化学工場の爆発・火災災害8例
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化学工場の爆発・火災災害8例 災害事例1 災害事例2 災害事例3 災害事例4 災害事例5 災害事例6 災害事例7 災害事例8 「化学工業における安全管理の在り方に関する検討結果報告書」添付の事例より 目次に戻ります 災害事例1 1 発生状況 スチレン樹脂製造プラントの触媒送給ラインにおいて、冬季の外気温の低下により触 媒が凝固し流量が下がることから、これを防止するため当該ラインにスチーム保温工事 を施工した。保温を開始して2日後にポンプの故障(事故発生後に判明)により流量が 再び下がりはじめたため、点検していたところラインが必要以上に加熱されライン内に 発生した触媒の分解反応物が触媒タンク内に逆流し、タンク内が高温となり、爆発した もの。 2 原因 (1)触媒の供給ラインの設置に当たって、触媒の物性に対応した事前の安全性の評価 に基づいて設計がなされていなかったこと。 (2)温度管理が必要な爆発性の触媒について、送袷ラインにおいては、保温工事後も 十分な温度管理ができるシステムとなっていなかったこと。 (3)触媒の取扱い、異常時の対応等についての作業標準が作成されていなかったこと。 (4)触媒の取扱い上の危険性について、安全教育が行われていなかったこと。 3 問題点 爆発性の触媒(有機過酸化物)を取り扱っているにもかかわらず、なぜ、設備の設置 時、変更時において、設備及び作業の安全性についての事前評価が行われていなかった のか。 目次に戻ります 災害事例2 1 発生状況 C重油タンク内のスチームコイルをベンゼンを用いてふき取る作業を行っていたとこ ろ、タンク内に持ち込んだ投光器のプラグとコードリールのコンセントとの接触部分が 着火源となりタンク内のベンゼンが爆発したもの。 2 原因 (1)他の安全な洗浄剤の使用を検討することなく、引火性の高いベンゼンを使用した こと。 (2)強制換気等十分な換気を行っていなかったこと。 (3)防爆構造となっていない投光器等電気機械器具を持ち込んでいたこと。 (4)ベンゼンの使用にかかる作業標準が作成されていなかったこと。 3 問題点 危険性の高いベンゼンを使用する作業にもかかわらず、安全上の配慮がほとんどなさ れておらず、総括主任が作業計画を作成、指示していたことなど、現場任せとなってい たこと。 (参考:部長−グループマネーンャー−チームリーダ−ナ総括主任−班長−作業員) 目次に戻ります 災害事例3 1 発生状況 減圧蒸留塔塔低部への冷却油注入のための配管に設置されたドレン弁が振動により全 開の状態となり、更にその先に設置されていたドレンキャッブがはずれ、冷却油が漏え いし、高温配管に熱せられ可燃性ガス雰囲気を形成し、発火したもの。 2 原因 (1)バルブ、配管等に対する振動を考慮した安全対策を講じていなかったこと。 (2)以前に行われた修理の際にドレン弁を解放したが、その時及び運転時におけるド レン弁の締め方が緩かったこと。 (3)以前に行われた修理の原因となった配管が折れた時に、これらの原因分析(同様 に振動による影響もあった考えられる)を確実に行っていなかったこと。 3 問題点 修理を必要とするようなトラブルが発生しているにもかかわらず、十分な原因究明が 行われていない。このため、繰り返しの事故につながっている。 目次に戻ります 災害事例4 1 発生状況 減圧蒸留塔下部の本配管から分岐しているサンプルライン採取口から重質油のサンプ ルを採取する作業において、発火点以下にするためのサンプルクーラーを使用すること なく、また、詰まったサンプルラインをバルブの操作のみにより採取したため、発火点 を超えたサンプル重質油が噴出し、火災が発生した。 2 原因 (1)サンプル採取作業において、重質油がサンプルラインに詰まるということについ ての安全対策が取られていなかったこと。 (2)採取時の温度を250℃とするためのサンプルクーラーを使用せずに、採取した こと。 (3)作業標準では、バルブの全開を禁止しているにもかかわらず、サンプル採取口が 詰まっていたことから、パルプを全開にして作業したこと。 