液状薬剤の誤飲による災害3例
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液状薬剤の誤飲による災害3例
災害事例
1.消毒用のさらし粉溶液の誤飲
2.金属洗浄用溶剤の誤飲
3.床ワックス材のはく離剤の誤飲
再発防止対策(通達)
災害事例1 消毒用のさらし粉溶液の誤飲
1 発生日時 平成14年10月17日午前8時20分頃
2 発生場所 大阪府藤井寺市
3 被災状況 休業3名
4 発生箇所 弁当販売店の調理場。
5 原因物質の使用・保管状況
○さらし粉溶液は、100倍に薄めて使う原液で、次亜塩素酸カルシウムを主成分とし色は緑茶に似た緑色である。事業場ではさらし粉溶液を夏場に千切りキャベツ等の消毒等を行うために使用しており、10リットル入りポリ容器で購入したものを1.8リットル入りペットボトル(調味料が入っていた空容器)に移し替えて業務用冷蔵庫に保管していた。
○当該ペットボトルには黒マジックで「さらし粉」と記載していたが、災害発生時には記載面が裏側となっていて読めない状態であり、かつその隣に同程度の大きさの緑茶入りペットボトルが置かれてあった。
6 発生状況
[1] 弁当販売店の調理場で、調理等の作業を労働者3名で行っていた。
[2] 調理等の作業が一段落ついたところで休憩を取り、作業者の一人が業務用冷蔵庫から緑茶と誤認して野菜消毒用のさらし粉溶液の入ったペットボトルを取り出してコップ3個に注ぎ、3名はこれを飲んで激しく嘔吐し、救急車で病院に搬送され、急性薬物中毒と診断された。
7 発生原因
[1] 薬剤と飲料を同じ冷蔵庫に保管していたこと。
[2] 薬剤を飲料と同程度の大きさの容器に入れ、色まで似ていたにもかかわらず薬剤であることの表示が不明確で注意事項の表示もなかったこと。
災害事例2 金属洗浄用溶剤の誤飲
1 発生日時 平成14年11月27日午後2時30分頃
2 発生場所 神奈川県平塚市
3 被災状況 休業1名
4 発生箇所 機械設備の開発等の業務に関する設計、試作品の分析、実験等の作業が行われる実験室及び会議室
5 原因物質の使用・保管状況
○事業場では金属等洗浄用変性アルコール(エタノール88%、イソプロピルアルコール10%、メチルエチルケトン2%)を18リットル入り缶で購入し、500ミリリットル入りペットボトル(飲料用の廃容器)に小分けして用いていた。当該ペットボトルは、通常、実験室及び会議室と同階にある作業室内の棚に置かれていた。被災者は、作業室より当該ペットボトルを持ち出し、実験室内で機械等の払拭作業に使用していた。
○当該ペットボトルのラベル等の外装は、はがされており、内容物に関する表示もなかった。
○会議室にはホワイトボードが設置されており、その文字消し用に当該変性アルコールが使用されることがあった。
6 発生状況
[1] 被災者は、会議室内でパソコンに向かい設計作業を行っていた。
[2] 机上には、被災者が持ち込んだ500ミリリットルペットボトル入り清涼飲料水が2本飲みかけのまま置かれていた。
[3] 会議室のホワイトボードの文字消し用に持ち込まれた500ミリリットルペットボトル入り変性アルコールが、同じ机上に置かれていた。
[4] 被災者は、変性アルコールの入ったペットボトルを清涼飲料水の入ったペットボトルと誤認して内容物を飲み込み、医師の診察の結果、急性薬物中毒と診断された。
7 発生原因
[1] 薬剤を飲料用の容器に入れたこと。
[2] 薬剤の入った容器を人が飲食物を置く可能性のある場所に注意事項の表示もなく放置していたこと。
[3] 薬剤の使用について、他用途への転用による危険有害性の認識が少なく、管理が十分に行われていなかったこと。
災害事例3 床ワックス材のはく離剤の誤飲
