改正労基法の施行通達(全文)
 ■HOMEPAGE
 ■640/480  ■新・労基法と実務


mokuji
第1 契約期間の上限
第2 労働条件の明示
第3 退職時の証明
第4 変形労働時間制
  1 1箇月単位の変形労働時間制
  2 1年単位の変形労働時間制
第5 一斉休憩
第6 時間外労働
第7 特定労働者の時間外労働
第8 裁量労働制
第9 年次有給休暇
第10 労働時間の特例に係る規定の整備
第11 就業規則
第12 法令等の周知義務
第13 過半数代表者
第14 その他

施行通達
基発第45号
平成11年1月29日


労働省労働基準局長から、都道府県労働基準局長 あて

労働基準法の一部を改正する法律の施行について


 労働基準法の一部を改正する法律(平成10年法律第112号。以下「改正法」という。)については、平成10年9月30日付け発基第94号により労働事務次官より通達されたところであるが、改正法による改正後の労働基準法(以下「法」という。)並びに労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う年次有給休暇に関する経過措置に関する政令(平成11年政令第15号。以下「経過措置政令」という。)及び労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成11年政令第16号。以下「整備政令」という。)、労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令(平成10年労働省令第45号。以下「整備省令」という。)による改正後の労働基準法施行規則(以下「則」という。)、労働基準法第14条第1号及び第2号の規定に基づき労働大臣が定める基準を定める告示(平成10年労働省告示第153号。以下「高度基準」という。)、労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成10年労働省告示第154号。以下「限度基準」という。)及び特定労働者に係る労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成10年労働省告示第155号。以下「特定労働者の限度基準」という。)の内容等は下記のとおりであるので、これらの施行に遺漏なきを期されたい。




第1 契約期間の上限(法第14条関係)

1 趣旨

 高度の専門的能力を有し、企業の枠を超えて柔軟な働き方を求める労働者が、その能力を存分に発揮するための環境を整備し、企業がこのような労働者を活用して積極的な事業を展開することや、高齢者の経験や能力を生かせる雇用の場を確保することを可能とすることを目的として、
@ 新商品、新技術の開発等のための業務や新規事業への展開を図るためのプロジェクト業務に必要とされ、事業場で確保が困難な高度の専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」という。)を持っている者を新たに雇い入れる場合に締結される労働契約や、
A 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約・について、契約期間の上限を3年としたものであること。

2 対象

 契約期間の上限が3年とされた労働契約は、法第14条第1号から第3号までに掲げる労働契約であり、具体的には次のとおりであること。

(1)法第14条第1号に掲げる労働契約

イ 「新商品、新役務若しくは新技術の開発」にいう「新」とは、当該事業場において新規のものであれば足りるものであること。
また、「科学に関する研究」には、自然科学に関する研究だけでなく、人文科学又は社会科学に関する学術的な研究も含むものであること。

口 高度基準は、高度の専門的知識等を限定列挙したものであること。
高度基準第2号、第4号及び第5号中「・・年以上従事した経験」には、それぞれの学位や資格等を得る以前の経験を含むものであること。
高度基準第5号に規定する「労働省労働基準局長が認める者」については、おって必要に応じ、労働省労働基準局長通達により定めることとするものであること。

ハ 法第14条第1号の労働契約を締結するため、既に事業場にいた高度の専門的知識等を有する労働者を解雇し、又は移籍出向等させた事業場は、「当該高度の専門的知識等を有する労働者が不足している事業場」とは認められないものであること。

ニ 「当該高度の専門的知識等を有する業務に新たに就く者」とは、当該労働契約の締結前に、当該事業場において当該業務に就いていたことのない労働者のことであること。
このため、従来、当該事業場において同一業務に就いていた者と法第14条第1号の契約を締結することはできないものであること。また、同号の契約を更新する場合、1年を超える期間を定めることはできないものであること。

(2)法第14条第2号に掲げる労働契約

イ 「一定の期間に完了することが予定されているもの」とは、具体的に終期が予定されている業務のことであること。例えば、2年計画でいわゆるプロジェクトとして特別の体制を講じて行われる事業の立ち上げに関する業務がこれに該当するものであること。

ロ 高度基準、「当該高度の専門的知識等を有する労働者が不足している事業場」及び「当該高度の専門的知識等を有する業務に新たに就く者」の解釈については、上記(1)ロから二までと同様であること。

(3)法第14条第3号に掲げる労働契約

イ 本号の労働契約は、契約締結特に満60歳以上である労働者との間に締結されるものであることを要すること。

ロ 法第14条第1号又は第2号の契約更新時に、当該労働者が満60歳以上であれば、3年以内の労働契約の締結が可能であること。

3 法第14条に規定する期間を超える期間を定めた労働契約の効力等について

 法第14条に規定する期間を超える期間を定めた労働契約を締結した場合は、同条違反となり、当該労働契約の期間は、法第13条により法第14条第1号から第3号に掲げるものについては3年、他のものについては1年となること。





第2 労働条件の明示(法第15条第1項関係)

1 趣旨

 労働移動の増大、就業形態の多様化等に伴い、労働条件が不明確なことによる紛争が増大するおそれがあることから、このような紛争を未然に防止するため、書面の交付により明示すべき労働条件を追加したものであること。

2 労働契約の締結の際に明示すべき事項

 使用者が労働契約の締結の際に明示すべき事項として、労働契約の期間に関する事項及び所定労働時間を超える労働の有無を追加したものであること。

3 書面の交付により明示すべき事項

 使用者が労働契約の締結の際に書面により明示すべき事項として、次の事項を追加したものであること。

(1)労働契約の期間に関する事項

 期間の定めのある労働契約の場合はその期間、期間がない労働契約の場合はその旨を明示しなければならないこと。

(2)就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

 雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務を明示すれば足りるものであるが、将来の就業場所や従事させる業務を併せ網羅的に明示することは差し支えないこと。

(3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項当該労働者に適用される労働時間等に関する具体的な条件を明示しなければならないこと。
 なお、当該明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合においては、労働者の利便性をも考慮し、所定労働時間を超える労働の有無以外の事項については、勤務の種類ごとの始業及び終業の時刻、休日等に関する考え方を示した上、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足りるものであること。

