通勤災害について

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労災保険手続便覧



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(1)通勤災害の範囲

 ・通勤災害とは、労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。

 ・通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往
  復することをいい、業務の性質を有するものは除かれます。

 ・労働者が、当該往復の経路を逸脱し、又は往復を中断した場合には、当該逸脱又は中断の間及
  びその後の往復は、通勤には含まれません。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な
  行為であって労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものであ
  る場合は、当該逸脱又は中断の間を除き合理的な経路に復した後は通勤とされます。

 ・以上について具体的に説明すると次のとおりです。

 「通勤による」とは
 
 ・「通勤による」とは、災害と通勤との間に相当因果関係のあること、つまり、災害が通勤に通
  常伴う危険が具体化したものであることをいいます。
 ・具体的には、通勤の途中において、自動車にひかれた場合、電車が急停車したため転倒して受
  傷した場合、駅の階段から転落した場合、歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体によ
  り負傷した場合、転倒したタソクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場
  合等、一般に通勤中に発生した災害は通勤によるものと認められます。

 「就業に関し」とは

 ・「就業に関し」とは、往復行為が業務に就くため又は業務を終えたことにより行われるもので
  あることを必要とする趣旨です。つまり、通勤と認められるには、往復行為が業務と密接な関
  連をもって行われることを要します。

 ・具体的には、労働者が、被災当日において業務に従事することとなっていたか否か、又は現実
  に業務に従事したか否かが、問題となります。

 ・次にいわゆる退勤の場合には、終業後ただちに住居に向かう場合はもちろん、例えば、早退を
  するような場合であっても、その日の業務を終了して帰るものと考えられるので、就業との関
  連性が認められます。

 ・通勤は1日について1回のみしか認められないものではありません。例えば、昼休みに帰宅す
  るような場合などでは、午前中の業務を終了して帰り、午後の業務に就くために出勤するもの
  と考えることができるので、その往復行為は就業との関連性を認めることができます。

 「住居」とは

 ・「住居」とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のた
  めの拠点となるところをさすものです。したがって、就業の必要性があって、労働者が家族の
  住む場所とは別に就業の場所の近くに単身でアパートを借りたり、下宿をしてそこから通勤し
  ているような場合は、そこが住居となります。

 「就業の場所」とは

 ・「就業の場所」とは、業務を開始し又は終了する場所をいいます。
 ・外勤業務に従事する労働者で、特定区域を担当し、区域内にある数カ所の用務先を受け持って
  自宅との間を往復している場合には、自宅を出てからの最初の用務先が業務開始の場所であり
  、最後の用務先が業務終了の場所と認められます。

 「合理的な経路及び方法」とは

 ・「合理的な経路及び方法」とは、住居と就業の場所との間を往復する場合に、一般に労働者が
  用いるものと認められる経路及び手段等をいうものです。
 ・経路については、乗車定期券に表示され、あるいは、会社に届け出ているような鉄道、バス等
  の通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路が「合理的な経路」となり
  ます。
 ・「合理的な方法」については、鉄道、バス等の公共交通機関を利用し、自動車、自転車等を本
  来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通方法は、当該労働者が平
  常用いているか否かにかかわらず、合理的な方法認められます。

 「業務の性質を有するもの」とは

 ・「業務の性質を有するもの」とは、当該往復行為中における災害が業務災害と解されるものを
  いいます。したがって、たとえ出退勤の途上で被った災害であっても、従来から業務災害とし
  て取り扱われているものは通勤災害としてではなく業務災害として補償されることとなります。
  例えば、通勤途上において、事業主提供の専用交通機関を利用中のその利用に起因する災害が
  これに該当します。

