企画業務型裁量労働制Q&A(応用編)
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企画業務型裁量労働制Q&A
応用編
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Q1 企画業務型裁量労働制の指針は、かなり長文ですが、これに反する労使委員会の決議などは無効になりますか。指針の性格・位置づけについて説明してください。 | A1 指針はガイドラインの性格を持つものであり、それ自体は法的拘束力を持ちません。しかしながら、指針の中で「具体的に明らかにする事項」として解釈を示した部分に反してした決議は、法の規定自体に反することとなり、その結果、企画業務型裁量労働制のみなし労働時間の効果が生じず、対象労働者として決議で定められた労働者についても法第32条ほかの労働時間に関する規定が適用されることとなり得るものであること。』(通達記第1の1(3))とされます。 |
Q2 非本社事業場については、役員が常駐していることが対象事業場として一つの目安になるとされていますが、役員の範囲についてどのように考えればよいでしょうか。 | A2 指針第2の2の(2)の「役員」とは、「原則として商法上の取締役をいうものである」とされています。 いわゆる「執行役員」については、「当該執行役員が実態として当該非本杜事業場の属する法人・企業の業務の運営に関し商法上の取締役に準ずる権限を有するものであと判断される場合には、ここでいう「役員」として取り扱われ得るものである」(通達記第1の2(2))とされています。 (参考) 執行役員については「労働用語の常識−−執行役員」を参照してください。 |
Q3 企画業務型裁量労働制で使用者に義務づけられた対象労働者の「労働時間の状況等」の把握方法と「その記録」の保存方法について説明してください。 | A3 企画業務型裁量労働制の採用と運用に当たっては、労使委員会の決議として、「使用者が対象労働者の労働時間の状況等の勤務状況を把握する方法を具体的に明らかにしていること。その方法は、いかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったか等を明らかにし得る出退勤時刻又は入退出時刻の記録によること。」(指針4の(1)イ)とされていますから、これに対応できるよう社内の体制を整備することが必要です。この「労働時間の把握方法」は労使委員会の決議届(様式第13号の2)、6カ月に1度の定期報告(様式第13号の4)においても、必要記載事項になっていますから注意を要します。 また、労働時間の状況等については「労働者ごとに、その状況を明らかにできるよう」、記録の保存が必要です。なお、記録の保存に当たっては、既存の書類等に必要な記録がなされ保存されることによって個々の労働者に係る状況が確認できれば、必ずしも個々の労働者ごとの書類として作成し保存する必要はありません。 |
Q4 労使委員会が決議を行うには「委員の全員の合意」が必要とされていますが、8名構成の労使委員会で当日の委員会に所要で2名が出席できなかったような場合は、決議が出来ないのでしょうか。 | A4 法第38条の4第1項に規定する企画業務型裁量労働制の導入に係る決議をする場合の「委員の全員の合意」は、労使委員会に出席した委員全員の合意で足りるものとされています。 なお、決議を行った場合には、決議に委員全員の署名又は記名押印がなされるなど、労使委員会に出席した委員全員の合意によるものであることを明らかにしておかなければなりません。 |
Q5 労使委員会の委員数は決まっていますか | A5 労使委員会の委員数については、関係労使が任意に定めることが出来ます。 ただし、「2名で構成する委員会については法第38条の4第1項に規定する労使委員会とは認められないものであること。」(施行通達)とされていますから、労使委員会の最小構成は4名となります。 |
Q6 労使委員会の委員の任期について定めがありますか | A6 労使委員会の委員の指名は、「任期を付して」かつ、監督又は管理の地位にある者以外の中から行うこととされていますが、任期の限度は法令及び指針では定められていません。なお、「過度に長期にわたるものは適当でないものであること。」(施行通達)とされています。 |
