ウレタンフォーム吹きつけによる断熱工事中の酸欠事故
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ウレタンフォーム吹きつけの断熱工事中に
発泡剤として使用するフロンガス(代替フロンガス)が
空気と置き換わって

酸欠事故が発生!




mokuji

■災害事例3例
硬質ウレタンフォームの吹きつけによる断熱工事とは?
■再発防止対策(労働省安全衛生部長の関係業界への要請)

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発生年月日

都道府県

被災状況

発生状況

昭和60年6月26日 東京 死亡2名  マンション新築工事において、2名の労働者が1階床下に入ってウレタンフオーム吹付けによる断熱工事を行っていたところ、発泡剤として使用していたフロンガスが空気と置換して生じた酸素欠乏空気を吸入して酸素欠乏症となった。その後、ウレタンが燃焼し、燃焼ガスによる中毒及び全身熱傷になった。
昭和63年5月31日 北海道 軽傷(休業1日1名)  公衆浴場サウナ室の天井裏において、1名の労働者がウレタンフオーム吹付けによる断熱工事を行っていたところ、発泡剤として使用していたフロンガスが空気と置換して生じた酸素欠乏空気を吸入し、軽い酸素欠乏症となった。
平成9年9月9日 北海道 死亡2名  木造家屋新築工事において、1名の労働者が1階床下のウレタンフオーム吹付けによる断熱工事を行っていたところ、発泡剤として使用していたフロンガス及び代替フロンガスが空気と置換して生じた酸素欠乏空気を吸入し、酸素欠乏症となって倒れた。
 また、屋外で段取りと監視を行っていた1名の労働者が、救出に入って同様に被災した。
 本工事においては、発泡剤として、あらかじめ原料に混合されていた代替フロンのほか、別にボンベからフロンを供給していた。被災者が倒れた後、ミキシングガンがONの状態のままであったために、ウレタンフォームが生成され続け、原料がなくなった後は、フロンガスのみが噴出し続けて床下に充満した。また、被災者が救出された後、生成され続けて大きな塊となっていたウレタンフオームから出火し、火災となった。
 なお、災害発生当日、現場に送気マスクを持参しており、作業開始前の打合せにおいて、現場代理人からマスクの着用について指示を受けていたにもかかわらず、被災者は送気マスクを着用していなかった。

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硬質ウレタンフォームの吹きつけによる断熱工事について

1.概要

 吹付け硬質ウレタンフォームは、シームレスの断熱層が形成できること、断熱性能が優れていること等から、近年断熱材の市場で3割以上のシェアを占め、今後も増加の傾向を示している。
 硬質ウレタンフォームの吹付けによる断熱工事は、現場において原料を化学反応させてウレタンフォームを生成するもので、吹付けに使用するミキシングガン(スプレーガン)に2種類の原料を送り込み、当該ミキシングガン内部で混合して吹き付けると、吹き付けられた対象物上で化学反応と発泡が進行し、硬質ウレタンフォームが形成される。また、発泡中に対象物と接着し、発泡終了後は強力な接着力を発揮する。
 発泡剤には、フロン又は代替フロン(以下「フロン等」という。)が用いられているため、床下、天井裏その他の通風が不十分な場所において施工すると、フロン等が空気と置換して、酸素欠乏状態になるおそれがある。

2.原料

 硬質ウレタンフォームの原料は次のとおりである。これらの原料のうち、(3)から(7)までは、あらかじめ(1)と混合して販売されるのが一般的である。

(1)ポリオール(ポリイソシアネートと反応してウレタン樹脂の骨格を形成する。)

  R[(CH2−CHCH3O)n−CH2−CHCH3−OH]m

(2)ポリイソシアネート

  OCN-C6H4−(CH2−C6H3−NCO)n−CH2−C6H4−NCO 99%以上(ポリメチレンポリフェニルボリイソシアネート)

(3)発泡剤(ウレタン反応の発熱によりウレタン中で蒸発しフォームを形成する。)

  CH3CC12F(ジクロロフルオロエタン、通称:HCFC-141b)

(4)整泡剤(泡を細かく、均一にする。)

  シリコン系界面活性剤

(5)難燃剤(ウレタンに難燃性を付与する。)

(6)触媒

(7)その他(必要に応じて加える。)
  着色剤、充てん剤、架橋剤等

3.硬質ウレタンフォームの生成

 現場における硬質ウレタンフォームの生成フローを次に示す。原料は、それぞれホースを通してミキシングガンまで送られ、そこで初めて混合される。作業者はミキシングガンを操作して、混合された原料を対象物に吹き付ける。




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再発防止対策


ウレタンフォーム工業会
(以下、同趣旨)
日本ウレタン断熱協会
建設業労働災害防止協会 あて

H10.10.12付労働省労働基準局安全衛生部長名(要請)

硬質ウレタンフォームの吹付けによる断熱工事における
酸素欠乏症の防止について



 安全衛生行政の推進につきましては、平素から格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、貴会におかれましては、ウレタンフォームの取扱い等に係る安全衛生管理について、かねてより十分に御配意いただいていることと存じますが、昨年9月に北海道において、標記の作業中に発泡剤として使用していたフロンガス及び代替フロンガスが空気と置換することにより酸素欠乏状態となり、2名の労働者が死亡する災害が発生いたしました。また、それ以前にも2件の同種災害が発生しております(別添参照)。
 つきましては、標記の工事を行う事業場における、同種の災害の再発防止を図るため、会員事業場において作成される硬質ウレタンフォーム原料の取扱い説明書、パンフレット等に、平成8年1月29日付け基発第42号の2「建設現場における発泡プラスチック系断熱材による火災災害の防止の徹底について」により労働省労働基準局長より要請いたしました火災災害防止対策に関する注意事項と併せて、下記の注意事項が明記されるよう、会員事業場に対して周知徹底していただきたくお願い申し上げます。
 なお、下記2の施工上の注意事項につきましては、日本ウレタン断熱協会及び建設業労働災害防止協会に対しても、同趣旨の要請を行っていますので申し添えます。


1 酸素欠乏の危険性

 発泡剤としてフロンガス又は代替フロンガスが含まれているため、床下、天井裏その他の通風が不十分な場所で作業を行うとこれらのガスが空気と置換することにより酸素欠乏症にかかるおそれがあること。

2 通風が不十分な場所において施工する場合に講ずべき措置

 床下、天井裏その他の通風が不十分な場所において作業を行う場合には、次に掲げる措置を講じること。

(1)作業指揮者の選任
 酸素欠乏症の防止について必要な知識を有する者のうちから作業指揮者を選任し、その者に作業を直接指揮させること。

(2)換気の実施
 作業場所の酸素濃度を18%以上に保つよう換気を行うこと。ただし、ウレタンフォームの急速な燃焼性にかんがみ、換気には純酸素を使用してはならないことに特に留意すること。

(3)送気マスク等の使用
 作業の性質上、上記2の換気を行うことが困難な場合には、当該作業に従事する労働者に送気マスク等を使用させること。

(4)安全衛生教育の実施
 当該作業に従事する労働者に対し、酸素欠乏症の危険性、安全な作業方法、事故発生時の措置等について安全衛生教育を行うこと。

(5)立入禁止等
 作業場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示すること。

(6)人員の点検等
 作業場所への入退場に際して、人員の点検を行うこと。
 また、異常発生時に、直ちに作業場所と外部との連絡が取れるような措置を講じること。

(7)緊急時の措置
 酸素欠乏による事故が発生した場合、救出作業に従事する労働者には、送気マスク等を使用させること。