平成15年の熱中症による死亡災害事例

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平成15年の熱中症による死亡災害事例



平成15年 熱中症死亡災害発生状況
【厚生労働省労働基準局安全衛生部調べ、平成16年5月17日基安労発第0517001号】

番号
発生月
業種
気温
(℃)
相対
湿度
(%)
年齢 
 発 生 状 況
主な発生原因
1 6 建設業 32℃ 62% 30代
 駐車場入口部分の歩道切下げ工事現場において、被災者は午前9時より歩道の石張りに従事していた。午後3時頃になって、被災者は気分が悪いと訴えたが、少し休憩して作業に戻った。ところが、作業終了後に、現場の簡易トイレ脇で被災者が倒れているのが発見され、病院に搬送されたが、同日に死亡した。
[1]涼しい休憩所がなかった(作業環境管理)
[2]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
[3]応急処置が不十分(救急措置)
2 6 建設業 31℃ 73% 40代
 自動車道路沿線において、8時半頃より道路保全工事の一環として草刈り作業を行っていた。午後4時頃、被災者が気分が悪いと訴えたので、木陰で休ませた。まもなく被災者の意識が朦朧としてきたので、救急車で病院に搬送されたが、同日に死亡した。
[1]連続作業、休憩の不足(作業管理)
[2]水分・塩分の補給指導が不徹底(健康管理)
[3]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
3 7 建設業 30℃ 50% 20代
 新築ビル建設工事現場において、被災者は、午前9時よりコンクリートの打設作業に従事していた。午前12時頃になって被災者は、体調を崩して座り込んでしまった。現場で30分程度休憩した後、最寄りの病院に向かったが、被災者は、医師の診療を拒否して、病院を飛び出した。すぐに病院近くで被災者が倒れているところが発見され、病院に搬送されたが、入院加療中、翌月に死亡した。
[1]塩分が不十分(作業環境管理)
[2]連続作業、休憩の不足(作業管理)
[3]健康状態の未把握(健康管理)
4 7 建設業 30℃ 69% 50代  
道路改良工事現場にて、午前9時より測量作業を行っていた。被災者は測量の妨げになる雑木、草等を伐木、草刈りして取り除いていた。午後2時半頃、被災者が倒れたのを同僚が発見した。救急車で病院に搬送されたが、まもなく死亡した。
[1]連続作業、休憩の不足、放熱・通気性に欠ける服装(作業管理)
[2]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
[3]応急措置が不十分(救急措置)
5 7 建設業 29℃ 84% 30代
 校舎の耐震改修工事現場において、被災者は、午前8時頃より、窓枠、壁の瓦礫等、校舎からの残材出しの作業に従事していた。午後4時半頃、被災者が前身を痙攣させ仰向けになっているのを同僚が発見した。救急車で病院に搬送される途中に死亡した。
[1]水分・塩分の備えがなかった(作業環境管理)
[2]放熱・通気性に欠ける服装(作業管理)
[3]健康状態の未把握(健康管理)
[4]熱中症予防の教育未実施(労働衛生教育)
6 7 警備業 30℃ 75% 50代
 下水道管施設工事現場において、被災者は、午前中より、交通誘導の業務を行っていたが、午後4時頃になって、工事が終了したころ、現場に座り込んでしまった。同僚が車に乗せて事務所に連れ帰ったが、症状が悪化して、病院に搬送されたものの、翌日に死亡した。
[1]日よけが設けられていなかった(作業環境管理)
[2]健康状態の把握が不十分(健康管理)
[3]応急処置が不十分(救急措置)
7 8 建設業 34℃ 不明 20代
 被災者らは工場構内において、集水管、集水枡を敷設する作業を行っていた。午前8時半頃より作業を開始して、午後2時半頃に終了したため、後片付けを行っていたが、事務所に戻る時点で、被災者の様子が見当たらなくなった。被災者は、現場から少し離れたところで倒れており、病院に搬送されたが、翌日に死亡した。
[1]健康状態の把握不十分、巡視が不十分(健康管理)
[2]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
[3]応急処置が不十分(救急措置)
8 8 建設業 32℃ 70% 40代
 ゴルフ練習場のネット用の鉄塔塗装作業を午前7時半過ぎから行っていたところ、被災者は、午前10時半頃になって、作業を行っていた鉄塔の高さ21mの横梁の上で倒れて痙攣を起こした。救助隊に救出され、病院に搬送されたものの、同日に死亡した。
[1]塩分の備えがなかった(作業環境管理)
[2]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
[3]応急処置が不十分(救急措置)
9 8 建設業 30℃ 72% 40代
 マンション屋上屋根の防水工事現場において、被災者は、午前8時半より、電気ハンマーで既設の屋根材のはつり作業に従事していた。午前11時頃になって、体調不良を訴えたため、その日の作業が終了した午後5時まで一階の日陰で被災者を休ませた。帰宅後、被災者一人で病院に行き、点滴を受けたが、回復せず、翌日は休業して、再度治療を受けたものの、翌々日未明、死亡した。
