舞台の”せり”ストップせず、5人が死傷(災害事例)
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劇場の舞台装置−保守点検中
5人を乗せた”舞台のせり”止まるべきところで止まらず
上部スライディングステージに激突
− H13.12 東京都北区複合文化施設・死亡3名、休業2名 −
災害発生状況
1 発生日時 平成13年12月21日
2 場所 東京都北区王子1 東京都北区複合文化施設「北とぴあ」
3 被災状況 死亡者 3名、休業者2名
4 災害発生状況の概要
複合文化施設「北とぴあ」舞台設備の定期保守点検作業において、前後に移動する舞台ステージ(スライディングステージ〉の下部にある同ステージ駆動部及びその下部のスライディング式落下防止装置の点検をするため、大迫り(おおぜり〉を一旦地下の奈落(9.4メートル下方)に下降させた後、スライディングステージを大迫りの直上に移動させた。
その後奈落で5名の作業員が大迫りに乗り、スライディングステージ下部に近づくため大迫りを上昇させた(分速10メートル)。
大迫りは、スライデイングステージ下方1.5メートルの位置で停止する機構になっていた(停止の仕組みは、大迫りに付帯しているストライカーが、大迫りの上昇により停止リミットスイッチのレバーを押し上げリミットスイッチが作動して停止するというものであった。)。
しかしながら、停止リミットスイッチのレバーが十分に押し上げられず(有効作動角度25.5度、災害発生時の角度25.0度)停止機構が働かないまま大迫りが上昇し続けたため、大迫りの上に乗っていた被災者らが、大迫りとスライディングステージ下部に格納した落下防止装置との間に挟まれ被災したものである(別紙1 災害発生時の現場状況、別紙2 ストライカーとリミットスイッチ位置図参照)。
5 災害の主な原因
直接の原因は、停止リミットスイッチのレバーがストライカーにより有効作動角度まで押し上げられなかったことであるが、これはストライカーと停止リミットスイッチの間隔が据え付け段階で既に過大であり、これまで、停止リミットスイッチはスイッチをオフにできる「ぎりぎり」の状態で作動していたものと考えられる。
この状態で、
@ 衝撃・振動などによる停止リミットスイッチの位置ずれ、
A 台座やストライカーの位置ずれ、
B 躯体構造の経年変化、
C 低温による躯体の収縮、
D ストライカーの摩耗
E ローラーの摩耗など
によって動作角が変イヒし最終的には約25度になった。停止リミットスイッチをオフにできる角度は公称30度であるが、同製品を用いた実験では、実際の作動角度は25.5度であることが磁認されている。
これに基づけば当該停止リミットスイッチが作動しなかった原因は、作動角度が約0.5度不足していたことであると考えられる。
ストライカーとリミットスイッチ位置図
6 参考
東京都内の劇場・舞台・ホール関係の災害動向(休業4日以上の死傷災害)
平成11年 37人(2人)
平成12年 34人(0人)
平成13年 49人(4人)
()は死亡者数で内政
一番多い事故の型は、「墜落・転落」で、3年間の被災者数120人のうち26人を数え21.6%を占める。
行政指導
以上、事故原因の調査結果を受けて、東京労働局と王子労働基準監督署は、8月7日、9日の両日、都内の主要ホール8箇所に安全パトロールを実施するとともに、関係団体に対して、
●傘下事業場に対する自主点検表による安全総点検を実施し、その結果を報告すること。
●労働災害防止のための環境の整備
について、文書要請した。
また、今回の事故を起こした事業者等にたいしては、文書指導を行い、今後の事故再発防止を促した。
当該文書指導の内容(項目)は以下のとおり。
・作業手順の改善及び手順書の作成
・リミットスイッチの点検確認
・作業者自ら操作できる非常停止装置の設置
・複数の安全装置の設置
・墜落防止対策