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労働時間等設定改善法と施行通達〔解釈〕
【資料のワンポイント解説】
1 改正法の目的は 「労使による労働時間等の設定の改善に向けた自主的な取組の促進」。平成4年9月1日施行の時短促進法(パート等短時間労働者の急拡大によって、名目上の時短目標に近いレベルをほぼ達成し、その役目を終えた。)の改正の形をとった事実上の新法。
2 ”労使による自主的な取組の促進”という言葉を聞いた途端に、”ああこれはどうかな”と思わざるを得ない状況が、今のわが国にある。ある団塊世代が言う−「とてもではないが、息子がつぶされそうだ!(一人息子をメンタルで潰されると取り返しがつかない)」と。際限のない長時間労働。持続可能性に疑問のある労働実態が大手を振ってまかり通る。親父世代が、若者に、挑戦でなく、撤退をアドバイスする現実は、異様である。
3 改正法は、最低基準たる労働基準法の適用除外を設定する方法として、労使による委員会等の決議を多用する。
しかし、過半数労働組合はまだしも、事業場の過半数代表者(個人の選出を想定しているように思われる)については、その権限の重大さゆえに選出後に孤立した判断を迫られる恐れもあり、改めて、その権限行使を担保することができるだけの制度上の意義付けと選出要件についての厳格さ(挙手等の曖昧な選出方法は疑問である)が検討されなければならない。
その場合でも、衛生委員会の活用には疑問が残る。衛生委員会の本来的な委員候補と労働時間設定に係る委員会の委員候補は、事業場内でも、もともと違った土俵で活躍している人材である可能性が高い。
さらに、前記の過半数代表者が事業主との書面による協定により、「衛生委員会に、当該事業場における労働時間等設定改善に関する事項を調査審議させ、事業主に対して意見を述べさせる」と定めることを要件としているが、衛生委員会は、あくまで事業主のために意見を述べるための機関であるから、これが、労働時間等の設定のための決議を行うことができるとするには、違和感は残る。
(時短促進法平成4年7月2日法律第90号、H4.9.1施行。改正法H17.11.2法律第108号、H18.4.1施行)
労働時間等設定改善法−目次
第一章 総則(1条−3条の2)
第二章 労働時間等設定改善指針等(4条・5条)
第三章 労働時間等の設定の改善の実施体制の整備等(6条・7条)
第四章 労働時間等設定改善実施計画(8条−14条)
附則
労働時間等設定改善指針
厚生労働省作成パンフレット(分りやすくまとめてあると思います)
「労働時間等設定改善法がスタートします」−労働者の健康と生活に配慮した労働時間等の設定に向けて−
労働時間等設定改善法(改正時短促進法H18.4.1施行)
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H18.4.1基発第0401006号「施行通達」
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第1章 総則 (目的) |
1 法改正の趣旨 年間総実労働時間は平成16年度には1834時間となり、時短促進法が掲げた1800時間という所期の目標をおおむね達成できたこと。 しかし、その内実をみると、全労働者平均の労働時間が短縮した原因は、主に、労働時間が短い者の割合が増加した結果であり、いわゆる正社員等については、依然として労働時間は短縮していないこと。一方、労働時間が長い者と短い者の割合が共に増加し、いわゆる「労働時間分布の長短二極化」が進展しており、全労働者を平均しての年間総実労働時間1800時間という目標を用いることは時宜に合わなくなってきたこと。そして、長い労働時間等の業務に起因した脳・心臓疾患に係る労災認定件数は高水準で推移していること。急速な少子高齢化、労働者の意識や抱える事情の多様化等が進んでいること。 このため、全労働者を平均しての一律の目標を掲げる時短促進法を改正し、労働時間の短縮を含め、労働時間等に関する事項を労働者の健康と生活に配慮するとともに多様な働き方に対応したものへと改善するための自主的取組を促進することを目的とする法としたものであること。 |
(定義) 第1条の2 この法律において「労働時間等」とは、労働時間、休日及び年次有給休暇(労働基準法(昭和22年法律第49号)第39条の規定による年次有給休暇として与えられるものをいう。以下同じ。)その他の休暇をいう。 2 この法律において「労働時間等の設定」とは、労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項を定めることをいう。 |
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(事業主等の責務) 第2条 事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。 2 事業主は、労働時間等の設定に当たっては、その雇用する労働者のうち、その心身の状況及びその労働時間等に関する実情に照らして、健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対して、休暇の付与その他の必要な措置を講ずるように努めるほか、その雇用する労働者のうち、その子の養育又は家族の介護を行う労働者、単身赴任者(転任に伴い生計を一にする配偶者との別居を常況とする労働者その他これに類する労働者をいう。)、自ら職業に関する教育訓練を受ける労働者その他の特に配慮を必要とする労働者について、その事情を考慮してこれを行う等その改善に努めなければならない。 3 事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する労働者の労働時間等の設定の改善に関し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めなければならない。 4 事業主は、他の事業主との取引を行う場合において、当該他の事業主の講ずる労働時間等の設定の改善に関する措置の円滑な実施を阻害することとなる取引条件を付けない等取引上必要な配慮をするように努めなければならない。 |
