ストックオプションって何だろう2

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ストック・オプションは賃金ではないが、就業規則に規定を要する労働条件
「都道府県労働基準局長宛て、労働省労働基準局長の通達」
(平成9年6月1日付け基発第412号)


     改正商法に係るストツク・オプションの取扱いについて


 商法の一部を改正する法律(平成9年法律第56号)が、本日(ただし、新株引受
権の付与については、本年10月1日)から施行されたが、これに伴い、従来「特定
新規事業実施円滑化臨時措置法」(平成元年法律第59号)に基づき特定新規事業実
施計画について同法による通商産業大臣の認定を受けた株式会社等のみが行うことが
できることとされていたストック・オプション制度について、一般の株式会社でも行
うことができるようになったところである。
 今回の商法改正に基づくストック・オプション制度(以下「改正商法によるストッ
ク・オプション制度」という。)の概要及びその労働基準法上の解釈については下記
のとおりであるので、了知の上、その取扱いに遺憾感なきを期されたい。

                  

1 ストック・オプション制度の概要
(1)ストック・オプション制度の概要
 ストック・オプショ制度とは、企業が、取締役又は使用人(以下「使用人等」という。
)に対し自社の株式を将来において予め設定された価格(以下「権利行使価格」という。
)で購入することができる権利(以下「ストック・オプション」という。)を付与する
制度である。
 ストック・オプションを付与された使用人等は、権利行使価格で企業から株式を購入
した上、これを上回る株価で当該株式を売却することによって利益を得ることができる
ことになる(別紙図1参照、省略)。
 このように、ストック・オプション制度は、企業業績の向上による株価の上昇が使用
人等の利益に直接結びつくことから、使用人等の企業業績向上への意欲や士気を高める
こと、あるいは人材確保の手段として機能することが期待されているものである。

(2)改正商法によるストック・オプション制度の概要
 今回の商法改正により、一般の株式会社が導入することができることとなったストッ
ク・オプション制度には、次の2つの方法がある。(別紙図2参照、省略)

●自己株式方式
・企業は、使用人等に株式を譲渡するために、自己株式を取得することができること。
・使用人等に株式を譲渡するためには、当該使用人等の氏名、譲渡する株式の種類、数、
譲度価格(権利行使価格のこと)及び権利行使期間等について定時総会の決議を得なけ
ればならないこと。
・取得することができる株式は、発行済株式総数の10パーセントを超えてはならない
こと。
・企業が、使用人等の権利行使に備えて保有する株式については、当該株式の取得価格
の総額が配当可能利益の範囲内であること。
・企業は、取得する株式について市場買付けのほか、公開買付けの方法によっても駅得
できるものとすること。
・使用人等が株式を購入する権利行使期間は10年以内とすること。
・企業は、使用人等がその権利行使期間内に株式を譲渡しなかったときには、相当の時
期に株式の処分をしなければならないこと。

●新株引受権方式
・企業は、定款に定めがあり、正当の理由があるときは、使用人等に新株引受権を与え
ることができること。
・使用人等に新株引受権を与えるためには、当該使用人等の氏名、新株引受権の目的で
ある株式の額面無額面の別、種類、数及び発行価格(権利行使価格のこと)並びに新株
引受権の権刊行使期間等について、定時総会等の特別決議が必要であること。
・新株引受権の目的である株式の総数は、発行済株式総数の10パーセントを超えては
ならないこと。
・新株引受権の権利行使期間は10年以内とすること。
・新株引受権は譲渡できないこと。
・新株引受権は登記をすることを要すること。

●その他
・自己株式方式と新株引受権方式を同時に使用することはできないこと。
・自己株式方式については、決議後最初の決算期に関する定時総会の終結のとまで、新
株引受権については、決議後1年以内に権利を与えることを要すること。
なお、「特定新規事業実施円滑化臨時措置法」及び本年5月30日に施行された「特定
通信・放送開発事業実施円滑化法の一部を改正する法律」で認められていた新株有利発
行の特例方式によるストック・オプション制度は、今回の商法改正の付則により改正さ
れ、平成10年4月1日から新株発行総数上限の特例(「特定新規事業実施円滑化臨時
措置法」は発行済株式総数の三分の一、「特定通信・放送開発事業実施円滑化法」は発
行済株式総数の五分の一、)を設けたうえで改正商法の新株引受方式によって実施され
ることとなったところである。


