放射線被ばく事故が続発
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手指への被ばくに注意!
放射線被ばく事故が続発!
−−非破壊検査、製造業1、医療機関2(平成10年上半期)
■事例1
■その他の被ばく災害事例
■再発防止のための対策




事例1
誤認して露出した放射線源に触れ、
10日後手指に感覚異常(放射線皮膚障害)




非破壊検査事業場における被ばく事故

1 発生日時

  平成10年6月30日(火) 午後2時25分頃

2 発生事業場及び場所
 (1)事業場   A非破壊検査(株)
 (2)発生場所 B工業(株)工場構内(長崎県)

3 被災状況

 休業者1名(放射線皮膚障害)

4 事故の概要

(1)B工業(株)工場構内の放射線装置室で、A非破壊検査(株)の作業者がガンマ線照射装置(コバルト60 259ギガベクレル装備)を使用して圧力容器の放射線検査を2名で行い、1カ所の撮影を終えて放射線源を線源容器に収納しようとしたところ、放射線源が伝送管内で放射線源送出し装置のワイヤレリーズから外れ、遠隔操作による収納が不可能になった。

(2)伝送管内の放射線源を線源容器に戻すため、線源容器から取り外した放射線源送出し装置のワイヤレリーズで放射線源を伝送管から線源容器に押し戻そうとしたところ、復旧作業の途中で一且線源容器から取り外した伝送管を再度接続する際に逆向きに接続していたため、放射線源が本来の向きとは逆向きに線源容器に収納され、線源容器の放射線源送出し装置の取付位置に露出した状態となった。

(3)放射線源送出し装置を再度線源容器に接続しようとした際に、被災者が当該装置の取付部分と誤認して露出した放射線源に触れ、被ばくを受けた。

(4)被ばく後、被災者ら2名は事故があった旨会社に報告して他の2名の作業者と交代し、交代した2名の作業者が残りの復旧作業を行った。

(5)事故発生後、7月10日頃から被災者は手指の感覚異常を感じるようになり、7月16日に病院で診察を受けて火傷との診断を受けた。その後7月22日に会社にその旨報告し、7月27日に改めて診察を受けた結果、放射線による皮膚障害と診断された。なお、他の3名の作業者もこの日診察を受けたが異常は認められなかった。

(6)被災者の推定被ばく線量は、実効線量当量で約23ミリシーベルト、手指の組織線量当量で約5シーベルトであった。

(注)上記の事故の概要については現在調査中であり、確定したものではない。



災害発生時の作業手順

(1)撮影作業終了
(2)ワイヤレリーズを巻き上げ、線源を線源容器に格納しようとした。
(3)伝送管内で線源が外れ、ワイヤレリーズだけが巻き上がった。
(4)被災者が入室し、伝送管のb部分を持ち上げ、線源を線源容器へ落とし込もうとしたが、うまくいかなかった。
(5)ワイヤレリーズで線源を押し込むため、まず伝送管と操作管を取り外した。
(6)伝送管のb部分を線源容器に接続し、操作管と伝送管のa部分を接続してワイヤレリーズで線源を線源容器に納めた。この時点で伝送管が逆向きに接続されたため、線源も逆向きとなり線源容器から露出した。
(7)線源容器に操作管を接続しようとして、ワイヤレリーズとの取付け部分と誤認して線源に直接触れた。


  





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その他の事例

最近における放射線被ばく事故例


発生年月日


管轄局


業種等


発生状況

平成9年12月 神奈川 医療機関  エックス線装置を用いて透視下で治療を行うインターペンショナルラジオロジ-(IVR)に従事していた医師の手指の平成9年12月の組織線量当量が362.5ミリシーベルトに達したことが平成10年2月10日に判明した。
 平成9年4月以降の積算合計が500ミリシーベルトを超えたため、平成10年2月18日に緊急の健康診断を実施するとともに、同医師の担当業務を管理区域への立入りが少ない検査に変更する措置がとられたが、結果として平成10年1、2月分も含め3ヵ月で752ミリシーベルト、年間で900ミリシーベルト近くの被ばくを手指に受けた。
 原因としては、施術中の照射野と手指との距離を十分に保っていなかったことが考えられる。
平成10年3月17日 静岡 製造業  たばこ製造機械の量目制御装置の部品交換作業を作業者2名で測定器により放射線の漏洩を確認しながら行っていたときにアラームが鳴ったので、測定器により汚染を確認したところ、1名の左手が汚染されていた。密封線源容器の破損により機械の中にこぼれていたストロンチウム90の粉末が付着したもので、汚染は約64べクレル毎平方センチメートルであった。
 原因としては、密封線源容器の破損による放射性物質の漏洩及び放射線測定器による作業対象物の汚染検査が不十分であったことが挙げられる。破損の原因は、線源の出入用の圧縮空気の流量制御弁が取り付けられていなかったため、線源の出入時に強い衝撃を受け密封容器の溶接部に亀裂が入ったことによるものである。
平成10年6月30日 沖縄 医療機関  作業者2名で放射線治療用のアフターローデイング装置の密封線源(イリジウム192)の交換作業を遠隔操作により行っていてた際にトラブルが生じたので、作業者1名が放射線装置室に入って原因が運搬容器のロック解除の不全であることを確認し、ロックを解除した。その際、線源に付いているワイヤ一にも問題がないか確認のため運搬容器からワイヤ一及び線源付着端を引き出した。この後、もう1名の作業者が入室し、この間に生じたワイヤ一のねじれを直す際に、誤って線源に直接触れて手指に被ばくした。手指の組織線量当量は推計で約12シーベルトであった。
 原因としては、準備が不十分な状態で線源交換作業を開始したこと、測定器を持たずに線源に近づいたこと及び線源が貯蔵容器内にあるものと誤認していたことが挙げられる。
(労働安全衛生法適用外)
平成10年6月30日 長崎 被破壊検査 冒頭で紹介した災害事例に同じ。



