二酸化炭素消火設備による酸素欠乏症
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二酸化炭素消火設備による酸素欠乏症
発生年月日 |
都道府県 |
業種 |
被災状況 |
発生状況 |
原因 |
平成10年10月7日 | 東京 | その他の建築工事業 | 軽症(休業見込1〜2日)7名 | 変電所建物耐震補強工事において、火災報知器を新設するため、ダイヤモンドカッターで3階ケーブル室と階段を区切るコンクリート壁に配管用穴を開ける作業を行っていたところ、壁内に埋め込まれていた全域放出方式の二酸化炭素消火設備のケーブルを収納した配管を切断してしまったため、当該消火設備が制御配線の短絡により誤作動し、ノズルが設置されていた1階変圧室(3室)に二酸化炭素が一斉に放出され、当該変圧室でアスベスト除去作業を行っていた労働者7名が、酸素欠乏空気により被災した。 | 二酸化炭素消火設備のケーブルを切断したこ とにより制御配線が短絡し、当該消火設備が 誤作動したこと。 |
記
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発生年月日 |
都道府県 |
業種 |
被災状況 |
発生状況 |
原因 |
平成5年10月12日 | 東京 | 設備工事業 | 死亡1名 | 空調設備工事において削孔作業を行ったていたところ、現場事務所に設置されていた全域放出方式の二酸化炭素消火設備の電気配線に損傷を与えてしまい、警報装置が作動しないまま現場事務所に二酸化炭素が放出され、そこ立ち入った別の業者の労働者が、酸素欠乏空気により被災した。 | @空調設備工事の元請事業者が事前に消火設備の電気配線の位置を確認しなかったため、下請業者もそれを知り得なかったこと。 A消火設備が作動した場合の対処方法及びその後の危険区域への立入禁止措置が定められておらず、関係者にも周知されていなかったこと。 |
平成5年11月5日 | 茨城 | 一般機械器具製造業 | 死亡1名 | 移動式の二酸化炭素消火設備の作動状況を点検するため、委託を受けた業者が工場内の切削屑回収ピットに二酸化炭素を放出した。その後しばらくして、整理作業のため当該ピット内に立ち入った構内下請業者の労働者が、酸素欠乏空気により被災した。 | @点検作業を行うに当たって、関係者に対し事前の周知がなされていなかったこと。 A検査作業終了後、ピット内の酸素濃度を測定し、18%以上になるよう換気を行わなかったこと。 B酸素欠乏症に対する認識が不十分であったこと。 |
平成7年12月1日 | 東京 | 警備業 | 死亡2名 | 誤って立体駐車場のターンテーブル室に閉じこめられ退出しようとした会社員が、車両収納箇所の内部に設置された全域放出方式の二酸化炭素消火設備の起動ボタンを押してしまい、二酸化炭素が噴出した。異常警報信号を受け現場に駆けつけた警備員2名が、漏れ出た二酸化炭素により生じた酸素欠乏空気により被災した。1名はターンテーブル室、1名は廊下を挟んでターンテーブル室に隣接した管理人室で発見された。 | @ターンテーブル室が、誤って入室した者が閉じ込められる危険がある構造であり、また照明がなく暗かったこと。 A警備会社において、警備箇所における二酸化炭素消火設備の設置が把握されていなかったこと。 |
平成9年 5月8日 | 大阪 | 金属製品製造業 | 休業4名 | 使用済み缶を再生する事業場において、缶の研磨等の作業を行っていたところ、当該作業場所の近くの塗装ブースの火災を消火するために設置されていた局所放出方式の二酸化炭素消火設備が、経年劣化による配線の短絡のため誤作動し、突然警報ベルとともに二酸化炭素が放出され、酸素欠乏空気により被災した。 | @消火設備の定期検査を怠っていたこと。 A二酸化炭素が放出された場合の排気が不十分であったこと。 B消火設備が作動した場合の対処方法について定められておらず、関係者にも周知されていなかったこと。 C消火設備を手動にしていなかったこと。 |
平成10年10月7日 (再掲) |
東京 | その他の建築工事業 | 軽症(休業見込1〜2日)7名 | 変電所建物耐震補強工事において、火災報知器を新設するため、ダイヤモンドカッターで3階ケーブル室と階段を区切るコンクリート壁に配管用穴を開ける作業を行っていたところ、壁内に埋め込まれていた全域放出方式の二酸化炭素消火設備のケーブルを収納した配管を切断してしまったため、当該消火設備が制御配線の短絡により誤作動し、ノズルが設置されていた1階変圧室(3室)に二酸化炭素が一斉に放出され、当該変圧室でアスベスト除去作業を行っていた労働者7名が、酸 素欠乏空気により被災した。 |
