24-04 裁量労働制における「みなし労働時間運用」と「労働時間の把握」 戻る

≪裁量労働制を導入した場合、みなし労働時間運用を行いますが、一方で、「休憩、深夜業、休日、三六協定等の規定は適用除外されない」とも聞きました。みなし労働時間を適用するということは、労働時間の把握を要しないことのように思えるのに対して、休憩、深夜業、休日の規定は適用除外されないというのでは、そのために必要な労働時間を把握する義務があるとも思えるのですが、どのように整理すべきでしょうか≫

■ 裁量労働制は、「通常の方法による労働時間の算定が適切でない業務が増加していることに対応して、当該業務における労働時間の算定が適切に行われるように法制度を整備したもの」(昭63.1.1基発第1号)です。結論として、裁量労働制(専門業務型裁量労働制=法第38条の3、企画業務型裁量労働制=同第38条の4)において、みなし規定が適用されるのは労働時間の算定に限られ、その趣旨も「通常の方法によらないで、労働時間の算定を適切に行うため」に設けられたものです。

■ したがって、労働時間の算定以外の休憩、深夜業、休日の規定は適用除外されないこととなります。実務的には、休日労働を行うには三六協定が必要であるほか、深夜業や休日労働に関して実労働時間をもとに割増賃金の計算支払を行うことが必要となります。

■ 設問では、裁量労働制において、「みなし労働時間を適用するということは、労働時間の把握を要しないことのように思える」とのことですが、裁量労働制は、事業場外労働の場合と違って労働時間の算定が困難である場合の取扱いではなく、業務の遂行手段や時間配分の決定等を労働者の裁量にゆだねる場合に認められる制度です。「みなし労働時間運用」と「労働時間の把握」は決して対立した概念ではなく、ICカード等によって出退勤の状況を正確に把握することは、労務管理の基本マネジメントに関するもの(賃金計算に限らず、長時間労働に対応した健康管理の推進等でも重要性が増しています)であり、それだけで裁量労働制における労働者の自主性を損なうものとはなりません。

■ もっとも、裁量労働制下における労働時間の把握は、「いかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったか等を明らかにし得る出退勤時刻又は入退室時刻の記録等によるものであること」(裁量労働制に関する労働条件確保指針)を基本としていするとされます。従って、深夜業及び休日労働に関して正確な労働時間の割り出しが可能な状態での労働時間の把握管理がなされている限り問題は生じないものと思われます。[労務安全情報センター]