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再発防止対策


 このように続発する放射線被ばく事故をうけて、労働省は、平成10年8月31日、以下の再発防止対策を都道府県労働基準局長に指示した。


労働省労働基準局安全衛生部長から都道府県労働基準局長あて
(平成10年8月31日付、基安発第21号)
再発防止対策に関する通達

放射線による被ばく事故防止の徹底について


 放射線障害の防止については、職業性疾病予防対策の中の最重点項目の一つとして、従来から電離放射線障害防止規則等に基づく防止対策の定着化を図ってきたところであり、その結果、放射線による被ばく事故は近年大幅に減少している。
 ところが、昨年、動力炉・核燃料開発事業団の事業場において、被ばくや汚染等の事故・トラブルが続発したほか、一般の放射線装置・放射性物質取扱事業場においても、昨年12月から本年6月にかけて労働安全衛生法の適用外の事例も含めて4件の放射線被ばく事故が発生しており、そのうち最近発生した1件では放射線被ばくによる障害(皮膚障害)も生じている(別紙参照)。また、これらの事故原因をみると、基本的な対策の欠如が認められ、きわめて遺憾である。
 ついては、各局においては、下記に留意の上、関係事業場等の指導に努め、放射線による被ばく事故防止の徹底を図られたい。
 なお、別紙に掲げる事故のうち放射線による障害を生じた事例に関しては、その重篤性にかんがみ、関係事業者団体である(社)非破壊検査振興協会に対し別添のとおり要請したので了知されたい。


1 作業主任者その他の管理監督者による放射線に係る安全衛生管理の充実

 エックス線又はガンマ線透過写真撮影作業主任者の職務の励行及びその他の管理監督者による放射線業務の安全衛生管理の徹底を図らせること。

2 非定常作業を含めた安全な作業標準の整備とその徹底

 放射線業務を安全に実施するための作業標準を整備させるとともに、関係労働者に対してこれを周知させること。
 また、放射線源の交換や事故・トラブルに伴う復旧等の非定常作業についても、想定される範囲で作業標準を作成させ、関係労働者に周知させること。

3 放射線装置の点検等の励行

 透過写真撮影用ガンマ線照射装置について定期自主検査を実施させるとともに、その他の放射線装置についても作業環境測定の機会を活用する等により遮蔽能力の確認等のため随時点検を実施させること。

4 労働衛生教育の実施

 関係労働者に対して、放射線業務に就いた際の安全衛生教育又は特別教育に加え、放射線の安全取扱いに対する労働者の認識を高めるため、必要に応じ、事故・トラブルの事例等を交えながら放射線の安全取扱いに関する教育を実施させること。
 なお、別紙の事例にみられるように、放射線源と他の物との誤認による接触事故が発生しているので、このような事故が生じないように、放射線源の形状等についても教育させること。
 また、事故・トラブル時の復旧作業については、作業時間の短縮による被ばく線量の低減を図るため、上記2の作業標準を用いて訓練を実施させること。

5 被ばく線量の測定・評価の徹底

 放射線業務従事者の被ばく線量の測定・評価を的確に実施させ、被ばく線量の高い業務に従事する者については管理区域外の業務とのローテーションにより被ばく線量の低減化を図る等により、被ばく限度を超えることのないようにさせること。特に、手指等に局部的な高被ばく線量が予測される場合には、組織線量当量の測定・評価も的確に実施させること。
 また、実効線量当量限度又は組織線量当量限度を超えて被ばくした労働者については、医師の診察又は処置(以下「診察等」という。)を受けさせること。

6 異常時の措置の徹底

 事故・トラブル等の異常事態が発生した場合には、管理監督者の指揮の下に作業標準に従って復旧作業を行わせること。
 なお、事故・トラブル時の復旧作業に際しては、サーベイメーターにより放射線源の位置を確認し、遮蔽物の設置、鉗子の使用等により作業者の被ばくを極力低減させる方法で実施させるとともに、作業者には直読式個人線量計を携行させ、作業終了後に作業中の被ばく線量を確認し記録させること。
 また、電離放射線障害防止規則第42条第1項の事故が発生した場合であって、当該事故によって受ける実効線量当量が15ミリシーベルトを超えるおそれのある区域が生じたときには、当該区域から緊急作業に従事させる者以外の労働者を退避させるとともに、当該区域(以下 「事故区域」という。)にいた労働者に診察等を受けさせること。

7 事故報告の徹底

 6の事故区域が生じたとき及び5又は6のまた書きの診察等を受けさせた結果、放射線による障害が生じており、若しくはその疑いがあり、又はその生じるおそれがある者が認められたときは、速やかにその旨を所轄労働基準監督署長に報告させること。