賃金不払い、もう一つの道


支払命令の申立

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世の中には当事者解決がはかれないケースがままある。
賃金不払いなどは、事業の倒産、極端な経営不振によるもの以外に生じようが
ないと考えるのが、真面目な労使の発想である。
ところが、人間、世間体を気にしなければ何でもできるもののようで、労働者
の働きぶりの些細なことにクレーム(労働者の働きぶりに100%満足してい
る経営者などこの世に存在しない)をつけ、支払うものを支払わないで済ませ
るのが経費節減と勘違いしている使用者も中にはいる。
このようなケースでも、労働基準法第104条による労働基準監督署への申告
によって大半は解決する。
しかし、「完全に開き直ってしまった使用者」「世間体を一切気にせずメンツ
という言葉の概念もわからない使用者」「労働者より使用者の方が小人である
場合」「当事者が完全に感情領域に入って、降りてくる気配がない場合」など
(ある労基署への取材での監督官の説明)は、労基署でも容易に解決しないこ
とがある。
ここでは、「賃金不払いもう一つの道」と題して、裁判上の簡易な催告・督促
制度を紹介する。




(目次)
1 支払い命令制度の概要
2 注意すること
3 支払命令申立の流れ
4 支払命令申立の実務(用意する書類)
5 支払命令申立書(記載例)
  添付:当事者目録
  添付:請求の趣旨及び原因
6 支払命令の手続費用について








 1 内容証明・配達証明付き
   用紙には字数、行数制限があるので、文具店で定型用紙を買い求めるの
   がよい。
   (ただし、内容証明郵便の督促で解決するとは考えない方がよい。次の
    手段への前置きと考え、実務的かつ冷静なものにしたい。)

 
  2 支払い命令制度の概要      目次に戻ります
   相手方を管轄する簡易裁判所に対して行う。
   簡易裁判所は、書面審査のみを行って証拠調べもなく、法廷も開かれる
   こともありません。

   (注意すること)      目次に戻ります
(1)相手が争うと通常の訴訟事件になること。
   相手が異議を申し立てなければ、証拠調べも審理もなく判決と同様の効
   果をもつ命令がでるという簡便さがありますが、一旦異議がでると審理
   が始まります。
   従って、一番大切なのは相手の性格を読むということでしょう。
   いくら請求してものらりくらり、だらしない性格で、不払いの理由もこ
   れとしてなく、逃げの姿勢に入っている相手方には効果てきめんです。

   通常の賃金不払いは、あなたに賃金請求権があるかないかという根本の
   争いは少ないでしょうから、この支払命令制度になじみやすいのですが 、
   本裁判をやろうとまでは考えていないとすれば、相手が異議申立をして
   くるかどうかは見通しを立てておくべきです。
   もう1点、
異議申立で注意すべきは、事実関係を争う気はないが支払方
   法(命令書は一括払いとなっているが、分割で支払いたいなど)につい
   てでも異議申立ができるということです。あらかじめ、分割払いを主張
   している場合(で、異議を申立られる可能性がある場合)は、調停か本
   訴の方がなじむ場合があるでしょうし、何より話し合いの余地があると
   いうことですから、よく考えましょう。

(2)相手が遠方にいる場合には、向かない制度です。
   相手方を管轄する簡易裁判所に申し立てする制度ですから、相手が遠方
   だと面倒です。あなたが田舎に帰っていて裁判所に出頭するのも大変だ
   とわかれば、相手は負ける争いでも異議を申し立てるでしょう。         





支払命令申立の流れ 目次に戻ります

 1 申立書の提出
 2 簡易裁判所が相手方に支払命令を出し、送達してくれる
 3 相手方には、送達の日から2週間の異議申立期間が与えられる
  (異議申立がなければ)
 4 30日以内にあなたが請求して、裁判所に仮執行宣言を出してもらいま
   す。
   仮執行命令が相手方に送達されますが、これに対しても相手方に2週間
   の異議申立期間が与えられます。
 (異議申立がなければ)
 5 支払命令が確定し、正式裁判で勝ったのと同じ結果が得られます

