解雇制限と解雇予告制度

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解雇の権利

解雇制限

解雇予告制度

mokuji

1.解雇権と解雇制限と解雇予告制度

2.労働契約の解除とは

  この場合はどうなる
  解雇と退職をめぐるちょっとした予備知識
3.解雇の効力はいつ生じるか

4.解雇制限

  この場合は解雇はできない

5.解雇予告制度(あるいは、解雇予告手当の支払)

  解雇には予告が必要です
  解雇予告手当の計算方法
6.解雇予告制度の3つの例外解雇予告をしなくてもいい場合)
7.労働者の責めに帰すべき事由と解雇予告除外制度(認定基準)

8.即時解雇で、労働基準法違反を発生させない労務担当者の心得

 ・では、認定を受けない即時解雇は無効か
 ・では、認定を受けなければ懲戒解雇ができないか









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1.解雇権と解雇制限と解雇予告制度

わが国の解雇に関する法制は、基本的に労働契約解除の自由(使用者に解雇権あり。但し、解雇権の濫用については判例で相当に厳しい枠がはまっているのが現状です。)のもとで、一定の事由に基づく場合おいて「解雇制限」が課されることとなっています。
すなわち、使用者が労働者を解雇しようとする場合、
(1)過去の判例等からその解雇が権利の濫用に当たる場合でないか
(2)法律上の解雇制限に当たる場合でないか、の二点からの検討が必要です。
もし、そのいずれにも当たらないなら、実務上は、『解雇の手続き』に留意して個々の事案に対応することとなります。

以下、解雇についての予備知識をまとめてみました。







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2.労働契約の解除とは?解雇と退職

 使用者が労働者を解雇する(あるいは、労働者が退職する)ことができるのは、つぎのような場合です。

 大原則


 ○やむを得ない事由があるとき(民法628条)
 ○使用者が破産したとき(民法631条)
 ○当初より解約権が留保されているとき

 労働契約は、これらの事情があるときは、使用者からも労働者からも、すなわち双方とも一方的に将来に向かって解約することができます。
 これは、期間の定めがない場合も、ある場合も同様です。(これは労働契約に限らず、広く「契約」の解除に関するルールです。)
 この労働契約の解除を、使用者から行う場合を『解雇』といいます。反対に労働者から行う場合を『退職』をいいます。



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この場合はどうなる?
 解雇と退職をめぐるちょっとした予備知識

こんな場合

こういう取扱いになる

真意によらない退職 ○退職の意思表示は労働者の真意に基づくものでなければなりません。

・父親が本人の面前でではあるが本人の意志に反して本人名義で退職願を作成して提出した退職願
・会社の設立は不可能な状況にあり、会社は退職金を支払う意思もなかった場合に、新会社での再雇用、退職手当の支払いを信じて行った退職の意思表示
・使用者の有形無形の圧力により、労働者がやむを得ず提出した退職願
以上はいずれも労働者の真意によらないものであり、無効です。
不明確な退職 ○一時の感情にかられて表明するようなものは真意とは言えないので、社会通念上の退職の意思表示とは認められません。

・2日間、8名で海水浴に行き3日目も無断欠勤したところ、総務部次長が「海水浴のことは水に流す、明日から間違いを起こさぬよう働いてもらいたい、なお、A君だけは勤務成績に問題があるからあとで総務に来てくれ」と言ったことを、他の7人はA君だけやめさせられると思い、Aを擁護するため「1人やめるなら皆やめる。8人でやったことだから責任をとる。」などといい、次長が「皆やめるんだな」と念を押しても誰も異議を唱えなかった事案に対し、双方のやや感情的なやりとりの末になされたものであって、しかも個別的に表明されたのではなく、また、明確かつ決定的に退職の意思を明らかにしたものとはいい難いとした判決があります。
第3者の提出した退職願 ○本人の真意が認められる場合であれば、第3者によって提出されたものであっても直ちに無効ではない。
事実上の退職とみられる行為 ○次のような場合は、「黙示による退職の意思表示」と解され、労働関係が終了したと認められることがあります。

