改正労基法の国会質疑(抄録)から
 ■HOMEPAGE
 ■640/480  ■新・労基法と実務


改正労基法の国会質疑(抄録)から
これで制定される規則の感じがつかめるぞ!
裁量労働制を中心に比較的争点になりそうな部分を抜粋して紹介する!
衆議院労働委員会<答弁に(伊藤局長)とあるのは、伊藤労働省労働基準局長のことである。)





裁量労働制
○ 労使委員会が適正に運営されているというチェックはどのようにするのか
○ 裁量労働制下での評価基準づくりも労使委員会の話合い事項に含む(指針で明示)
○ 裁量労働制が適用される労働者の勤務状況はどのような形で把握していくのか
○ 裁量労働制の適用職種に、入る職種、入らない職種を幾つか例示してほしい
○ 裁量労働制が適用されると使用者の実労働時間の把握義務がなくなるのか(とんでもない、、、)
○ 使用者は、裁量労働制のもとで基本的指揮命令権があるのか
○ 裁量労働従事者のみなし時間は、所定労働時間と同じか
○ 裁量労働協定の典型的な事例をあげて見てほしい
○ 中小企業では、本社であり営業所でありという形で単一の事業所しなかいとことが多いが、こんなところも裁量労働制の適用があるのか


その他
・ 労働条件の書面明示の範囲は?
・ 高度な専門的知識を有する労働者の基準は?
・ 今回の労基法改正はパート労働者の雇用管理の改善に役立つのか
・ 3年有期雇用の「新たに就く者に限る。」とは、どういう意味か
・ 時間外労働の上限基準360時間を労基法に書くのと、告示で書くのとで法的効果に違いがあるのか







(質問)
  労使委員会が適正に運営されているというチェックはどのようにするのか。

(伊藤局長)
  一つは…、もう一つは、これらの決議等は当然届出であるので、届出段階でチェック、また、労働基準監督署が本社等の部門を重点監督の対象としてこうしたものの運用状況を常時チェックする、こうしたことを地方に指示して厳正な運用を確保したい。





(質問)
  裁量労働制では評価というのは大変重要である。そこで、この評価基準、新たなルールづくりについては、労働省としてはどのように考えているのか。

(伊藤局長)
  …労使委員会はこうしたことを考慮して、賃金、労働時間等労働条件全般について調査審議する委員会として法律上位置付けている。したがって、労使委員会が話し合いの対象とすべき事項に、そうした点が含まれることを労働大臣が定める指針の中では明らかにしたい。それに基づいて必要な指導を行いたい。


戻る

(質問)
  裁量労働制が適用される労働者について、…その勤務状況はどのような形で把握をしていくのか。
(伊藤局長)
  …制度を実施するための絶対的な要件として、労使委員会で勤務状況に応じた健康管理上の措置を全会一致で議決することとしている。したがって、勤務時間の把握では、健康管理上の措置を行うための前提として、勤務状況に応じたとしているので、この把握方法についても監督署の方への届出事項になる。タイムカードその他でチェックする体制が整っていない限り、不正確な届出として改善させていくこととなる。また、健康管理上の措置の中身については、あり得べき考え方を指針等で示す。議論の中では、例えば一定のオーバーワークを行った者に、それに見合う代償休日等も労使間のでルール化してほしいというようなことが考えられる。さらに、裁量労働制実施事業場は、重点監督であるので、健康管理上の措置が具体的に履行されているかどうか、労働者の健康を守る任務として、当然重要な監督対象になる。





(質問)
  裁量労働制の適用職種に入る職種、入らない職種を具体的に幾つか挙げてもらいたい。
(伊藤局長)
  新たな裁量労働制の対象範囲は、企業の本社等の中枢で活躍しているホワイトカラーであるが、具体的には、例えば、経営戦略、経営計画といったものを、部分的にではなくトータルに一体的に担当している者、人事・労務関係であれば、人事政策の企画といったことを策定するために一体として任されているような人たちである。これは、財務計画あるいは予算の企画等にもそういったことがでてくる。そういった業務については指針の中で具体的な例示をしていく。さらに、完全に裁量労働制になじまないネガティブのものをはっきりさせることを考えている。具体的には、情報、資料の収集・整理、帳簿の記入など、補助的な業務あるいはルーチンとして行われている定型的な業務である。これには、給与計算、各種の保険事務、財務、経理関係であれば、その経理関係の書類の作成等の業務は当然入らない。
このようなネガティブなものを事業主と労働者の方に周知すると同時に、監督署の窓口においても届出たものをその基準に基づいて厳正にチェックして、その範囲内におさめる努力をしたい。





(質問)
  裁量労働制が適用されると、使用者の実労働時間の把握義務がなくなると考える。長時間労働に起因する過労死を初めとする労働災害が発生した場合には、その責任の所在はどこにあるのか。
(伊藤局長)
  勤務時間等の勤務状況の把握であるが、これは二つの理由によって事業主は必ず把握しておかなければならないことになる。一つは、裁量労働制を実施するための絶対的な必要要件として、勤務状況に応じた健康管理上の措置、ルールを決議しておくことが必要である。この健康管理上の措置を実施するために、勤務状況に応じてということであるので、どのような方法で勤務状況を把握するかの議決の中で、記載事項として当然届出してもらう。同時に、裁量労働制は休日労働や深夜労働は除外していないので、もし業等の結果、深夜、休日出勤の状況もあわせて使用者は把握しておき、割増賃金を払わなければならない。したがって、指摘の業務上の理由として病気等で労災の請求をする場合は、その実態を見て、現在運営している。…・。


