パート労働情報(その1)
■HOMEPAGE
■640/480  ■パート労働情報



■パート労働情報の目次へ戻る

同じ仕事をする社員とパートで2割以上の賃金格差は違法
丸子警報器事件(平成8年3月15日長野地裁上田支部判決)の紹介




事件の概要

 丸子警報器(以下,会社)は,自動車用警報器の製造販売業で,社
員は155名,うち45名が臨時社員。臨時社員の雇用契約は2カ月
契約であったが,契約更新が繰り返され,25年を超える契約更新者
もいた。
 正社員の賃金体系は,年功序列型賃金体系であったが,臨時社員は,
3年・5年・10年を区切りとする3段階の賃金体系で,勤続が長く
なるほど正社員との賃金格差(正社員との間に年間110万円ないし
50万円の格差)は大きくなっていた。
 原告28名は,会社の臨時社員で,いずれも既婚女性であり,最長
で27年,最も短い者で6年間勤務。勤務時間,勤務日数も正社員と
同じであり,いわゆるQCサークル活動にも正社員とほぼ同様に参加
している。女性臨時社員の多くは,女性正社員と同じ組み立てラィン
に配属され,同様の仕事に従事していた。

 長野地裁上田支部は、これに対し、

☆臨時社員制度には合理性がある。
☆正社員と臨時社員の雇用契約は異なり、臨時社員制度において男女
 差別の問題はない。
☆正社員、臨時社員の区別は労基法第3条の社会的身分に当たらない。
が、、、
☆同一労働、同一賃金の原則の点で、その基礎にある均等待遇の理念
に反し、使用者の裁量(8割までの格差許容)の範囲を超え、公序良
俗に反する違法がある

として、2名を除く26名の訴えを認め1,466万円の支払を会社
に命じる判決を下したもの。




判決の要旨 

 同一(価値)労働同一賃金についてこれを明言する実定法の規定は
いまだ存在しない。

 これまでの我が国の多くの企業においては,年功序列による賃金体
系を基本とし,さらに職歴による賃金の加算や,扶養家族手当の支給
などさまざまな制度を設けてきたのであって,同一(価値)労働に単
純同一賃金を支給してきたわけではないし,特に職種が異なる労働を
比べるような場合,その労働価値が同一であるか否かを客観性をもっ
て評価判定することは,人の労働というものの性質上著しい困難を伴
う。

(同一労働同一賃金の原則は)不合理な賃金格差を是正するための一
個の指導理念とはなり得ても,これに反する賃金格差が直ちに違法と
なるという意味での公序とみなすことはできない。

 同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念は,
賃金格差の違法性判断において,一つの重要な判断要素として考慮さ
れるべきものであって,その理念に反する賃金格差は,使用者に許さ
れた裁量の範囲を逸脱したものとして,公序良俗違反の違法を招来す
る場合がある。

 本件において,原告らの組立ラインにおける作業は,短時間に多数
の工程をこなす必要があるものでかなりの熟練を要すること,そもそ
もホーン等の製品製造を主たる業務とする会社において,ライン作業
は基幹的部分ともいえる重要性をもっている。
 原告ら臨時社員と同じライン作業に従事する女性正社員の業務とを
比べると,従事する職種,作業の内容,勤務時間および日数ならびに
いわゆるQCサークル活動への関与などすべてが同様であること,臨
時社員の勤務年数も長い者では25年を超えており,長年働き続ける
つもりで勤務しているという点でも女性正社員と何ら変わりかないこ
となどにかんがみれば,原告ら臨時社員の提供する労働内容は,その
外形面においても,会社への帰属意識という内面においても,女性正
社員とまった同一であるといえる。

 このような場合,会社においては,一定年月以上勤務した臨時社員
には正社員となる途を用意するか,あるいは臨時社員の地位はそのま
まとしても,同一労働に従事させる以上は正社員に準じた年功序列制
の賃金体系を設ける必要があったというべきである。
 しかるに,原告らを臨時社員として採用したままこれを固定化し,
2カ月ごとの雇用期間の更新を形式的に繰り返すことにより,女性正
社員との顕著な賃金格差を維持拡大しつつ長期間の雇用を継続したこ
とは,同一(価値)労働同一賃金の原則の根底にある均等待遇の理念
に違反する格差であり,単に妥当性を欠くというにとどまらず公序良
俗違反として違法となるものというべきである。

 もっとも,均等待遇の理念も抽象的なものであって,均等に扱うた
めの前提となる諸要素の判断に幅がある以上は,その幅の範囲内にお
ける待遇の差に使用者側の裁量も認めざるを得ない。
 したがって,(原告ら臨時社員と女性正社員の賃金格差がすべて違
法となるというのもではないが、)・・・原告らの賃金が,同じ勤務
年数の女性正社員の8割以下となるときは,許容される賃金格差の範
囲を明らかに超え,その限度において会社の裁量が公序良俗違反とし
て遵法となると判断すべきである。




■パート労働情報の目次へ






















GO HOMEPAGE
GO NO2タイトル画面