・労働者が使用者に無断で他の企業に就職したとき
・鉱山において無断で退山したとき
解雇予告手当や退職金の受領と退職 ○解雇予告手当、退職金の受領行為が解雇の承認又は合意退職になるかという問題については、見解が分かれていますが、一般的には、受領の際、何ら留保(異議)を唱えず受け取ったような場合、解雇予告手当や退職金の前提となる解雇の効力を承認したものとする見解が有力です。
契約期間の満了と解雇 ○契約期間(例えば「2カ月」)の定めが一応のものであり、いずれからか格別の意思表示がない限り当然更新されるものとして維持されてきた短期労働契約は、ある契約更新期に当然に期間満了によって契約が終了することはありません。改めて、使用者から雇止めの意思表示が必要です。
○1年を超えて使用するパートの契約更新を行わないときは、少なくとも30日前に更新しない旨を予告しなければいけません。(パートタイム労働指針=努力義務)
定年制と解雇 ○就業規則での定め方にもよりますが、一般的に「定年制」は、定年に達したとき労働契約は自動的に終了する制度とされています。

・しかし、最近は「勤務延長制度」や「再雇用制度」を運用する企業が多くなりました。このような制度を運用する場合は、それが全員に適用されるのでない限り、個々の労働者には「例外的取扱=再雇用」をするのか、どうかを明示しなければなりません。従って、実質上、解雇に関する規定の適用を受けることになります。
○なお、再雇用制度において、社内的に「解雇」「新規雇用」の手続を踏む場合であっても、労働基準法の規定は実質的に労働関係が継続しているかどうかによって判断されます(とくに、年休制度など)。
休職期間の満了と解雇 ○定年制同様、就業規則での定め方によるところが大きい制度です。

・休職期間が満了し復職できないときは、「解雇する」のか「自然退職」となるのかあらかじめ条件を明示しておく必要があります。
・「私傷病」の場合で、休職期間満了後は自然退職する旨の規定がある場合において、労働者が治癒したとして復職を請求したのに退職扱いをする場合には、使用者は「復職を容認しない事由」の立証義務があります。
企業の経営主体の交替と解雇 ○契約当事者の交替があれば、原則として交替前の契約と交替後の契約は同一性を失う。この場合、労働者が退職の申出をしない限り、使用者は解雇手続を取らなければならない。

ただし、合併と営業譲渡に関しては次のように取り扱われる。

○会社の合併は、新会社に一切の権利義務が包括的に継承されるので、企業の経営主体が交替しても労働関係は継続しているものとして取り扱われる。
○営業譲渡(例えば、一支店・一工場の設備を得意先及び従業員ごとそっくり他の会社に譲渡したり、新しく設立した第二会社等に譲渡する場合)については見解が大きく割れているが、労働省労働基準局は「近代的企業における営業の譲渡にあっては、従業員も有機体としての企業組織に包括して取り扱われるべきものであるから、営業譲渡の前後において従業員の待遇一般が変更されない限り、労働関係は継続しているものとみて、解雇の問題は生じないと解して差し支えなかろう。」との見解に立っている。

・判例「企業の経営組織の変更を伴わないところの企業経営主体の交代を意味するような営業譲渡の合意は、反対の特約がなされない限り、それに伴う労働契約関係を包括的に譲渡する合意を含むものと認められ、右契約が効力を生じるためには労働者の合意を必要とせず、ただ、労働者は異議があるときは譲渡人に対して即時解約ができる。」(S40・2・12大阪高裁「日新運輸事件」、S42・9・6高松高裁「松山市民病院事件」)

企業分割や営業譲渡の場合、必ずしも明確な基準がないのが現状
新法案提出か!
 
