新宿歌舞伎町雑居ビル火災
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死傷者47名 を出した
新宿歌舞伎町雑居ビル火災災害

厚生労働省労基局安全衛生部長の再発防止対策(指示)

小規模雑居ビルに適用される関係法令の概要

災害発生状況


1.発生日時  平成13年9月1日(土)午前1時頃

2.発生場所  東京都新宿区歌舞伎町1−18−6 「明星56ビル」

3.事業場名  @ 麻雀ゲーム店「一休(いっきゅう)」
          A 飲食店「スーパールーズ」
          *通称である。

4.被災者等  死傷者47名 死亡44名(男32名 女12名) 負傷 3名(男3名)

5.発生状況

 飲食店、風俗店等が入居する雑居ビル(地上4階、地下2階)で爆発音とともに火災が発生し、一般客、従業員等が被災。
 3階の麻雀ゲーム店「一休(いっきゅう)」、4階飲食店「スーパールーズ」の一部約160立方メートルを焼失した。3階エレベーターホールからボーンという音が鳴り、煙と火が発生した模様。火災原因は現在不明。

 

 

 


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小規模雑居ビルの防火安全対策について
厚生労働省労働基準局安全衛生部長から各都道府県労働局長あて(平成13年10月10日、基安発第55号)


 周知のとおり本年9月1日、東京都新宿区歌舞伎町の「明星56ビル」における火災(冒頭発生状況参照)により、同ビルに入居する店舗の労働者を含め多数が死傷するという重篤な災害が発生したところである。
 現在、所轄の東京労働局等において、事放の発生原因等の調査を進めているところであるが、当該事故の重大性に鑑み、小規模雑居ビルにおける火災等の事故防止に万全を期することが必要である。
 ついては、下記事項に留意しつつ、小規模雑居ビルに店舗を置く事業者を対象として、あらゆる機会を活用し火災時における労働者への危害防止のための指導等に努められたい。

第1 事業者に対する指導等

 不特定多数の者が出入りする雑居ビルの火災防止のための防火管理、消防用設備等の設置、建築物の防火の基準等の法の適用については、主として消防法及び建築基準法によるものであること(別添2参照)。

 労働基準行政機関においては、火災時における労働者への危害を未然に防止する観点から、労働者に対する教育訓練の実施、避難用通路等の確保等、労働安全衛生関係法令を踏まえた次の事項を中心として、必要に応じて、消防等関係機関とも連携を図りつつ、事業者に対する指導等をするものであること。

(1)火災時における応急措置及び避難等に関する事項を中心とした安全教育を随時実施すること。
 労働者を雇い入れた際には、事故時等における応急措置及び退避に関することを含めた雇入れ時の安全衛生教育を実施すること(労働安全衛生法第59条第1項、労働安全衛生規則第35条)。

(2)店舗に通ずる雑居ビルの共用階段等に避難の際に障害となる物を置かない等その通路としての安全性を確保すること(労働安全衛生法第23条、労働安全衛生規則第540条、542条)。

(3)常時使用しない避難用の出入口、通路又は避難用具については、避難用である旨の表示をするとともに、当該場所に避難の際に障害となる物を置かないこと(労働安全衛生法第23条、労働安全轟生規則第549条)。

(4)必要に応じて、上記(2)及び(3)の措置の実施については、ビルの所有者及びビルの所有者から貸与を受けて店舗を置く他の事業者との間で協議を行い、連携した取組みを行うこと。

(5)事業の規模等を勘案し、必要に応じ、昭和55年12月16日付け基発第692号「旅館・ホテルの防火安全対策について」の記の3に準じて、安全管理の担当者を選任するとともに、その者に次の事項を担当させること。

   イ 消防及び避難・誘導の教育訓練、その他の安全教育の実施に関すること

   ロ ビルの所有者及びビルの所有者から貸与を受けて店舗を置く他の事業者との消防、避難等に関する事項の協議、連絡調整に関すること


第2 指導、助言の実施等

  (1)上記1の指導等については、商工会議所、商工会等の各種団体の会合、集団指導、労働保険への加入促進のための説明会等の機会を活用して行うこと。
   なお、別紙のとおり(省略)、指導啓発用資料の参考例を作成したので、参考とされたい。

  (2)小規模雑居ビル火災の防止につき、消防等関係行政機関から集団指導等の実施について協力を求められた場合には積極的に協力すること。


 


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小規模雑居ビルにおける関係法令の適用の概要(別添2)


1 消防法

(1)防火管理者(第8条)

 防火管理者の選任が必要な防火対象物は、右のとおり病院やエ場、百貨店などの用途に応じ建物内に勤務する人や出入りする人の数(収容人見)によって、定められている。

○特定防火対象物で収容人員が30人以上のもの


  劇場や百貨店、旅館、ホテル、病院など、不特定多数の人が出入りする特定防火対象物は、火災発生の際の危険も大きいため、収容人員が30人以上の場合に防火管理者を選任しなければならない。