2 関係者の責務 (1) 事業主の一般的な責務 法は、主に事業主の労働時間等の設定の改善(以下「労働時間等設定改善」という。)に向けての自主的取組を促し、労働時間等設定改善を促進しようとするものであることから、事業主の責務を定めたものであること。 具体的には、事業場の労働時間等設定改善を図るため、例えば、フレックスタイム制や変形労働時間制の活用による業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備等の措置を講じるよう努めなければならないこととしたものであること。 (2) 特に配慮を必要とする労働者に対する事業主の責務 労働者の健康や生活上の事情により特に配慮を要する労働者に対して、その事情を考慮した労働時間等の設定を行う等の事業主の責務を定めたものであること。 具体的には、特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対して、休暇の付与その他の必要な措置を講じるように努めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者、単身赴任者、自ら職業に関する教育訓練を受ける労働者その他の特に配慮を必要とする事情を有する労働者に対して、その事情を考慮した労働時間等の設定を行う等、労働時間等設定改善に努めなければならないこととしたものであること。 (3) 事業主の団体の責務 事業主団体を構成している事業主にあっては、構成員である事業主が同一歩調で労働時間等設定改善を進めることが効果的であるので、そのような取組が促進されるよう事業主団体の責務を定めたものであること。 具体的には、事業主団体の構成員である事業主が労働時間等設定改善を進めやすくするため、方策の検討・実施等に関する事業主間の意見交換の場を設けることのほか、啓発資料の作成・配布、各種情報の提供等の援助を行うよう努めなければならないこととしたものであること。 (4) 事業主の取引上の配慮に関する責務 個々の事業主が労働時間等設定改善に取り組もうとしても、週末発注週明け納入等の短納期発注や発注内容の頻繁な変更等取引先との関係により、長時間労働を余儀なくされている状況がみられるところであることから、このような状況を改善するため、事業主がこうした取引条件を付すことにより他の事業主の労働時間等設定改善の取組を阻害することがないよう、納期の適正化、発注事務の円滑化、発注内容の明確化等について配慮することを責務としたものであること。 |
(国及び地方公共団体の責務) 第3条 国は、労働時間等の設定の改善について、事業主、労働者その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつその実情に応じてこれらの者に対し必要な指導、援助等を行うとともに、これらの者その他国民一般の理解を高めるために必要な広報その他の啓発活動を行う等、労働時間等の設定の改善を促進するために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めなければならない。 2 地方公共団体は、前項の国の施策と相まって、広報その他の啓発活動を行う等労働時間の短縮を促進するために必要な施策を推進するように努めなければならない。 |
(5) 国及び地方公共団体の責務 労働時間等設定改善は、労使のみならず国及び地方公共団体が一体として取り組むべき課題であるので、国及び地方公共団体の責務を定めたものであること。 具体的には、国の責務としては、労働時間等設定改善について広く国民の理解を促進するよう広報活動等を行うこと、労働時間等設定改善の円滑な実施を図るため、労働時間等設定改善指針を定めることをはじめとして法に規定する施策を実施すること等があり、また、地方公共団体の責務としては、国の施策と協力して、労働時間等設定改善について地域における住民の理解の促進及び機運の醸成を図るための広報活動や国に対する必要な情報提供等を行うこと等があること。 |
(適用除外) 第三条の二 この法律は、国家公務員及び地方公務員並びに船員法(昭和22年法律第100号)の適用を受ける船員については、適用しない。 |
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第2章 労働時間等設定改善指針等 (労働時間等設定改善指針の策定) |
3 労働時間等設定改善指針 (1) 労働時間等設定改善指針の策定 労働時間等設定改善は、行政及び労使が一体となって取り組むべき課題であるが、そのためには、事業主及びその団体の自主的取組が重要であるところ、事業主及びその団体が適切に対処するために留意すべき事項等を国が示すことが適当であることから、そうした事項等を内容とする労働時間等設定改善指針を厚生労働大臣が定めることとしたものであること。 労働時間等設定改善指針は、労使の自主的取組を進める上で参考となる事項を掲げたものであって、強制にわたるものではなく、そのすべての内容を実施する必要はないことに留意すること。 なお、労働時間等設定改善指針の内容については、本日から適用されたものであること。 (2) 労働時間等設定改善に関する事項についての要請 労働時間等設定改善については、労働時間等設定改善指針の内容を踏まえた適切な労働時間等設定改善の促進が十分に確保されるよう、関係団体に対する要請を規定したものであること。 具体的には、本省において、関係労使の全国レベルの団体に対して、指針に記載された事項が労使の間で十分具体化されるよう、労使が取り組むべき課題等について要請を行うことを予定していること。 (3) 労働時間等設定改善指針を解釈する際の留意点 イ 労使間の話合いの整備 労働時間等設定改善指針2(1)イ(ロ)において「このような労使間の話合いの機会を設けるに当たっては、委員会等の構成員について、労働者の抱える多様な事情が反映されるよう、性別、年齢、家族構成等並びに育児・介護、自発的な職業能力開発等の経験及び知見に配慮することが望ましい。」とされているところ、これは、事業主に対して次のことを期待していること。 (1) 事業主は、事業主を代表する者について、労働者の多様な事情を理解した者を選ぶこと。 (2) 労働者を代表する者についても、労働者の多様な事情を理解した者が選ばれることが望ましい旨、事業主は労働者等に助言すること。特に、当該労使間の話合いの機会として労働時間等設定改善委員会を活用するに当たっては、その旨を、労働時間等設定改善委員会の委員の半数を推薦する労働組合又は労働者の過半数を代表する者にも助言すること。この際、労働者を代表する者を選ぶことについての労働者の自主性を阻害しないこと。また、不当労働行為となる労働組合に対する支配又は介入になってはならないこと。 ロ 所定外労働の削減 労働時間等設定改善指針2(1)ニにおいて「また、所定外労働を行わせた場合には、代休の付与等により総実労働時間の短縮を図ること。」とされているところ、「代休の付与」とは、法定時間外労働については割増賃金を支払った上で代償措置として休日を与えるという趣旨であること。 |
(要請) 第5条 厚生労働大臣は、労働時間等の設定の改善のための事業主の取組の的確かつ円滑な実施のため必要があると認めるときは、関係団体に対し、労働時間等の設定の改善に関する事項について、必要な要請をすることができる。 |
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第3章 労働時間等の設定の改善の実施体制の整備等 (労働時間等の設定の改善の実施体制の整備) |
