退職年金(企業年金)に関する情報
■HOMEPAGE
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■退職年金制度とは | |
・ | 退職年金制度とは? 適格年金制度と厚生年金基金制度 |
・ | 適格退職年金制度の設計(9つのポイント) |
・ | 税法上の退職年金 (全額、損金算入が可能) |
・ | 退職年金制度の採用企業の割合は? |
・ | 就業規則の変更手続 |
■退職年金規程(例) | |
■拠出パターンから見た各種年金・退職金制度の比較表 |
戻る ■退職年金制度とは?<適格年金制度と厚生年金基金制度> 退職年金には、適格年金制度と厚生年金基金制度がある。 いずれも社外積立てであるため、労働者の権利確保にすぐれているほか、掛金の全額が損金など税 法上のメリットがある。 適格年金制度 事業主と労働者との間で結ばれた年金規約(規程)に基づいて、事業主と信託銀行または生命保険 会社との問で、一定の要件(法人税法施行令第159条に定める12の適格要件)を備えた年金信 託契約または年金保険契約を締結します。 適格年金を設けるには、加入人員が信託銀行との契約では100人以上、生命保険会社との契約で は15人以上必要です。 事業主は、信託銀行または生命保険会社に掛金または保険料(以下単に「掛金」という。)を払い 込みます。 信託銀行や生命保険会社はこれを管理運用して、退職労働者に年金(または一時金)を給付します。 厚生年金基金制度 事業主は、厚生年金保険法に基づき、厚生大臣の認可を受けて、厚生年金基金を設立します。 基金を設けることができるのは、労働者500人以上の企業(単独設立)。同系列企業間(連合設 立)、同種同業等の多数企業による設立(総合設立)もあります。 厚生年金基金は厚生年金の報酬比例の年金を代行する(代行部分)ほか、企業独自の年金(加算部 分)を上乗せするため、事業主と労働者が原則として掛金の半分づつを基金に納付し、基金はこの 資金を生命保険会社又は信託銀行に管理運用を委託します。 退職労働者には基金から年金(又は一時金)を支給します。 退職年金の導入パターン 退職年金の導入には、つぎの四つのケースが想定されます。人事・労務担当としては、導入に当っ て、社内の「退職一時金制度」との関係をどうするかがまず検討課題となります。 (1)新設又は上乗せするケース 現在、退職金一時金制度がないか、あっても現行の退職一時金制度の支給水準が低いため、 別途、新設又は上乗せの形で退職年金を導入する方法。 この場合、退職給与引当金の取崩しや繰入限度額の調整は不要です。 (2)現在の社内退職一時金制度を、全面的に退職年金に移行させるケース この場合、退職一時金制度は廃止して、退職年金制度を採用することになります。 退職給与引当金の全額取崩しを要し、引当金への繰入限度額は0となるよう調整します。 (3)現在の社内退職一時金制度の一部を退職年金に移行し、併存させるケース ○退職金規定を改定し、退職年金制度をその一部として採用する(内枠方式) ○退職金規定を改定し、退職年金制度を別個に採用する(外枠方式) の2つがありますが、退職給与引当金の取崩しは、一定の限度額を超過している場合に必要。 引当金への繰入限度額も調整が必要となります。 (4)定年退職者等の社内退職一時金だけ退職年金に移行させるケース 定年退職者・高齢者・長期勤続者だけを退職年金に移行させる方式です。 この場合、退職給与引当金の取崩しや繰入限度額の調整は不要です。 戻る ■適格退職年金制度の設計(9つのポイント) (1)適用範囲 ○原則として企業と雇用関係にあるすべての従業員。 ○除外されるもの−−−役員(使用人兼務役員を除く。)、臨時・日雇者 ○除外可能なもの−−−見習(試用)期間中の者、嘱託、準社員、使用人兼務役員 (2)加入資格には一部制限を設けることも可能 ○入社後直ちに加入させる方法(制限を設けない例) ○勤続年数で制限(例:「勤続3年以上」) ○年齢で制限(例:「年齢25歳以上」) ○勤続年数と年齢で制限(例:「勤続3年以上で年齢25歳以上」) なお、適格年金では、定年までの加入期間が通常の雇用年齢から定年までの期間の2分の1 以上となることが必要であり、また、40歳以上の年齢制限を設げることはできない。 (3)年金受給資格 勤続年数(加入期間)、年齢、退職事由またはこれらの組み合わせにより決める。 適格年金では、勤続年数20年以上または年齢45歳以上であることが必要。 (4)年金支給開始年齢 年金による所得保障がいつから必要かによって、退職後即時でも一定年齢(例えば60歳) に達したときでも自由に決めることができる。 (5)年金支給期間 ○有期年金−−−−−−−一定の期間、本人の生存を要件として支給するもの ○終身年金−−−−−−−本人が生存している期間を通じて支給するもの ○保証期間付有期年金−−有期年金であって支給期間の全部または一部に保証期間(期間終 了前に本人が死亡した場合、遺族に残余の期間の年金を支給するもの)を付けたもの ○保証期間付終身年金−−終身年金に保証期間を付けたもの なお、適格年金の支給期間は5年以上(厚生年金基金制度では終身)としなければならない。 (6)年金額の水準 年金額の水準は、老後の生活水準、公的年金の給付水準、企業の費用負担能力等を総合的に 勘案して決めることになりますが、退職一時金を年金に移行する場合には、保証期間の年金現 価相当額が、退職一時金からの移行原資に等しくなるように算出します。 (注)年金現価とは、将来支給する年金を利率等で割り引いて現在の価額に換算したもの。 (7)拠出 退職年金制度を運営していくためには、掛金の継続的な拠出が必要です。企業が従業員の老 後生活のために掛金を拠出して年金を給付するのが本旨ですが、従業員も掛金を分担してより 厚い年金給付を受けられる制度とすることもできます。 なお、掛金は、年金給付をまかなうために必要かつ十分な費用であって、適正な年金数理に 基づいて算出されたものでなければならず、受託機関(年金資金の運用を委託された生命保険 会社又は信託銀行)の年金数理専門家(アクチェアリー)が算定することになっている。 (8)掛金の種類 ○通常掛金・・・・・・今後の勤務期間に見合う給付にあてるための掛金 ○過去勤務債務掛金・・過去勤務債務の償却にあてるための掛金 (注)過去勤務債務とは、年金制度発足日前の勤務期間を給付額算定のための期間に算入す ることにより年金制度の給付額が増加するために発生する必要原資。 (9)給付内容 退職年金制度の給付の種類は、つぎのとおり。 ○年金給付(退職年金/遺族年金) ○一時金給付(退職一時金/遺族一時金/選択一時金) (注)この内、厚生年金基金制度では、遺族年金を設けることができない。 戻る ■税法上の退職年金(全額、損金算入が可能) 税法の取扱い 適格年金制度、厚生年金基金制度のいずれであっても、退職年金制度には税制上の優遇措置がとら れています。税制上の取扱いは次表のようになっています。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 項目 適格年金制度 厚生年金基金制度 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 掛金 事業主負担 損金算入(未払込金の算入不可) 損金算入(未払込金の算入も可) 従業員負担 生命保険料控除 社会保険料控除 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 年金 ・給付額から従業員掛金相当額を ・従業員掛金相当額を含め難所得 控除した額に難所得として課税 として課税 退職 ・公的年金等控除等諸控除の適用 ・公的年金等控除等諸控除の適用 給付 あり あり (定年 ・中途 一時金 従業員負担掛金合計額を控除した 全額退織所得として課税 脱退) 残額に退職所得として課税 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 年金 支給期間等に応じた評価額を退職 死亡 手当金として遺族に相続税課税 (制度上設けられていない) 給付 (退職金控除あり) (在 職中) 一時金 一時金額を退職手当金として遺族 非課税 に相続税課税(退職金控除あり) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 年金 残余支給期間に応した評価額に対 して遺族に相続税課税 (制度上設けられていない) 死亡 (退職金控除なし) 給付 (年 一時金 残余支給期間の年金に代えて受け 金受 取る一時金額に対して遺族に相続 非課税 給中) 税課税(退職金控除なし) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1%の特別法人税を課税 代行部分の2.7倍に相当する積 年金積立に対する 特例適格年金においては厚生年金 立金までは非課税、それを超える 法人税 基金における代行相当部分の1.7 部分には1%の特別法人税を課税 倍に相当する積立金までは非課税 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 退職給与引当金と退職年金の調整 退職給与引当金を設けている企業が退職年金を導入した場合、税法上退職金の準備が重複しないよ うにするため、両者間の調整を行います。 この調整は、退職年金の掛金は外部に拠出され、損金性が強いことから、掛金の損金算入を優先し、 退職給与引当金の繰入限度額を重複分だけ減少させる方法で行います。 戻る ■退職年金制度の採用企業の割合は?
企業規模 | 退職金制度 のある企業 |
一時金の みの企業 |
退職年金制度 のある企業 |
左のうち 退職年金のみ |
左のうち 一時金との併用 |
計 | (92.0)100 | 47.0 | 53.0 | 18.6 | 34.5 |
1000人以上 | (99.7)100 | 10.6 | 89.4 | 19.8 | 69.6 |
300-999人 | (98.7)100 | 19.4 | 80.6 | 26.4 | 54.2 |
100-299人 | (95.2)100 | 37.7 | 62.3 | 21.6 | 40.7 |
30-99人 | (90.1)100 | 54.3 | 45.7 | 16.7 | 29.0 |
戻る ■就業規則の変更手続が必要 退職年金規定は、就業規則の一部を構成するものであるから就業規則の制定又は改訂を行って、労働 基準監督署へ届出を済ませる必要がある。 就業規則の変更届を行う際の該当部分の規定例を以下に示す。 <就業規則変更届の記載文例> ○「別途新設型または上乗せ型」の場合 当社就業規則に下記のとおりの条文を追加し、あわせて別規則退職年金規程を別紙添付のとおり制定しましたので、従業員代表の 意見書を添付のうえお届けします。 記 (退職給与) 第○条 従業員の退職給与は、別に定める退職金規程および退職年金規程により支給する。 ○「一部移行型」の場合 当社就業規則第○条を下記1のとおり変更し、別規則退職金規程第○条のとして下記2を追加し、あわせて別規則退職年金規程を 別紙添付のとおり制定しましたので、従業員代表の意見書を添付のうえお届けします。 記 1(退職給与) 第○条従業員の退職給与については、別に定める退職金規程および退職年金規程により支給する。 2 第○条の別に定める退職年金規程による給付を受ける者については、当該給付額(年金では当該 年金現価相当額、一時金では当該一時金額)を本規程に定める退職金額から控除する。 ○「全面移行型」の場合 当社就業規則に下記のとおりの条文を追加し、あわせて別規則退職年金規程を別紙添付のとおり制定しましたので、従業員代表の 意見書を添付のうえお届けします。この変更に伴い、従来の別規則退職金規程を全廃します。 記 (退職給与) 第○条 従業員の退職給与は、別に定める退職年金規程より支給する。 (以上は労働省編「退職年金制度の概要−退職金制度の改善に向けて」をもとに要約編集したものです)