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平成9年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)
退職金、年金及び定年制事情調査(平成9年6月調査)
【資料のワンポイント解説】
1、本資料は、中央労働委員会事務局調査の「退職金、年金及び定年制事情調査結果の概要」である(平成10年4月公表)。よくも悪くも、わが国の雇用慣行を特徴付けている「1,000人以上の大企業の退職金・年金制度の現況」を知る上で貴重な調査資料と言えよう。
2、調査対象等は以下のとおり。
○調査対象企業:原則として、資本金5億円以上、労働者数1000人以上(対象企業数543社)
○回答状況:回答企業数383社(集計対象に係る企業383社)。回答率は70.5%(同71.0%)
○対象労働者:臨時・日雇・パート労働者等を除く全労働者(一部企業は組合員のみの場合がある。)
3、調査結果の概要に付属している統計表は別のページに掲載したので、併せて参照してください。
1 退職金制度
退職金制度の採用状況をみると、「退職一時金制度のみ」9社(集計企業362社の2.5%)、「退職年金制度のみ」15社(同4.1%)、「退職一時金制度と退職年金制度の併用」338社(同93.4%)となっている。
また、退職年金制度を採用している企業について、その種類をみると、「適格年金制度」255社(退職年金制度採用企業353社の72.2%)、「非適格年金制度」16社(同4.5%)、「調整年金制度」147社(同41.6%)となっている(重複回答)。
2 退職一時金制度
(1)退職一時金算定基礎
イ 退職一時金の算定方法
退職一時金の算定基礎と賃金の関係をみると、賃金を用いて退職一時金算定基礎給を定めている企業(「賃金を算定基礎に用いる」と回答した企業)が222社(退職金一時金制度採用企業の347社の64.0%)、別建てとして定めている企業(「賃金を算定基礎に用いない」と回答した企業)が123社(同35.4%)となっており、別建てとする企業の割合は長期的にみて増加傾向にある。
また、別建てとして定めている企業の算定方式をみると、「点数方式」(職能等級、勤続年数等を点数に置き換えて退職一時金を算定する方式)54社(「賃金を算定基礎に用いない」と回答した企業123社の43.9%)が最も多く、次いで「別テーブル方式」(算定基礎額を賃金と分離し、別の体系又はテーブルにしている方式)53社(同43.1%)、「定額方式」(勤続年数別、退職事由別等で退職一時金額を事前に定めている方式)7社(同5.7%)となっている。
ロ 退職一時金算定基礎給の所定内賃金に占める割合
賃金を算定基礎に用いている企業について、退職一時金算定基礎給の所定内賃金に占める割合別に企業数の分布をみると、所定内賃金に占める基礎給の割合が「70%以上80%未満」が最も多く、27社となっている。しかし、その構成比は、わずか16.7%に過ぎず、所定内賃金に占める算定基礎給の割合の高い企業から低い企業まで全般に幅広く分布している。
「賃金を算定基礎給に用いる」と回答した企業222社について所定内賃金に占める退職一時金算定基礎給の割合の平均値を算出すると63.1%となっている。
ハ 賃金改定と退職一時金算定基礎給との関係
賃金改定(賃上げ(ベースアップ)及び昇給(定期昇給))が行われた場合、退職一時金算定基礎給に制度上どのように繰り入れられるかを賃金を用いて退職一時金算定基礎給を定めている企業についてみると、賃上げ(ベースアップ)分については、「退職一時金算定基礎給となる賃金項目に配分された額は自動的に全額ハネ返る」企業は110社、賃金を退職一時金の算定基礎に用いている企業222社の49.5%)と最も多く、次いで「退職一時金算定基礎給となる賃金項目に配分された額の一部が自動的にハネ返る」企業が52社「同23.4%)、「退職一時金算定基礎給への繰り入れはその都度労使協議して決める」企業が24社(同10.8%)、「退職一時金算定基礎給を据え置き賃金改定額は全く算入しない」企業が9社(同4.1%)などとなっている。
また、昇給(定期昇給)分についてみると、「退職一時金算定基礎給となる賃金項目に配分された額は自動的に全額ハネ返る」企業は134社(同60.4%)と最も多く、次いで「退職一時金算定基礎給となる賃金項目に配分された額の一部が自動的にハネ返る」企業が43社(同19.4%)、「退職一時金算定基礎給への繰り入れはその都度労使協議して決める」企業が14社(同6.3%)などとなっている。
二 賃金改定額と退職一時金算定基礎給への繰入額