4 労働時間等設定改善実施体制の整備 (1) 趣旨 労働時間等設定改善を推進するためには、企業内において労働時間等をめぐる様々な問題について労使が日常的に話し合うとともに、話合いの成果を適切に実施するための体制を整備することが必要であることから、労働時間等設定改善のための施策等に関し労使協議を行う委員会の設置等企業内の労働時間等設定改善実施体制の整備を事業主の努力義務としたものであること。 そして、企業内の労働時間等設定改善に向けての話合いの成果をその企業の労働時間の諸制度に活かしていくことが重要であることから、一定の要件に適合する労働時間等設定改善委員会は、労使協定に代えて、その委員の5分の4以上の多数による議決により、変形労働時間制や時間外及び休日の労働等について決議を行い、実施することができることとしたものであること。また、当該労働時間等設定改善委員会については、厳格な要件を課しており適正な運営が担保されていることから、その決議について労働基準監督署長への届出を免除(ただし、時間外及び休日の労働に係る決議を除く。)したものであること。 また、労働時間等設定改善委員会を新たに設置せずとも、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第18条第1項の規定により設置された既存の衛生委員会(同法第19条第1項の規定により設置された安全衛生委員会を含む。以下同じ。)の活用も可能とすることで、労働時間等をめぐる様々な問題について労使が話し合うとともに、話合いの成果を適切に実施するための体制の整備を一層促進したものであること。 (2) 労働時間等設定改善実施体制の具体的内容 労働時間等設定改善実施体制は、事業場の実情に応じた形で整備されるべきものであるが、具体的には、委員会の設置、既存の衛生委員会の活用、推進者の選任、プロジェクトチームの組織化、労働組合との定期協議の実施、労使懇談会の開催等があること。 このような実施体制の整備にあたっては、労使双方の代表につき、労働者の多様な事情を理解した者が選ばれることが望ましいこと。 労働時間等設定改善実施体制の整備が事業主の努力義務とされたことに伴い、その整備が図られるようあらゆる機会を通じて周知を図ること。 また、衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなすことについては、本来の衛生委員会に比べ、委員の半数が労働者を代表する委員であることその他の要件も必要である(4(4)参照)ため、その適正な実施を確保するとともに、十分に周知を行うこと。 |
(労働時間等設定改善委員会の決議に係る労働基準法の適用の特例等) 二 当該委員会の議事について、厚生労働省令で定めるところにより、議事録が作成され、かつ、保存されていること。 三 前二号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件 2 労働時間等設定改善委員会が設置されていない事業場において、事業主が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第十八条第一項の規定により設置された衛生委員会(同法第十九条第一項の規定により設置された安全衛生委員会を含む。以下同じ。)であって次に掲げる要件に適合するものに、当該事業場における労働時間等の設定の改善に関する事項を調査審議させ、事業主に対して意見を述べさせることを定めたときは、当該衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなして、前項の規定を適用する。
一 当該衛生委員会の委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名されていること。
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(3) 労働時間等設定改善委員会の決議に係る労働基準法の適用の特例 イ 労働時間等設定改善委員会の要件 法第7条第1項により労働基準法の適用の特例の対象となる労働時間等設定改善委員会の要件は次のとおりであり、これらの要件の一つでも欠く場合には当該労働時間等設定改善委員会の決議について4(3)ハ(イ)及び(ロ)の特例の適用はないものであること。 (イ) 委員の半数が、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合(以下「過半数組合」という。)がある場合にはその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という。)の推薦に基づき指名されていること。 過半数代表者は、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則(以下「省令」という。)第1条により、下記のいずれにも該当する者であること。 (1) 労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。 (2) 法に規定する推薦をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。 (ロ) 省令第2条により、労働時間等設定改善委員会の議事について、開催の都度議事録が作成され、3年間保存されていること。 なお、労働時間等設定改善委員会の決議それ自体についても、もとより書面により保存すべきものであるが、これについては労働基準法109条に規定する「労働関係に関する重要な書類」に該当するものであり、同条により3年間保存しなければならないものであること。 (ハ) 省令第3条により、委員の任期、労働時間等設定改善委員会の招集、定足数、議事等を内容とする委員会の運営規程が定められていること。 ロ 委員の5分の4以上の多数の意味について 決議は委員の5分の4以上の多数によらなければならないものであるが、ここでいう「委員の5分の4以上の多数」とは、会議への出席の如何を問わず、当該労働時間等設定改善委員会の委員の全員の5分の4以上の多数を意味するものであること。 また、決議は書面にされることが必要であるが、ここでいう書面とは、4(3)イ(ロ)の議事録の一部で足りるものではなく、独立した書面となっていることが必要であること。 ハ 特例の内容 (イ) 4(3)イのすべての要件に適合する労働時間等設定改善委員会は、労働基準法に定める労使協定に代えて委員の5分の4以上の多数による決議により、 ・ 1カ月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2第1項) ・ フレックスタイム制(同法第32条の3) ・ 1年単位の変形労働時間制(同法第32条の4第1項) ・ 1週間単位の非定型的変形労働時間制(同法第32条の5第1項) ・ 一斉休憩の原則の例外(同法第34条第2項ただし書) ・ 時間外及び休日の労働(同法第36条第1項) ・ 事業場外労働に関するみなし労働時間制(同法第38条の2第2項) ・ 専門業務型裁量労働制(同法第38条の3第1項) ・ 年次有給休暇の計画的付与(同法第39条第5項) を行うことができること。 (ロ) 4(3)ハ(イ)の中で労働基準法上行政官庁への届出を要するもののうち、1カ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、事業場外労働に関するみなし労働時間制及び専門業務型裁量労働制に係る決議については、労働基準監督署長への届出を要しないものであること。 (ハ) 4(3)ハ(イ)の決議のうち、時間外及び休日の労働に係るものについては、労働基準法施行規則様式(以下「規則様式」という。)第9号の4により労働基準監督署長への届出が必要であること。また、時間外及び休日の労働に関し決議がなされ、事業場外労働に関するみなし労働時間制に関し協定がなされている場合には、両者を規則様式第9号の2により届け出ることはできず、それぞれ規則様式第9号の4及び規則様式第12号による届出が必要であること。 ニ 決議にかかる注意事項等 時間外及び休日の労働に係る決議については、時間外及び休日の労働に係る協定と同様、「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」に適合したものとなることが必要であり、当該決議についても、同基準に基づき、時間外及び休日の労働に係る協定と同様の指導を行うこと。 (4) 衛生委員会の活用 法第7条第2項により、衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなすための要件は次のとおりであり、これらの要件の一つでも欠く場合には当該決議について4(3)ハ(イ)及び(ロ)の特例の適用はないものであること。 イ 労働時間等設定改善委員会が設置されていない事業場であること。 ロ 事業主が、過半数組合がある場合にはその労働組合、ない場合には過半数代表者の間で書面による協定により、衛生委員会に、当該事業場における労働時間等設定改善に関する事項を調査審議させ、事業主に対して意見を述べさせることを定めたこと。 過半数代表者は、省令第4条が準用する同令第1条により、下記のいずれにも該当する者であること。 (1) 労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。 (2) 法に規定する推薦をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。 ハ 委員の半数が、当該事業場に過半数組合がある場合にはその労働組合、ない場合には過半数代表者の推薦に基づき指名されていること。 過半数代表者は、4(4)ロと同様の要件を充たすものであること。 ニ 省令第4条が準用する同令第2条により、当該衛生委員会の議事について、開催の都度議事録が作成され、3年間保存されていること。 なお、当該衛生委員会の決議それ自体についても、もとより書面により保存すべきものであるが、これについては、労働基準法109条に規定する「労働関係に関する重要な書類」に該当するものであり、同条により3年間保存しなければならないものであること。 ホ 省令第4条が準用する同令第3条により、委員の任期、当該衛生委員会の招集、定足数、議事等を内容とする委員会の運営規程が定められていること。 |
第4章 労働時間等設定改善実施計画 (労働時間等設定改善実施計画の承認)
二 前項第三号に掲げる事項が同項第一号に掲げる目標を確実に達成するために必要かつ適切なものであること。 三 一般消費者及び関連事業主の利益を不当に害するおそれがあるものでないこと。 四 当該労働時間短縮実施計画の実施に参加し、又はその実施から脱退することを不当に制限するものでないこと。
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5 労働時間等設定改善実施計画の承認 (1) 趣旨 我が国では、厳しい企業間競争の下で各企業の横並び意識が強いこと等により個々の企業が単独では労働時間等設定改善を進めることが困難であるという事情があることから、労働時間等設定改善を進めるためには業種の実情に応じた業界一体の自主的取組を促進するための仕組を整備することが有効であること。このため、同一の業種に属する2以上の事業主が共同して労働時間等設定改善をするための実施計画を作成し、それを的確に実施することができるような環境整備のために承認制度を設けることとしたものであること。 (2) 実施計画の承認申請 実施計画の承認を受けようとする同一の業種に属する2以上の事業主は、厚生労働大臣(13により権限の委任が行われる場合にあっては都道府県労働局長。以下同じ。)及び事業所管大臣(法第8条第1項に規定する当該業種に属する事業を所管する大臣をいい、13により権限の委任が行われる場合にあっては都道府県知事又は地方支分部局の長。以下同じ。)のそれぞれを宛名とする「労働時間等設定改善実施計画承認申請書」(様式第1号)を作成し、提出すること。ただし、宛名が空欄である場合又は宛名が誤っている場合であっても、都道府県労働局長(13により権限が委任された場合に限る。以下同じ。)は、申請事業主に説明し、同意を得た上で適切な補正又は修正を行い、申請書を受理すること。 実施計画の策定主体を「同一の業種に属する2以上の事業主」とした趣旨は、同業他社との横並び意識が労働時間等設定改善の阻害要因となっているという現実を踏まえ、これらの意識が「同一の業種」に属する事業主相互の間に生じやすいことから、これを克服して労働時間等設定改善を推進していこうとするものであること。したがって、「同一の業種」の判断にあたっては、日本標準産業分類の分類にとらわれず、例えば、工業団地、商店街、下請協力会その他の実態として競争関係や横並び意識の生じている事業主の集まりをできるだけ広く弾力的にとらえて差し支えないこと。なお、判断が困難な場合については、都道府県労働局長は事業所管大臣と協議すべきものであるが、具体的対応については、厚生労働本省に照会を行うこと。 イ 申請書の提出先 申請書の提出は、厚生労働大臣又は事業所管大臣のいずれか一方に行えば足りるものであり、都道府県労働局長が提出を受けた場合には速やかに事業所管大臣へ申請書を送付すること。なお、厚生労働大臣を宛名とする申請書であっても、都道府県労働局を経由して提出して差し支えないこと。また、事業の所管について疑義がある場合は都道府県労働局長は厚生労働本省に照会を行うこと。 ロ 申請書の提出部数 正本は宛名とされている申請先別に各1部を提出させること。併せて、それぞれの写しを各1部提出させること。 ハ 申請書の記載事項の確認 記載事項が漏れなく記載されているかどうか、確認すること。 なお、記載内容の確認に当たっては、以下の事項に留意すること。 (イ) 申請事業主 申請事業主すべてが名を連ねるのが原則であるが、代表者が記名押印し、申請事業主の名簿を添付するものとすることも差し支えないこと。 (ロ) 労働時間等設定改善促進措置の実施により達成しようとする目標 以下に掲げる目標その他の目標を一つ以上掲げていること。 