○非特定防火対象物で収容人員が50人以上のもの

  図書館や工場、駐車場、倉庫など特定防火対象物以外の防火対象物(非特定防火対象物)は、収容人員が50人以上の場合に防火管理者を選任しなければならない。

○防火管理者の行う業務
  消防計画の作成
  消火、通報及び避難訓練の実施
  消防用設備等の点検及び整備
  火気の使用又は取扱いに関する監督
  避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理
  収容人員の管理
  その他防火管理上必要な業務

(2)共同防火管理(法第8条の2)

 さまざまな事業所がテナントとして入居している雑居ビルなどでは、複数の管理権原者が共同で防火管理に当たらせることとし、各管理権原者が予め防火管理上必要なことがらを協議し、共同して防火管理をすすめていくことが、法第8条の2で義務づけられている。

○共同防火管理協議会


  ビルの所有者などを代表とし、各テナントの社長等(管理権原者)によって構成された共同防火管理協議会を設置し、ビル全体の防火管理を共同で進めるための協議事項を定め、消防署へ届出ること。

○統括防火管理者

  統括防火管理者は、共同防火管理協議事項に定めるビル全体の消防計画を作成し、各テナントの防火管理者は全体の消防計画に基づいて個々のテナントの役割に応じた消防計画を作成すること。

○共同防火管理協議事項

 ・協議会の設置と運用、代表者の選任、統括防火管理者の選任と権限の付与
 ・避難施設などの維持管理、ビル全体の消防計画作成
 ・消防隊への情報提供と誘導、火災発生時の自衛消防活動
 ・自衛消防隊の組織と運営

(3)消防用設備等の設置・維持(法第17条)

 一定の規模以上の防火対象物は、その用途・規模・構造等に応じて、消防用設備等の設置・維持が義務づけられている。
 具体的には、消防用設備等(「消火設備」「警報設備」「避難設備」「消防用水」及び「消火活動上必要な施設」に大別される。)のそれぞれの種類のものについて、防火対象物の用途ごとに、面積又は収容人員による規模、危険物の有無、建築物の構造及び階層に応じてそれぞれ一定の火災危険を想定して、その防火対象物又はその部分につきそれを設置すべき個数、箇所、設置方法、維持の方法などを定めている。
 また、これらの設備等の工事又は整備は、消防設備士でなければ行ってはならないこととされている。(右は例示)

○遊技場等(政令別表第1(ニ)項ロ)


  消火器具(全部)、屋内消火栓設備(700平方メートル:地階・無窓階150平方メートル)
  スプリンクラー設備(6,000平方メートル:地階・無窓階1,000平方メートル)
  自動火災報知設備(300平方メートル:地階・無窓階100平方メートル)
  非常ベル(50人:地階・無窓階20人)、放送設備(300人)、誘導灯(全部)
  避難器具(2階以上の階・地階で50人以上、1階段・2階以上で10人以上)


○飲食店(政令別表第1(三)項ロ)
  
  消火器具(150平方メートル:地階・無窓階50平方メートル)
  屋内消火栓設備(700平方メートル:地階・無窓階150平方メートル)
  スプリンクラー設備(6,000平方メートル:地階・無窓階1,000平方メートル)
  自動火災報知設備(300平方メートル:地階・無窓階100平方メートル)
  非常ベル(50人:地階・無窓階20人)、放送設備(300人)、誘導灯(全部)
  避難器具(2階以上の階・地階で50人以上、1階段・2階以上で10人以上)

(4)消防用設備等の点検及び報告(法第17条の3の3)

 消防用設備等の設置が義務付けられている防火対象物については、定期に(半年に1回)消防用設備等の点検を行い、その結果を、特定防火対象物は1年に1回その他の防火対象物は3年に1回、消防長又は消防署長に報告しなければならない。

 また、特定防火対象物で延べ面積1,000平方メートル以上のもの及びその他の防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上のもののうち消防長又は消防署長が指定したものは、特定の資格を有する者(消防設備士又は消防設備点検資格者)が点検を行わなければならない。

2.建築基準法
(施行令)

*新宿歌舞伎町「明星ビル」と同種の小規模ビルの場合

(1)階段の防火区画(第112条)

   階段は、火災時の煙拡大防止等のため、耐火構造の壁及び防火設備(防火戸等)で区画しなければならない。また、その防火設備は、常時閉鎖状態のものか、火災時に煙感知器と連動して閉鎖するものとしなければならない。

(2)二以上の避難経路の確保(第121条)

  3〜5階が「キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー」の用途に該当する場合には、各階の床面積にかかわらず、次のいずれかの基準に適合しなければならない。
 ・2以上の直通階段を設けること
 ・屋外避難階段等を設置し、かつ、避難上有効なバルコニー等を設けること

(3)非常用進入口の設置(第126条の6、第126条の7)

  3階以上の階には、消防隊による消火・救助活動のための、非常用の進入口又はこれに代わる進入口を設けなければならない。