3 問題点 高温の重質油を取り扱うにもかかわらず、サンプル採取といった軽作業ということで 、安全確認をおろそかにしているのではないか。 目次に戻ります 災害事例5 1発生状況 ポリプロピレン製造工場において、ポリプロピレンのサンプル採取作業中、バルブ操 作の順序を誤り(通常は、下流バルブを閉として上流バルブを開とするが、この時は、 下流バルブを開としたまま上流バルブを開としたため)、サンプル採取用のバルブから 高圧のポリプロピレンガスがポリプロピレン粒子とともに噴出し、噴出時の静電気によ り発火し、火災が発生した。 2 原因 (1)発火の危険のあるポリプロピレンガスとポリプロピレン粒子が直接外気に噴出す ることのないような、例えば、上流バルブを下流バルブのインターロックするなど のシステムとなっていなかったこと。 (2)労働者が、バルブの操作順序を誤ったこと。 3 問題点 設備の設置時において、設備及び作業の安全性について事前評価が行われていなかっ たこと。 目次に戻ります 災害事例6 1 発生状況 重油直接脱硫装置における加熱炉内の加熱炉管の一部の表面温度について、運転管理 値上限温度を超えた状態を検知できずに運転していたため、加熱炉管が破裂、火災が発 生した。 2 原因 (1)原料の原油の変更に伴い、加熱炉管の加熱温度、バーナーの火力の調節など加熱 方法を変えるに際し、安全上の問題について十分な検討を行っていなかったこと。 (2)バーナーの火力の調節において、原料入口側に偏った焚き方がとられていたこと。 (3)このため、加熱炉管の一部にコーキングが厚く生成し、その表面温度が運転管理 値上限温度を超え、それを検知できずに運転していたため、加熱炉管の一部が破裂、 火災が発生した。 3 問題点 (1)原料変更に伴う運転方法の安全性についての事前評価が十分行われていなかった こと。 . (2)バーナーの火力の調節において、偏った焚き方がとられていたにもかかわらず、 なぜその安全上の問題が見過ごされてきたのか。 (3)加熱炉管の表面温度計がない部分で、運転管理値上限温度を超えていたが、それ をなぜ発見できなかったのか。 目次に戻ります 災害事例7 1 発生状況 触媒(ジエチルアルミニウムクロライドを含有する液体)をタンク内において調整後 、一定温度で貯蔵していたが、異常反応を起こし、急激な温度上昇とともに体積膨張が 発生し、当該タンクが爆発した。 2 原因 (1)触媒の調整方法を、残液に追加して調整する方法に変更しての作業であるが、こ の時の残液と触媒との反応等工程の変更に伴う安全上の問題について検討を行って いなかったこと。 (2)温度異常時の処置方法等についての作業規程が作成されていなかったこと。 (3)警報アラームの設定等について、工程の変更があったにもかかわらず、妥当性に ついて何ら検討が行われていなかったこと。 3 問題点 (1)製造工程を変更したときに、組織としてなぜ安全上の問題について検討が行われ なかったのか。 (2)事故を契機に総点検を実施したところ、安全面で約200件の指摘が社内的にな されていること。 (参考:事故後、会社の対応としては、環境保安部を環境保安本部とし、担当役員を配 置し、権限の独立性を明確にした。) 目次に戻ります 災害事例8 1 発生状況 有機工業製品SAH(ソジウムビスエトキシメトアルミニウムハイドライト)をバッ チ式で製造する反応器において、従来の製造方法を変更し、一度製造した中間生成物等 と原料を反応させたときに、異常反応を起こし爆発したもの。 2 原因 (1)SAHの当該製造方法での直前の製造において、想定した反応が行われなかった (失敗した)にもかかわらず、失敗の原因究明がなされておらず、したがって、安 全性について事前の検証が十分に行われていなかったこと。 (2)反応容器内のSAH液層部分の温度測定のみを行い、気層部分の温度測定を行っ ていなかったことにより自己分解反応温度に達していることがわからなかったこと。 3 問題点 (1)原因究明なしに、生産を急いだこと。 (2)必要な計装を省略してるために、設備内の状況が十分理解されていない。