都道府県労働基準局長が行う労使紛争の解決援助制度
 ■HOMEPAGE
 ■640/480  ■新・労基法と実務



改正労働基準法により、都道府県労働基準局長による労使紛争の解決援助制度が10月1日よりスタートしている。
関連の施行通達(H10.10.1付基発第561号、同基発第562号)が出た。
これを直接資料として掲載するのは、ちょっとわかりにくいだろう。

要点を整理して掲載する。
(文責は当労務安全情報センターにありますのでご注意ください。責任ある制度説明を求められる方は最寄りの労働基準局まで。)
注意
本ページの労使紛争解決援助制度は、H13.9.30をもって廃止され「個別労働関係紛争解決促進法」に統合されました。

(しばらくの間、参考掲載として残します)
新法 「個別労働関係紛争解決促進法」とはどういう法律か



mokuji
■労働基準法の根拠条文
■制度の運用(Q&A)
■無駄足を踏まないための事前検討(どのような紛争を持ち込むべきか)












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新設!紛争解決援助制度の根拠条文

(改正労働基準法第106条の3)

 都道府県労働基準局長は、労働条件についての労働者と使用者との間の紛争(労働関係調整法(昭和21年法律第25号)第6条に規定する労働争議に当たる紛争、国営企業労働関係法(昭和23年法律第257号)第26条第1項に規定する紛争及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第12条第1項に規定する紛争を除く。)に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができる。

2 都道府県労働基準局長は、前項に規定する助言又は指導をするため必要があると認めるときは、広く産業社会の実情に通じ、かつ、労働問題に 関し専門的知識を有する者の意見を聴くものとする。



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制度の運用(Q&A)

No

Q

A

解説

紛争の解決援助を求めることができる「紛争当事者」とは ○個々の労働者又は使用者 ・過去において労働者又は使用者であった者も含まれます。
・代理人、本人が属する労働組合、使用者団体等は含まれません。
・本人死亡の場合の相続人は「紛争当事者」に含まれません。
対象(紛争とは) ○「労働条件について労働者と使用者との間の紛争」です。 ・「労働条件」とは職場における一切の対偶をいいますが、募集や採用は含まれません。
・「紛争」は一方の主張に他方が同意ぜず、両当事者の主張が一致しいていない状態をいいます。
対象から除外されるもの ○労働争議の紛争・国営企業での労使紛争・男女雇用機会均等法に規定する紛争  
事柄の性質から対象としないこととされているもの ○つぎの紛争は対象となりません。
 1.労働関係法令違反に係る紛争又は法令に基づき他の機関において指導等が実施されることとなっている場合。
 2.裁判係争中の紛争、人事調停や労働委員会で手続きが進行している紛争。
 3.判決、和解等権限のある機関から一定の判断が示された紛争。
 4.既に、労働基準法に基づく申告処理を完了した紛争。
 5.労働組合があり使用者との間で問題として取り上げられており、自主的な解決を図ることが適切であると認められる紛争。
 6.紛争の発生から長期間経過し、事実関係の確認が困難となっているもの。
 
強制力はもたせていない ○紛争解決援助の中身は「助言又は指導」である。紛争当事者である労使の自主的な紛争解決を促進するため、紛争当事者の一方又は双方に対し、紛争の解決案を提示するが、一定の措置の実施を強制するものではない、とされています。  
どこに申し出るか ○都道府県単位にある労働基準局長あてに申し出ることになります。  
匿名の解決援助の申し出はできるのか ○できません。紛争の相手方に氏名や主張を伝えるところから紛争処理が始まります。  
申し出の後、訴訟を提起したらどうなるのか ○原則として、手続きは打ち切られます。  
申し出は、口頭でもいいのか ○「口頭又は書面」とされています。なお、口頭の場合、窓口で内容確認のため本人署名などを求められることになるようです。  
10 申し出後は、どうなるのか ○申出人を含めて、被申出人、参考人に対する事情聴取が行なわれます。事実関係が確定された後、それに基づき「助言又は指導」が行なわれることになります。また、処理の過程で、相手方に対して話合いによる自主的な解決なども打診されることになります。 ・申出人の主張に理由がなかったり、重大な非があることが判明し、助言・指導をすることが適切でないと認められる場合は、処理が終結されます。
11 どのような場合に処理が打ち切られるのか ○解決、取り下げのほか、当事者の死亡・企業消滅、相手方に連絡の手段がないときや、必要な調査をつくしても事実関係を確定できない場合は処理が打ち切られます。  
12 「助言又は指導」はどのような方法でなされるか ○「助言又は指導」の内容は、書面により申出人の相手方に交付される。 ・内容は申出人にも伝えられます。









