新・労働基準法の解釈例規
 
第2弾/追加分

 
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労働基準法関係解釈例規の追加について

mokuji

1.契約期間の上限 4.1年単位の変形労働時間制 7.新たな裁量労働制 10.その他
2.退職事由の明示 5.一斉休憩 8.年次有給休暇  
3.1ヶ月単位の変形労働時間制 6.時間外労働 9.法令等の周知  

 
☆後日、実務解説シリーズQ&Aに分割して追加の予定ですが、とりあえず、原通達の列びのままで参照ください。



労働省労働基準局長より都道府県労働基準局長 あて
 (基発第169号、平成11年3月31日)

 労働基準法の一部を改正する法律の施行については、「労働基準法の一部を改正する法律の施行について」(平成11年1月29 日付け基発第45号)及び「労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係通達の改廃について」(平成11年3月31日付け基発第168号)により通達したところであるが、今般の労働基準法の改正に伴い、労働基準法関係解釈例規について下記のとおり追加を行ったので、了知の上、取扱いに遺憾なきを期されたい。

項目(見出し)

問 

答 

1.契約期間の上限
(法第14条関係)
「不足している」の意義  法第14条第1号及び第2号中の「労働者が不足している」とは、何人程度不足することが要件か。  1人でも不足していれば、「不足している事業場」に当たる。
 既に事業場にいる高度の専門的知識等を有する労働者と、それまで当該労働者が就いていた業務と異なる業務であって高度の専門的知識等が必要なものに就かせるために期間の定めのある契約を締結する場合、当該労働者は法第14条第1号又は第2号中の「当該高度の専門的知識等を有する業務に新たに就く者」に該当する。しかし、当該事業場は法第14条第1号及び第2号に規定する「労働者が不足している」状態とは認められないため、法第14条第1号及び第2号に規定する契約を締結できないと解するが如何。  前段については貴見のとおり。また、後段についても、通常御指摘のような事業場は「不足している事業場」と解することはできない。
2.退職事由の明示
(法第22条関係)
使用者の交付義務  使用者が労働者に口頭で告げた解雇事由と退職時の証明書に記載された解雇事由とが異なっていた場合や、労働者と使用者との間で労働者の退職の事由について見解の相違がある際に退職時の証明書に使用者が自らの見解を記載した場合、使用者は法第22条第1項の義務を果たしたものと解してよいか。  退職時の証明は、労働者が請求した事項についての事実を記載した証明書を遅滞なく交付してはじめて法第22条第1項の義務を履行したものと認められる。
 また、労働者と使用者との間で退職の事由について見解の相違がある場合、使用者が自らの見解を証明書に記載し労働者の請求に対し遅滞なく交付すれば、基本的には法第22条第1項違反とはならないものであるが、それが虚偽であった場合(使用者がいったん労働者に示した事由と異なる場合等)には、前記と同様法第22条第1項の義務を果たしたことにはならないものと解する。
 雇用保険の離職票の交付をもって、使用者は法第22条第1項の義務を果たしたものと解してよいか。  退職時の証明書は、労働者が次の就職に役立たせる等その用途は労働者にゆだねられているが、離職票は公共職業安定所に提出する書類であるため、退職時の証明書に代えることはできない。
 退職時の証明は、同一の事項について何度でも使用者は労働者の請求に応じる必要があると解してよいか。  退職時の証明を求める回数については制限はない。
請求権の時効  退職時の証明については、法第115条により、請求権の時効は2年と解するが如何。  貴見のとおり。
3.1箇月単位の変形労働時間制
(法第32条の2関係)
有効期間  1箇月単位の変形労働時間制を労使協定によって導入する場合には、当該労使協定において有効期間の定めをするものとされているが、当該期間についての制限如何。  不適切な制度が運用されることを防ぐため、有効期間は3年以内とすることが望ましい。
4.1年単位の変形労働時間制
(法第32条の4及び法第32条の4の2関係)
 特定期間  1年単位の変形労働時間制の導入の際の協定事項である特定期間は、どの程度の期間設けることができるか。また、特定期間の分割は認められると解してよいか。  前段について、特定期間は、対象期間中の特に業務が繁忙な期間について設定することができるとする法の趣旨に沿った期間にすることが必要であり、対象期間中の相当部分を特定期間とすることはこの趣旨に反するものである。具体的な設定に当たっては、業務の実情に即して上記の趣旨を踏まえた上で、労使が十分話し合って決めるべきものである。
 後段について、対象期間中の複数の期間を特定期間として定めることは可能である。
 特定期間(法第32条の4第1項第3号)に関する事項は必要的協定事項と解されるが、これを定めない協定の取扱い如何。  特定期間を設定する必要がない場合においても、法第32条の4第1項の規定上、「特定期間を定めない」旨定めることが必要である。ただし、特定期間について何ら定めがない協定については、「特定期間を定めない」旨定められているものとみなすこととする。
1日及び1週間の労働時間の限度  対象期間が3か月を超える場合には、その労働時間が48時間を超える週が連続する場合の週数が3以下であること等の要件を満たさなければならないが、ここでいう「週」については暦週と解してよいか。  則第12条の4第4項における「週」については、対象期間の初日の曜日を起算日とする7日間である。
賃金清算  1年単位の変形労働時間制に関して、途中退職者の実際の勤務期間における週平均労働時間が、当該1年単位の変形労働時間制における週平均の所定労働時間を下回った場合、当該下回った時間数に応じて賃金を差し引くこと、すなわち過払賃金の清算をすることは可能と解してよいか。
 また、そのような内容の労使協定を締結することは可能か。
 第32条の4の2の規定は、労働させた期間を平均して1週間当たり40時間を超えて労働させた場合において、その超えた時間の労働については、割増賃金を支払わなければならないとするものである。
 設問のような場合については、毎月支払われる賃金の計算方法が、実労働時間に比例したものとなっていない場合において、変形期間の途中で退社をしたときに、その時点までの賃金額を事後的に実労働時間に比例したものとしようとすることにより生じるものである。これは、支払うべき賃金と異なる賃金額を毎月支払っているということであり、そのために「過払いの事後的清算」というものが生じることとなるものである。
 このような場合、毎月の支払額が「過払い」であれば、法的には問題ないが、変形期間の前半に対象期間中の週平均所定労働時間を超える所定外労働時間を特定した月があるような場合には、この計算方法では賃金の過少払いとなる。