(4) 退職に関する事項

 退職の事由及び手続、解雇の事由等を明示しなければならないこと。
 なお、当該明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合においては、労働者の利便性をも考慮し、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足りるものであること。

4 書面明示の方法

 上記3の書面の様式は自由であること。
 なお、上記に掲げた事項については、当該労働者に適用する部分を明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付することとしても差し支えないこと。





第3 退職時の証明(法第22条第1項関係)

1 趣旨

 解雇や退職をめぐる紛争を防止し、労働者の再就職活動に資するため、退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)を退職時に証明すべき事項として追加したものであること。

2 記載すべき内容

 「退職の事由」とは、自己都合退職、勧奨退職、解雇、定年退職等労働者が身分を失った事由を示すこと。
 また、解雇の場合には、当該解雇の理由も「退職の事由」に含まれるものであること。
 解雇の理由については、具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならないこと。
 なお、解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合、使用者は、法第22条第2項より、解雇の理由を証明書に記載してはならず、解雇の事実のみを証明書に記載する義務があること。

3 経過措置

 この改正事項は、平成11年3月31日以前に退職した労働者については、適用されないものであること。





第4 変形労働時間制(法第32条の2、法第32条の4及び法第32条の4の2関係)



1 1箇月単位の変形労働時間制

(1)趣旨

 労使の話合いによる制度の導入を促進するため、また、1箇月単位の変形労働時間制以外の変形労働時間制の導入要件は労使協定により定めることとされていることも勘案し、就業規則その他これに準ずるものによる定め又は労使協定による定めのいずれによっても導入できることとしたものであること。
 なお、労使協定により定めるか就業規則その他これに準ずるものにより定めるかについては、最終的には使用者が決定できるものであること。

(2)労使協定において定めるべき事項

 定めるべき事項は、変形期間の起算日を含め労使協定による場合と就業規則その他これに準ずるものによる場合との間で基本的には差異がないものであること。ただし、労使協定による場合には、その有効期間の定めをするものとされているものであること。
 なお、法第32条の2第1項の規定により労使協定において各日、各週の労働時間等を定めた場合であっても、就業規則において法第89条に規定する事項を定める必要があるものであること。

(3)労使協定の届出

 1箇月単位の変形労働時間制に関する労使協定は、則様式第3号の2により所轄労働基準監督署長に届け出なければならないこととしたものであること。

(4)定めの周知

 則第12条で協定による定めをした場合を除外しているのは、周知が不要ということではなく法第106条第1項により周知されることとの整理を行ったにすぎないものであること。




2 1年単位の変形労働時間制

(1)趣旨

 週40時間労働制が定着した後においては、労働者の健康、生活のリズム等に及ぼす影響に配慮しつつ、休日の確保によるゆとりの確保、時間外・休日労働の減少を図ることが一層重要となることにかんがみ、1年単位の変形労働時間制の要件等について所要の見直しを行うことにより、時間外・休日労働の減少による総労働時間の短縮及び休日の確保を実現しようとするものであること。

(2)対象労働者の範囲

 法第32条の4第1項第1号では対象労働者に関する制限がないが、労使協定において、対象労働者の範囲を明確に定める必要があることについては従来どおりであること。
 なお、対象労働者に関する制限は、対象期間の初日が平成11年3月31日以前の日である労使協定についてはなお適用されるものであること。例えば、改正法附則第3条の規定により改正法による改正前の労働基準法第32条の4の規定が有効となる労使協定においては、対象労働者に関する制限も適用されるものであること。したがって、改正法による改正前の労働基準法第32条の4の規定では対象労働者とすることができない労働者に関しては、仮に下記(3)に基づき賃金の清算を行ったとしても、労働基準法上有効な1年単位の変形労働時間制とは認められないものであること。

(3)賃金の清算

 途中退職者等又は途中採用者等については、法第32条の4の2の規定により賃金の清算が必要であること。

イ 清算が必要な労働者

 この清算は、対象期間の末日を平成11年4月1日以降の日とする労使協定に基づく1年単位の変形労働時間制により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者について、平成11年4月1日以降は例外なく必要なものであること。例えば、対象期間を通じて労働させる予定であったが対象期間途中で任意退職した労働者についても必要であり、このことは、改正法附則第3条の規定により改正法による改正前の労働基準法第32条の4の規定が有効となる労使協定の対象労働者であっても同様であること。
 法第32条の4の2中「労働させた期間が当該対象期間より短い労働者」に該当するか否かは、適用される1年単位の変形労働時間制ごと、すなわち、当該労働者に関してあらかじめ特定された労働日及び労働日ごとの労働時間が変更されることとなるか否かで判断するものであること。例えば、1つの事業場で複数の1年単位の変形労働時間制が採用されている場合に配置転換された労働者については、配置転換前の制度においては途中退職者と同様の清算が、配置転換後の制度においては途中採用者と同様の清算が、それぞれ必要となるものであること。

口 計算方法

 法第32条の4の2の規定に基づき割増賃金を支払わなければならない時間は、途中退職者等については退職等の時点において、途中採用者等については対象期間終了時点(当該途中採用者等が対象期間終了前に退職等した場合は当該退職等の時点)において、それぞれ次のように計算するものであること。
 1年単位の変形労働時間制により労働させた期間(以下「実労働期間」という。)における実労働時間から、法第37条第1項の規定に基づく割増賃金を支払わなければならない時間及び次の式によって計算される時間を減じて得た時間
 40×(実労働期間の暦日数÷7)

 法第32条の4の2の「第37条の規定の例により」とは、割増賃金の算定基礎賃金の範囲、割増率、計算方法等がすべて法第37条の場合と同じであるということであること。

ハ 効果

 この割増賃金を支払わない場合は、法第24条に違反するものであること。

(4)労働時間の特定

 改正法は、対象期間中の労働日及び労働日ごとの労働時間をより的確に特定し、時間外・休日労働を減少させることができるよう、対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分して労働日及び労働日ごとの労働時間を特定することができることとしたものであること。