 ◆最初の2週間の異議申立がなく、仮執行宣言付き支払命令がでると、直ち
  に強制執行に入ることもできます。





支払命令申立の実務     目次に戻ります

 ☆ 必要書類(支払命令申立)
  (1)支払命令申立書(1通)
  (2)相手方が法人の場合、法人登記簿謄本(1通)
  (3)支払命令申立書のうち、「当事者目録」と「請求の趣旨及び原因」
     部分のコピーで印鑑を押す前のもの。
  (4)送達用封筒2枚。   1枚には相手先所在地、名称等を記載、も
     う1枚には自分の住所、氏名記載する。それぞれに、予納郵便切手
     (80円1円1枚、360円1枚、600円1枚計1,040円分)
     を貼ったもの
  (5)官製はがき(1枚)...自分の住所氏名を記載して提出。相手に
     支払命令書が送達できたかどうか連絡してもらうため。


 ☆  必要書類(仮執行宣言申立)
  (1)仮執行宣言の申立書(1通)
  (2)支払命令申立の同様の「予納郵便切手を貼った送達用封筒」と「官
     製はがき」






(記載例)      目次に戻ります
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                支払命令申立書

賃金請求事件

当事者の表示     別紙当事者目録記載のとおり
請求の趣旨及び原因  別紙請求の趣旨及び原因記載のとおり

債務者は、債権者に対し、請求の趣旨記載の金額を支払え、との支払命令を求 める。

申立手続費用     円
(内訳)
申立手数料      円
命令正本送達費用   円
申立書書記料     円
申立書提出費用    円
資格証明手数料    円

平成  年  月  日
        申立人(債権者)                    印

○○簡易裁判所御中


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(別紙)
                当事者目録

(住所)〒
(氏名・商号)債権者     (自分の住所・氏名・電話番号)
(電話番号)


(住所)
(氏名・商号)債務者     (相手方の所在地・会社名代表者名)
(電話番号)

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(別紙)
               請求の趣旨及び原因


請求の趣旨
1 金187,000円
2 上記金額に対する平成8年8月26日から完済まで民法所定の年5%の割 合による
  遅延損害金
3 金○○○○円(申立手続費用)

請求の原因
1 債務者は、平成8年4月21日債権者を事務補助員として採用した。
  労働契約の内容は、つぎのとおり。
  (1)賃金  日額  8,500円
  (2)交通費 実費全額(1ヶ月16,500円)
  (3)支払日 毎月20日までの分を当月25日に支払う
2 債権者は、平成8年7月21日から同年8月20日までの間に、所定休日 のほか1日
 の欠勤をのぞく計22日の労働に従事し、この間の賃金は187,000円 、交通費1
 6,500円である。
3 債務者は、上記2の賃金のうち前払いされている交通費16,500円を のぞく18
 7,000円を支払わないものである。





支払命令の手続費用について   目次に戻ります
 


1 申立手数料(裁判所に納める印紙代)
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      目的物価額    手数料
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      5万円まで    250円
     10万円まで    500円
     15万円まで    750円
     20万円まで  1,000円 
     25万円まで  1,250円
     30万円まで  1,500円
     35万円まで  1,700円
     40万円まで  1,900円
     45万円まで  2,100円
     50万円まで  2,300円
     (以下100万円までは、5万円刻みで200円アップ)
    100万円まで  4,300円
     (ちなみに退職金等の場合などの参考に)
  1,000万円まで 28,800円
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2 命令抄本送達費用
  これは、相手方と自分用に1040円×2=2080円を要する。

3 申立書書記料
  これは紙代、インキ代のことで、B5片面75円の計算で相手方に請求できる。

4 申立書提出費用
  これは、一律500円を相手方に請求できる。

5 資格証明手数料
  法人登記簿謄本は一部800円。実費を相手方に請求できる。