女審発第5号
平成10年2月20日
大蔵大臣 松永 光 殿
厚生大臣 小泉純一郎 殿
労働大臣 伊吹文明 殿
自治大臣 上杉光弘 殿
女性少年問題審議会
会長代理 小粥義朗
短時間労働対策の在り方について(建議)
女性少年問題審議会は、平成9年9月以来、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律附則第2条に基づき、短時間労働対策について検討を行ってきたが、今般、別紙のとおり結論を取りまとめた。
関係行政機関においては、検討の結果を十分尊重して、短時間労働者の雇用管理の改善等の推進に向けて適切な方策を講ずるよう要望し、建議する。
(別紙)
はじめに
「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム労働法」という。)は、平成5年6月に成立し、同年12月から施行されている。同法は制定の過程において様々な議論があり、国会修正で加わった附則第2条において「政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」旨規定しているところである。
この規定を受け、女性少年問題審議会において昨年9月から検討を行ってきた。
今回の見直しに当たっては、パートタイム労働法制定後の状況を十分に踏まえるとともに、将来を展望し、総合的な見地から検討することに努めた。その検討の結果は次のとおりである。
1 パートタイム労働者の現状と問題点
パートタイム労働者数を平成8年における週間就業時間35時間未満の非農林業雇用者数でみると、1,015万人であり、非農林業雇用者全体の約2割を占めるに至っている。
また、パートタイム労働者の就業実態を見ると、勤続年数が伸びる一方、販売・営業職、専門・技術職や役職に就いている者の割合が増加するなど、職種や職務内容において多様化が進んでいる。
意識の面においても、現在の仕事のままで良いとするものの割合が高い中で、主要な仕事を希望したり、技術を活かしたい等積極的な意欲を持っ者が増加している。また、非課税限度額や社会保険の適用最低限で就業調整をする者も増加し、パートタイム労働者の3割強に及んでいる。
さらに、パートタイム労働を選択した理由は、労働者側については都合のよい時間に働きたい、勤務時間を短くしたい等生活上の都合が多いが、なかには仕事の内容に興味を持てたことや正規従業員として働ける会社がないことをあげる者もいる。一方、事業主の側の理由としては、バフル崩壊後の経営状況を背景に、人件費が割安であることを挙げる者が多くなっており、業務の繁閑への対応をあげる者も多い。
パートタイム労働法は、パートタイム労働者について多様な就業意識や就業実態を踏まえた適切な雇用管理がなされていない等の実態を踏まえ、パートタイム労働者の雇用管理の改善等を図るため制定されたものである。
しかしながら、法施行後の状況を見ると、一部に進展が見られるものの、全体としてなお不十分な点もあり、これらを集約すると以下のような状況となっている。
(1)パートタイム労働法は施行されて4年を経過しているが、パートタイム労働法及び指針の趣旨・内容を十分理解していなかったり、誤解している事業主がいる等周知・啓発という点で必ずしも十分な状況にはない。特に、パートタイム労働者に対して、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働者保護法令の適用はないかの如き誤った認識や社会保険制度の適用についての誤解、さらには、実質的に法の規定を免れるような例も未だ一部に存在し、このことに起因するトラブルも生じている。
(2)パートタイム労働法で事業主の努力義務として規定されている雇入れ時における文書による労働条件明示やパートタイム労働者に係る就業規則作成時の意見聴取等の手続き面については、実施する事業所割合は高まっており、法律による一定の効果が認められる。しかし、依然として、雇入れ時の労働条件明示が十分でないことに起因するトラブルは多く、行政機関や短時間労働援助センターの窓口での相談件数は増加している。