 このような趣旨に照らして当然のことながら、従来と同様特定された労働日及び労働日ごとの労働時間は変更することができないものであること。
 なお、法第89条は、就業規則で始業及び終業の時刻並びに休日を定めることと規定しているので、1年単位の変形労働時間制を採用する場合にも、就業規則において、対象期間における各日の始業及び終業の時刻並びに休日を定める必要があること。ただし、1箇月以上の期間ごとに区分を設けて労働日及び労働日ごとの労働時間を特定することとしている場合においては、勤務の種類ごとの始業・終業時刻及び休日並びに当該勤務の組合せについての考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定め、これにしたがって、各日ごとの勤務割は、最初の期間におけるものは当該期間の開始前までに、最初の期間以外の各期間におけるものは当該各期間の初日の30日前までに、それぞれ具体的に定めることで足りるものであること。

(5)労働日数の限度

 労働日数の限度が適用されるのは、対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制に限られるものであること。
 則第12条の4第3項の「対象期間について1年当たり」とは、具体的には、対象期間が3箇月を超え1年末満である1年単位の変形労働時間制に関しては、当該対象期間における労働日数の限度は、次の式によって計算するという意味であること。

 対象期間における労働日数の限度
  =1年当たりの労働日数の限度×(対象期間の暦日数÷365日)

 上記の式により計算して得た数が整数とならない場合の取扱いについては、「限度」である以上、労働日数がこの限度を超えることはできないこと(例えば、労働日数の限度が93.3日であれば労働日数を94日とすることはできないこと。)から、結果として、小数点以下の端数は切り捨てて適用することとなるものであること。
 なお、対象期間がうるう日を含んでいるか否かによって、対象期間における労働日数の限度及び上記の式に変更はないものであること。例えば、旧協定がない場合において対象期間を1年とするときは、労働日数の限度は常に280日であること。

(6)1日及び1週間の労働時間の限度

 則第12条の4第4項第2号は、「その労働時間が48時間を超える週の初日の数」について規定していることから、同号の規定により区分した各期間における最後の週の末日が当該各期間に属する日でない場合であっても、当該週の労働時間が48時間を超えるのであれば、当該週の初日が同号の「初日」として取り扱われるものであること。

(7)連続して労働させる日数の限度

 法第32条の4第1項第3号の特定期間は対象期間中の特に業務が繁忙な期間であることから、対象期間の相当部分を特定期間として定める労使協定は、法の趣旨に反するものであること。
 また、対象期間中に特定期間を変更することはできないものであること。

(8)労使協定の届出

 1年単位の変形労働時間制に関する労使協定は、則様式第4号により所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。
 法第32条の4第2項の規定により労働日及び労働日ごとの労働時間を定める場合においては、「労働時間が最も長い日の労働時間数」、「労働時間が最も長い週の労働時間数」、「労働時間が48時間を超える週の最長連続週数」、「対象期間中の労働時間が48時間を超える週数」、「対象期間中の最も長い連続労働日数」及び「特定期間中の最も長い連続労働日数」欄については法第32条の4第1項第4号の最初の期間における数字及び最初の期間を除く各期間における予定の数字をそれぞれ区別して記載し、「対象期間中の各日及び各週の労働時間並びに所定休日」欄に係る別紙には最初の期間における各日及び各週の労働時間並びに所定休日並びに最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間を記載するものであること。
 今般、労使協定の記載事項として特定期間が追加されたことから、労使協定の受理に当たっては当該事項が記載されているかどうかを確認するとともに、上記(7)で示したとおり、特定期間と特定期間以外の期間では連続して労働させることができる日数が異なることに留意すること。また、今般の様式改正により、旧協定に関する事項を協定届に記載することとなったが、旧協定があった場合には、上記(5)に適合しているかどうかを確認すること。

(9)暫定措置

イ 則第65条の改正は、1日及び1週間の労働時間の限度に関する暫定措置を継続するものであり、同条に規定するように則第12条の4第4項の特例であること。したがって、則第65条の対象業務に従事する者について、則第12条の4第4項は適用されないものであること。

ロ 則第66条の改正は、1日の労働時間の限度に関する暫定措置を継続するものであり、同条に規定するように、1日の労働時間の限度に関する則第12条の4第4項の特例であること。したがって、則第12条の4第4項については、同項前段の1日の労働時間の限度に関する部分以外は適用されるものであること。

(10)経過措置

 法第32条の4第1項第2号の対象期間として平成11年3月31日を含む期間を定めている労使協定については、改正法による改正前の労働基準法第32条の4及び整備省令による改正前の則第12条の4第3項、則第65条及び則第66条の規定が適用されるものであること。
 なお、この経過措置に関しては、上記(2)及び(3)イに留意すること。


3 特別の配慮を要する者に対する配慮

 使用者は、1箇月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制又は1週間単位の非定型的変形労働時間制の下で労働者を労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をしなければならないこととされていること。その場合に、法第67条の規定は、あくまでも最低基準を定めたものであるので、法第66条第1項の規定による請求をせずに変形労働時間制の下で労働し、1日の所定労働時間が8時間を超える場合には、具体的状況に応じ法定以上の育児時間を与える等の配慮をすることが必要であること。






第5 一斉休憩(法第34条第2項関係)

1 趣旨

 休憩時間の自由利用を担保するための手段として一斉付与を法律上一律に義務づける必要性が低下していること、労務管理の個別化が進展し、かつ、自律的に働くことを希望する労働者がいる中で改正前の規定がこうした労働者の主体的な労働時間の配分に制約を課すこととなっていることにかんがみ、適用除外許可を廃止すると同時に、労使の自主的な話合いの上、職場の実情に応じた労使協定を締結することにより適用除外とすることとしたものであること。

2 労使協定の締結

 労使協定には、一斉に休憩を与えない労働者の範囲及び当該労働者に対する休憩の与え方について定めなければならないものであること。

3 一斉休憩の適用除外許可に係る経過措置

(1)平成11年3月31日以前にされた改正法による改正前の労働基準法第34条第2項ただし書の規定に基づく申請であって同日までに許可又は不許可の処分をしていないものについては、昭和22年9月13日付け発基第17号及び昭和29年12月10日付け基収第6503号に示すところにより処分を行わなければならないものであること。

