コンクリート養生用圧力容器が40メートル飛んだ事故
■HOMEPAGE
■640/480
■災害事例目次へ




コンクリート養生用等圧力容器の破裂災害


日時

1 災害発生場所
2 業種

災害の概要

原因

平成13年2月9日 1  茨城県
2 窯業土石製品製造業
 コンクリート養生用圧力容器で加圧中、突然ふたが外れ、容器本体が40数メートル滑走し、建屋に激突した。これにより1人が死亡し、6人が重軽傷を負った。 ロックリングの長さが、製造時から34mm短かったこと。

(昭和55年2月の設置から約21年後に発生した。)


事 故 原 因 の 概 要(推 定)


1 ロックリングの長さが設計値と比べ、34mm短かった。

2 ふたがロックされた時点では、ロックリングが正規状態でロック溝に入っており、ロックプレートも正常に降りていた。

3 ロックされて後、蒸気が送気されたが缶内の圧力が十分上がらない間に、何らかの原因で油圧シリンダーが縮み、ロックリングとロックプレートの隙間が無くなるような状況となっていた。このとき、ロックリング上部のロック溝へのはまり込みが少なくなり、1部はすでに外れてしまっていた。(図―2参照)

4 蒸気の送気に伴い、缶内圧力が上昇するにつれ、ロックリングのはまり込みの浅い部分で、接触面圧が過大となり、接触面の破壊が進んだ。

5 このため、ロックリングの上部約1/3周強が、缶内の圧力を支持することができなくなり、ふたが自ら変形しつつ外に向かってふくらんで出てきた。

6 ふたの変形が進み、ふたのヒンジ軸の上部軸受けが、本来ロックリングが支えるべき缶内圧力を受けもつことになり、破断に至った。

7 これにより、ふたは本体より離脱し、吹き飛んだ。



コンクリート養生用等圧力容器の破裂災害再発防止対策


 ロックリングを油圧シリンダーで広げることにより圧力容器のふたを固定し、ロック リングのすき間にロックプレートを差し込む方式の第一種圧力容器について、下記の対策を講じること。



<製造メーカー及び設置事業場によって実施すべき事項>


1 ロックリングの周長、幅の寸法及びロックプレートの寸法を測定し、設計値と相違  がないかどうか確認すること。

2 通常の作業手順によりふたを固定した後、油圧シリンダーを縮め、ロックリングとロ ックプレートの隙間をなくした状態において、ロックリングが胴フランジの全周に渡っ て、十分な掛かり代をもって固定されているかどうか確認すること。

3 上記1及び2の確認の結果、問題が認められる場合は、ロックリングの交換等の改修 を行うこと。



<製造メーカーにおいて実施すべき事項>

1 ロックリングに位置ずれ、変形、損耗等があった場合における、ロックリングの交換 等の改修についての基準を設置事業場に周知すること。



<設置事業場において実施すべき事項>

1 ロックリングが掛かる胴フランジの溝部は、常に清浄に保つこと。

2 コンクリート養生作業時等において、第一種圧力容器内を加圧する直前に、油圧シリ ンダーが正常に拡張していること及びロックプレートが確実に差し込まれていることを 確認すること。

3 ロックリングに位置ずれ、変形、損耗等がある場合は、ロックリングの交換等の改修 についての基準に従い、適切な整備を行うこと。

コンクリート養生用圧力容器に係る過去の災害


日時

1 災害発生場所
2 業種

災害の概要

原因

平成13年2月9日
(前記再掲)
1  茨城県
2 窯業土石製品製造業
 コンクリート養生用圧力容器で加圧中、突然ふたが外れ、容器本体が40数メートル滑走し、建屋に激突した。これにより1人が死亡し、6人が重軽傷を負った。 ロックリングの長さが、製造時から34mm短かったこと。

(昭和55年2月の設置から約21年後に発生した。)
平成13年1月22日
1 滋賀県
2 窯業土石製品製造業
 コンクリートパイル蒸気養生中、 ふたが突然外れふた、ロックリ ング等が約150m飛ぶとともに、本体が約6m移動した。

死傷者はなかった。
 ロックプレートが発見されておらず不明であるが、傷跡からロックプレートが約13mm 短かったことが原因と推定される。

(昭和46年の設置から、約30年後に発生した。)
平成6年6月30日 1 福岡県
2 窯業土石製品製造業
 オートクレーブ(長さ約52m、直径約3m)の中にALC建材を入れ養生中、ふたが外れその反動で本体が約250m離れた倉庫に激突した。
 
 これにより1人が死亡した。
 ロックプレートが縦横逆に取り付けられており、幅が設計値よりも92mm短かったことが原因と推定される。

(平成3年の設置から、約3年後に発生した。)
平成元年3月27日 1 愛知県
2 窯業土石製品製造業
 オートクレーブ(長さ約13.5m、直径約3m)の中に珪酸カルシウム板を入れ、蒸気を送気中約0.55MPaでふたが外れ、ふたが約4.5m飛び、本体も約2.7m移動した。  ロックリングの長さが、設計値よりも約57mm短かったことが原因と推定される。



参考

○再発防止対策に関する、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あて通達(平成13年2月16日付け)

