厚生労働省が2008年9月に「労災かくし」防止キャンペーンの一環として公表した労働基準監督署による最近の「書類送検」事例。
(一部、編集アレンジしています:労務安全情報センター)
事例(1)
労働安全衛生法違反の疑いで、建設会社Yと経営者Aを書類送検。
経営者Aは、同社が請け負った工事現場で、同社の作業員が作業中に高さ約7.5メートルの足場から墜落し、両手首骨折の重傷を負って4日以上仕事を休んだにもかかわらず、所轄労働基準監督署長に労働者死傷病報告を提出しなかった疑い。
事例(2)
労働災害が発覚するまで「労働者死傷病報告」を提出しなかったとして、労働安全衛生法違反の疑いで、2次下請である塗装業Bの代表bと3次下請の塗装業Cの代表cを書類送検。
マンション新築現場で、Cの作業員が吹き付け塗装をするためのシート張りをする際、転倒し右手首を複雑骨折したが、BとCは共謀して、「受注を確保するために元請けに労災保険で迷惑をかけたくない。」として労働災害を隠蔽したもの。
事例(3)
運送会社Dと同社社長を労働災害5件を隠した労働安全衛生法違反の疑いで、書類送検。
同社は荷物を扱う作業中に発生した社員の骨折など、1年1か月間で起きた5件の労働災害について、「労働者死傷病報告」を提出しなかったもの。社長は「荷主に知られたくなかった。」と供述。
事例(4)
虚偽の「労働者死傷病報告」で労災かくしを行ったとして、労働安全衛生法違反の疑いで建設会社Eと同社の専務取締役を書類送検。
同社は元請建設会社から2次下請けしたビル建設工事を行っていたが、同社労働者が同建設現場で熱湯を浴び全治3週間のやけどを負った労働災害が発生した際、「自社の資材置き場で起きた。」と同労基署に虚偽の報告をした疑い。
工事現場での労働災害は、元請建設会社の労災保険で補償されることになっているが、同社専務は「元請けの労災保険を使うと迷惑がかかり、仕事がもらえなくなると思った。」と供述。
事例(5)
マンションの改装工事中に労働者が骨折した労働災害があったにもかかわらず、別の工事で労働災害があったとする虚偽の「労働者死傷病報告」を提出したとして、労働安全衛生法違反の疑いで、電気工事会社Fの社長を書類送検。
社長は、他県で行っていたマンション改装工事で、同社労働者がはしごから墜落し、あごなどを骨折した労働災害があったにもかかわらず、同工事現場の所轄労基署に「労働者死傷病報告」を提出せず、自社で請け負った別の工事現場で労災事故があったように装い、別の労基署に「労働者死傷病報告」を提出した疑い。
元請けに迷惑がかからないよう、労働者の治療費を自社で負担しようとしていたが、負担が大きく、別の工事で労働災害に仕立てたもの。
元請けの担当者2名と1次下請けの建設会社社長も黙認していたとして、同法違反の共犯で書類送検した。