(2)改正法による改正前の労働基準法第34条第2項ただし書の規定により適用除外許可を受けた業務(上記(1)により許可を受けた業務を含む。)に従事する労働者については、平成11年4月1日以降においても、許可を受けたところにより休憩を与えて差し支えないものであること。
 なお、当該許可に係る業務が許可基準に適合しなくなった場合において許可を取り消さねばならないことについても、従前どおりであること。






第6 時間外労働(法第36条関係)

1 趣旨

 長時間にわたる時間外労働の抑制を図るため、労働大臣が法第36条第1項の協定(労働時間の延長に係るものに限る。以下「時間外労働協定」という。)で定める労働時間の延長の限度等に関する基準を定めることができる根拠を設定するとともに、使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者(以下「労使当事者」という。)がその基準を遵守すべき義務や、労働基準監督署長がその基準に関し労使に対して必要な助言、指導を行うこととする一連の規定を設けたものであること。

2 限度基準

(1)業務区分の細分化

 労使当事者は、時間外労働協定において労働時間を延長する必要のある業務の種類を定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該必要のある業務の範囲を明確にしなければならないこととしたものであること。
 これは、業務の区分を細分化することにより当該業務の種類ごとの時間外労働時間をきめ細かに協定するものとしたものであり、労使当事者は、時間外労働協定の締結に当たり各事業場における業務の実態に即し、業務の種類を具体的に区分しなければならないものであること。

(2)一定期間の区分

 使用者は、時間外労働協定をする場合は、則第16条第1項により、1日についての延長することができる時間(以下「1日についての延長時間」という。)及び1日を超える一定の期間(以下「一定期間」という。)についての延長することができる時間(以下「一定期間についての延長時間」という。)について協定しなければならないこととされているが、労使当事者は、時間外労働協定において一定期間についての延長時間を定めるに当たっては、当該一定期間は1日を超え3箇月以内の期間及び1年間としなければならないこととしたものであること。
 1年間についての延長時間を必ず定めなければならないこととしているのは、1年間を通じて恒常的な時間外労働を認める趣旨ではなく、1年間を通じての時間外労働時間の管理を促進し時間外労働時間の短縮を図ることを目的としたものであること。
 このため、時間外労働協定の有効期間は、最も短い場合でも1年間となるものであること。
 なお、これらの期間に加えて3箇月を超え1年末満の期間について労使当事者が任意に協定することを妨げるものではないこと。
 おって、事業が完了し、又は業務が終了するまでの期間が1年末満である場合は、1年間についての延長時間を定めることは要せず、1日を超え3箇月以内の期間及び当該事業が完了し、又は業務が終了するまでの期間について協定すれば足りるものであること。

(3)一定期間についての延長時間の限度

イ 労使当事者は、時間外労働協定において一定期間についての延長時間を定めるに当たっては、当該一定期間についての延長時間は、限度基準別表第1の上欄に掲げる期間の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる限度時間を超えないものとしなければならないこととしたものであること。

口 次の場合には、別紙の概算式により算出される「一定期間の法定超え時間外労働時間」が限度時間に適合すればよいものであること。
@ 所定労働時間が法第32条から第32条の5まで又は第40条の規定により労働させることができる最長の労働時間(以下「法定労働時間」という。)を下回る事業場において、当該所定労働時間を超えて延長することができる時間を一定期間についての延長時間として協定している場合
A 法定労働時間を超えて延長することができる時間を一定期間についての延長時間としているが、当該一定期間についての延長時間に休日における労働時間を含めて協定している場合
なお、この換算は、協定された延長時間を限度時間と比較する便宜上行うものであり、法第32条又は第40条の違反の有無は「一定期間の法定超え時間外労働時間」を基準に行うものではないこと。

ハ 一定期間についての延長時間は限度時間以内の時間とすることが原則であるが、弾力措置として、限度時間以内の時間を一定期間についての延長時間の原則(以下「原則となる延長時間」という。)として定めた上で、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じたときに限り、一定期間として協定されている期間ごとに、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超える一定の時間(以下「特別延長時間」という。)まで労働時間を延長することができる旨を協定すれば(この場合における協定を「特別条項付き協定」という。以下同じ。)、当該一定期間についての延長時間は限度時間を超える時間とすることができることとしたものであること。
 このような弾力措置を設けた理由は、事業又は業務の態様によっては、通常の時間外労働は限度時間以内の時間に収まるが臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わざるを得ない特別の事情が生ずることが予想される場合があるので、事業又は業務の運営に配慮するとともに、原則である限度時間の意義が失われることのないようにするためであること。
 特別条項付き協定においては、「特別の事情」、「手続」及び「特別延長時間」のそれぞれについてあらかじめ協定することを要件としていること。

(イ)「特別の事情」は、時間外労働をさせる必要のある具体的事由の下において生ずる特別の事情をいうものであり、労使当事者が事業又は業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要があること。
 なお、「特別の事情」には、法第33条の非常災害時等の時間外労働に該当する場合は含まれないこと。

(ロ)労使当事者間において定める「手続」については特に制約はないが、時間外労働協定の締結当事者間の手続として労使当事者が合意した協議、通告その他の手続であること。
 また、「手続」は、一定期間についての延長時間を定めた当該一定期間ごとに当該特別の事情が生じたときに必ず行わなければならず、所定の手続を経ることなく、原則となる延長時間を超えて労働時間を延長した場合は、法違反となるものであること。
 なお、所定の手続がとられ、原則となる延長時間を超えて労働時間を延長する際には、その旨を届け出る必要はないが、労使当事者間においてとられた所定の手続の時期、内容、相手方等を書面等で明らかにしておく必要があること。

(ハ)「特別の事情」及び「手続」については、必ずしも詳細に届出を行う必要はないものであるが、協定届においては「特別の事情」及び「手続」が特別延長時間まで労働時間を延長することができる要件である旨を明らかにし、特に「手続」についてはその概要を記載する必要があること。