 「逸脱」・「中断」及び「日常生活上必要な行為であって労働省令で定めるものをやむを得ない
  事由により行うための最小限度のもの」とは

 ・「逸脱」とは、通勤の途中において就業又は通勤とは関係のない目的で合理的な経路をそれる
  ことをいい、「中断」とは、通勤の経路上において通勤とは関係のない行為を行うことをいい
  ます。
 ・逸脱、中断の具体例をあげれば、通勤の途中で麻雀を行う場合、映画館に入る場合、バー、キ
  ャバレー等で飲酒する場合、デートのため長時間にわたってベンチで話しこんだり、経路から
  はずれる場合がこれに該当します。
 ・しかし、労働者が通勤の途中において、経路の近くにある公衆便所を使用する場合、帰途に経
  路の近くにある公園で短時間休息する場合や、経路上の店でタバコ、雑誌等を購入する場合、
  駅構内でジュースの立飲みをする場合、経路上の店で渇をいやすため極く短時間、お茶・ビー
  ル等を飲む場合、経路上で商売している大道の手相見、人相見に立ち寄って極く短時間手相や
  人相をみてもらう場合等のように労働者が通常、通勤の途中で行うようなささいな行為を行う
  場合には、逸脱、中断として取り扱いません。
  ただし、飲み屋やビヤホール等において、長時間にわたって腰をおちつけるに至った場合等は
  、ここにいう「逸脱」「中断」に該当することとなります。

 ・通勤の途中において、労働者が逸脱、中断をする場合には、その後は就業に関してする行為と
  いうよりも、むしろ、逸脱又は中断の目的に関してする行為と考えられますので、その後は一
  切通勤とは認められませんが、これについては、通勤の実態を考慮して法律で例外が設けられ
  、通勤途上で日常生活上必要な行為であって労働省令で定めるものをやむを得ない事由により
  最小限度の範囲で行う場合には、当該逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は通
  勤と認められることとされています。
 ・この具体例としては、帰途で惣菜等を購入する場合、独身労働者が食事をとるため食堂に立ち
  寄る場合、クリーニング店に立ち寄る場合、通勤の途中に病院、診療所で治療を受ける場合、
  選挙の投票に寄る場合等がこれに該当します。
 ・なお、「やむを得ない事由により行うため」とは、日常生活の必要から通勤の途中で行う必要
  のあることをいい、「最小限度のもの」とは、当該逸脱又は中断の原因となった行為の目的達
  成のために必要とする最小限度の時間、距離等をいうものです。




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(2)通勤災害の保険給付一覧表/請求手続

 ・通勤災害に関する保険給付の種類及び請求手続等は次表を参照してください。
 ・保険給付の内容は業務災害の場合と同様です。

  なにを 様式 だれが いつ どこに その他参考
療養 療養給付たる療養の給付請求書 第16号の3 被災労働者 通勤により負傷し、又は疾病にかかり労災指定病院等で療養の給付を受けようとするとき 治療を受けている労災指定病院等を経て所轄労働基準監督署長 労災指定病院等において傷病が治るまで無料で療養が受けられるという現物給付の制度
療養給付たる療養の費用請求書 第16号の5 被災労働者 通勤により負傷し、又は疾病にかかり労災指定病院等以外の病院や診療所で療養を行ったとき 所轄労働基準監督署長 ・傷病が治るまで療養に要した費用を支給する現金給付の制度
・請求書には領収書や明細書など療養に要した費用を証明する書類を添付する。
休業 休業給付支給請求書 第16号の6 被災労働者 通勤により負傷し、又は疾病にかかり療養のために働くことが出来ず、賃金を受けないとき 所轄労働基準監督署長 休業4日目以降、原則として休業日1日につき給付基礎日額の60%相当が支給される。
傷病 傷病年金       ・通勤による傷病が療養開始後1年6ヶ月を経過しても治らないものについて、その傷病の程度に応じ傷病等級第1級から第3級までの3段階に区分され、療養を必要とする期間1年につき年金給付基礎日額の313日分(第1級)227日分(第2級)又は245日分(第3級)の年金が支給される。
・傷病年金を受けている者の傷病が治った後に障害が残れば、その程度に応じた障害給付が支給され、その傷病が原因で死亡した場合は、遺族給付と葬祭給付が支給される。
障害 障害年金、障害給付支給請求書 第16号の7 被災労働者 通勤による負傷、又は疾病が治った後に身体に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったとき 所轄労働基準監督署長 ・障害の程度に応じ、年金給付基礎日額の313日分(第1級)から131日分(第7級)までの年金が支給される。
・障害年金受給者は、一定額を最高限度額として障害年金の前払いを障害年金前払一時金として請求できる。また、受給権者が死亡した場合、その者に支給された障害年金の合計額が一定額に満たない場合は、その差額を障害年金差額一時金として請求できる。
障害一時金、障害給付支給請求書 第16号の7 被災労働者 通勤による負傷、又は疾病が治った後に身体に障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残ったとき 所轄労働基準監督署長 ・障害の程度に応じ、年金給付基礎日額の503日分(第8級)から56日分(第14級)までの一時金が支給される。
遺族 遺族年金支給請求書
遺族一時金支給請求書
第16号の8
第16号の9
遺族 通勤により労働者が死亡したとき 所轄労働基準監督署長 ・遺族給付は、年金給付が原則であるが、年金の受給資格者がいない場合などには一時金が支給される。請求には死亡診断書等及び戸籍謄本又は抄本を添付する。
・遺族年金の受給権者は、給付基礎日額の1000日分を最高限度として、年金の前払いを遺族年金前払一時金として請求できる。
葬祭 葬祭給付請求書 第16号の10 葬祭を行う者(通常は遺族) 通勤により労働者が死亡したとき 所轄労働基準監督署長 葬祭給付は、通常遺族に支給されるが、遺族がいない場合などで事業主等が葬祭を行った場合には、その者に対し支給される。
介護 介護給付支給請求書 第16号の2の2 被災労働者 通勤による負傷、又は疾病による一定の障害により現に介護を受けたとき 所轄労働基準監督署長 障害の状態により常時介護又は随時介護に区分され、介護に要した費用の実費(上限額あり)又は一律定額が支給される。