コンクリート養生用圧力容器の安全確保の徹底について



 圧力容器に係る労働災害の防止については、従来からその徹底を図ってきたところであるが、去る2月9日、茨城県において、コンクリート製品の強度を高めるために使用するコンクリート養生用圧力容器のふたが加圧中に外れ、内部の蒸気が噴出するとともに、圧力容器本体が40数メートル飛び出し、7名の労働者が被災するという重大災害が発生した(別添参照)。
 本災害の原因については現在調査中であるが、本年に入って人的被害はなかったものの、滋賀県内でもコンクリート養生用圧力容器について類似の事故が発生しているところである。当該圧力容器は内部に大きなエネルギーを有していることから、一旦事故が発生すると大きな被害が生ずることが懸念される。
 ついては、貴局管内において、コンクリート養生用圧力容器を使用する事業場に対して、同種災害の発生防止のための下記の措置が徹底されるよう指導されたい。
 また、貴局においてコンクリート養生用圧力容器の製造許可を行っている場合は、当該製造者に対して、下記2の事項について使用者が点検・整備する際、必要な協力を行うよう要請されたい。
 なお、本省においては、関係業界団体に対し、別紙(略)のとおり要請を行ったところであるので了知されたい。


1 コンクリート養生用圧力容器の使用に当たり、ふたの開閉作業における適切な作業手順を策定し、これを遵守すること。

2 コンクリート養生用圧力容器の点検・整備においては次の事項を徹底すること。

(1) ふたの各部、固定用リング及び胴のリング保持部等の固定装置部分に摩耗・変形、機能不良等がないか点検し、異常がある場合には補修等を行うこと。

(2) 固定用リングを用いる形式のふたを固定する作業においては、固定用リングが胴のリング保持部の溝に十分はめ込まれていることを確認すること。また、リング固定用のロックプレート等をリング間の溝に確実にはめ込み、固定用リングが広がった状態で固定する装置(インターロック機構を含む。)が有効に機能していることを確認すること。

(3) ふたの固定に固定用リングを用いる形式以外の圧力容器にあっても、ふたの締め付け部が確実に固定されていること、また、固定装置(インターロック機構を含む。)が有効に機能していることを確認すること。

(4) 労働安全衛生法に基づく圧力容器の定期自主検査を確実に実施すること。






○ 厚生労働省労働基準局安全衛生部長から性能検査代行機関の長あて、(平成13年7月30日付け基安発第45号の3)

コンクリート養生用等圧力容器の破裂災害の再発防止対策について



 圧力容器に係る労働災害の防止については、従来よりその徹底を図っているところであるが、去る2月9日に、茨城県においてコンクリート製品の強度を高めるために使用するコンクリート養生用圧力容器のふたが加圧中に外れ、内部の蒸気が噴出するとともに、圧力容器の本体が40数メートル飛び出し、7名の労働者が死傷するといった重大災害が発生したことはまことに遺憾である。
 本災害の原因について、製造メーカーの調査等により、別添1のとおり推定されるに至ったところであるが、ロックリングを油圧シリンダーで拡げることにより圧力容器のふたを固定し、ロックリングの隙間にロックプレートを差し込む方式の圧力容器(以下「コンクリート養生用等圧力容器」という。)については、過去にもふたが外れる災害が発生しており(別添2参照)、今後における再発防止対策の徹底を図る必要がある。
 ついては、別紙のコンクリート養生用等圧力容器の破裂災害再発防止対策を策定したので了知するとともに、性能検査実施時に下記事項の実施について万全を期するようお願いする。



1 別紙のコンクリート養生用等圧力容器の破裂災害再発防止対策が設置事業場において 実施されているかどうか確認すること。
  
2 通常の作業手順によりふたを固定した後、油圧シリンダーを縮め、ロックリングとロ ックプレートの隙間をなくした状態において、ロックリングが胴フランジの全周に渡っ て、十分な掛かり代をもって固定されているかどうか確認すること。







○厚生労働省労働基準局安全衛生部長から社団法人日本ボイラ整備据付協会会長(平成13年7月30日付け基安発第45号の3) 


           

コンクリート養生用等圧力容器の破裂災害の再発防止対策について



 圧力容器に係る労働災害の防止については、従来よりその徹底を図っているところであるが、去る2月9日に、茨城県においてコンクリート製品の強度を高めるために使用するコンクリート養生用圧力容器のふたが加圧中に外れ、内部の蒸気が噴出するとともに、圧力容器の本体が40数メートル飛び出し、7名の労働者が死傷するといった重大災害が発生したことはまことに遺憾なことである。
 本災害の原因について、製造メーカーの調査等により、別添1のとおり推定されるに至ったところであるが、ロックリングを油圧シリンダーで拡げることにより圧力容器のふたを固定し、ロックリングの隙間にロックプレートを差し込む方式の圧力容器(以下「コンクリート養生用等圧力容器」という。)については、過去にもふたが外れる災害が発生しており(別添2参照)、今後における再発防止対策の徹底を図る必要がある。
 ついては、別紙のコンクリート養生用等圧力容器の破裂災害再発防止対策を策定したので了知するとともに、貴会会員事業場に対する周知方、要請する。