一酸化炭素製造装置でのCO中毒−20名が被災
■HOMEPAGE
■640/480
■災害事例目次へ







一酸化炭素製造プラント内の洗浄塔
滞留していた一酸化炭素が逆流してスクラバーに流入−開放していたマンホールより一酸化炭素が流出

死亡1名 一酸化炭素中毒19名




災害発生状況

1 発生日時 平成15年7月9日 午前10時10分頃

2 発生場所 愛媛県松山市

3 発生箇所 
 一酸化炭素製造プラント内の洗浄塔
 ・ 一酸化炭素はポリカーボネート樹脂の原料として製造されている。
 ・ 一酸化炭素はコークスを不完全燃焼して発生させる。
 ・ 一酸化炭素発生装置は5系列ある。
 ・ 発生した一酸化炭素は灰分を含んでおり、除じん装置と水による洗浄塔(以下「スクラバー」という。)を通り次工程に送られる。
 ・ 除じん装置とスクラバーをつなぐ配管には、余剰となった一酸化炭素を排出する配管が接続されており、並列した2つの弁が中間に設けられている。


4 被災状況 死亡1名 一酸化炭素中毒19名


5 発生状況
 @ 5系列ある一酸化炭素発生装置のうち、2系列を稼働させた状態で、停止しているうちの1系列に設置されている逆流防止弁Aの自動駆動装置の取り付け工事が行われていた。
 A 稼働中の一酸化炭素発生装置により逆流防止弁A及びBの下流側は一酸化炭素が充満していた。
 B 当日、当該系列のスクラバーの内部清掃作業が他の事業者により行われており、1階に1箇所、2階に2箇所設けられているマンホールを開放していた。
 C 逆流防止弁Aとスクラバーの間に設けられている手動弁Cは工事時に閉止されておらず、当該系列においては二重閉止が行われていなかった。
 D 逆流防止弁Aの自動駆動装置を取り付けていた際に、弁が開放となった。
 E 逆流防止弁Aの下流に滞留していた一酸化炭素が逆流し、スクラバーに流入したため、開放していたマンホールより一酸化炭素が流出した。

(注)上記の災害概要等については現在調査中であり、確定したものではない。





図1 一酸化炭素製造関連フロー図











図2 災害発生箇所の詳細






再発防止対策の徹底



(平成15年11月18日付け基発第1118001号
厚生労働省労働基準局長から

社団法人日本化学工業協会会長
石油化学工業協会会長
化成品工業協会会長
農薬工業会会長
日本製薬団体連合会会長
社団法人日本プラントメンテナンス協会会長
建設業労働災害防止協会会長
あて

 


特定化学設備の改造、修理、清掃等作業における化学物質による中毒等の防止の徹底について

 労働基準行政につきましては、日頃から御理解と御協力をいただき感謝申し上げます。
 さて、労働者の安全と健康の確保については、労働基準行政の最重点項目の一つとして取り組んでおりますが、去る7月、特定化学設備の修理作業中に特定化学物質である一酸化炭素が漏えいし、労働者20名が一酸化炭素中毒に被災し、うち1名が死亡するという重大災害が発生したことは、極めて遺憾なことであります。
 本災害原因等の詳細については現在調査中ですが、本災害は特定化学設備の改造、修理、清掃等の作業において、当該特定化学設備の所有者から発注を受けた事業者に所属する労働者が、当該特定化学設備本体内部から配管を通じて修理作業場所に漏出してきた一酸化炭素ガスにばく露することにより被災したほか、救助に当たった労働者も併せて被災したものです。なお、災害発生の概要は別紙のとおりです。
 特定化学設備等の改造、修理、清掃等の作業に係る労働者の安全の確保については、特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)に定める関係規定及び「化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」(平成8年6月10日付け基発第364号の別添。以下「ガイドライン」という。)により、その徹底をお願いしているところですが、本災害のように特定化学設備を所有等し、その管理権限を有する事業者が、その特定化学設備の改造、修理、清掃等の作業を他の事業者に発注して作業を行わせている場合においては、従来からしばしば同種の災害が発生してきたところであります。かかる災害の背景には、労働者の安全衛生の確保のために事業者が講ずべき労働安全衛生法令上の措置について、特定化学設備を所有等し、その管理権限を有する事業者であって、当該特定化学設備の改造、修理、清掃等の作業を他の事業者に発注しているもの(以下「特定化学設備を所有等している発注者」という。)と当該特定化学設備を所有等している発注者から特定化学設備の改造、修理、清掃等の作業を受注し、実際に修理等の作業を行う事業者(以下「施工事業者」という。)との間の連絡調整が徹底されていないという実態が見受けられるところです。
 つきましては、同種災害の防止の観点から、特定化学設備を所有等している発注者による施工事業者への的確な情報提供及び安全確保のための措置にかかる連携及び協力が重要であることから、下記の事項について御理解をいただくとともに、貴会会員事業場へ周知徹底いただきたく、お願い申し上げます。