a 労働時間の短縮 この場合には、さらに、総実労働時間の短縮、所定労働時間の短縮、所定外労働時間の削減、完全週休2日制の採用等休日の増加、年次有給休暇付与日数・取得日数の増加等細目の目標を一つ以上付していること。 b 健康上特に配慮を要する労働者について、労働者の健康回復のために必要な時間の確保 c 育児のための生活時間の確保 d 介護のための生活時間の確保 e 単身赴任者が家族と接する時間の確保 f 自発的な職業能力開発を図るための時間の確保 g 地域活動等を行うための時間の確保 (ハ) 労働時間等設定改善促進措置を実施する事業場 事業場の名称及び所在地を具体的に記載すべきものであるが、建設業等すべての事業場を具体的に特定するのが困難な業種においては、できる限り具体的に記載した上で事業場の所在の範囲を記載すれば足りるものであること。 (ニ) 労働時間等設定改善促進措置の内容、措置の実施時期 以下のaからgまでの各項目中に掲げられた内容その他の内容の一つ以上を定めていること。この場合には、その実施時期も定めていること。 a 労働時間の短縮を目標に掲げる場合 営業時間の設定、営業日数の短縮、営業時間の短縮、休日又は営業日の設定、変形労働時間制の採用、交替制の設定、ノー残業デーの設定、年次有給休暇の計画的付与制度の採用、取引先に対する発注方法等に関する要請 b 健康上特に配慮を要する労働者について、労働者の健康回復のために必要な時間の確保を目標に掲げる場合 病気休暇から復帰する労働者についての短時間勤務の導入、所定外労働が多い労働者についての代休やまとまった休暇の付与 c 育児のための生活時間の確保を目標に掲げる場合 育児休業制度の充実、子の看護のための休暇制度の充実、時間外労働の制限制度の充実、勤務時間短縮等の措置の充実、子どもの出生時における父親の休暇取得制度の整備 d 介護のための生活時間の確保を目標に掲げる場合 介護休業制度の充実、時間外労働の制限制度の充実、勤務時間短縮等の措置の充実 e 単身赴任者が家族と接する時間の確保を目標に掲げる場合 休日の前日の終業時刻の繰り上げ、休日の翌日の始業時刻の繰り下げ、休日前後の年次有給休暇の半日単位の付与、家族の誕生日についての休暇の付与 f 自発的な職業能力開発を図るための時間の確保を目標に掲げる場合 有給教育訓練休暇の付与、長期教育訓練休暇の付与、始業・終業時刻の変更、時間外労働の制限制度の充実 g 地域活動等を行うための時間の確保を目標に掲げる場合 特別な休暇の付与、年次有給休暇の半日単位の付与 ニ 申請書の添付書類 関係労働組合又は関係労働者の代表者(全事業場を通じて1名で足りる)の意見書(必ずしも添付する必要はない。) (3) 実施計画の承認 実施計画の承認については、以下の手続により進めること。 イ 承認要件の確認 申請された労働時間等設定改善実施計画に掲げられた目標が5(2)ハ(ロ)aである場合には、次の(イ)、(ハ)、(ニ)及び(ホ)の基準により、また、その他の目標である場合には、次の(ロ)、(ハ)、(ニ)及び(ホ)の基準により、承認要件の確認を行うこと。 (イ) 目標が5(2)ハ(ロ)aである場合 労働時間の短縮の目標が、労働時間等設定改善実施計画に係る事業場の労働者の労働時間等に関する実情に照らして適切なものであること。 a 目標が、法令等の基準を上回るものであること。 b 目標の水準が、現状から相当程度以上の労働時間の短縮を図るものであること。 「相当程度以上」とは、 (1) 総実労働時間については、概ね5%以上短縮するものであること、 (2) 所定労働時間については、概ね週1時間以上短縮するものであること、 (3) 所定外労働時間については、概ね10%以上短縮するものであること。 ただし、現状が当該業種に係る業界全体の実情から見て低すぎるときはそれ以上の努力が必要であること。なお、(1)から(3)はそれぞれ単独に判断すれば足りるものであり、必ずしもこれらのすべての記載を必要とするものではないこと。 c 相当の期間内に達成が見込まれること。 d 複数の細目の目標を定める場合には、その目標間相互が整合的なものであること。 e 細目の目標として総実労働時間の短縮を掲げていないときは、少なくとも総実労働時間を増加させるおそれのないことが必要であること。 (ロ) 目標が5(2)ハ(ロ)a以外のものである場合 その目標が、労働時間等設定改善実施計画に係る事業場の労働者の労働時間等に関する実情に照らして適切なものであること。 a 目標が、5(2)ハ(ロ)bからgまでに掲げたもののいずれかであること。それ以外の場合、労働者の生活と健康に資すると認められるものであること。 b 以下の例のような具体的な目標を掲げることは必要でないが、掲げている方が望ましいこと。 例えば、 (1) 健康上特に配慮を要する労働者について、所定労働時間を週5時間短縮する (2) 育児を行う労働者について、総実労働時間を週10時間短縮する c 相当の期間内に効果が出ると見込まれること。 d 他の目標として総実労働時間の短縮を掲げていないときは、総実労働時間を増加させるおそれが少ないことが必要であること。 (ハ) 労働時間等設定改善促進措置の内容及び実施時期が、目標を確実に達成するために必要かつ適切なものであること a 当該措置が、達成しようとする目標と密接に関連したものであって、かつ、目標達成のために効果的であること。 例えば、 (1) 所定内労働時間の削減を目標に掲げた場合であって、当該削減時間数に相当する営業時間の短縮を掲げているもの。 例) 1日の営業時間を○○時間とする しかしながら、営業方法、営業形態、取引関係等に関する措置であって達成しようとする目標と密接な関連性を有すると認められないもの(原則として、モデルチェンジの長期化、過剰包装の抑制はこれに該当する。)については、この要件に適合しないものであること。 (2) 育児のための生活時間の確保を目標に掲げた場合であって、勤務時間短縮等の措置の充実を掲げているもの。 例) 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、申し出ることにより、所定労働時間を午前9時から午後4時まで(うち休憩時間は、午前12時から午後1時までの1時間とする。)の6時間とすることができるものとする(1歳に満たない子を育てる女性従業員は更に別途30分ずつ2回の育児時間を請求することができるものとする。) b 当該措置が、事業場の実態からみて実現可能であること。 例えば、 (1) 休業日数を相当程度増加させる場合、採算性等の観点から経営が成り立たない場合は、この要件に適合しないものであること。 (2) 通常、休前日が繁忙を極め、人手不足になりがちなところ、単身赴任者について休前日の終業時刻を繰り上げる場合、代替要員の確保を行わないときは、この要件に適合しないものであること。 c 計画の策定主体である事業主が、当該計画の実施によって、下請事業主等の労働時間等に大きな影響を与える場合には、当該下請事業主等の労働時間等への配慮に関する適切な事項を含むこと。 