 これに関して、労働省は、産業活力再生特別措置法の施行により分社化、事業再編が増えることに伴って「新組織が継承する労働条件などの範囲を明確にし、労使間のトラブルを防ぐ」ことを目的とした、雇用契約ルール法案を1月の通常国会に提出する。(日経新聞平成11年12月17日報道)


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3.解雇通知はいつ効力が生じるか

1.使用者が労働者に解雇を申し渡した時点で効力が生じる

2.郵送による解雇通知は、これが相手方に到達したときに効力が生じる
  (解雇において、予告日数が重要な意味をもつ場合は、この点に注意する必要がある。)






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4.解雇制限
わが国の解雇制限には、以下のものがあります。(H11.12.22現在)

根拠等

解雇制限の内容

ほそく説明

労働基準法 (1)業務上の傷病による休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)
(2)産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇(同条)
(3)国籍、信条等を理由とする解雇(第3条)
(4)監督機関への申告を理由とする解雇(第104条)
・労働基準法が直接規定する「解雇制限」
男女雇用機会均等法 (1)解雇について女性であることを理由として男性と差別的取扱いをすること(均等法第8条)
(2)女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産し、または産前産後休業をしたことを理由とする解雇(第8条)
 女性労働者に対する「解雇制限」
育児介護休業法 労働者が休業申出をし、または育児休業や介護休業をしたことを理由とする解雇(育児介護休業法第10.16条)  男女を問わない
労働組合法 不当労働行為に当たる解雇の禁止(労組法第7条) 不当労働行為とは
(次の事由に基づく差別的取扱い)

・労働組合員であること
・労働組合に加入しまたは労働組合を結成しようとしたこと
・労働組合の正当な行為をしたこと
・労働委員会に対して使用者が不当労働行為をした旨の申立をしたこと(及び、中労委に対し、地労委命令の再審査の申立てをしたこと)
・労働委員会の調査などに労働者が証拠を提示し、もしくは発言したこと
民事裁判 正当な事由のない解雇は、無効。
あるいは、解雇権の濫用であるから、無効。
 いわゆる民法の規定(公序良俗、権利の濫用等)を根拠とするもの
就業規則違反の解雇 ・就業規則に違反する解雇は無効。
・就業規則に制限的に列挙された解雇事由に反する解雇
・就業規則は法規範的効力をもつから、これに違反する解雇は無効とするのが、学説・判例の一致した見解である。
・就業規則の解雇事由は、制限的列挙か、例示的列挙かいずれと解するかは規定方法とも関係するが、事由列挙は解雇を制限する趣旨とみられる場合が少なくない。
労働協約の
解雇同意約款、または解雇協議約款
・解雇は労働者の待遇に関する「基準」であるから、これに違反する解雇は無効、とする見解が有力。 ・頭から協議を拒否するなど同意拒否権の濫用と評価されるような特段の事情がある場合は別。
・約款の同意と協議には実質上の差はない。







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5.解雇予告制度あるいは 解雇予告手当の支払

労働基準法第20条
 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。
 30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなくてはならない。

 但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。
 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。
 前条第2項の規定(注:これは「・・その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。」との規定をさします。)は、第1項但書の場合にこれを準用する。

解雇には予告が必要です

予告期間は
少なくとも30日


予告に代えて
解雇予告手当を
支払うことも可能です


以上が
労働基準法の原則です

例外があります

それは
労働者の責めに帰すべき事由に基づく解雇などです
でも、これは使用者の勝手判断は許されていません。
あらかじめ
所轄労働基準監督署長の認定(
解雇予告除外認定申請)を受けなければいけません。

★予告は口頭でも差し支えありませんが、明確に伝えるためには文書で行う方が確実です。
★条件付き解雇予告は、適法な解雇予告とは取り扱われません。
★一旦した解雇は、一方的に撤回できません。(相手方の同意が必要となります)
★解雇予告手当は、解雇と同時に支払わなければなりません。
★支払場所は、特別の定めがない限り、通常の賃金の支払いの場所に準じて取り扱う。(通常の賃金支払が事務所で現金の場合は、それに準じ、口座振込の場合は、それに準じます。)



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解雇予告手当の計算方法

☆平均賃金は、その労働者の過去3カ月間の賃金の総額(賃金の性格を持つものは諸々の手当を含め全て算入した税・社会保険料等控除前の賃金総額)を、その3カ月間の総日数(暦日数)で割った金額です。(労基法第12条に詳細な計算方法が定められています。)

