あるいは療養の経過等を全体的に評価して判
  断することが許されることはいうまでもない。

(3)労災保険法に基づく他病院での受診命令にも正当な理由なく応じない場合
  に、被控訴人が、診療内容や傷病の経過を調査し、担当医師のほか労災医員
  等の意見を求めるのはむしろ当然の措置というべきであって、その結果に基
  づいて、主治医の診断に反する認定をしたとしても、これをもって差別であ
  るとは到底言い難い。


上告審 平成2年12月4日最高裁第三小法廷判決(上告棄却)

 原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認すること
 ができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を
 論難するものであって、採用することができない。














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