d 目標が5(2)ハ(ロ)a以外のものである場合には、年次有給休暇の付与日数、育児休業等法令で下限が定められている措置については、法令等の基準を上回るものであること。 (ニ) 一般消費者及び関連事業主の利益を不当に害するおそれがあるものでないこと a 申請に係る事業主の供給する商品やサービスの市場占有率の程度 b 当該商品やサービスの必需性、非代替性の度合い c 閉店輪番制等の採用等、商品やサービスの安定した供給を担保するための代替措置の有無 を総合的に勘案して、判断するものとすること。 例えば、統一的な休業日の設定について (1) 当該商品やサービスの必需性の度合いが高くないか、又は代替品の利用が可能であればこの要件に適合するものであること。 (2) 当該商品やサービスを供給する事業主の所在の状況からみて、申請に係る事業主のグループに属さない事業主による当該商品等の供給により消費者の利益が損なわなければこの要件に適合するものであること。 (3) (2)に該当しない場合であっても、閉店輪番制等によって消費者の利益が損なわれなければこの要件に適合するものであること。 (4) また、休業日の設定日の如何によって需要者のニーズが大きく左右される場合には、この点も考慮すること。 (5) なお、当該地域における当該業界の日曜休日が一般化している実情にある場合において日曜休日を設定するようなときは、概ねこの要件には適合するものであること。 (ホ) 労働時間等設定改善実施計画の実施に参加し、又はその実施から脱退することを不当に制限しないこと 例えば、過度の違約金を課すことによって実施計画への参加の強制、脱退の制限をするものは「不当に制限」するに該当するが、単に参加することや脱退しないことを説得するにとどまるような場合には「不当に制限」するものに該当しないこと。 なお、以上5(3)イ(イ)から(ホ)までの承認要件の判断は、申請事業主の数に影響されるものではないが、申請事業主の当該業種におけるシェアが極めて小さい等他の事業主が実施計画に参加しなければ実効性を上げることが期待できないような場合には、他の事業主に実施計画への参加を呼びかけるよう申請事業主に助言を行うこと。 また、これらの承認要件は、厚生労働大臣及び事業所管大臣がそれぞれ確認するものであり、都道府県労働局長は、承認要件に適合するかどうかの判断を事業所管大臣に通知するとともに、事業所管大臣の判断を確認すること。承認は、両者が承認要件に適合する旨の判断をした場合に限り行うものであるが、都道府県労働局長は、実際に事業所管大臣の判断と異なった場合には、調整を行うよう努めること。 さらに、労働時間等設定改善促進措置に、中小企業者を当事者とする取引関係に関する記述が含まれる場合には、都道府県労働局長は、経済産業局長に協議を行うこと。 ロ 承認要件に適合しない場合の取扱い 実施計画に記載された事項が承認要件に適合しない場合には、その事項、要件及び理由を明らかにして申請事業主にその旨伝えるとともに、必要に応じ承認要件に適合することとなるよう助言指導を行うこと。申請事業主が助言指導に応じず、承認要件に適合するに到らないことが明らかとなった場合には、承認を行わない旨を理由を添えて様式第3号により申請事業主に通知すること。 ハ 公正取引委員会との調整 承認に当たって、必要があると認めるときは、公正取引委員会に申請書の写しを送付し意見調整を行うこと。 (イ) 「必要があると認めるとき」の判断基準 「必要があると認めるとき」とは、独占禁止法上の問題が生ずる可能性がある場合をいうこと。 ただし、申請事業主から要請があった場合は「必要があると認めるとき」に該当するものとして扱うこと。 なお、この点に関し疑義がある場合には公正取引委員会に事実上の相談を行うこと。ただし、承認に係る運用が定着するまでの間は、承認要件に適合すると判断した案件すべてについて、公正取引委員会に事実上の相談を行うものとすること。 (ロ) 公正取引委員会に対して述べる意見の具体的内容 労働時間等設定改善促進措置に係る競争の状況に関する事項について必要な意見を述べること。 具体的には、承認要件について確認した事項に即して、 a 労働時間等設定改善の目標が適切であり、その目標実現のために実施計画の措置が必要かつ有効なものであること、 b 措置の実施が需要者の利益を不当に害するものでないこと、 c 当該計画の実施への参加又は脱退を不当に制限するものでないこと 等について意見を述べること。 (ハ) 公正取引委員会から意見がある場合の対応 公正取引委員会から、実施計画に対し異論がない旨の回答があった場合には、実施計画の承認の手続を進めること。 公正取引委員会から、労働時間等設定改善促進措置が独占禁止法上の問題があると思料される旨の意見の陳述があった場合には、公正取引委員会と意見の調整を行いつつ、必要に応じ当該意見を踏まえて、独占禁止法上の問題を解消するよう申請事業主に対し助言指導を行うこと。その結果、申請事業主がその助言指導に応じ、実施計画が独占禁止法上の問題が解消された場合に限り承認を行うことができること。それ以外の場合については、5(3)ロに準じ、申請事業主に対し承認しない旨の通知を行うこと。また、公正取引委員会より問題がある旨の意見を受理した場合にあっては、対応について厚生労働本省に相談すること。 (ニ) 公正取引委員会から意見がない場合の対応 公正取引委員会は、「必要があると認めるとき」に意見を述べるものであるので、厚生労働大臣及び事業所管大臣が意見を述べた後相当期間経過後にも公正取引委員会からの意見の陳述がない場合には、十分に時間的な余裕を置いた後に事実上の確認を行った上で意見がないものとして取り扱って差し支えないこと。 (ホ) ここでいう公正取引委員会は、実施計画に記載された事業場のすべてが一の地方事務所の管轄地域内にある場合には、当該区域を管轄する地方事務所長を指すものとすること。 ニ 審議会の意見聴取 都道府県労働局長は、5(3)ハの手続が終了し、実施計画を承認して差し支えないと判断するに到った段階で地方労働審議会の意見聴取を行うこと。 ホ 労働者の意見聴取 労働者の意見聴取は、実施計画の申請書への関係労働組合又は関係労働者の代表者の意見書の添付によるものとするが、添付されていない場合にあっては、実施計画の申請があった旨を公示し関係労働組合又は関係労働者の代表者の意見書の提出を求めることにより行うものとすること。当該公示に基づき意見書の提出があった場合には、その写しを事業所管大臣に送付すること。 ヘ 承認の通知 5(3)イからホのすべての手続きが終了し承認することが適当と判断されるに到ったときは、「労働時間等設定改善実施計画承認通知書」(様式第2号)を申請事業主に交付すること。また、当該承認通知書の写しを公正取引委員会に送付すること。その際、当該承認通知書に係る実施計画のうち、申請書の写しを公正取引委員会に送付しなかったものについては、当該申請書の写しを添付すること。 |