1 特定化学設備の改造、修理、清掃等作業を実施する際の有害化学物質の漏えい防止のための基本的事項

(1)特定化学設備を所有等している発注者と施工事業者との連携及び協力

 特定化学設備を所有等している事業者が他の事業者に当該特定化学設備の改造、修理、清掃等を発注して、当該作業が施工事業者により行われる場合において、労働者の安全確保の観点からは、特定化学設備を所有等している発注者から施工事業者への当該特定化学設備の構造、配管系統、内容物の物性、危険・有害性等に関する情報の提供及び必要な指導・援助の実施等、特定化学設備を所有等している発注者と施工事業者との緊密な連携及び協力を図ること。

(2)災害要因及び対応措置の事前評価


 ガイドラインの4に即して、改造、修理、清掃等の作業を実施する際に生じるおそれのある災害要因とこれに対応するための措置について事前評価を行うこと。

(3)作業計画書の作成

 ガイドラインの6に即して、上記(2)の災害要因及び対応措置の事前評価の結果等を踏まえて適切な作業計画書を作成すること。

(4)他の設備から作業場所につながる配管系統の確実な閉止等

 特定化学設備を分解し、又はその内部に立ち入る等して改造、修理、清掃等作業を実施する上で、作業場所への有害化学物質の漏えい防止の基本的対策は、特化則第22条第1項第3号において規定されているように、作業対象設備の内容物の排出・除去と、他の設備から作業場所につながる配管系統の二重閉止措置であるので、作業の際にはこれらを確実に実施すること。

(5)緊急事態への対応

 ガイドラインの8に即して、緊急事態対応マニュアルを定めるとともに、危険物・有害物等の漏えい等の想定訓練の実施等により、迅速かつ的確な事故処理と被災者の救助に伴う二次災害の防止を図ること。

2 特定化学設備を所有等している発注者において配慮すべき事項

(1)改造、修理、清掃等作業の安全な実施のための環境整備

 ア 特定化学設備を分解し、又はその内部に立ち入る等して行う改造、修理、清掃等作業の安全な実施のためには、本体設備から改造、修理、清掃等作業場所につながるすべての配管系統が、バルブ、コック、閉止板等により作業場所から見て確実に二重閉止されることが必要であるところ、バルブ等の操作は、特定化学設備の他の系統に影響を及ぼすおそれもあることから、当該二重閉止措置は、当該特定化学設備を含む事業所の全系統を熟知し、当該特定化学設備を所有等している発注者自らが実施し、又は施工事業者の実施状況を確認するとともに、施錠等による開放禁止措置の履行状況についても必要に応じ確認すること。

 イ 作業の安全確保のためには、発注者において作業対象関連設備の運転を休止したうえで作業が行われることが望ましいが、やむを得ず設備の一部を稼働しつつ作業を実施する場合にあっては次のことを行うこと。

 (ア)異常発生時に特定化学物質等が作業場所へ逆流する事態等も想定し、作業対象設備につながる流路の確実な二重閉止措置を確認すること。

 (イ)稼働設備の運転状況について、作業の実施に影響を及ぼすおそれのある異常が認められた場合には、速やかに施工事業者に連絡するとともに、必要な場合には退避を勧告すること。

(2)施工事業者に対する情報提供及び指導・援助


 発注に際し、施工事業者に対して前記1の(1)に示す作業の安全の確保に必要不可欠な事項に係る情報提供を十分に行うこと。
 特に、特定化学設備の改造、修理、清掃等作業を一の設備ないし相関連する設備について複数の施工事業者に発注する際には、当該事実を各施工事業者に伝えておくとともに、同時に作業が行われることが想定される場合には、必要な作業間の連絡調整が行われるよう、関係事業者の指導を行うこと。
 また、施工事業者が行う1の(2)の災害要因及び対応措置の事前評価及び1の(3)の作業計画の作成に際しても必要な情報提供及び指導・援助を行うこと。

(3)緊急事態への対応

 施工事業者が上記1の(5)の緊急事態対応マニュアルを定める際には、発注者として、緊急時の連絡体制の整備、退避経路の明示、事故発生時の救助・事故処理体制についての発注者と施工事業者との役割分担について明確化を図る等必要な援助を行うようにすること。

3 施工事業者において留意すべき事項

(1)作業間の連絡調整

 特定化学設備の改造、修理、清掃等作業を一の設備ないし相関連する設備の複数の箇所について同時に行う場合には、作業間の連絡調整を十分に行い、作業変更や異常発生時に迅速・的確に対応できるようにすること。
 特に、複数の施工事業者により作業を行う場合には、特定化学設備を所有等している発注者の指導の下、作業間の連絡調整を十分に行うこと。

(2)異常発生時の措置

 作業中に設備関連の異常(緊急事態を除く。)が発生したときには、直ちに発注者に連絡し、当該異常への対処方法及び必要に応じ作業内容の変更等について指示を受けること。

(3)緊急事態への対応

 緊急事態発生時には、直ちに発注者に連絡するとともに、被災者の救助に当たる者以外の人員は退避させ、二次災害の防止を図ること。また、救助に当たる者については、適切な保護具を着用させること。

(別紙 略)