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(3)保険給付請求書の記載方法

 イ 療養給付たる療養の給付請求書記載要領

 ・療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)の記載方法は、業務災害の場合の「療養
  補償給付たる療養の給付請求書」と同様ですが、特に、次の点に留意して下さい。

 (1)「労働保険番号」欄には、療養の給付を受けようとする労働者の所属する事業場の労働保
    険番号を記載します。この保険番号は、労災保険から保険給付を受けるときに必要なもの
    ですから記載もれのないようにしてください。
 (2)「労働者の氏名、生年月日、住所、職種」欄には、療養の給付を受けようとする通勤災害
    を被った労働者の氏名等を記載します。
 (3)「第三者行為災害」欄には、他人の不法行為(例えば、出勤の途中、横断歩道を渡ろうと
    して自動車にはねられた場合などが該当します。)により通勤災害を被ったときには、「
    該当する」の事項を〇で囲むことになります。
 (4)「健康保険日雇特例被保険者手帳の記号及び番号」欄は、療養の給付を受けようとする労
    働者が、健康保険の日雇特例被保険者であるときに記載します。
 (5)「通勤災害に関する事項」
   ・「負傷又は発病の時刻」欄には、通勤災害が発生した時刻を記載します。
   ・「災害発生の場所」欄には、通勤災害が発生した場所をできるだけ詳しく○○市○○町○
    ○交差点のように記載します。
   ・「災害発生の日の就業の場所」欄には、災害が出勤途中で発生したものであるときには、
    災害当日の就業場所(就業予定の場所を含む。)を、災害が退勤途中であれば、災害当日
    の就業した場所の所在地及び就業先名を記載します。

   ・「災害発生の日の就業開始の予定時刻又は就業終了の時刻」欄には、災害が出勤途中に生
    じたものである場合就業開始の予定時刻を、災害が退勤の際に生じたものである場合には
    就業の終了した時刻を記載し労働者が早出や残業をした場合には、その時刻を記載するこ
    ととなります。
   ・「災害発生の日に住居を離れた時刻」欄には、災害が出勤の際に生じたものである場合に
    記載することとなります。なお、災害が退勤の際に生じたものであるときには、記載する
    必要がありません。
   ・「災害発生の日に就業の場所を離れた時刻」欄には、災害が退勤の際に生じたものである
    ときに記載することとなり、災害が出勤の際に生じたものであるときには、記載する必要
    はありません。
   ・「通常の通勤経路、方法及び所要時間並びに災害発生の日に住居又は就業の場所から災害
    発生の場所に至った経路、方法、所要時間その他の状況」欄には、通常の通勤経路を図示
    し、災害発生の場所及び災害発生の日に住居又は就業の場所から災害発生の場所に至った
    経路を朱線等を用いてわかりやすく記載しその他の事項についてもできるだけ詳細に記載
    することとなります。
   ・「災害の原因及び発生状況」欄は、どのような場所を、どのような方法で往復(通勤)し
    ている際に、どのような物で又はどのような状況において、どのようにして災害が発生し
    たかを簡明に記載することとなります。
   ・「現認者の住所・氏名」欄は、当該通勤災害の現認者を、知り得る範囲内で記載します。
    しかし、ひき逃げ等のため現認者が不明のときには、記載する必要はありません。