二酸化炭素消火設備のケーブルを切断したこ とにより制御配線が短絡し、当該消火設備が 誤作動したこと。 |
(参考) 消防法令における二酸化炭素消火設備関係用語、条文等 1.二酸化炭素消火設備の種類 (1)全域放出方式 火災の発生した室の開口部を原則として閉鎖し、噴射ヘッドから二酸化炭素を放出することにより、室全体の酸素濃度の低下及び気化時の蒸発潜熱による冷却効果により燃焼を停止させるものをいう。 また、その室のことを「防護区画」という。 (2)局所放出方式 防護対象物(当該消火設備によって消火すべき対象物)に対して噴射ヘッドから二酸化炭素を直接放射して消火を行うものをいう。 (3)移動式 二酸化炭素充てん容器に接続されたホース等を人が操作し、防護対象物に二酸化炭素を直接放射して消火を行うものをいう。 2.二酸化炭素以外の不活性ガス消火設備(ハロゲン化物消火設備) ハロゲン化物消火設備の種類は、二酸化炭素消火設備と同様である。また、酸素濃度の低下及び燃焼反応の負触媒作用により消火を行う。 なお、現在消火剤として用いられているハロゲン化物消火剤(ハロン1301、2402、1211)は、「オゾン層の保護のためのウィーン条約」に基づき、その具体的規制方法を定めた「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」において、オゾン層を破壊する特定物質として指定され、原則として2000年1月1日には全廃することとされている。 3.関係条文 (1)消防法施行令(抄) (二酸化炭素消火設備に関する基準) 第16条 第13条に規定するもののほか、二酸化炭素消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。 一 全域放出方式の二酸化炭素消火設備の噴射ヘッドは、不燃材料で造つた壁、柱、床又は天井(天井のない場合にあつては、はり又は屋根)により区画され、かつ、開口部に自動閉鎖装置(甲種防火戸、乙種防火戸又は不燃材料で造つた戸で二酸化炭素消火剤が放射される直前に開口部を自動的に閉鎖する装置をいう。)が設けられている部分に、当該部分の容積及び当該部分にある防護対象物の性質に応じ、標準放射量で当該防護対象物の火災を有効に消火することができるように、自治省令で定めるところにより、必要な個数を適当な位置に設けること。ただし、当該部分から外部に漏れる量以上の量の二酸化炭素消火剤を有効に追加して放出することができる設備であるときは、当該開口部の自動閉鎖装置を設けないことができる。 二 局所放出方式の二酸化炭素消火設備の噴出ヘッドは、防護対象物の形状、構造、性質、数量又は取扱いの方法に応じ、防護対象物に二酸化炭素消火剤を直接放射することによつて標準放射量で当該防護対象物の火災を有効に消火することができるように、自治省令で定めるところにより、必要な個数を適当な位置に設けること。 三 移動式の二酸化炭素消火設備のホース接続口は、すべての防護対象物について、当該防護対象物の各部分から一のホース接続口までの水平距離が15メートル以下となるように設けること。 四 二酸化炭素消火剤容器に貯蔵する二酸化炭素消火剤の量は、自治省令で定めるところにより、防護対象物の火災を有効に消火することができる量以上の量となるようにすること。 五 二酸化炭素消火剤容器は、点検に便利で、火災の際の延焼のおそれ及び衝撃による損傷のおそれが少なく、かつ、温度の変化が少ない箇所に設けること。ただし、保護のための有効な措置を講じたときは、この限りではない。 六 全域放出方式又は局所放出方式の二酸化炭素消火設備には、非常電源を附置すること。 (2)消防法施行規則(抄) (二酸化炭素消火設備に関する基準) 第19条 (第1項から第3項まで 略) 4 全域放出方式又は局所放出方式の二酸化炭素消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準の細目は、次のとおりとする。 (第1号から第3号まで 略) 四 全域放出方式の二酸化炭素消火設備を設置した防火対象物又はその部分の開口部は、次のイからハまでに定めるところによること。 イ 階段室、非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所に面して設けてはならないこと。 