[1]涼しい休憩場所がなかった(作業環境管理)
[2]健康状況の把握が不十分(健康管理)
[3]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
[4]応急措置が不十分(救急措置)
10 8 建設業 33℃ 65% 20代
 被災者らは屋外現場において、足場組み立て作業を行っていた。被災者は、午前中より、足場部材を運搬するなど補助業務に従事していたが、午後2時半頃から異常な言動及び行動を示し出した。このため、しばらく、トラックの助手席に座らせ落ち着かせた。ところが、身体を冷やすなど応急措置をはじめた時点では、意識不明の状態となっており、病院に搬送されたが、翌日に死亡した。
[1]塩分の備えがなかった(作業環境管理)
[2]連続作業、休憩が不十分(作業管理)
[3]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
11 8 製造業 33℃ 58% 50代
 被災者らは事業場近くの市道と線路の間に生えた草を刈る作業を午前8時より開始した。昼食時も特に変わった様子はなかったが、午後3時頃同僚が声をかけたが返事がなく、うずくまっているのが発見された。病院に搬送されたが、同日死亡した。
[1]水分・塩分が不十分、連続作業、休憩の不足(作業管理)
[2]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
[3]応急処置が不十分(救急措置)
12 8 建設業 29℃ 83% 30代  
被災者は家屋建築工事現場において、午前8時より、同僚と2名で屋根瓦の設置を行っていた。被災者は、屋根上で機械により運搬された瓦を受け取り、屋根上に配置する作業を行っており、午前10時より、足場上で休憩をとった。その後、作業を開始しようと同僚が呼びかけたが、返事はなく、足場上で倒れているのが発見された。病院に搬送されたが、数日後に死亡した。
[1]涼しい休憩場所がなかった(作業環境管理)
[2]健康状態の把握が不十分(健康管理)
[3]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
13 8 製造業 35℃ 70% 50代
 金属製品加工工場において、被災者は、金属ロールを重油バーナーで加熱、成形する作業に従事していた。被災者は、午前8時半より午後5時まで終日、この作業に従事していたが、午後6時頃、工場の駐輪場でうずくまっているところを発見された。病院に搬送されたものの、数日後に死亡した。なお、作業場の室温は左記の気温より高かったと見られる。
[1]換気扇の不良(作業環境管理)
[2]巡視が不十分(健康管理)
[3]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
14 8 製造業 35℃ 不明 50代
 被災者は熱処理工場内において、熱処理を終えた商製品であるボトルが入った鉄製の容器(約300kg)を、ハンドパレットトラックを用いて移動させる作業を行っていた。その際、被災者が突然ふらつき、倒れそうになっているのを同僚が発見し支えたものの、その後様態は回復せず、救急車で病院に搬送したが、翌日に死亡した。なお、作業場の室温は左記の気温より高かったと見られる。
[1]涼しい休憩所がなかった(作業環境管理)
[2]健康状態の未把握(健康管理)
[3]熱中症予防の教育不十分(安全衛生教育)
15 9 建設業 32℃ 不明 30代
 鉄道線路の設備工事現場において、被災者は、午前9時半頃より、作業に従事していた。午前10時半頃、トラックの荷台から電線を格納するためのコンクリート製の部材を手で抱えて搬送していたところ、その場に倒れてしまった。病院に搬送されたものの、同日死亡した。
[1]塩分の備えがなかった(作業環境管理)
[2]健康状態の未把握(健康管理)
[3]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
16 9 製造業 31℃ 不明 30代
 耐火物原料の粉砕作業現場において、被災者は午前8時頃出勤し、作業に入った。昼食を終えた後、被災者は午後1時半頃から乾燥作業を再開した。午後3時半に同僚が倒れている被災者を発見し、病院に搬送したが、同日死亡した。
[1]水分・塩分が不十分、涼しい休憩所がなかった(作業環境管理)
[2]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
17 9 林業 34℃ 57% 40代
 刈払機を使用して行う森林の下刈(樹木の下草の刈取り)作業現場において、午前9時頃より下刈作業を開始し、途中、昼の休憩を取り、午後から作業を再開した。午後3時頃、被災者が作業中によろよろとその場に倒れ、全身痙攣を起こし、意識を失った。被災者は、救急車で病院に搬送されたものの、同日死亡した。
[1]水分・塩分が不十分、連続作業、休憩の不足(作業環境管理)
[2]熱中症予防の教育が不十分(労働衛生教育)
[3]応急措置が不十分(救急措置)