Q7 企画業務型裁量労働制を採用する場合、事業場として作成・保存しておく必要がある書類等には、何がありますか。保存期限等についても教えてください。 | A7 企画業務型裁量労働制を採用する場合、次の書類等の作成・保存が必要です。 (1) 労使委員会の運営規程 運営規程の作成又は保存について労使委員会の同意が必要です。なお、この同意については、委員全員の合意によることは法令及び指針上求められていません。 (2) 労使委員会の議事録 労使委員会の開催の都度作成し、その開催の日(決議が行われた会議の議事録にあっては決議の有効期問の満了の日)から起算して3年間保存します。 (3) 労使委員会の決議 労使委員会の決議は、労基法第109条に規定する「労働関係に関する重要な書類」に該当しますので、同条により3年間保存が必要です。 (4) 労働時間の状況並びに健康・福祉の確保に関し講じた措置 決議の有効期間中及びその満了後3年間保存します。 労働時間の状況に関する記録は、労働者ごとに、その状況を明らかにした出退勤時刻又は入退出時刻の記録を保存しておく必要があります。 (5) 苦情処理に関して講じた措置 決議の有効期間中及びその満了後3年間保存します。 (6) 労働者の同意書 決議の有効期間中及びその満了後3年間保存します。 なお、上記の作成・保存義務のある書類以外では、 次の所轄労働基準監督署長に対する届出及び定期報告の控えを保存しておく必要があります。 ・ 労使委員会の設置届(様式第13号の3) ・労使委員会の決議届(様式第13号の2) ・所轄労基署長に対する定期報告(様式第13号の4) |
Q8 労使委員会は「1年単位の変形労働時間制」などの労使協定に替わる決議をすることができると聞きましたが、どういうことでしょうか。 | A8 労基法第38条の4第5項において、いわゆる「特定条項に係る労使協定に関する特例」として、ご指摘の狂態代替決議が認められています。 具体的には、 労使委員会は、次に掲げる法の規定に関し、当該規定に係る労使協定に代えて委員全員の合意による決議(以下「協定代替決議」という。)を行うことができます。協定代替決議には、法に基づき定めることとされている事項をすべて含んでいることが必要であることに注意してください。 ・1箇月単位の変形労働時間制(法第32条の2第1項関係) ・フレックスタイム制(法第32条の3関係) ・1年単位の変形労働時間制(法第32条の4第1項関係) ・1週間単位の非定型的変形労働時間制(法第32条の5第1項関係) ・一斉休憩適用除外(法第34条第2項関係) ・時間外及び休日の労働(法第36条第1項関係) ・事業場外労働制(法第38条の2第2項関係) ・専門業務型裁量労働制(法第38条の3第1項関係) ・年次有給休暇の計画的付与(法第39条第5項関係) ・年次有給休暇中の賃金の定め(法第39条第6項ただし書関係) この場合、法により行政官庁への届出を要するもののうち、1箇月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、事業場外労働制及び専門業務型裁量労働制に係るものについては、労働基準監督署長への届出を要しないこととされています。 一方、36協定については、あくまで規則様式第9号の3により労働基準監督署長への届出が必要です。これに関連して「時間外及び休日の労働に関し決議がなされ、事業場外労働に関し協定がなされている場合には、両者を規則様式第9号の2により届け出ることはできず、それぞれ規則様式第9号の3及び規則様式第12号による届出が必要であること。」(施行通達)とされています。 |
Q9 所轄労働基準監督署長に対する「労使委員会の設置届」や「労使委員会の決議届」の届出を忘れていた場合、罰則の適用がありますか。 | A9 労使委員会を設置した場合には「様式第13号の3」により、労使委員会の決議をした場合は「様式第13号の2」により、所轄労働基準監督署長に届出をしなければなりません。 注意を要するのは、この届出は企画業務型裁量労働制の効力発生要件であり、万一の"失念"も許されない性質のものであることです。つまり、所轄労働基準監督署長に対する届出のない限り、企画業務型裁量労働制のみなし労働時間の効力は発生せず、無効の取扱いとなります。効力が発生しないということは、原則の労基法第32条(週40時間制)の適用、オーバータイムには同法第37条に基づく割増賃金の支払いが必要となります。(時効の関係から遡及支払いは、最大2年間です。) |
Q10 「労使委員会の設置届」にその後変更があった場合、変更届が必要ですか。 | A10 変更については、届出の必要はありません。 |
Q11 本社ですが、過半数で組織する労働組合がありません。労使委員会を設置する場合に、何に注意すべきでしょうか | A11 事業場に過半数で組織する労働組合がない場合、企画業務型裁量労働制を採用する場合は、委員の指名を行うための事業場における過半数代表者の選任にはじまり、労働者代表委員候補の信任手続等について民主的手続により労組委員会を設置しなければなりません。 このように、事業場に過半数で組織する労働組合がない場合の『企画業務型裁量労働制に係る労使委員会を設置に当たってのモデル手順』(H12.1.1基発第2号)が、労働省から示されています。 とくに、労使委員会の労働者代表委員の信任は、「無記名の秘密投票によらなければならないこと」とされています。労働組合のない企業では、社内で「無記名秘密投票」により何らかの人選を行うといった経験、慣行のないところが多いでしょうから、企業風土への影響にも少なからざるものがあるでしょう。 モデル手順に示されるような厳格な手順を踏んではじめて、企画業務型裁量労働制が採用できることに注意する必要があります。 (参照) 労働省「労使委員会の設置に当たってのモデル手順」(H12.1.1基発第2号) |