1 発生日時 平成15年4月14日 午後1時8分頃
2 発生場所 東京都新宿区
3 被災状況 休業1名
4 発生箇所 マンションのリフォーム工事現場。
5 原因物質の使用・保管状況
○床ワックス材のはく離剤(ベンジルアルコール21%、2-アミノエタノール18%、水酸化ナトリウム2%等)は本工事の元請事業場所属の労働者が500ミリリットル入りペットボトル(飲料用の廃容器)に入れて持ち込んだものであり、この薬剤は、スプレー容器に入れ水で希釈して使用するものである。
○当該ペットボトルのラベル等の外装は、はがされており、内容物に関する表示もなかった。
6 発生状況
[1] リフォーム工事は、建具工事と大工工事担当の2つの下請け事業者により行われていた。災害発生当日の作業者は、建具工事の請負事業場所属の被災者A、大工工事の請負事業場所属の労働者B、元請事業場所属の労働者Cであった。
[2] Aは、工事現場に500ミリリットル入りペットボトルに入れたお茶を自宅よりバッグに入れ持参していた。当該ペットボトルのラベル等の外装は、はがされてあった。
[3] 同じ場所で作業をしていたBが、Cが工事現場に持ち込んでキッチンに置いていたはく離剤入りのペットボトルをAが持参したお茶入りペットボトルと誤認してAのバッグの横に移動させた。
[4] Aは午後の作業再開後に喉が渇き、持参したペットボトルのお茶を飲もうとして、自分のバッグの隣に置いてあったペットボトルの内容物を飲んで急に苦しみだし、救急車で病院に搬送され急性薬物中毒と診断された。
7 発生原因
[1] 薬剤を持ち込んだ労働者に有害性の認識がなかったこと。
[2] 薬剤の表示や注意事項もなく、薬剤を飲料用の容器に入れていたこと。
[3] 現場における有害物の使用について、関係労働者間の連絡調整が不十分であったこと。
液状薬剤の誤飲による災害防止について
(平成16年1月23日基安化発第0123001号厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質調査課長から都道府県労働局労働基準部労働衛生主務課長あて)
液状薬剤の誤飲による災害防止について
有害化学物質を取り扱う事業場においては、その取扱い作業におけるばく露防止対策はもとより、事業場内での飲食に伴う有害化学物質の摂取の防止も重要であり、このためには、飲食を行う場所と作業場所との分離並びに飲食物と有害化学物質の保管場所の分離及び有害化学物質に係る注意喚起のための表示が基本である。
飲食に伴う有害化学物質の摂取は、基本的には手指等を介して有害化学物質により飲食物が汚染されることによるものであるが、近年、飲料の空容器に移し替えた消毒剤、有機溶剤等の液状薬剤を労働者が飲料と誤認して飲み、急性薬物中毒となる災害が相次いで発生している(別添参照)。いずれの災害においても、有害化学物質の小分け用容器として飲料の容器が安易に転用されており、外観から飲料と誤認しやすいことに加えて、飲食物との保管場所の分離や内容物の有害化学物質に係る表示等の基本的な化学物質管理がなされていなかったことが原因としてあげられる。飲料用容器を液状薬剤の小分けに用いることは容易に行いうるものであることから、これらの災害事例のような誤飲災害は今後も起こることが懸念され
る。
ついては、このような誤飲災害防止のため、貴局におかれては、各種の安全衛生指導等の機会をとらえて事業者に対し下記による所要の措置が講じられるよう指導されたい。
記
1 飲料用の空容器を液状薬剤の小分け容器に使用しないこと。
2 液状薬剤の容器は、小分け用のものについても他のものとの誤認のおそれのない専用容器とし、容器に内容物、有害性、取扱上の注意事項等を明確に表示すること。
3 液状薬剤等と飲料とは、保管場所を別にすること。