発泡プラスチック系断熱材による火災災害
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栃木県の多目的ホール建築工事の発泡プラスチック系断熱材による火災災害 1 発生日時 平成7年12月7日(木)午前10時55分頃 2 発生場所 栃木県 3 発注者名及び発注形態 (1)発注者 町 (2)発注形態 町は工事全体を駆体工事、設備工事、電気工事に分け、それぞれ別の 共同企業体に発注していた。 4 工事内容 多目的ホール(鉄筋コンクリート3階建て)の建設工事 5 被災状況死亡4名 6 災害発生状況 多目的ホールの集会場部分(鉄筋コンクリート造3階建て)建築工事において、駆体 工事元方事業場の2次下請の労働者が、2階天井裏に点検用通路(延長10m)を取り 付けるにあたり、ボルト位置を変更するため、既設ボルトをアセチレン溶接機で溶断す る作業を行っていた。 その溶断の火花が天井裏にすでに施工してあった断熱材のフェノールを主たる成分と する発泡プラスチック系断熱材(現場で発泡させ施工したもの)に引火し火災となった。 (10時55分頃出火) そのため3階で金網取り付け作業を行っていた駆体工事元方事業場の2次下請の労働 者2名と、3階で作業していた設備工事元方事業場の1次下請の労働者2名が被災した もの。なお、出火後30分で鎮火した。 同種災害の発生状況 再発防止対策 労働省は、平成8年1月29日、上記の災害について建設業関係18団体に対して、下記 の再発防止対策の徹底を要請した。 記 建設現場における発泡プラスチック系断熱材による 火災災害の防止の徹底について 建設業における労働災害の防止については、平素より特段の御理解と御協力をいただき 厚くお礼申し上げます。 さて、標記については、昨年12月7日に栃木県の多目的ホール建築工事現場において、 躯体工事の関係請負人がアセチレン溶接装置を用いてボルトを溶断中、火花が発泡プラス チック系断熱材に引火し、当該断熱材が急速に燃焼、火災が発生し、躯体工事及び設備工 事を施工していた関係請負人の労働者4名が死亡するという重大災害が発生したところで あります。<前記の事例参照> 今回の災害原因については、灘燃性が高いと表示されているフェノールを主成分とする 断熱材を使用していたにもかかわらず、これに引火したことにより、火災が発生したもの と推定されております。 また、過去10年間において、建設現場におけるウレタンフォーム等発泡プラスチック 系断熱材の急速な燃焼による災害が別添2のとおり発生しており、このためにこれらの災 害の再発防止対策にー層の徹底を期する必要があります。 ついては、下記事項について会員事業場へ周知徹底を図られるようお願いします。 なお、社団法人建築業協会及び別記(省略)の各団体に対しても、同様の要請を行って いるので申し添えます。 発泡プラスッチック系断熱材の性質について 記 1 工事実施計画における火災防止対策について 建設工事の実施計画を策定するに当たっては、断熱材の施工にあっては発泡プラスチ ック系断熱材を使用する作業の有無、また、既存の建築物等の改修工事等にあっては作 業箇所における断熱材の使用の有無について確認し、当該作業等がある場合には、使用 する、又は使用されている断熱材の種類について確認するとともに、当該断熱材の種類 及び燃焼性に留意した適切な火気管理計画を策定すること。 なお、別紙のとおり、発泡プラスチック系断熱材は難燃性等の表示にかかわらず急速 に燃焼が拡がる危険が考えられることに特に留意すること。 特に新築工事において発泡プラスチック系断熱材を使用する場合は、当該作業実施後 は当該場所での溶接・溶断等火気を使用する作業を行わない作業計画を策定すること。 2 施工における火災防止対策について 火気管理の徹底のため、次の対策をはじめとする必要な対策を講じること。 (1)元方事業者等統括管理義務者の実施すべき事項について ア 使用する断熱材の種類及び燃焼性について確認を行うこと。 また、改修工事等にあっては、使用されている断熱材の種類及び燃焼性について 確認を行うこと。 イ 発泡プラスチック系断熱材を使用する、又は使用されていることを確認した場合 には、当該場所に、その旨と火気の使用を厳禁する旨の表示を行うこと。 ウ 当該作業場所に立ち入ることとなる関係請負人のすべての労働者に対し、新規入 場時教育等において、発泡プラスチック系断熱材を使用する作業及び使用されてい る場所並びにその危険性について周知するための教育の実施状況の確認を行うこと。 また、必要に応じて自ら教育を実施すること。 エ 発泡プラスチック系断熱材を使用する作業又は使用されている場所における作業 を実施させるに当たっては、火気管理を含む作業計画を策定するとともに、関係請 負人にその内容を周知すること。 オ 発泡プラスチック系断熱材を使用する場合は、当該作業中及び作業実施後におい て、当該場所において火気を使用することとならない作業計画を策定し、その徹底 を図ること。 力 発泡プラスチック系断熱材を使用している場所でやむを得ず火気を使用する作業 を行う場合には、発泡プラスチック系断熱材を使用している場所を不燃性のボード、 シート等で遮蔽するとともに、あらかじめ適切な消火器を配置する等消火のための 対策を講じさせること。 (2)発泡プラスチック系断熱材を使用する作業又は使用している場所において火気を取 り扱う作業を行う関係請負人の実施すべき事項について ア 作業に従事する労働者に発泡プラスチック系断熱材の危険性、火気管理対策等に ついて十分な教育を実施すること。