賃金を用いて退職一時金算定基礎給を定めている企業の平成9年の賃金改定額(ベースアップ額+定期昇給額)は8、804円で、このうち退職一時金算定基礎給に繰り入れられた額は6、212円となっている。
賃金改定額に占める退職一時金算定基礎給に繰り入れられた額の割合(繰入率)は70.6%である。
(2) 退職一時金支給率
退職一時金の支給率は、勤続年数や退職事由別に各社各様に決められており、回答をそのまま単純に集計できないため、この調査では、各企業ごとに勤続3年の支給率を1.0として各勤続年数ごとに倍率に換算し、集計している。
集計の結果をみると、定年退職に係る支給率は、勤続5年で勤続3年の1.8倍、同10年で4.3倍、同15年で7.7倍、同20年で11.9倍、同25年で16.7倍、同30年で21.7倍、同36年で24.5倍、同40年で26.5倍となっている。
また、自己都合退職に係る退職一時金支給率について、定年退職に係る退職一時金支給率に対する割合を勤続年数別にみると、勤続3年では、50.9%と定年退職の支給率の約2分の1程度にすぎないが、勤続年数が高まるにしたがって、この割合は増加し、同40年では91.7%と、定年退職の支給率と自己都合退職の支給率との格差は1割弱程度まで縮小している。
3 適格年金制度
(1)適格年金原資
適格年金制度を採用している企業について年金原資の拠出状況をみると、「使用者が全額拠出している」企業が223社(適格年金制度採用企業255社の87.5%)、「使用者と労働者双方が拠出している」企業は29社(同11.4%)となっている。
また、使用者と労働者双方拠出の企業について、労働者の平均拠出割合をみると26.9%となっている。
(2)年金加入資格要件
年金の加入資格要件は、「入社と同時」の企業が127社(適格年金制度採用企業255社の49.8%)で最も多く、次いで「勤続年数を要件とする」企業が66社(同25.9%)、「年齢を要件とする」企業が33社(同12.9%)、「勤続年数及び年齢を要件とする」企業が15社(同5.9%)、「その他」の企業が10社(同3.9%)となっている。
なお、勤続年数を要件とする企業について、その必要とされる勤続年数の平均は4.1年となっており、また、年齢を要件とする企業について、その条件とされる年齢の平均は28.8歳である。
(3)受給資格
年金の受給資格は、「退職事由に関係なく加入期間や年齢などの資格要件を決めている場合」と「退職事由別に決めている場合」に分けられるが、前者は適格年金制度採用企業のうち127社(適格年金制度採用企業255社の49.8%)、後者は124社(同48.6%)となっている。
また、後者のうち定年退職者のみに受給資格のある企業は92社となっており、適格年金制度採用企業36.1%を占めている。
受給資格を得るために必要とされる加入期間の年数をみると、「20年以上25年末満」の加入で得られる企業が退職事由による受給資格の区別「なし」が68.4%、「あり」が61.1%を占めている。
(4)年金支給開始年齢
年金の支給開始年齢をみると、「定年年齢時より支給する」企業が196社(適格年金制度採用企業255社の76.9%)と最も多く、次いで「労働者の選択により支給する」企業が41社(同16.1%)となっており、「定年年齢後据置き一定年齢より支給する」企業はわずか1社(同0.4%)だけである。
(5)年金支給期間
年金加入期間と年金支給期間との関係をみると、「年金加入期間にかかわらず支給期間は同じ」企業が203社(適格年金制度採用企業255社の79.6%)で適格年金制度採用企業の大部分を占めており、次いで「退職者が支給期間を選択する」企業が3 5社(同13.7%)、「年金加入期間により支給期間は異なる」企業が13社(同5.1%)となっている。
定年退職者に対する年金の支給期間をみると、「有期」の企業が198社で適格年金制度採用企業255社の77.6%と4分の3を占め、「終身」の企業は53社(同20.8%)となっている。
「有期」の企業について、その期間(加入期間により支給期間が異なる企業については最長の支給期間を集計)をみると、「10年」の企業が116社(「有期」の企業198社の58.6%)と最も多く、次いで「15年」が74社(同37.4%)で、この両者で9割を超えている。
また、「有期」企業の平均支給期間は12.0年となっている。
年金加入期間により支給期間が異なる企業及び退職者が支給期間を選択できる企業48社について、最短支給期間をみると、回答のあった45社のうち「10年」の企業が28社(62.2%)、「5〜9年」が13社(28.9%)などとなっており、平均支給期間9.1年となっている。
(6)年金支給期間中の年金額の増減