20日締め25日払いの企業で、3月17日に即時解雇が行われた場合の30日分の解雇予告手当の計算方法

直前の賃金締め切り日(2月20日)から過去3ヶ月分の賃金総額
すなわち
3ヶ月分の賃金総額(12月分+1月分+2月分)
      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− × 30日
3ヶ月の歴日数(30日+31日+31日)

   

☆予告をしても、予告期間が30日より短い場合は、予告日数が足りない分だけ平均賃金を支払わなければいけません。

全く予告しない場合 30− 0=30日分の平均賃金支払の義務
10日前に予告した場合 30−10=20日分の平均賃金支払いの義務
予告に代えて支払われる平均賃金のことを、「解雇予告手当」といいます。





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6.解雇予告制度の3つの例外解雇予告をしなくてもいい場合


1.短期雇用労働者の場合

 次の4つに該当する労働者を解雇する場合は、予告または解雇予告手当の必要はありません。(労働基準法第21条)

 (1)日々雇い入れられる者
 (2)2カ月以内の期間を定めて使用される者(期間延長した場合を除く。)
 (3)季節的業務に4カ月以上の期間を定めて使用される者(期間延長した場合を除く。)
 (4)試の使用期間中の者(使用期間が14日を超えた場合を除く。)


2.天災事変の場合

 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合は、予告または解雇予告手当の支払いをせずに即時に解雇することができます。ただし、所轄労働基準監督署長の認定を受けることが必要です。


3.労働者の責に帰すべき事由がある場合

 労働基準法第20条第1項の但書にあるとおり、「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」には、予告又は解雇予告手当の支払いの必要はありません。
 ただし、所轄労働基準監督署長の認定を受けることが必要です。
 このことについては、以下に詳細を説明します。






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7.

労働者の責めに帰すべき事由

解雇予告除外認定制度




解雇予告除外の認定基準

『「労働者の責に帰すべき事由」とは、労働者の故意、過失又はこれと同視すべき..事由であるが、判定に当たっては、労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況等を考慮の上、総合的に判断すべきであり、「労働者の責に帰すべき事由」が法第20条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なものであり、したがってまた使用者をしてかかる労働者に30日前に解雇の予告をなさしめることが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限って認定すべきものである。
 

「労働者の責に帰すべき事由」として認定すべき事例を挙げれば、


(1)原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合。
 また、一般的に見て「極めて軽微」な事案であっても、使用者があらかじめ不祥事件の防止について諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、しかもなお労働者が継続的に又は断続的に盗取、横領、傷害等の刑法犯又はこれに類する行為を行った場合、あるいは事業場外で行われた盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為であっても、それが著しく当該事業場の名誉若しくは信用を失墜するもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失せしめるものと認められる場合。

(2)賭博、風紀素乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ほす場合。
また、これらの行為が事業場外で行われた場合であっても、それが著しく当該事業場の名誉若しくは信用を失墜するもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失せしめるものと認められる場合。

(3)雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合及び雇入れの際、使用者の行う調査に対し、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合。

(4)他の事業場へ転職した場合。

(5)原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。
                              ,
(6)出勤不良又は出欠常ならず、数回にわたって注意を受けても改めない場合。

 の如くであるが、認定に当たっては、必ずしも右の個々の例示に拘泥することなく総合的かつ実質的に判断すること。

 なお、就業規則等に規定されている懲戒解雇事由についてもこれに拘束されることはないこと。(昭和23.11.11 基発第1637号、昭和31.3.1 基発第111号)


 労働基準監督署長は、解雇予告認定申請書が提出された場合は、所要の調査を行い、上記の認定基準に照らして、「労働者の責に帰すべき事由」があると判断した場合は、認定を行います。






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8.即時解雇で、労働基準法違反を発生させない労務担当者の心得



*全く問題のない取扱いは次の2つ

◎認定を受けて行う即時解雇
◎認定申請をした後即時解雇し、その後認定があった場合

*次の場合は、解雇予告手当を支払わない限り「労働基準法違反」となります。
●認定申請をしていない場合
解雇予告手当(平均賃金の30日分以上)を支払う  OK
解雇予告手当(平均賃金の30日分以上)を支払わなかった 労働基準法違反!