また、その結果について元方事業者等に報告す ること。 イ 作業を行うに当たっては、火気管理等を含む作業計画を策定すること。当該作業 計画の選定に当たっては、元方事業場等に報告し、必要な調整を行うこと。 ウ 発泡プラスチック系断熱材を使用する作業及び使用されている場所で火気を使用 する作業を行う場合には、当該作業を指揮する者を定めるとともに、その者に直接 作業を指揮させること。 エ 発泡プラスチック系断熱材を保管している場所には、仮置場所を含め、その旨及 び火気の使用を厳禁する旨の表示を行うこと。 オ 現場の整理整頓を行い、原材料等を放置しないこと。 発泡プラスチック系断熱材の性質について ページの先頭に戻ります 建設工事現場で使用される発泡プラスチック系断熱材については、ウレタンフォーム等 種々の材料が使用されているが、日本ウレタン工業協会によれば、一般的には下表の通り 大きく5種類に分類されている。 ただし、硬質ウレタンフォームとフェノールフォームは混合した原料で使用されること が多く、配合率により連続的につながっているものである。
発泡プラスチック系断熱材の種類等
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種 類 主原料 製造方法 最高便用温度
ポリスチレンフォーム ポリスチレン ビーズを蒸気加熱して発泡成形 70℃
押出発泡ポリスチレン ポリスチレン 押出し連続発泡成形 70℃
硬質ウレタンフォーム ポリイソシアネ−ト
及びポリオール 液体原料より直接車合 100℃
高発泡ポリエチレン ポリエチレン 押出し又は熱分解による発泡成形 70℃
フェノールフオーム フェノール樹脂 液体又は粉体原料により発泡硬化同時成形 150℃
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また、これらについては、それぞれの製品ごとに、易燃性のもの、昭和51年建設省告 示第1231号第1第2号に規定する灘燃材料(以下「建設省告示規定する灘燃材料」という。) に該当するもの及び日本工業規格SA1321に基づく灘燃性2級、3級に区分されているも の等がある。 今回火災を発生させた現場において使用されていた材料は、フェノールフォームを主成 分とする発泡プラスチック系断熱材であり、建設省告示に規定する灘燃材料に相当する性 能を持ち、日本工業規格SA1321に基づく難燃性3級に区分されていたものである。 しかし、このように灘燃性の表示がされているものであっても、条件によっては溶接火 花などにより着火する可能性があり、また、着火した後は他の発泡プラスチック系断熱材 と同様に急速に燃焼が拡がる危険性を有していることから、火気管理の徹底等火災防止対 策が不可欠である。 建設現場におけるウレタンフオーム等発泡プラスチック系断熱材の火災による 災害発生状況(死亡災害) ページの先頭に戻ります −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 発生年月日 発生地 死亡者数(人) 概要 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平成 6年11月12日 福岡 1 RC3階建倉庫解体作業において、1階倉庫内の鋼製棚を アセチレンガスで溶断中、火粉がコンクリート壁に吹き付 けられた断熱材(ウレタンフオーム)に引火し、逃げ遅れ た。 平成 6年 4月26日 京都 2 競馬場の内装改修工事において、天井ダクトの配管作業中 吹き付けてあった保温材(ウレタン)から出火し付近が炎 上した。このため作業員1名がCO中毒で、1名が熱傷で それぞれ死亡した。 平成 6年 4月 2日 秋田 2 地下ビット内において床のはつり作業及び清掃作業中、ビ ットの天井断熱材が燃えだし、CO中毒で死亡した。 平成 6年 3月31日 北海道 2 増築部分の9階床下ビット内の結露防止のためウレタンフ オームの吹き付け作業を行い、昼食のためビットから出よ うとしたところ、爆発が起こった。 平成 2年 6月23日 北海道 1 工事現場の覆工型枠内側の鉄筋に木枠の変形防止のため使 用するセパレーター(ボルト)をアーク溶接により取付中 断熱材(硬質ウレタンフオーム)に引火し火災となり、発 生したガスにより被災した。 平成 2年 6月18日 北海道 1 被災者は温泉新築工事現場において、給湯に係る工事中、 同地下1階において滞留していたと思われる可燃性ガス (メタン)に何らかの火源により着火し、同時に天井に貼 つけていたウレタンフオームにも燃焼し被したもの。 昭和63年 5月25日 北海道 1 水産加工場増築現場の2階でエレベータ設置のためアーク 溶接をしていたところ、同じ2階フロアーで床面の防水工 事に使用していた一液型ウレタン系プライマーに火花が引 火し、火災となり逃げ遅れ焼死した。 昭和61年11月18日 北海道 2 骨造2階建の建築工事現場において、溶接の火花がボリウ レタンフォーム(断熱材)に引火し火災が発生し2階フロ アーで作業中の被災者は逃げ遅れてCO中毒により死亡し た。 昭和60年 8月10日 北海道 1 鉄筋のガス溶断中、飛散した火花が断熱材(硬質ウレタン フオーム)に引火して火災が発生し、CO中毒になった。 昭和60年 6月26日 東京 2 マンション新築工事において、被災者2人で1階床下に入 ってポリウレタン樹脂吹付けによる断熱工事中、酸欠と発 火燃焼ガスにより中毒及び全身熱傷になった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 死亡者合計15人