年金支給期間中の年金額の増減の有無をみると、「いくつかの型を労働者に選択させる」企業が18社(適格年金制度採用企業255社の7.1%)、「増額する」企業が12社(同4.7%)、「減額する」企業が7社(同2.7%)となっており、「増額なし」の企業が209社(同82.0%)と大部分を占めている。
なお、年金支給期間中に残余期間の年金を一括して受給できる制度を設けている企業は218社(同85.5%)となっている。
(7)脱退一時金制度
年金受給資格発生前に退職した場合の脱退一時金の支給(企業年金基金からの支給)の有無についてみると、「あり」と回答のあった企業が142社(適格年金制度採用企業255社の55.7%)、「なし」の企業が110社(同43.1%)となっている。
(8)退職年金の一括払い(一時金)選択制度
退職年金の一括払い(一時金)選択制度(労働者が退職時に退職年金の支給について、年金払い方式か一括払い(一時金)かを選択できる制度)を採用している企業は246社で、適格年金制度採用企業255社の96.5%の大部分を占めており、選択制度を採用していない企業は6社(2.4%)と少ない。
退職年金の一括払い(一時金)選択制度採用企業における適格年金受給資格者(平成8年1カ年間に退職した受給資格者)のうち退職年金の一括払いを選択した者の割合をみると、平均で55%となっている。
なお、一括払い承認の条件をみると、「申し出があれば理由にかかわらず認める」企業が143社で一括払い選択制度を採用する企業246社の58.1%、「理由により認める(原則として特別の事情以外は一括払いを認めない場合を含む。)」企業が103社(同41.9%)となっている。
(9)遺族給付(配偶者)
配偶者に対する遺族給付については、「制度あり」の企業が適格年金制度採用企業255社のうち248社(97.3%)と大部分を占めている。
遺族給付の支給形態をみると、「年金継続か、一時払いのいずれかを遺族に選択させて支給」する企業が130社(遺族給付制度のある企業248社の52.4%)が最も多く、次いで「一時払いに切り替えて支給」する企業が77社(同31.0%)となっており、「年金として支給(終身支給・有期支給)」する企業は41社(同16.5%)となっている。
4 退職金
(1)退職事由別平均退職金支給額
定年退職者の一人平均退職金支給額は、平成7年調査に比べ2.9%増の19、176千円となっている。
(2)モデル退職金
会社都合により退職した場合の男子のモデル退職金額(学校を進学、卒業後直ちに入社し、その後、標準的に昇進した者の退職金。退職年金制度を併用する場合は退職年金現価額を含む。)を55歳時点についてみると、大学卒事務・技術26、355千円(平成7年26、171千円)、高校卒事務・技術23、324千円(同23、632千円)などとなっている。また、60歳時点(記入のあるほとんどの会社が60歳定年制)についてみると、大学卒事務・技術28、379千円(同28、797千円)、高校卒事務・技術24、042千円(同24、708千円)などとなっている。
平成7年と比較すると、高校卒生産及び中学卒生産においては各勤続年数で7年より増額となったが、高校卒事務・技術では各勤続年数で、また、大学卒事務・技術では勤続30年及び38年で7年より減額となった。
なお、定年退職した場合(60歳定年制以外の会社も含む。)の男子のモデル退職金についてみると、大学卒事務・技術28、568千円(平成7年28、870千円)、高校卒事務・技術24、659千円(同24、943千円)などとなっている。平成7年に対する上昇率をみると、大学卒事務.技術が-1.0%、高校卒事務・技術が-1.1%などとなっている。
モデル退職金の月収換算(退職時の所定内賃金に対する倍率)をみると、勤続10年では大学卒事務・技術7.1カ月分、高校卒事務・技術7.0カ月分、勤続30年ではそれぞれ34.4カ月分、34.1カ月分となっており、これらの勤続年数では学歴による差はほとんどみられない。55歳時点では、大学卒事務・技術38.6カ月分、高校卒事務・技術42.3カ月分などとなっている。
モデル退職金の学歴間格差をみると、55歳時点では、大学卒事務・技術100に対し、高校卒事務・技術88.5(平成7年90.3)、60歳時点では高校卒事務・技術84.7(同85.8)となっている。なお、定年退職の場合は高校卒事務・技術86.3(同86.4)となっている。
年金併給制をとる企業についてみると、男子55歳大学卒事務・技術の会社都合の退職金総額は26、355千円で、うち一時金部分は18、386千円、退職年金原価額部分は7、969千円となり、一時金部分の割合は69.8%と平成7年調査に比べ1.0ポイント上昇している。