ロ 床面からの高さが階高の3分の2以下の位置にある開口部で、放射した消火剤の流失により消火効果を減ずるおそれのあるもの又は保安上の危険があるものには、消火剤放射前に閉鎖できる自動閉鎖装置を設けること。 ハ 自動閉鎖装置を設けない開口部の面積の合計の数値は、前項第一号イに掲げる防火対象物又はその部分にあつては囲壁面積(防護区画の壁、床及び天井又は屋根の面積の合計をいう。以下同じ。)の数値の1パーセント以下、前項第一号ロに掲げる防火対象物又はその部分にあつては防護区画の体積の数値又は囲壁面積の数値のうちいずれか小さい方の数値の10パーセント以下であること。 (第5号から第13号まで 略) 十四 起動装置は、手動式とすること。ただし、常時人のいない防火対象物その他手動式によることが不適当な場所に設けるものにあつては、自動式とすることができる。 十五 手動式の起動装置は、次のイからチまでに定めるところによること。 イ 起動装置は、当該防護区画外で当該防護区画内を見とおすことができ、かつ、防護区画の出入口付近等操作をした者が容易に退避できる箇所に設けること。 ロ 起動装置は、一の防護区画又は防護対象物ごとに設けること。 ハ 起動装置の操作部は、床面からの高さが0.8メートル以上1.5メートル以下の箇所に設けること。 ニ 起動装置にはその直近の見やすい箇所に「二酸化炭素消火設備手動起動装置」と表示すること。 ホ 起動装置の外面は、赤色とすること。 ヘ 電気を使用する起動装置には電源表示灯を設けること。 ト 起動装置の放出用スイッチ、引き栓等は、音響警報装置を起動する操作を行つた後でなければ操作できないものとし、かつ、起動装置に有機ガラス等による有効な防護措置が施されていること。 チ 起動装置又はその直近の箇所には、防護区画の名称、取扱い方法、保安上の注意事項等を表示すること。 十六 自動式の起動装置は、次のイからハまでに定めるところによること。 イ 起動装置は、自動火災報知設備の感知器の作動と連動して起動するものであること。 ロ 起動装置には次の(イ)から(ハ)までに定めるところにより自動手動切替え装置を設けること。 (イ) 容易に操作できる箇所に設けること。 (ロ) 自動及び手動を表示する表示灯を設けること。 (ハ) 自動手動の切替えは、かぎ等によらなければ行えない構造とすること。 ハ 自動手動切替え装置又はその直近の箇所には取扱い方法を表示すること。 十七 音響警報装置は、次のイからニまでに定めるところによること。 イ 手動又は自動による起動装置の操作又は作動と連動して自動的に警報を発するものであり、かつ、消火剤放射前に遮断されないものであること。 ロ 音響警報装置は、防護区画又は防護対象物にいるすべての者に消火剤が放射される旨を有効に報知できるように設けること。 ハ 全域放出方式のものに設ける音響警報装置は、音声による警報装置とすること。ただし、常時人のいない防火対象物にあつては、この限りではない。 ニ 音響警報装置は、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。 十八 二酸化炭素消火設備を設置した場所には、その放出された消火剤を安全な場所に排出するための措置を講じること。 十九 全域放出方式のものには、次のイからハまでに定めるところにより保安のための措置を講じること。 (イ及びロ 略) ハ 防護区画の出入口等の見易い箇所に消火剤が放出された旨を表示する表示灯を設けること。 十九の二 全域放出方式の二酸化炭素消火設備を設置した防護区画と当該防護区画に隣接する部分(以下「防護区画に隣接する部分」という。)を区画する壁、柱、床又は天井(ロにおいて「壁等」という。)に開口部が存する場合にあつては、防護区画に隣接する部分は、次のイからハまでに定めるところにより保安のための措置を講じること。ただし、防護区画において放出された消火剤が開口部から防護区画に隣接する部分に流入するおそれがない場合又は保安上の危険性がない場合にあつては、この限りではない。 イ 消火剤を安全な場所に排出するための措置を講じること。 ロ 防護区画に隣接する部分の出入口等(防護区画と防護区画に隣接する部分を区画する壁等に存する出入口等を除く。)の見やすい箇所に防護区画内で消火剤が放出された旨を表示する表示灯を設けること。 ハ 防護区画に隣接する部分には、消火剤が防護区画内に放射される旨を有効に報知することができる音響警報装置を第17号の規定の例により設けること。 |