戻る

(質問)
  使用者は、裁量労働制における業務遂行について、基本的指揮命令権があるのか

(伊藤局長)
  新たな裁量労働制また今までの裁量労働制においても、当該業務の遂行手段、時間配分の決定等に関して、業務に従事する労働者に対して使用者が具体的な指示をしないこと、これが要件となっている。しかし、これについては、業務の遂行方法についてすべてを労働者の裁量にゆだねること、すべてを要求しているのではなく、基本的な包括的な指揮命令権は使用者に残る。




(質問)
  裁量労働に従事する者の「みなし時間」は、所定労働時間と考えられるか。

(伊藤局長)
  …労使委員会において全会一致で「みなし労働時間」の時間数を決定することになる。この「みなし労働時間」数は、…所定労働時間ではない。もし、「みなし労働時間」数が8時間を超えた時間を「みなし」ておく、このような場合には、超えている部分については当然割増賃金の支払を行わなければならないことになる。逆に言うと、「みなされた時間」より早く帰る、仕事を終えることがあっても、当然賃金のカット等の問題にはならないことになる。





(質問)
  裁量労働の協定の内容について、典型的な事例を伺いたい。

(伊藤局長)
  研究開発職が裁量労働制の目下一番ポピュラーな形になっている。例えば、電気機械器具製造業のケースで見ると、平成元年2月に裁量労働制を導入して、研究開発、デザインの業務に導入している。本人の希望に応じてこれを実施することとしているが、対象者は5年ないし13年の経験年数の者である。その「みなし労働時間」は、事業場によって異なるが、8時間あるいは8時間半の「みなし制」をとっている。裁量労働制の対象者について支給される手当制度は、1ヵ月の単位で払う定期給与の中では基本月収の15%を裁量労働手当として払い、特別業績給を業績に応じてボーナスの中で加算している。また、深夜・休日労働は自己申告をさせること等が協約の主な内容になっている。


戻る


(質問)
  今回の裁量労働制は、法案の趣旨に本社部門、重要な企画、立案等とうたわれているが、中小企業の場合には本社であり、営業所でありという形で単一の事業所しかないところが多くある。このような事業所にも今回の法の枠内であれば適用されるのか。

(伊藤局長)
  裁量労働の対象になる事業場は、事業運営上の重要な事項を決定する事業場であるので、本社的機能を持っているところが対象であると理解している。このことは中小企業かどうかにかかわりなく、重要事項を決定する部分を包括している事業場であれば対象になる。ただ、一般論として、管理監督者がいて、その下で本当に仕事を任されている、創造的な能力発揮のために任されている、こうした人材が中小企業の場合本当にその事業場にいるかどうかであるが、通常の場合非常に少ないと想定される。労働基準監督署の窓口において、届出があった場合、その中小企業の労務管理の実情を主要企業であれば把握しており、また実地に見ることも可能なので、本当に裁量が任されている範囲でなければ受理しないという実務上の扱いが行なわれると思う。


戻る


(質問)
  「命令で定める方法により明示」するというのは、現在の労基法施行規則第5条の内容が入ってくると理解するがどうなのか。

(伊藤局長)
  指摘のとおり、現在基準法に掲げているもののうち、基本的なものは書面で明示するという趣旨で関係省令をつくる考えである。





(質問)
  労働契約の上限を3年として幾つかの縛りをかけているが、高度な専門的知識を有する労働者についての労働大臣が定める基準はどのような内容を考えているか?

(伊藤局長)
  …中央労働基準審議会でいろいろ意見をもらって具体的なものを定めたいが、この規定の趣旨に即して、技術等の高さを経験年数、学歴、専門分野での活動状況等から判断できる基準として定めていきたい。





(質問)
  今回の改正でパートタイム労働者の雇用管理の改善充実がされることになるのか。

(伊藤局長)
  …・パートタイマーに限っていえば、(労働条件の明示が一番必要)…今回、労働基準法の改正では、パート労働法のそのような部分を労働基準法本体の方で強化して、パート労働者だけでなく全体の労働者に、罰則を伴う形で労働条件の基本的なものの書面による明示を義務づけることにしている。それ以外では、労働条件をめぐって紛争が出た場合の処理システム等もあわせて提案している。


戻る


(質問)
  3年有期雇用の導入にあたって「新たに就く者に限る。」とあるが、これはどういう意味か。

(伊藤局長)
  その意味は二つある。一つは文字どおり、既に社内にいる人材をこのような有期雇用の形に変えることはできないので、新たに雇い入れるということである。二つ目は、既にこの3年という雇用契約を締結した専門的な人材について、その者と更新する場合がケースとして考えられるが、この更新の場合には、新たに就くということには該当しなくなるので、法文上、3年の更新は認められず原則へ戻るという意味である。

(質問)
  希望退職させた労働者を同じ企業で3年有期雇用に変更することは可能であるのか。

(伊藤局長)
  同じ事業場でそのような希望退職した者がまた3年という雇用契約で雇い入れるのは、当然同じ事業場ではだめということである。当然、その事業場では人材が不足しているために新たな商品等の開発に必要な人材として雇い入れる場合に限られるので、そのような事態は労働基準法ではあり得ないことになる。


戻る

(質問)
  …労基法36条の中に360時間と明記した場合と同等の法的効果、法的拘束力を持つと理解してよいのか。

(伊藤局長)
  現在、提案している時間外労働の基準は、法律に基づく委任告示という形で労働大臣が定めるので、そこに書かれる上限は、告示で書いても法律で書いても、その法的効果については全く変わらない。