(3)パートタイム労働法においては、パートタイム労働者の労働条件の確保や雇用管理の改善について、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮するよう努めることを事業主の責務としている。これに関連して、雇用管理制度のうち、パートタイム労働者の能力活用を図るものとして役職手当制度や昇進・昇給制度、正規従業員への転換制度については進展がみられる。しかしながら、労働条件、雇用管理面の改善は景気の影響もあり、総じて足踏み状態にある。パートタイム労働者の賃金を所定内賃金のマクロ数値でみる限り、正規従業員との開きは横這いからやや拡大の動きが見られる。また、賞与制度実施事業所割合はやや低下し、退職金制度実施事業所割合も低水準にとどまっている。このうち、賃金面での開きについては、就業分野の相違の他、パートタイム労働者において就業調整を行う者が相当数にのぼっていることや勤続に伴う賃金の上昇程度に正規従業員との間で大きな違いがあること等が主な要因となっていると考えられる。また、労働条件、雇用管理全般について、パートタイム労働法に規定されている「就業の実態、通常の労働者との均衡等」を具体的にどのように考慮すべきかが明らかでないことが、対応が進まない大きな原因となっていると見られる。
(4)パートタイム労働者のうち、雇用期間の定めがある者(以下「有期労働契約の者」という。)の割合は4割弱であり、その契約期間は長期化の傾向にある。また、契約の更新をしない場合において、パートタイム労働法に基づく指針に従い30日前の予告を行う事業所の割合は上昇しているものの、契約を更新する場合の平均更新回数は9.5回にのぼっている。こうした実態から、実際にパートタイム労働者のうち、雇用の安定性を不安・不満に感じている者が少なくなく、短時間労働援助センターにも多くの相談が寄せられている。
(5)パートタイム労働者のうち、3割強が税金、社会保険料、配偶者手当を考慮し、年収が一定限度額にとどまるよう就業調整を行っており、しかもその割合は上昇している。こうした税制、社会保険制度等の仕組みは、パートタイム労働者の賃金上昇を抑えるとともにその能力向上意欲を失わせることとなり、企業においては計画的人員配置の困難化をもたらし、結果としてパートタイム労働者の評価にも影響し、能力発揮の機会の提供が阻害されるなど、パートタイム労働者の雇用管理改善を図る上で大きな障害となっている。
2 パートタイム労働対策の在り方についての視点
パートタイム労働者が雇用者全体の約2割を占め、基幹的・恒常的な労働力としての役割を担いつつある状況において、パートタイム労働を労使にとって選択のきく良好な就業形態とすることは、単にパートタイム労働だけの問題ではなく、経済社会全体の大きな課題である。特に、ここ当面はパートタイム労働者数は需給両面の要因から増加が続くことが見込まれているが、これらパートタイム労働者の能力発揮がなければ、人材の枯渇を招き、生産性の向上、経済の発展にも重大な影響を与えかねない。
こうした観点から、上記「1」でみたようなパートタイム労働の現状と問題点を踏まえ、今後のパートタイム労働の在り方を展望すると、特に次の点を基本的視点として対策を講じていくべきである。
第1に、パートタイム労働は、本来、通常の労働者に比べて労働時間が短い就業形態を意味するものであり、労働時間が短いことを除いては労働条件の高低や雇用の安定性とは無関係な就業形態として労使が都合に応じて選択でき、かつパートタイム労働者の能力発揮ができるような就業形態としていくことが必要である。
第2に、パートタイム労働の実態を踏まえると、今後、パートタイム労働を上記のような就業形態としていくためには、雇用管理上の中心的な課題として、
@労働条件をめくるトラブルの防止
A通常の労働者との均衡を考慮した処遇・労働条件の確保
Bパートタイム労働の多様化に対応したキャリア形成及びそれに伴う能力開発などの就業実態に応じた合理的な雇用管理の確保
Cパートタイム労働者のうち、特に有期労働契約の者について、希望、就業実態に応じた雇用の安定の確保
を図ることが重要である。
第3に、上記の課題、特に通常の労働者との均衡を考慮した処遇・労働条件の確保や就業実態に応じた合理的な雇用管理の徹底を図るに当たっては、労働市場におけるパートタイム労働者と通常の労働者等他の就業形態との関係・影響を考慮しつつ進めることが必要である。このためには、法律に基づく対策の推進と並んで、処遇・労働条件の確保や雇用管理のあり方に関して、パートタイム労働者を適正に位置づけていくことについて労使による具体的なルール作りが不可欠である。
第4に、パートタイム労働者を第1で述べたような就業形態にしていくためには、法律、税制及び社会保険の適用について、労働時間が短いことに鑑み合理的であると考えられるものを除き、可能な限り通常の労働者と等しくしていくことが必要である。特に就業調整の問題については、制度の在り方がパートタイム労働者の働き方に影響を与えることのないよう、企業の手当制度を含め、抜本的な制度の見直しを行う必要がある。