(労働時間等設定改善実施計画の変更等) 第9条 前条第一項の承認を受けた者(以下「承認事業主」という。)は、当該承認に係る労働時間等設定改善実施計画を変更しようとするときは、厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣の承認を受けなければならない。 2 厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、前条第一項の承認をした労働時間等設定改善実施計画(前項の規定による変更の承認があったときは、その変更後のもの。以下「承認計画」という。)が同条第三項の基準に適合するものでなくなったと認めるときは、承認事業主に対して、当該承認計画の変更を指示し、又はその承認を取り消さなければならない。 3 前条第三項の規定は、第一項の承認について準用する。 |
6 労働時間等設定改善実施計画の変更の承認 実施計画の変更の承認を受けようとする同一の業種に属する2以上の事業主は、「労働時間等設定改善実施計画変更承認申請書」(様式第4号)を作成し、厚生労働大臣及び事業所管大臣あて提出すること。 承認申請の手続き(5(2)イ及びロ参照)及び承認要件等(5(3)イ、ロ及びハ参照)は、変更の承認の場合について準用すること。変更の承認をした場合には、変更承認通知書(様式第5号)により申請事業主に対し通知すること。 (1) 変更の承認が必要な場合 イ 実施計画に参加する事業主に変更がある場合 ロ 労働時間等設定改善促進措置の実施により達成しようとする目標を変更する場合 ハ 労働時間等設定改善促進措置を実施する事業場を変更する場合 ニ 労働時間等設定改善促進措置の内容、実施時期を変更する場合 なお、例えば、申請事業主に関する事項(事業場の名称、所在地、代表者、常用労働者数)の変更の場合は、「労働時間等設定改善実施計画変更届出書」(様式第4号)の届出で足りること。この届出については、変更事由の発生が頻繁である等により変更の生じた都度行うことが困難な場合には、1年以内の範囲内の変更事由の発生を一括して届け出ることができるものであること。 (2) 変更承認申請書の添付書類 変更後の内容を記載した「労働時間等設定改善実施計画承認申請書」 7 労働時間等設定改善実施計画の変更の指示、取消 |
(公正取引委員会との関係) 第10条 厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、第八条第一項の承認(前条第一項の規定による変更の承認を含む。以下この条において同じ。)をしようとする場合において、必要があると認めるときは、当該承認に係る申請書の写しを公正取引委員会に送付するとともに、公正取引委員会に対し、当該労働時間等設定改善実施計画に定める労働時間等設定改善促進措置に係る競争の状況に関する事項、当該労働時間等設定改善促進措置の実施が当該競争に及ぼす影響に関する事項その他の必要な事項について意見を述べるものとする。 2 公正取引委員会は、必要があると認めるときは、厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣に対し、前項の規定による送付に係る労働時間等設定改善実施計画について意見を述べるものとする。 3 公正取引委員会は、第一項の規定による送付に係る労働時間等設定改善実施計画であって厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣が第八条第一項の承認をしたものに定めるところに従ってする行為につき当該承認後私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定に違反する事実があると思料するときは、その旨を厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣に通知するものとする。 4 厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、前項の規定による通知を受けたときは、公正取引委員会に対し、当該承認後の労働時間等の動向及び経済的事情の変化に即して第一項に規定する事項について意見を述べることができる。 5 厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、第三項の規定による通知を受けた場合において、当該通知に係る承認計画が前条第二項に規定する場合に該当することとなるときは、当該承認計画につき、同項に規定する措置をとるものとする。 6 厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、前条第二項の規定により第一項の規定による送付に係る承認計画の承認を取り消したときは、公正取引委員会に対し、その旨を通知するものとする。 |
8 労働時間等設定改善実施計画の承認後の公正取引委員会との関係 (1) 公正取引委員会より、独占禁止法に違反する事実があると思料する旨の通知があった場合、厚生労働大臣及び事業所管大臣は、労働時間等の動向及び経済的事情の変化に即して意見を述べることができること。したがって、公正取引委員会から通知があった場合には、都道府県労働局長は、承認事業主の事業場の労働時間等の動向及び経済的事情の変化(需要の変化及び今後の動向、市場占有率の変化)等に関して承認事業主から報告を徴収し、これに基づき意見を述べるものとするが、具体的な対応については厚生労働本省と協議の上行うこと。 (2) この場合、都道府県労働局長は、承認事業主に対し必要に応じ承認要件に適合するよう助言指導を行うこと。承認要件に適合しないことが明らかとなった場合には、承認を取り消し、その旨を承認事業主及び公正取引委員会に通知すること。 |
(援助等) 第11条 厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、承認計画の的確な実施を確保するため、承認事業主に対し、必要な情報及び資料の提供、承認計画の実施に関する助言を行う者の派遣その他必要な援助を行うように努めるものとする。 2 厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、承認事業主による承認計画に定める労働時間等設定改善促進措置の円滑な実施を図るため特に必要があると認めるときは、当該承認事業主と取引関係がある事業主又はその団体に対し、労働時間等の設定の改善を促進するために必要な協力を要請することができる。 |
9 承認事業主への援助 法第11条第1項に基づく援助については、都道府県労働局において実施することとしており、当該援助の内容については別途指示することとしていること。 10 取引先事業主等への協力要請 |