2 労働基準法との関係

 改正商法によるストック・オプション制度では、権利付与を受けた労働者が権利行使
を行うか否か、また権利行使するとした場合において、その時期や株式売却時期をいつ
にするかを労働者が決定するものとしていることから、この制度から得られる利益は、
それが発生する時期及び額ともに労働者の判断に委ねられているため、労働の対償では
なく、労働基準法第11条の賃金には当たらないものである。

 したがって、改正商法によるストック・オプションの付与、行使等に当たり、それ
を就業規則等に予め定められた賃金の一部として取り扱うことは、労働基準法第24
条に違反するものである。

 なお、改正商法によるストック・オプション制度から得られる利益は、労働基準法第
11条に規定する賃金ではないが、労働者に付与されるストック・オプションは労働条
件の一部であり、また、労働者に対して当該制度を創設した場合、労働基準法第89条
第1項第10号の適用を受けるものである。










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【日本経済新聞平成9年10月24日朝刊より】

ストックオプション促進
課税繰り延べ容認
大蔵省、98年度から特例措置
自社株売却時まで

 大蔵省は、企業の役員、従業員向けの新しい報酬制度であるストックオプション(自社株購入権)制度の利
用を促すために、九八年度から税制上の特例措置を導入する。役員、従業員が権利を行使し、自社株を取得し
た段階で発生する含み益を給与と見なして所得税を課す現行制度を改め、自社株の売却時まで課税を繰り延べ
る。実際に収入がない権利行使段階で課税すると、制度が活用されない恐れがあると判断した。大株主は除外
するなど適用条件を詰めた上で、九八年度税制改止に盛り込む。


 ストックオプション制度は、株価の動向に関係なく、決められた価格で自社株を購入できる仕組み。株価が
上がるほど役員、従業員の利益が入きくなるため、役員、従業員の勤労意欲を高める制度として米国などで普
及している。米公認会計士協会の調査によれば、調査対象六百社中九五%の五百七十一社が同制度を活用して
いる。
 日本でも日本版ビッグバン(金融大改革)の一環として、ストックオプションのための自社株買いを解禁す
る改正商法が六月に施行、トヨタ自動車、宇部興産、大和証券など四十七社が制度採用を決議した。
 大蔵省はこうした機運の高まりに対応し、権利行使時の所得課税と自社株売却時の譲渡益課税のニ本建てに
なっている現行制度を見直し、自社株を売却した時点で、売却価格と権利行使価格の差額を譲渡益として課税
する方式に一本化することにした。
 権利行使時に納税資金を手当する必要をなくし、権利を付与された役員、従業員が自由に権利行使できる環
境を整える狙いだ。納税資金ねん出のための株式売却が不要になり、個人投資家の株式の長期保有にもつなが
ると見ている。
 一方、大蔵省は所得税逃れに悪用されることを防ぐため、政府や自民党の税制調査会の議論を踏まえ、適用
条件を詰める。
 具体的には、発行済み株式の三分の一超を保有する大株主は適用除外とし、一人当たり付与額の上限を権利
行使価格の総額とみて年間五百万円以下に制限する案が有力だ。権利行使価格が権利付与時の株価を下回らな
い場合に限定すると同時に、権利付与から1年間または2年間は権利行使を原則禁止し、短期で権利行使した
場合は従来通り、権利行使時の株価と権利行使価格の差額を所得と見なして課税する方向だ。










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ストックオプション隠れ債務
米成長企業の債務膨らむ


日本経済新聞平成9年11月15日夕刊より
【ニューヨーク14日牧野洋】
 世界最大のソフト会社マイクロソフトは、ストックオプシヨン(自社株購入権)を将来負担
となる人作費コストとして算定すると、最終損益が7〜9月期に初めて赤字になる試算を明ら
かにした。米国では利益水準の低いベンチャー企業が賃金の代替としてストックオプシヨンを
積極導入し、その動きが大企業にも広がっているが、現在の会計基準では人件費コストとして
計上しないため、「隠れ債務」の形になっている。株高が続くとこの「隠れ債務」が膨らみ、
結果的に企業の負担が過重になるという限界があることを浮き彫りにした。