(ニ)「特別延長時間」については、限度となる時間は示されておらず、労使当事者の自主的協議にゆだねられていること。
 また、「特別延長時間」については、一定期間についての延長時間として届出を行う必要があること。


(4)1年単位の変形労働時間制における一定期間についての延長時間の眼度

イ 1年単位の変形労働時間制は、あらかじめ業務の繁閑を見込んで労働時間を配分することにより、突発的なものを除き恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度であり、このような弾力的な制度の下では、当該制度を採用しない場合より繁忙期における時間外労働が減少し、年間でみても時間外労働が減少するものと考えられることから、1年単位の変形労働時間制により労働する労働者(対象期間が3箇月を超える変形労働時間制により労働する者に限る。以下同じ。)に係る限度時間については、当該制度によらない労働者より短い限度時間が定められたものであること。

口 労使当事者は、時間外労働協定において1年単位の変形労働時間制により労働する労働者に係る一定期間についての延長時間を定める場合は、当該労働者に係る一定期間についての延長時間は、限度基準別表第2の上欄に掲げる期間の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる限度時間を超えないものとしなければならないこととしたものであること。

ハ 所定労働時間を超えて延長することができる時間を一定期間についての延長時間として協定している場合は、当該一定期間についての延長時間が限度時間に適合していれば差し支えないものであること。

ニ 1年単位の変形労働時間制により労働する労働者についても特別条項付き協定を締結することができるものであること。


(5)適用除外

 次に掲げる事業又は業務に係る時間外労働協定については、限度時間は適用しないこととしたこと。これは、労働時間管理等について別途行政指導を行っている分野については、現行の指導基準の水準に到達させることが先決であること、事業又は業務の性格から限度時間の適用になじまないものがあること等の理由によるものであること。
 なお、二に掲げる事業又は業務に係る時間外労働協定については、限度基準第3条及び第4条の規定のうち、労働省労働基準局長が指定する範囲に限り、限度時間は適用されないものであること。

イ 工作物の建設等の事業
「工作物の建設等の事業」とは、原則として法別表第1第3号に該当する事業をいうものとするが、建設業に属する事業の本店、支店等であって同号に該当しないものも含むものであること。
 なお、建設業を主たる事業としない製造業等の事業であっても、例えば、大規模な機械・設備の据付工事等を行う場合は当該工事自体が法別表第1第3号に該当する一の事業となることがあるので留意すること。また、電気事業の建設所、工事所等及びガス事業の導管管理事務所は法別表第1第3号に掲げる事業に該当するものであること。

ロ 自動車の運転の業務
「自動車の運転の業務」とは、四輪以上の自動車の運転を主として行う業務をいい、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)の対象となる自動車運転者の業務と同義であること。

ハ 新技術、新商品等の研究開発の業務
「新技術、新商品等の研究開発の業務」とは、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいうものとすること。

二 季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として労働省労働基準局長が指定するもの

(イ)「季節的要因等により業務活動若しくは業務量の変動が著しい事業又は業務」とは、事業又は業務の特性と不可分な季節的要因等により事業活動又は業務量に著しい変動があり、かつ、その結果3箇月以内の期間における時間外労働が限度時間の範囲に収まらない場合が多く、特別条項付き協定で対処することになじまない事業又は業務をいうこと。

(ロ)「公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務」とは、公益事業における業務であって、当該事業の安全な遂行等を確保する上で集中的な作業が必要とされ、かつ、その結果3箇月以内の期間における時間外労働が限度時間の範囲に収まらない場合が多く、特別条項付き協定で対処することになじまない業務をいうこと。

(ハ)「季節的要因等により業務活動若しくは業務量の変動が著しい事業又は業務」及び「公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務」は、平成11年1月29日付け基発第叫号により指定されていること。

3 限度基準の遵守

 労使当事者は、時間外労働協定を締結する際には、その内容が限度基準に適合したものとなるようにしなければならないものとされたものであること。

4 助言及び指導
 
 労働基準監督署長は、限度基準に適合しない時間外労働協定の届出がされた場合にその是正を求める等限度基準に関し、労使当事者に対し、必要な助言及び指導を行うことができるものであること。

5 届出様式

 女性の時間外労働に関する規制が平成11年4月1日以後解消されること、1年単位の変形労働時間制により労働する労働者及び一定の子の養育又は家族の介護を行う女性労働者に係る時間外労働協定で定める労働時間の延長の限度について他の労働者とは異なる基準が定められたことを踏まえ、則様式第9号、第9号の2及び第9号の3について、労働者数の欄の男女の別をなくすこと、1年単位の変形労働時間制により労働する労働者及び一定の子の養育又は家族の介護を行う女性労働者についての記載欄を他の労働者と区別することを内容とする改正を行ったものであること。

6 適用期日及び経過措置

 限度基準は、平成11年4月1日から適用され、同日以後に時間外労働協定を締結する場合及び同日以前に締結された時間外労働協定を同日以後に更新する場合に適用されるものであること。
 また、整備省令の施行の日(以下「施行日」という。)前に締結された時間外労働協定を施行日以後に届け出る場合は、整備省令による改正前の様式によることができるものであること。






第7 特定労働者の時間外労働(法第36条及び法第133条関係)

1 趣旨

 女性の時間外労働に関する規定が平成11年4月1日以後削除され適用されなくなることにかんがみ、改正前の当該規定が対象としていた労働者であって子の養育又は家族の介護を行うもの(以下「特定労働者」という。)の職業生活の著しい変化がその家庭生活に及ぼす影響を考慮して、一定の間、時間外労働を短くすることを使用者に申し出た特定労働者については、時間外労働協定で定める労働時間の延長の限度に関する基準を当該特定労働者以外の者に係る基準よりも短いものとして定めるものであること。

2 特定労働者の範囲

 特定労働者とは、満18歳以上の女性のうち雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律(平成9年法律第92号)第4条の規定による改正前の法第64条の2第4項の規定に基づく雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令(平成10年労働省令第7号)第2条の規定による改正前の女性労働基準規則(昭和61年労働省令第3号)第3条に定める者に該当しない者であって、次のいずれかに該当するものとしたものであること。
(1)小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者
(2)負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある次のいずれかの者を介護する労働者
イ 配偶者(いわゆる内縁関係にある配偶者を含む。以下同じ。)、父母若しくは子又は配偶者の父母