(報告の徴収等) 第12条 厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、承認事業主に対し、承認計画の実施状況について報告を求めることができる。 2 承認事業主が前項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたときは、厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、当該承認計画の承認を取り消すことができる。 3 第10条第6項の規定は、前項の規定による承認計画の承認の取消しについて準用する。この場合において、第10条第6項中「第1項」とあるのは、「第10条第1項」と読み替えるものとする。 |
11 報告の徴収 (1) 実施計画の承認後に公正取引委員会から問題がある旨の意見を受理した場合又は実施計画が適正に実施されていない疑いが生じた場合等には、承認事業主に対し実施計画の実施状況について報告を求めること。 (2) 承認事業主は、実施計画の実施が完了した場合には「承認実施計画実施結果報告書」(様式第7号)を承認者あて提出すること。 12 事業所管大臣との調整等 |
(厚生労働大臣の権限の委任) 第13条 第8条から前条までに規定する厚生労働大臣の権限は、政令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。 2 前項の規定により第八条に規定する厚生労働大臣の権限が都道府県労働局長に委任された場合には、同条第四項中「労働政策審議会」とあるのは、「都道府県労働局に置かれる政令で定める審議会」とする。 |
13 権限の委任 5から11(9を除く。)までの厚生労働大臣及び事業所管大臣の権限は下記により委任するものであること。 (1) 厚生労働大臣の権限は、労働時間等設定改善実施計画に記載される事業場のすべてが一都道府県内にある場合には、都道府県労働局長に委任するものであること。 なお、都道府県労働局長は権限が委任されない場合であっても、必要に応じて厚生労働大臣が指定する都道府県労働局長に事務処理を委任することがあり得るものであること。 (2) 事業所管大臣の権限は、労働時間等設定改善実施計画に記載される事業場のすべてが一都道府県内にある場合(次のイからホに係る事業の場合を除く。)には、都道府県知事に委任するものであること。 イ 内閣総理大臣の所管に属する事業(当該事業に係る内閣総理大臣の権限が法令に基づき金融庁長官に委任されているもの(中小企業等協同組合法第9条の8第1項及び第2項の事業であって信用協同組合が行うもの並びに同法第9条の9第1項第1号の事業であって協同組合連合会が行うもの並びに貸金業の規制等に関する法律第2条第1項に規定する貸金業を除く。)に限る。) ロ 総務大臣の所管に属する事業 ハ 財務大臣の所管に属する事業 ニ 経済産業大臣の所管に属する事業 ホ 国土交通大臣の所管に属する事業(次に掲げるものに限る。) ・ 廃油処理事業 ・ 倉庫業その他の保管事業 ・ 貨物利用運送事業 ・ 石油パイプライン事業 ・ 観光事業(旅行業(本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)を実施しないものに限る。)、旅行業者代理業及び通訳案内に関する事業(その事業場の所在地の属する都道府県の知事の登録を受けた地域限定通訳案内士のみにより行われるものに限る。)を除く。) ・ 鉄道、軌道及び索道による運送事業 ・ 鉄道、軌道及び索道の用に供する車両、信号保安装置その他の陸運機器の製造に関する事業 ・ 道路運送事業その他の道路運送に関する事業 ・ 自動車ターミナル事業 ・ 自動車の整備事業 ・ 軽車両及び自動車用代燃装置の製造に関する事業 ・ 自動車販売事業 ・ 水上運送事業 ・ 港湾運送事業 ・ 造船に関する事業 ・ 航空に関する事業(航空機及びその装備品の生産(修理については、航空機製造事業者の行うものに限る。)に関するものを除く。) (3) 事業所管大臣のうち、次の表(省略)の事業の欄に掲げる者の権限は、労働時間等設定改善実施計画に記載される事業場のすべてが同表の区域の欄に定める区域内にある場合(13(2)により都道府県知事に委任される場合を除く。)には、同表の機関の欄に定める地方支分部局の長に委任するものであること。 |
(都道府県が処理する事務等) 第十四条 第八条から第十二条までに規定する当該業種に属する事業を所管する大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。 2 第八条から第十二条までに規定する当該業種に属する事業を所管する大臣の権限は、政令で定めるところにより、その一部を地方支分部局の長に委任することができる。 |
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附則
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日(H04政令289により、H04.9.1)から施行する。 附則 (平成五年七月一日法律第七九号) (施行期日) 附則 (平成五年一一月一二日法律第八九号)
附則 (平成九年三月三一日法律第一七号)
附則 (平成九年六月一八日法律第九二号)
附則 (平成一〇年九月三〇日法律第一一二号)
附則 (平成一一年七月一六日法律第八七号)
附則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号)
附則 (平成一三年三月三一日法律第二五号)
附則 (平成一三年四月二五日法律第三五号)
附 則 (平成十五年七月四日法律第百四号) (施行期日) 附 則 (平成十七年十一月二日法律第百八号) (施行期日) (労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正に伴う経過措置) 第七条 施行日前に旧時短促進法第八条第一項の規定により承認を受けた労働時間短縮実施計画(旧時短促進法第九条第一項の規定による変更の承認があったときは、その変更後のもの)又はこの法律の施行の際現に旧時短促進法第八条第一項若しくは第九条第一項の規定によりされている承認の申請は、それぞれ労働時間等設定改善法第八条第一項の規定により承認を受けた労働時間等設定改善実施計画又は同項若しくは労働時間等設定改善法第九条第一項の規定によりされている承認の申請とみなす。 第八条 旧時短促進法第十四条第二項に規定する労働時間短縮支援センター(以下「労働時間短縮支援センター」という。)がこの法律の施行の際現に有する権利及び義務のうち、旧時短促進法第十七条第一項に規定する業務の遂行に伴い労働時間短縮支援センターに属するに至ったもの(資産にあっては、政令で定めるものに限る。)は、この法律の施行の時において国が承継する。 第九条 旧時短促進法第二十条の規定による報告で、施行日前に行われていないものについては、なお従前の例による。この場合において、同条の規定による報告は、厚生労働大臣に対して行うものとする。 第十条 労働時間短縮支援センターの施行日の前日を含む事業年度に係る事業報告書、貸借対照表、収支決算書及び財産目録の作成については、厚生労働大臣が従前の例により行うものとする。 (罰則の適用に関する経過措置) (その他の経過措置の政令への委任) |