一時金部分の割合は、男子55歳高校卒事務・技術の会社都合についてみても70.9%と平成7年調査に比べ0.5ポイント上昇している。
(3)6 0歳定年企業における退職一時金の取扱い
6 0歳定年企業で退職一時金制度を採用している企業のうち、「退職一時金は定年時まで増額する」企業は256社(集計企業の341社の75.1%)である。この中で「退職一時金算定基礎給及び支給率とも上昇する」企業は97社(同28.4%)にとどまっており、「退職一時金算定基礎給又は支給率のいずれかを固定する」企業が108社(同31.7%)、さらに、「一定年齢又は一定勤続年数で退職一時金を固定する」企業が85社(同24.9%)などとなっており、退職金の増加額を何らかの形で抑制する企業は併せて193社(同56.6%)と過半数を超えている。
支給率や基礎給などを固定する年齢又は勤続年数の平均を算出してみると、「退職一時金算定基礎給は上昇、支給率を一定年齢・一定勤続年数で固定する」企業では年齢55.0歳、勤続年数で35.2年となっており、「退職一時金算定基礎給を一定年齢・一定勤続年数で固定する」企業では55.9歳、勤続年数で15.0年となっている。
また、「一定年齢・一定勤続年数で固定する」企業では年齢55.7歳、勤続年数で33.6年となっている。
なお、退職一時金の支給額を「一定年齢・一定勤続年数で固定する」企業について支給時期の選択制度の有無をみると、「制度なし」の企業は75社(支給期間選択制度に回答のあった企業8 5社の88.2%)となっており、「制度あり」の企業は10社(同11.8%)となっている。
5 定年制
(1)定年年齢
定年制採用企業360社の定年年齢をみると、「60歳」の企業が356社(定年制採用企業360社の98.9%)と大部分を占めており、「58歳」が2社(同0.6%)、「57歳」及び「61歳以上」はいずれも1社(0.3%)と少ない。
定年年齢別の企業構成比を平成7年調査と比べてみると、定年年齢が「55歳〜59歳まで」の企業は1.3%から0.8%となっており、0.5ポイントの減となっている。
また、「6 0歳」の企業の割合は0.5ポイントの増加となっている。
定年退職する場合の退職時点の決め方についてみると、「満年齢到達日の属する月の翌月以降の特定日」の企業が112社(定年制採用企業360社の31.1%)と最も多く、次いで「満年齢到達日の属する月の末日」の企業が95社(同26.4%)、「満年齢到達日」の企業が87社(同24.2%)などとなっている。
(2)役職者の定年制(停職制)
役職離脱の年齢を設定しているいわゆる役職者の定年制の有無をみると、「制度あり」の企業は60歳定年採用企業356社の213社(59.8%)で過半数を占めており、「制度なし」の企業が143社(同40.2%)となっている。なお、213社うち「規程による」の企業が161社(制度のある企業の75.6%)、「慣行による運用」の企業が50社(同23.5%)となっている。
また、役職離脱の年齢の決め方をみると、「停職年齢を役職ごとに決めている」の企業が172社(制度のある企業の80.8%)となっており、役職別に一定年齢を決めている企業がほとんどであり、停職年齢は個人別に異なる企業は15社(同7.0%)となっている。
役職停職後の処遇についてみると、「一般労働者の定年まで在籍」の企業が194社(制度のある企業の91.1%)と大部分を占めており、「在籍出向」の企業が28社(同13.1%)、「退職(関連企業へ移籍を含む。)」の企業が28社(同13.1%)などとなっている。
さらに「一般労働者の定年まで在籍」の企業194社について、給与面での取扱内容をみると、「役付手当相当分減額」の企業が88社(45.4%)と最も多く、次いで「給与体系変更により減額」の企業52社(26.8%)となっており、「役付手当以外の給与項目の減額」の企業が20社(10.3%)を加えると160社(82.5%)となり、何らかのかたちで給与を減額する企業は8割を超えている。なお、「役職時給与保障」の企業は16社(8.2%)となっている。
(3)選択定年制(早期退職者優遇制度)
定年前の一定期間に退職した者に対し、退職金支給率の割増、退職金額の上積みなどの優遇制度を導入している企業が263社(定年制採用企業360社の73.1%)で、「制度なし」の企業が97社(同26.9%)となっている。
イ 実施年齢
早期退職者優遇制度を導入している企業について優遇制度が適用開始される最低の年齢をみると、「5 0歳」の企業が120社(早期退職者優遇制度を導入している企業263社の45.6%)で最も多く、次いで「45歳」の企業が70社(同26.6%)、「55歳」の企業が29社(同11.0%)などとなっている。