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無駄足を踏まないために!
 この制度に最も適する紛争は何か/検証


制度が発足したばかりであり、実際には今後の運用実態を待たなければならないが、、、。
指導に強制力を持たせていないなど制度の性格からみて、「無駄足を踏まないためには」今後とも、次のような観点に立った事前検討が必要だろう。
−−−仮に強制力を持たせなくとも、以下の例示紛争の場合、目的を達成できる可能性は少なくないと思われる
単なる不平、不満のたぐいを持ち込んでも仕方ない(無駄足だろう。)


 

この制度になじむと思われる紛争

具体的紛争の例示

労働関係法令には違反していないが、労働協約・就業規則、個別労働契約の定めるところに反した行為が背景にある場合の紛争。  元々、労働協約・就業規則、個別労働契約の定めは、労使双方がそれを誠実に履行する義務がある。これを守れというのは、万人が認めて異議をさしはさまない。
 社長には、社長の友人からひとこと「助言や指導」をしてもらうのも有効かも知れないが、ここは、一つ役所から「助言・指導」があればかなり効き目があるだろう。
 という訳で、この制度に馴染みやすい相談、申し出内容の一つだろう。
かなりはっきりした通説が確立しているのに、それに沿った取扱をしていないから紛争になってしまっているようなケースだ!

この「かなりはっきりした通説が確立している」というのは、
○ 最高裁の判例が確立している
○ 下級審(地裁、高裁)や学説では、一部の変わり者がそうではないと言っているに過ぎない位にはっきり判断や取扱いが固まっているもの。

例えば、右欄に記載のような紛争だ!

1. 労働者の勤務内容や職種を特定する合意が成立している場合における労働者の同意を得ないで実施された配置転換
  その他、「業務上の必要性がない」「不当な動機・目的がある」「労働契約の性格に照らし、甘受すべき限度を明らかに超えた不利益を強いる」ような配置転換。

2. 労働者の同意を得ないで実施された転籍(移籍)出向

3. 就業規則等に根拠がない場合における労働者の同意を得ないで実施された在籍出向
  その他就業規則に根拠がある場合であっても、「業務上の必要性がない」「対象者の選定に明白は疑問がある」ようなケースの在籍出向。

4. 解雇の理由とする事実がない場合における解雇の有効性の争い

5. 就業規則の不利益変更に合理性がない場合(これは、判例・通説に照らして内容がはっきり「不合理そのものである」と断定できるような場合であろう。)

6. 懲戒処分や解雇について、これは「どうみてもおかしい」と客観的にいえるもの。

7. 整理解雇については、判例で確立している客観的かつ合理的な基準に基づいていないことが明白なもの。

8. 採用内定通知が労働者の労働契約の申込みに対する承諾とみなされる場合であって、客観的合理性を欠き社会通念上相当として是認できない内定取り消し。

9. パートの雇止め等で、「さすがにこれは許されない」と考えられるような場合。

10. 尋常でない退職勧奨で、被勧奨者の自由な意思決定が許されないようなケース
上記の1,2以外の紛争 当面、お奨めできない。(無駄足、時間の浪費、空鉄砲になる可能性が高い。)