   以上これら「通勤災害に関する事項」は通勤災害にかかる保険給付の認定上必要なものです
   ので、詳しく記載する必要があります。

 (6)「指定病院等の名称、所在地」欄には、療養の給付を受ける病院等の名称、所在地を記載
    します。
 (7)「傷病の部位及び状態」には、被災労働者の傷病名等を詳しく記載します。
 (8)「事業主証明」欄には、通勤災害を被った労働者の所属する事業主の証明を受ける必要が
    あります。
    なお、証明事項について、事業主が、「通勤災害に関する事項」のうち「災害発生の場所
    及び通勤の経路及び方法」を知り得なかったときには、証明できないので、該当する符号
    を消すことになります。
 (9)「請求人」欄には、療養の給付を受けようとする労働者の氏名、住所を記載します。この
    場合の住所欄には、○○市○○町○○番地○○アパート○号室のように詳細に記載する必
    要があります。
 (10)その他、押印の必要な箇所には必ず押印することとなります。もし、押印がなかったり、
    記載の内容があいまいなものは不備な請求書として返されることがあります。




 ロ 休業給付支給請求書記載要領

 ・休業給付請求書(様式第16号の6)の記載方法については、業務災害の場合の「休業補償給
  付支給請求書」と同様です。
 ・なお、同一傷病について、第2回目以降の休業給付の請求をするときには、(31)欄から(42)
  欄までは記載する必要はありません。




 ハ 障害給付支給請求書記載要領

 ・障害給付請求書(様式第16号の7)の記載方法、添付資料等については、業務災害の場合の
  「障害補償給付支給請求書」と同様です。
 ・この請求書は「通勤災害に関する事項」が別紙となっていますので、請求の際には必ず請求書
  本文に添付して所轄労働基準監督署長へ提出することとなります。

 ・なお、別紙「通勤災害に関する事項」については、当該傷害について既に療養給付請求書又は
  休業給付支給請求書を提出している場合、あるいは傷病年金を受けていた場合には、添付する
  必要はありません。




 ニ 遺族給付支給請求書記載要領
  
 <遺族年金支給請求書記載要領>

 ・遺族年金支給請求書(様式第16号の8)の記載方法・添付資料等については、業務災害の「
  遺族補償年金支給請求書」と同様です。
 ・この請求書は「通勤災害に関する事項」が別紙となっていますので、請求の際には必ず請求書
  本文に添付して、所轄労働基準監督署長へ提出することとなります。
 ・なお、別紙「通勤災害に関する事項」については、死亡労働者が傷病年金を受けていた場合に
  は、添付する必要はありません。

 <遺族一時金支給請求書記載要領>

 ・遺族一時金請求書(様式第16号の9)の記載方法・添付資料等については、業務災害の「遺
  族補償一時金支給請求書」と同様です。
 ・この請求書は「通勤災害に関する事項」が別紙となっていますので、請求の際には必ず請求書
  本文に添付して、所轄労働基準監督署長へ提出することとなります。

 ・なお、別紙「通勤災害に関する事項」については、死亡労働者に関して遺族年金が支給されて
  いた場合又は死亡労働者が傷病年金を受けていた場合には、添付する必要はありません。




 ホ 葬祭給付請求書

 ・葬祭給付請求書(様式第16号の10)の記載方法・添付資料等については、業務災害の「葬
  祭料請求書」と同様です。
 ・この請求書は「通勤災害に関する事項」が別紙となっていますので、請求の際には必ず請求書
  本文に添付して、所轄労働基準監督署長へ提出することとなります。
 ・なお、別紙「通勤災害に関する事項」については、死亡労働者に関し、既に遺族給付の請求書
  を提出している場合又は死亡労働者が傷病年金を受けていた場合には、添付する必要はありま
  せん。