ロ 優遇措置の内容
早期退職者優遇制度導入企業263社について、優遇措置の内容をみるとく重複回答)、「退職一時金のみ」について優遇の企業が214社(早期退職者優遇制度がある企業263社の81.4%)となっており、次いで「退職一時金とその他」の企業が14社(同5.3%)、「退職年金のみ」の企業が12社(同4.6%)などとなっている。
次に、退職一時金の優遇措置がある企業239社についてその内容をみると、適用される退職一時金支給率では、「定年支給率」の企業が166社(退職一時金の優遇措置がある企業239社の69.5%)、「自己都合支給率」の企業が31社(同13.0%)、「自己都合支給率に割増した支給率」の企業が17社(同7.1%)などとなっている。
退職一時金の算定に用いる勤続年数の通算方法では、「退職時の勤続年数」をそのまま用いる企業が178社(退職一時金の優遇措置がある企業239社の74.5%)で最も多く、次いで「定年扱い」の企業が38社(同15.9%)などとなっている。
退職一時金への加算措置では、「早期退職者に特別の加算」を行う企業が160社(退職一時金優遇措置がある企業239社の66.9%)で最も多く、次いで、定年退職者と同一の加算を行う「定年扱い加算」の企業が40社(同16.7%)となっている。「加算なし」の企業は22社(同9.2%)にすぎず、ほとんどの企業で何らかの加算を行っている。
(4)定年到達後の雇用制度
イ 制度の採用状況
「勤務延長制度」又は「再雇用制度」を採用している企業は定年制採用企業360社のうち「勤務延長制度」が19社(5.3%)、「再雇用制度」が144社(40.0%)となっている(重複回答)。
「勤務延長制度」又は「再雇用制度」の対象となる労働者の範囲を60歳定年企業についてみると、「勤務延長制度」を採用している企業17社では、「企業が必要と認めた者」とする企業が16社(94.1%)、「希望する労働者全員」とする企業が1社(5.9%)となっている。また、「再雇用制度」を採用している企業143社では、「企業が必要と認めた者」とする企業が129社(90.2%)、「希望する労働者全員」とする企業が13社(9.1%)となっている。
両制度とも「企業が必要と認めた者」とする企業が大部分を占めている。
ロ 最長雇用期間
「勤務延長制度」又は「再雇用制度」を採用している企業における最長雇用期間を60歳定年企業についてみると、「勤務延長制度」を採用している企業17社では、「最長期間を年齢で決めている」企業が10社(58.8%)、「規程がなく個人別に異なる」企業が6社(35.3%)となっており、前者の平均限度年齢は63.1歳となっている。また、「再雇用制度」を採用している企業143社では、「最長期間を年齢で決めている」企業が109社(76.2%)、「規程がなく個人別に異なる」企業が33社(23.1%)となっており、前者の平均限度年齢は64.1歳となっている。
ハ 定年到達後勤務者の労働条件
定年到達後勤務者の所定内賃金等の労働条件について、60歳定年企業で「勤務延長制度」又は「再雇用制度」を採用している企業の状況をみると、表17のとおりとなっている。すなわち、
@ 「所定労働時間」については、「定年時と同じ」(勤務延長制度を採用している17社のうち7社(41.2%)、再雇用制度を採用している143社のうち68社(47.6%)や「その都度決める」(同8社(47.1%)、同55社(38.5%))が多くなっている。
A 「所定内賃金」については、「定年時と比べて下がる」(同9社(52.9%)、同97社(67.8%))や「その都度決める」(同6社(35.3%)、同43社(30.1%))が多くなっている。
B 「賃上げ(ベースアップ)」については、「その都度決める」(同9社(52.9%)、同61社(42.7%))や「賃上げしない」(同4社(23.5%)、同57社(39.9%))が多くなっている。
C 「昇給(定期昇給)」 については、「昇給しない」(同8社(47.1%)、同85社(59.4%)や「その都度決める」(同8社(47.1%)、同47社(32.9%))が多くなっている。
D 「賞与」については、「その都度決める」(同12社(70.6%)、同65社(45.5%))が最も多くなっているほか、再雇用制度採用企業では「一般労働者より低い基準で支給する」(同64社(44.8%))も多くなっている。
E 「退職金(一時金)」については、「支給しない」(同10社(58.8%)、同81社(56.6%))が過半数を占め、「定年後の期間について、定年前とは切り離し、別途支給する」(同4社(23.5%)、同48社(33.6%))がこれに次いでいる。