ロ 当該労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹又は孫
また、平成11年4月1日以後に雇い入れられた労働者についても、当該労働者が特定労働者に該当する限り、使用者に対する申出によって、特定労働者の限度基準が適用されるものであること。

3 特定労働者の限度基準を定める期間

 特定労働者の限度基準を定めるのは、平成11年4月1日から平成14年3月31日までの間としたものであること。
 なお、特定労働者の限度基準を定める期間において特定労働者の限度基準を踏まえて締結した時間外労働協定の有効期間の末日が平成14年4月1日以後の日となる場合においては、平成14年4月1日以後であっても当該有効期間中は使用者に申し出た特定労働者について時間外労働を短いものとすることも差し支えないものであること。

4 特定労働者の限度基準

(1)一定期間の区分及び一定期間についての延長時間の限度

 使用者は、時間外労働協定をする場合は、則第16条第1項により、1日についての延長時間及び一定期間についての延長時間について協定しなければならないこととされているが、労使当事者は、時間外労働協定において一定期間についての延長時間を定めるに当たっては、時間外労働を短くすることを使用者に申し出た特定労働者に係る一定期間は、
@ 法別表第1第1号から第5号までに掲げる事業においては、1週間及び1年間
A 法別表第1第13号及び第14号に掲げる事業においては、2週間及び1年間
B 上記@及びAに該当しない事業(法別表第1第6号(林業を除く。)及び第7号
に掲げる事業を除く。)においては、4週間及び1年間としなければならないこととしたものであること。

 この場合において、当該特定労働者に係る一定期間についての延長時間は、当該特定労働者が従事する特定労働者の限度基準の表の上欄に掲げる事業の区分に応じ、それぞれ同表の中欄に掲げる期間について同表の下欄に掲げる限度時間を超えないものとしなければならないこととしたものであること。
 なお、上記A及びBに該当する事業において、次のいずれかに該当する時間外労働協定が締結されている場合は、限度時間の範囲内で協定されたものとして取り扱うこと。

イ 4週間(上記Aに該当する事業にあっては2週間。ロにおいて同じ。)を上回る一定期間について、36時間(上記Aに該当する事業にあっては12時間。ロにおいて同じ。)又はこれを下回る時間を延長時間として定めている時間外労働協定

ロ 4週間を下回る一定期間について、次の時間を延長時間として定めている時間外労働協定
(イ)当該一定期間が週を単位とする場合は、9時間(上記Aに該当する事業にあっては6時間)に当該週数を乗じて得た時間又はこれを下回る時間
に)当該一定期間が週を単位としない場合は、36時間に当該期間の日数を乗じて得た時間を28(上記Aに該当する事業にあっては14)で除して得た時間又はこれを下回る時間

(2)申出の方法及び手続

イ 使用者に対する申出の方法及び手続は、時間外労働協定又は就業規則等において定めるものであること。
口 特定労働者に係る時間外労働協定の適用に当たっては、使用者がこれに対応するためには一定の期間が必要となることも想定されることから、必要かつ合理的な範囲において申出から一定期間経過後に適用することとすることも差し支えないものであること。
ハ 特定労働者が、当初特定労働者に係る時間外労働協定の適用を申し出た期間の途中で当該申出を撤回することができることとすることも差し支えないものであるこ
と。

(3)一定期間の途中で申出がされた場合の延長時間の限度

 特定労働者が、時間外労働協定で定める一定期間の途中で、時間外労働を短くすることを使用者に申し出た場合であっても、特定労働者に係る時間外労働協定が適用されるものであること。
 この場合において、申出以後当該一定期間の末日までの間に当該特定労働者に時間外労働をさせることができる時間は、使用者に申し出た特定労働者に係る当該一定期間についての延長時間として定められている時間から、当該一定期間において既に行われた時間外労働時間を減じて得た時間となるものであること。
 なお、申出時点において、当該特定労働者が、既に、使用者に申し出た特定労働者に係る当該一定期間についての延長時間として定められている時間を超えて時間外労働をしていた場合は、申出以後当該一定期間の末日までの間は、当該特定労働者に時間外労働をさせることができないものであること。

5 特定労働者の限度基準の遵守

 労使当事者は、時間外労働協定を締結する際には、その内容が特定労働者の限度基準に適合したものとなるようにしなければならないものとされたものであること。
 なお、時間外労働協定の締結時においては、特定労働者から時間外労働を短くすることの申出がない場合であっても、その後に申出がされることも想定されることから、あらかじめ特定労働者に係る時間外労働協定を締結しておくことが適切であること。

6 助言及び指導

  労働基準監督署長は、特定労働者の限度基準に適合しない時間外労働協定の届出がされた場合にその是正を求める等特定労働者の限度基準に関し、労使当事者に対し、必要
な助言及び指導を行うことができるものであること。

7 適用期日

 特定労働者の限度基準は、平成11年4月1日から適用され、同日以後に時間外労働協定を締結する場合及び同日以前に締結された時間外労働協定を同日以後に更新する場合に適用されるものであること。






第8 裁量労働制(法第38条の4関係)

1 趣旨

 経済社会の構造変化や労働者の就業意識の変化等が進む中で、活力ある経済社会を実現していくためには、事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮し得る環境づくりをすることが必要である。また、労働者の側にも、自らの知識、技術や創造的な能力をいかし、仕事の進め方や時間配分に関し主体性をもって働きたいという意識が高まっており、こうした状況に対応した新たな働き方のルールを設定することが重要である。
 このような考え方から、事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社等の中枢部門において企画、立案、調査及び分析を行う事務系労働者であって、業務の遂行手段や時間配分を自らの裁量で決定し使用者から具体的な指示を受けない者を対象とする新たな裁量労働制を設けることとしたものであること。

2 対象事業場

 事業運営上の重要な決定が行われる事業場とは、企業の事業運営に関して重要な決定が行われる事業場であること。
 具体的には、本社、本店のほかに、常駐する役員の統括管理の下に事業運営上の重要な決定の一部を行う権限を分掌する地域本社、事業本部、地域を統括する支社・支店などをいうものであること。