3 課題に対する対応等
今般のパートタイム労働法附則第2条に基づく見直しについては、「1」で述べたようなパートタイム労働に係る問題点を中心に対応すべきことを検討してきた。その過程において、労働者側委員からはパートタイム労働法については、国際的な基準を考慮し、雇入れ時における労働条件明示、通常の労働者との均等原則等について法律改正が必要との意見が示され、これに対し使用者側委員からは法律の周知徹底等による定着が重要であり、法律、指針とも改正の必要はないとの意見が示されたが、上記の視点に照らし、現時点において下記のとおり新たな対応が必要であることを確認した。
議論の中心となったのは、上記「2」であげた@からCの課題であり、それぞれについて次のような対応が必要と考える。
@労働条件をめくるトラブルの防止
この点については、特に、パートタイム労働をめくるトラブルの多くが雇入れ時における労働条件の明示ないしその方法が不十分であることに起因していることに鑑み、労働条件を明示した文書の交付を法律により義務づけるべきである。
A通常の労働者との均衡を考慮した処遇・労働条件の確保
通常の労働者との均衡を考慮した処遇・労働条件の確保の問題については、「通常の労働者との均衡を考慮した」処遇・労働条件について、具体的にどのような指標(モノサシ)で「均衡を考慮」すればよいのかの結論には至らなかった。この点については、異なる賃金形態間の比較や職務の異同に係る評価が必要になる等技術的・専門的事項にわたるため、別途労使も含めた新たな検討の場を設けるべきである。
Bパートタイム労働の多様化に対応したキャリア形成及びそれに伴う能力開発などの就業実態に応じた合理的な雇用管理の確保
この点については「就業実態に応じた合理的な雇用管理」とは具体的にどのようなものかという点について、法の実効性を高めるため、早急に内容を示す必要がある。
Cパートタイム労働者のうち、特に有期労働契約の者について希望、就業実態に応じた雇用の安定の確保
この点については、パートタイム労働者に固有の問題ではなく、有期契約の労働者に共通の課題であることから、基本的に有期契約労働者についての扱いに従うべきである。
こうした考えに基づいて、下記に示すとおり、今般の見直しに当たっては、必要な法的措置を講ずるほか、法の実効性を一層高めるための具体的方策についての検討に早急に取りかかる等、パートタイム労働法の一層の定着・徹底を図ることが適当であると判断した。
記
1 パートタイム労働法及び指針の周知・啓発の徹底
パートタイム労働法施行後ほぼ4年を経過しているものの、周知・啓発という点では、全体として必ずしも十分な状況になく、この点で、行政、短時間労働援助センターはもちろんのこと、労使も含め特段の努力が必要である。
特に、パートタイム労働者について、一部に労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法等の関係法規の適用がないかのごときの誤解や社会保険制度の適用についての誤解があるとの指摘があり、かかる誤解に基づきトラブルも発生している状況にある。こうした誤解の解消のための関連法規の周知徹底も含め、パートタイム労働法及び指針に基づく指導の徹底がより一層図られるよう、関係行政機関の連携の強化や、周知・啓発の方法に工夫を加えることが必要である。また、現行指針においては、年次有給休暇や健康診断、育児休業等に係るパートタイム労働者の法律上の扱いについて、わかりづらいとの指摘もあり、こうした点も含め、指針の規定ぶりを見直す必要がある。
2 雇入れ時における労働条件の文書による明示等
雇入れ時に雇入れ通知書を交付している事業所割合はなお24.6%にとどまっており、労働条件が不明確であるために雇い入れ後にトラブルとなるケースがあとを絶たない。パートタイム労働についてのトラブルの多くがこのことに起因していることから、まず、こうした点について法律で義務づけを行う必要がある。
ただし、この点については、去る1月26日の中央労働基準審議会における「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」についての答申において、使用者が労働契約締結に際し、命令で定める方法により労働者に対して明示しなければならない事項として賃金に関する事項以外に新たに労働条件に係る主要な事項を明示することが義務づけられる点については、おおむね妥当とされており、今後、法律案の動向を見守るのが適当である。