●認定申請をした後即時解雇し、その後不認定となった場合
解雇予告手当(平均賃金の30日分以上)を支払う  OK
解雇予告手当(平均賃金の30日分以上)を支払わなかった 労働基準法違反!



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では、認定を受けない即時解雇は無効か

否、そうではない

労働基準法違反という汚点を残してしまうことに問題があるのだ

せつめい

 第20条による認定は、原則として解雇の意思表示をなす前に受けるべきものであるが、認定は、ただし書きに該当する事実があるか否かを確認する処分であって、認定されるべき事実がある場合には使用者は有効に即時解雇をなし得るものと解されるので、即時解雇の意思表示をした後、解雇予告除外認定を得た場合はその解雇の効力は、使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生すると解される。
 なお、使用者が認定申請を遅らせることは、第20条違反である。
                       (昭和63.3.14 基収第150号)

すなわち、
解雇の有効無効は、
「解雇理由が正当か否か」で決まるのであって、最終的には裁判で決めるしかない。

しかしながら

ハッキリしているのは

あなたは「労働基準法違反」を犯してしまっている
という事実です。



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では、認定を受けなければ懲戒解雇ができないか


答−できる

除外認定と懲戒解雇は直接関係しません

せつめい

「解雇予告除外の認定基準」のなお書に次のように書いてあります。すなわち、
『なお、就業規則等に規定されている懲戒解雇事由についてもこれに拘束されることはないこと。』(昭和23.11.11 基発第1637号、昭和31.3.1 基発第111号)

これは、逆に言うと、労働基準監督署長の除外認定と企業の懲戒解雇は関係がないことを示しています。監督署長は、就業規則の懲戒解雇事由に拘束されないと同様に、企業は、監督署長の除外認定に拘束されないということです。

注意しなければいけないのは
むしろ
企業の
就業規則の
規定の仕方です。

例えば
つぎのような規定の仕方の場合はどうでしょう?

例1
「懲戒解雇  所轄労働基準監督署長の認定を受けて、即時に解雇する。この場合、予告手当を支給しない。」

 これは、懲戒解雇を監督署長の認定にかかわらせているため、監督署長の認定がない限り一切の懲戒解雇ができない、そのような規定例です。昔はよくありました。とにかく懲戒解雇のような重大な処分は、管轄の監督署長が認めれば行うが、そうでなければ行わない、=法律に明るい担当者はいないし、顧問弁護士などとても、、、といった零細企業などの場合、意外と現実的な選択肢ではあります。が、、このような規定はよく考えた結果としてでなければ、企業の懲戒権を相当に縛ることになりますから、注意が必要です。

例2
「懲戒解雇  予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合において所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、予告手当を支給しない。」

この規定の場合は、「認定を受けたときは、予告手当を支給しない」と規定しているだけですから、企業の懲戒解雇は何ら制約を受けていません。懲戒解雇は懲戒解雇、認定が受けられなかったら「予告手当を支給すればいい」といった規定の仕方です。まあ、一般的な規定の仕方だと思います。

ところが、これも思わぬ結果を招くことがあります。
すなわち
この規定では、
懲戒解雇は「即時解雇でなければならない」という制約を受けています。

ほんとうにフリーな規定は
次のようなものです。

例3
「懲戒解雇  退職金の全部又は一部を支払わないで解雇する。この場合において所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは解雇予告手当を支給せず、即時に解雇する。」

解雇予告手当を支払って・・・懲戒解雇
とか
30日前に予告して・・・懲戒解雇
という
選択肢が必要かどうかは何ともいえませんが、

「懲戒解雇」=「即時解雇」
という既成概念にこだわらなければ

例3 のような規定にしておくことによって

広い選択肢が残ります。