3 労使委員会

 労使委員会は、労働条件に関する事項を調査審議等することを目的として、上記2の事業場に設置するものであること。
 当該委員会については、当該事業場の労働者を代表する者(過半数労働組合(過半数労働組合がない場合は事業場の労働者の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という。))に任期を定めて指名され、事業場の労働者の過半数の信任を得ている者)が委員の半数以上であること、設置について労働基準監督署長に届け出ていること、議事録を作成、保存するとともに、労働者に周知していること等の要件を満たす必要があるものであること。

4 決議事項

 労使委員会で決議することが必要な事項は以下のとおりであること。
@ 企画、立案、調査及び分析の業務であって遂行手段等に関し使用者が具体的指示をしないこととする業務(対象業務)
A 対象労働者の具体的な範囲
B 労働時間として算定される時間
C 対象労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置
D 対象労働者からの苦情の処理に関する措置
E 対象労働者の同意を得なければならないこと及び同意をしなかった労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこと
F @からEまでに掲げるもののほか、命令で定める事項
なお、労働大臣は、対象業務、対象労働者の具体的範囲等について指針を告示で定め、これを公表するものとされているものであること。

5 対象業務

 対象業務は、事業の運営についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること。したがって、いわゆるホワイトカラーの業務すべてがこれに該当することとなるものではないものであること。

6 定期報告

 使用者は、定期的に対象労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況等を労働基準監督署長に報告しなければならないものであること。

7 その他

 関連する省令、告示については、制定後、おって通知すること。





第9 年次有給休暇(法第39条、法第72条及び法第135条関係)

1 趣旨

 近年の労働移動の増加に対応して、勤続年数の長短により付与日数に大きな差が生じないようにするとともに、中小企業における労働者の定着状況等を考慮し、付与日数を2年6箇月を超える継続勤務期間1年ごとに2日ずつ増加させた日数としたものであること。
 これに伴い、法第39条第3項の適用を受ける労働者及び法第72条の特例の適用を受ける未成年者についても付与日数を引き上げたものであること。

2 経過措置

(1)付与日数の引上げについては、経過措置が講じられており、平成11年度、平成12年度及び平成13年度以降における付与日数が、それぞれ異なる場合があるものであること。
 なお、法第72条の特例の適用を受ける未成年者については、この経過措置は講じられていないものであること。

(2)付与日数の引上げは、平成11年4月1日以後の最初の基準日から適用されるものであること。
 なお、上記(1)の経過措置に基づく付与日数を付与した場合であっても、当該付与をした日から1年間は更なる付与は必要ないものであること。

(3)労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律(平成5年法律第79号)附則第3条第1項等により講じられた経過措置と同様の措置が平成11年4月1日以降も講じられることから、改正法の施行により従来の基準日が変更されることとなる労働者は存在しないものであること。





第10 労働時間の特例に係る規定の整備(則第25条の2第2項、則第25条の3、則第67条及び則第68条関係)


1 規模10人未満の商業、サービス業等の特例関係

(1)1箇月単位の変形労働時間制等の導入

 労使協定の締結によっても1箇月単位の変形労働時間制を導入できることとした法第32条の2との均衡などから、規模10人未満の商業、サービス業等(以下「小規模商業等」という。)に係る特例事業場に関しても、1箇月単位の変形労働時間制の導入要件に、労使協定(以下第10において「特例変形に係る協定」という。)の締結及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(平成4年法律第90号。以下「時短促進法」という。)第7条の委員会による決議(以下「特例変形に係る決議」という。)を加えることとしたものであること。

(2)特例変形に係る協定に係る規定の整備

イ 労働時間、休日の周知

 使用者は、就業規則等(就業規則その他これに準ずるもの、特例変形に係る協定及び小規模商業等に係る特例事業場においてフレックスタイム制により労働者を労働させる場合(則第25条の2第3項)の書面による協定(以下「特例フレックスに係る協定」という。)をいう。)により1箇月単位の変形労働時間制又はフレックスタイム制をとることを定めた場合には、これを労働者に周知させるものとすることとしたものであること。

ロ 起算日

 使用者は、1箇月単位の変形労働時間制及びフレックスタイム制により労働者を労働させる場合には、就業規則その他これに準ずるもの、特例変形に係る協定(特例変形に係る決議を含む。以下ハにおいて同じ。)又は特例フレックスに係る協定において、則第25条の2第2項又は第3項において規定する期間の起算日を明らかにするものとすることとしたものであること。

ハ 有効期間

 特例変形に係る協定には、有効期間の定めをするものとすることとしたものであること。

二 育児を行う者等に対する配慮

 使用者は、1箇月単位の変形労働時間制により労働者を労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間が確保できるような配慮をしなければならないこととしたものであること。

ホ 協定等の届出

 使用者は、様式第3号の2により、1箇月単位の変形労働時間制に係る協定を所轄労働基準監督署長に届け出るものとすることとしたものであること。


2 中等教育学校の教育職員に対する特例等に係る規定の整備

(1)趣旨

 学校教育法等の一部を改正する法律(平成10年法律第101号)により、中学校及び高等学校の教育課程を一貫して行う中等教育学校が、平成11年4月から新たに設けられることとなった。同学校の課程は、中学校及び高等学校の課程に準ずるため、その教育職員の勤務時間も中学校及び高等学校の教育職員と同じものとなる。
 このため、中等教育学校の教育職員について、教育職員の労働時間の特例に追加することとしたものであること。

(2)中等教育学校の教育職員に関する特例の追加

 中等教育学校の教育職員について、法第32条の規定にかかわらず、1週間について44時間、1日について8時間まで労働させることができることとしたとともに、1箇月単位の変形労働時間制を適用することとしたものであること。

(3)1箇月単位の変形労働時間制の導入要件の改正等

 労使協定の締結によっても1箇月単位の変形労働時間制を導入できることとした法第32条の2との均衡などから、教育職員に関しても、労使協定の締結及び特例に係る決議を制度の導入要件に加えることとしたほか、当該労使協定の届出規定の整備等所要の規定の整備を行ったものであること。