また、パートタイム労働者に係る事項の就業規則を作成・変更する際の手続きにおいてパートタイム労働者の意見を聴取する事業所割合は高まっているものの、パートタイム労働法第7条に従い、パートタイム労働者の過半数を代表する者の意見を聴取する事業所割合は2割を下回っている。このため、パートタイム労働者固有の労働条件の変更に伴うトラブルの防止に資する見地からも、パートタイム労働者の過半数を代表する者の選出手続きを適正なものとするため指針に所要の手当をすることにより、パートタイム労働者の意見聴取の在り方の改善を図ることが重要である。
なお、就業規則については、10人未満規模事業場はその作成の義務づけはなされていないが、これら事業場においても就業規則の普及促進が図られることは重要であり、労働条件の変更に伴うトラブルの防止にも資するものと考える。
3 通常の労働者との均衡又は均等を考慮した処遇・労働条件の確保
通常の労働者との均衡を考慮した処遇・労働条件の確保は、パートタイム労働法における重要な原則であるが、具体的にどのように「通常の労働者との均衡」を考えるかについての指標(モノサシ)が形成されておらず、具体的な取組にっながりにくいという問題がある。これについては、異なる賃金形態間の比較や職務の異同に係る評価が必要になる等技術的・専門的事項を整理した上で取り組む必要がある。したがって、労使が比較の物差しっくり及び処遇の均衡又は均等に取り組みやすくするため、行政として情報提供等一定の支援が必要であり、このため労使も含め、技術的・専門的な検討の場を設けることがこの原則を実効あるものにするために必要である。
4 就業実態を考慮した合理的な雇用管理の確保
近年、パートタイム労働が極めて多様化している中で、パートタイム労働者の労働条件の確保やキャリア形成及びそれに伴う能力開発等の雇用管理を進めるためには、就業実態に応じたきめ細かな対応が不可欠となっている。パートタイム労働法においても、こうした考え方は示されているものの、就業実態に応じでどのように対応すべきかが明らかでないため、きめ細かな雇用管理は進んでいない状況である。特に、今後キャリア形成及びそれに伴う能力開発を進めていくためには、就業実態に応じた雇用管理改善の在り方を具体的に示すことが求められる。
このため、パートタイム労働者の多様化等の就業実態を十分踏まえ、これを適切に反映したきめ細かな雇用管理の考え方を示し、事業主の合理的な雇用管理の改善に向けた取組を具体的に促すことが必要である。
5 雇用の安定の確保
パートタイム労働者のうち、有期労働契約の者は4割程度であるが、その平均更新回数は9.5回にのぼっており、有期労働契約の更新が繰り返された場合、希望と実態に応じた雇用の安定を図ることが問題となっている。もっとも、こうした有期労働契約に係る雇用の安定の問題は、本来、有期労働契約という雇用形態固有の問題であり、パートタイム労働者の場合は、実態的にこうした契約形態の者がかなり存在するため問題となっているという事情がある。したがって、この問題については、有期労働契約の更新が繰り返される場合、一般的にどのような法的取扱いがなされるべきかという判断に得たざるを得ず、当面、有期労働契約のパートタイム労働者について、指針の趣旨の徹底により雇用の安定を図るべきものと考えられる。
また、有期労働契約の場合の問題以外にも、パートタイム労働者については、通常の労働者に比べ安易に解雇されることがあるため、解雇に係る法的な情報提供の他、解雇により労働関係が終了した場合には、退職労働者に対し、その理由の明示がなされることが適当である。この点に関しては、「2」であげた雇入れ時における労働条件明示同様、「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」において、労働者が退職の場合において使用者に証明書を請求できる事項として、退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)を追加するものとされており、この規定についても、中央労働基準審議会において、おおむね妥当とされていることから、当面、法律案の動向を見守るとともに必要に応じ、退職事由の書面交付がパートタイム労働者に適用されることが十分理解されるよう、指針に規定する等の対応が必要である。
6 その他の雇用管理改善に係る事項等
(1)正規従業員への応募機会の付与
正規従業員への応募機会の付与については、正規従業員への転換制度の導入は大きく進展しているものの、実際の適用の例は多くは見られず、当該制度の活用促進を図るためには、通常の労働者の募集の際の情報提供が事業所内で適切に行われることが重要と考えられる。