マイクロソフト 実質赤字の試算


 米証券取引委員会(SEC)にマイクロソフトが提出した最新の財務資料によると、7−9
月期に文給したストックオプションが将来行使されたときに発生するコストを算入した場合、
同期の最終損益が六千万ドルの赤字になると報告した。先に公表した四半期決算では最終利益
は六億二千三百万ドルになっており、概算で七億二千三百万ドルがストックオプションによる
人件費コストといえる。
 九七年六月期には、マイクロソフトの社員はオプション行使で推定二十二億六千万ドルの利
益を獲得し、前の期の十億から倍増。社員一人当たりおよそ十万ドル(千二百六十万円)のボ
ーナスを手にしたことになる。
 マクロソフトがこれまで発行した権利未行使のオプションの市場価値は、九月末時点で総額
三百二十億ドル。社員一人当たり百万ドル以上と、同社の総資産(百五十三億ドル)をも上回
る。大量のストックオプション行使に備えるため、その分、自社株を手当しなくてはならない。
行使価格と自社株調達価格の差額が将来負担となる人件費コストになる。また、大量に権利行
使されると、市場に出回る株式数が急増するため、一株利益が希薄となり、株価が下落する懸
念がある。それを防ぐには大規模な自社株買いを実施して市場から株を吸い上げる必要がある。
 マイクロソフトはストックオプション行使とほぼ同規模の自社株買い(を)実施しており、
九七年六月期には過去最高の三十一億ドルを記録。研究開発費(二十六億ドル)を上回り最大
の支出項目になった。同社が総資産のおよそ三分の二を現預金など流動性資産で保有している
のも将来の自社株買いに充てるためだ。
 米国では会計基準の設定機関である米財務会計基準審議会(FASB)が「オプションは無
コストではあり得ない」とし、人件費コストとして損益へ反映させるよう主張している。
 四半期決算でストックオプションのコストを開示する義務はないが、マイクロソフトは「投
資家にとって重要情報と判断し、あえて詳細な資料を作った」(広報担当者)を説明する。ア
ナリスト説明会でオプションの副作用などを取り上げてきたことから、「投資家がにわかに動
揺することはない」としている。



自社株買いコスト 株高で問題に
【(日経)解説】
 ストックオプションが予想以上に大きなコストとなって企業にはね返る「ブーメラン効果」
は、欧州で早くから指摘されていた。
 欧州企業は米国ほど活用していないが、米国株での資産運用比率が高い投資家の間では、
米国の企業業績が「ストックオプション活用によって過大評価されているのではないか」との
懸念が広がっていた。世界同時株安に見舞われた先月末、米国株を反転させたきっかけの一つ
は、IBMが35億ドルの自社株買いを実施したこと。株が安くなったところですかざず自社
株を買えば、ブーメラン効果の負担を軽くできるからで、ストックオプションが株価の下支え
にもなることを示した。
 しかし、マイクロソフトやインテル、ペプシコなどのように経営陣ばかりか社員全員にオプ
ションを支給している企業にとっては、株価が高騰すれば自社株買いコストが財務上大きな問
題となる。
 企業会計では、オプション支給時はコストに計上しないから、その分、決算上の収益がかさ
上げされているともいえる。
「95年の米国全体のかさ上げ額は750億ドル」(A・スミザース氏)と試算する英エコノ
ミストもいる。米国内総生産(GDP)の1%、全米企業収益の2割に相当する。
 インテルやアップルの創業にかかわったベンチャーキャピタリストのA・ロック氏も「社員
の働きがいを高め、人材集めにも有効だったが、現金で支払う賃金を減らして代わりにオプシ
ョンを与えるのは邪道」と指摘している。実勢株価が行使価格を割り込んだKマートなどは、
オプションが紙くずになるのを避けようと行使価格を引き下げた。オプションをアクセルにし
てきた米企業の高収益に問題点があることが、マイクロソフトの試算で浮かび上がったといえ
る。(欧州総局編集委員 阿部重夫)

■ストックオプション
 自社株を前もって決めた価格(行使価格)で買える権利。
行使価格が100ドルなら、実勢株価が100ドルを上回った時点で権利行使すれば、実勢株
価と行使価格の差額が利益となる。
 通常、行使価格はオプションを支給する際の実勢株価に設定するため、企業にとって会計上
はコストに計上しない。ただ、株価が上昇して、行使価格を上回る株価で自社株を調達するこ
とになれば、その差額が企業のコストになる。
 マイクロソフトは、今回の試算では、ノーベル経済学賞を受賞したショールズ教授らの基本
モデルを使って過去の株価上昇トレンドなどをベースに将来の株価などを予測、七〜九月期に
支給したオプションについてコストを算定している。


























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