(4)協定の届出

 使用者は、様式第3号の2により、1箇月単位の変形労働時間制に係る協定を所轄労働基準監督署長に届け出るものとすることとしたものであること。





第11 就業規則(法第89条関係)

 就業規則において規律する内容が複雑化しており、一の規則に編てつすることが困難になっていることから、別規則に係る制限を撤廃したものであること。




第12 法令等の周知義務(法第106条第1項及び時報促進法第7条関係)

1 趣旨

 労働条件の明確化を図るため、法に基づく労使協定等についても、それが事業場における法の具体的な適用の在り方を規定するものであることから、その内容についても労働者に周知することを義務づけることとしたものであること。また、法及び法に基づく命令の要旨、就業規則、法に基づく労使協定等の内容が個々の労働者に確実に周知されるようにするため、その周知方法を明確化したものであること。

2 周知の対象

 使用者が労働者に周知しなければならないものとして、法に基づく労使協定及び法第38条の4第1項の委員会の決議並びに時短促進法第7条に基づく労働時間短縮推進委員会の決議が加えられたものであること。ただし、法第38条の4第1項の委員会の決議についての周知についての規定は、平成12年4月1日から施行されるものであること。

3 周知方法(則第52条の2関係)

(1)周知は、以下のいずれかの方法により行わねばならないものであること。

イ 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。

口 書面を労働者に交付すること。
  「書面」には、印刷物及び複写した書面も含まれるものであること。

ハ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
 この方法によって周知を行う場合には、法令等の内容を磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、当該記録の内容を電子的データとして取り出し常時確認できるよう、各作業場にパーソナルコンピューター等の機器を設置し、かつ、労働者に当該機器の操作の権限を与えるとともに、その操作の方法を労働者に周知させることにより、労働者が必要なときに容易に当該記録を確認できるようにすることとすること。

(2)使用者は、就業規則の変更等周知させるべき事項の内容に変更があった場合にも、当該変更後の内容を労働者に周知させなければならないものであること。





第13 過半数代表者(則第6条の2、則第25条の2第2項及び則第67条第2項並びに労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法施行規則第1条関係)

1 趣旨

 過半数代表者の要件を明確にしてその選出方法及び職制上の地位等を適正なものとし、併せて過半数代表者の不利益取扱いをしないようにしなければならないこととしたものであること。

2 過半数代表者の要件

次のいずれの要件も満たすものであること。
(1)法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
(2)法に基づく労使協定の締結当事者、就業規則の作成・変更の際に使用者から意見を聴取される者等を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であり、使用者の意向によって選出された者ではないこと。

 なお、法第18条第2項、法第24条第1項ただし書、法第39条第5項及び第6項ただし書並びに法第90条第1項に規定する過半数代表者については、当該事業場に上記(1)に該当する労働者がいない場合(法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者のみの事業場である場合)には、上記(2)の要件を満たすことで足りるものであること。

3 過半数代表者の不利益取扱い

 過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、解雇、賃金の減額、降格等労働条件について不利益取扱いをしないようにしなければならないこととしたものであること。
「過半数代表者として正当な行為」には、法に基づく労使協定の締結の拒否、1年単位の変形労働時間制の労働日ごとの労働時間についての不同意等も含まれるものであること。





第14 その他

1 適用事業の範囲(法第116条及び法別表第1関係)

 社会経済の変化の中で新たな事業を適用事業として追加することとすると、一時的にも適用漏れが生ずるおそれがあり、また、号別に適用事業を区分して適用する規定が従来に比べて少なくなったこと等の理由により、適用事業の範囲を号別に列記する方式を廃止したものであること。
 なお、法別表第1に掲げた各号の事業は、改正法による改正前の労働基準法第8条の各号(第16号及び第17号を除く。)と同一のものであること。

2 文言整理(「退職」及び「解雇」関係)(則第53条、則第56条及び則様式第19号関係)「退職」とは、事由の如何を問わず労働者が離職することであり、「解雇」とは、退職の事由であることとして、文言を整理したものであること。

3 関係政令の整備(整備政令関係)

 整備政令による改正は、改正法の施行に伴う整備であり、いずれもその内容に変更はないものであること。






別 紙

1.所定労働時間が法令労働時間を下回る事業場において、当該所定労働時間を超えて延長することができる時間を一定期間についての延長時間として協定している場合
(1)週休2日制(完全週休2日制に限らない。以下同じ。)の事業場

イ 休日における労働時間を含むとき

一定期間の法定超え時間外労働時間=
一定期間の所定超え時間外労働時間−【(40時間−完全週休2日の週の所定労働時間)×一定期間(週単位で表示)一定期間内の土、日曜(相当)日で協定上休日労働を行う可能性のある日の数×8時間一定期間内の土曜(相当)日の数×8時間】

ロ 休日における労働時間を含まないとき

一定期間の法定超え時間外労働時間=
一定期間の所定超え時間外労働時間−【(40時間−完全週休2日の週の所定労働時間)×一定期間(週単位で表示)一定期間内の土曜(相当)日の数×8時間】


(2)週休1日制の事業場

イ 休日における労働時間を含むとき

一定期間の法定超え時間外労働時間=
一定期間の所定超え時間外労働時間−【(40時間−平均週所定労働時間)×一定期間(週単位で表示)一定期間内の土、日曜(相当)日で協定上休日労働を行う可能性のある日の数×8時間】


ロ 休日における労働時間を含まないとき

一定期間の法定超え時間外労働時間=
一定期間の所定超え時間外労働時間−(40時間−平均週所定労働時間)×一定期間(週単位で表示)


2.法定労働時間を超えて延長することができる時間を一定期間についての延長時間としているが、当該一定期間についての延長時間に休日における労働時間を含めて協定している場合

一定期間の法定超え時間外労働時間=
一定期間の所定超え時間外労働時間−一定期間内の当該事業場の休日で協定上休日労働を行う可能性のある日の数×8時間


(注)上記いずれの概算式についても、法第40条の特例業種に該当する事業場は、40時間を46時間とすること。