 したがって、このような賃金の計算方法は、法違反を生じる可能性が極めて高いものであり、労働基準法の強行法規としての性格にかんがみれば、違法となる場合が容易に想定される内容を含む労使協定を結ぶことはできない。
清算による割増賃金を平均賃金の算定基礎賃金に含める時期  平均賃金の計算上、1年単位の変形労働時間制に係る賃金清算により支払われた割増賃金は、当該割増賃金が支払われた月の賃金として取り扱ってよいか。  普通の割増賃金同様に、清算月の賃金に含めるよう取り扱われたい。
休職者についての賃金清算の可否  1年単位の変形労働時間制の適用労働者が対象期間中に育児休業や産前産後休暇の取得等により労働せず、実際の労働期間が対象期間よりも短かった場合において、労働基準法第32条の4の2の規定の適用如何。  本条は、途中退職者等雇用契約期間が同法第32条の4第1項第2号に規定する対象期間よりも短い者についての規定であり、休暇中の者などには適用されない。
割増賃金の基礎となる賃金の計算  1年単位の変形労働時間制に関して、対象期間が1年に満たない場合、割増賃金の計算をする上で基礎となる月の平均所定労働時間数の計算方法如何。  労働基準法施行規則第19条第1項第4号のとおりである。
 なお、対象期間が1年に満たない変形労働時間制が終了した後について、変形労働時間制を導入するかどうか決まっていないなど1年間の残りの期間についての所定労働時間が定まっていない場合には、当該1年単位の変形労働時間制終了後も同じ1年単位の変形労働時間制を繰り返し実施するとして1年間の総所定労働時間を仮定し、それを12で除して時間数を計算すること。
5.一斉休憩
(法第34条関係)
改正前に受けた許可の取消等  従前に受けた一斉休憩適用除外許可が有効に存続している場合において、同様の目的で新たに労使協定を締結するため当該許可の取消を求める申出が事業場からあったときにおいても、許可基準に適合しなくなった場合を除いてはその取消はできないものと解してよいか。
 また、従前に受けた許可が有効に存続するにもかかわらず、新たに労使協定を締結した場合においても、当該労使協定は有効であるものと解してよいか。
 前段及び後段について、貴見のとおり。
6.時間外労働
(法第36条関係)
時間外労働協定の有効期間  時間外労働協定の有効期間は、必ず1年間としなければならないか。  限度基準により、時間外労働協定においては必ず1年間についての延長時間を定めなければならないこととされたことを受けて、1年間についての延長時間を定める時間外労働協定については、有効期間は最も短い場合でも1年間となる。
 したがって、1年間についての延長時間を定めた時間外労働協定において、1日及び1日を超え3箇月以内の期間(以下「3箇月以内の期間」という。)について定められた延長時間の有効期間までもすべて一律に1年間としなければならないこととしたものではなく、3箇月以内の期間についての延長時間の有効期間を、1年間についての延長 時間の有効期間とは別に、1年末満とすることも差し支えないこと。
 なお、このように、3箇月以内の期間についての延長時間の有効期間を、1年間についての延長時間の有効期間とは別に定めた時間外労働協定を届け出た場合であって、1年間間断なく3箇月以内の期間についての延長時間を定めようとするときは、3箇月以内の期間についての延長時間の有効期間が終了するまでに改めて当該期間についての延長時間及び有効期間を定め、届け出る必要があること。
 時間外労働協定の有効期間は、1年以上であれば限度はないか。  時間外労働協定について定期的に見直しを行う必要があると考えられることから、有効期間は1年間とすることが望ましい。
業務区分の細分化  業務区分の細分化の程度如何。  労使は、各事業場における業務の実態に即し、業務の種類を具体的に区分しなければならないものであり、事業の実態、実情を最も熟知する労使の判断が尊重されるものであるが、例えば、労働時間管理を独立して行っている各種の製造工程が設けられているにもかかわらず業務の種類を「製造業務」としているような場合は、細分化が不十分であると考えられる。