このため、通常の労働者の募集を行う場合であって、同種の業務に従事するパートタイム労働者がいるときは、当該募集に係る情報の周知を行うことについて、新たに指針に規定することが適当である。
(2)相談苦情等への対応に係る事業所内の体制整備
最近、パートタイム労働者の雇用者のなかに占めるウェイトが高まり、かつ多様化が進展している中で、労働条件をめくる様々なトラブルが発生しがちであることから、事業所内でその相談、苦情に対応することによりトラブルの予防を行うことが重要になっている。
現在、パートタイム労働者を10人以上雇用する事業所には、短時間雇用管理者の選任が促されているが、その職務内容にパートタイム労働者の相談に応ずる職務が含まれていながら、そこで働くパートタイム労働者にその氏名が必ずしも周知されておらず、実際上の相談につながらない状況になっている。このため、新たに指針において、短時間雇用管理者の職務内容を明確にするとともに、その氏名の周知について規定し、その徹底を図ることが重要である。
(3)行政的対応
パートタイム労働者の多くは時間的制約のため、狭い地域労働市場の中で勤務先が選択され、労働条件も地域の労働市場に大きく影響を受けている。こうしたことから、パートバンク、パートサテライト等による労働力需給調整機能の強化、地域の労働市場のきめ細かな情報提供等地域の労働市場の機能を高めることが重要である。
また、パートタイム労働法に基づき、短時間労働援助センターにおいては各種援助・相談を行うこととされているが、上記「3」を踏まえつつ具体的にパートタイム労働者の処遇の改善に取り組む企業に対し、専門的なアドバイスを行うアドバイザーの積極的な活用が推進されるべきである。
さらに、パートタイム労働法においては、職業訓練の実施への配慮等についても盛り込まれているところであるが、パートタイム労働者の処遇改善には、教育訓練の果たす役割は大きく、パートタイム労働者向けの教青訓練の機会の確保を図っていくことが重要であり、その対策を検討する必要がある。
この他、パートタイム労働法及び指針の施行機関は女性少年室、都道府県労働基準局・労働基準監督署、公共職業安定所等複数の機関にまたがっているため、これらの機関の担当業務について周知徹底を図る必要がある。また、短時間労働援助センターを含め、関係機関間の連携を図りつつ、パートタイム労働法及び指針のより効果的な施行に努める必要がある。
(4)その他
以上あげてきた点の他、通常の労働者と同じかこれを上回る所定労働時間でありながら、通常の労働者と処遇等において異なる取扱いがなされている者についての問題についても指摘がなされたが、短時間労働者であるが故に生じている問題ではなく、今後の課題である。
7 パートタイム労働の就業に影響を及ぼしている税、社会保険制度等
就業調整については、先に示したように、企業、労働者、社会全体にとって様々な点で大きなひずみをもたらしている。
平成5年の婦人少年問題審議会の建議においても就業調整の問題解決に向け、関係する制度の検討の必要性が指摘されているところであるが、今や、この問題は、パートタイム労働者の雇用管理の改善にとって避けて通れない大きな問題となっており、その解決は急務である。
そのためには、平成5年の婦人少年問題審議会建議が指摘しているように、単に就業調整の基準となる一定額の引き上げではなく、税制、社会保険制度、配偶者手当全体の見直しが必要である。これらの制度については制度の在り方自体の検討の中での対応となろうが、今後の我が国経済社会の推移等を踏まえれば、就業に応じて納税し、また、社会保険の被保険者として保険料も支払う、という原則に立ち、極力制度を世帯単位から個人単位に切り替えていく方向が望ましく、個々の制度の撤廃も含めた抜本的な見直しが必要と考える。
また、就業調整を招いている企業の配偶者手当制度についても、こうした見直しにあわせて、その在り方について労使による抜本的な見直しが必要である。
関係行政機関においては、この問題が来るべき少子高齢化社会を乗り切る上でも重要な課題であることにも留意しつつ、可能な限り速やかに検討を進めることが必要である。
なお、雇用保険制度については、就業調整の問題とはなっていないが、パートタイム労働者に対する適用の在り方について、引き続き検討していくことが必要である。
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