1年単位の変形労働時間制における限度時間  時間外労働協定で一定期間として定められた1年間の中に、対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制の対象期間の一部が含まれている場合の限度基準別表第2の適用如何。  時間外労働協定で一定期間として定められた1年間の中に、対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制の対象期間が3箇月を超えて含まれている場合には、限度基準別表第2が適用される。
限度時間を超えている協定の効力  延長時間が限度時間を超えている時間外労働協定の効力如何。  延長時間が限度時間を超えている時間外労働協定も直ちに無効とはならない。
 なお、当該協定に基づく限度時間を超える時間外労働の業務命令については、合理的な理由がないものとして民事上争い得るものと考えられる。
特定労働者の定義  則第69条第1項第1号の「小学校就学の始期に達するまで」の解釈如何。  子が6歳に達する日の属する年度の3月31日までの意である。
 則第69条第1項第2号の「扶養」の解釈如何。  主として当該労働者が経済的援助をすることにより生計を維持させることをいい、所得税法(昭和40年法律第33号)第2条第1項第34号の「扶養親族」の「扶養」と同義である。
特定労働者の人数  時間外労働協定の届出様式のうち「B育児又は家族介護を行う女性労働者のうち延長することができる時間を短くすることを申し出た者」の「労働者数」の欄はどのように記入すればよいか。  申出が見込まれる人数を記入すれば足りる。
特定労働者に係る時間外労働協定  特定労働者に係る時間外労働協定について、申出をした特定労働者に対し当該申出から「一定期間」経過後に適用することとする場合の当該「一定期間」の長さの目安如何。  当該「一定期間」の長さは、各事業場の実情に応じて定められるものであるが、当該時間外労働協定に基づく短い延長時間が可能な限り早期に適用されるようにすることが望ましい。
7.新たな裁量労働制
(法第38条の4関係)
労使委員会と労働時間短縮推進委員会の関係  時短促進法に基づく労働時間短縮推進委員会が,新たな裁量労働制に係る労使委員会を兼ねることは可能と解してよいか。  適正な手続を踏んだ上で労働時間短縮推進委員会の委員全員が労使委員会の委員となって両委員会の委員を兼ねることにより、実質上労働時間短縮推進委員会が労使委員会を兼ねることは可能である。
 両委員会はそれぞれ異なった法律に基づくものであって、目的、構成も異なる全く別個のものである。
法施行前に設置した労使委員会の決議の効力  法施行前に設置した労使委員会の決議は有効と解してよいか。  法が施行されていない以上、有効とはならない。
8.年次有給休暇
(法第39条関係)
斉一的取扱い  付与日数の引上げは平成11年4月1日以後の最初の基準日から適用されるものとされているが、斉一的取扱いを行う事業場はその日からその適用を受けると解してよいか。  貴見のとおり。
9.法令等の周知
(法第106条関係)
周知方法  就業規則等の周知方法について、労働者の請求があった場合に見せる方法でも、当該事業場に備え付けているものと解してよいか。  従来どおり、就業規則等を労働者が必要なときに容易に確認できる状態にあることが「周知させる」ための要件である(参考;平成9年10月20日付け基発第680号)。
10.その他 労働者の過半数代表の選出手続  則第6条の2に規定する「投票、挙手等」の「等」には、どのような手続が含まれているか。  労働者の話合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続が該当する。