パートタイム労働の現状について(H12年4月)

■HOMEPAGE

■640/480 ■パート労働情報



パートタイム労働の現状について

(H12.4「パートタイム労働に係る雇用管理研究会報告」参考資料1より)
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1 パートタイム労働者の現状
(1)パートタイム労働者の数
(2)パートタイム労働者の属性

2 パートタイム労働に係る意識の実態
(1)パートタイム労働者の意識
  イ 働いている理由
  
ロ バートタイム労働を選んだ理由
  
ハ 正社員との類似作業の有無について
  
二 今の会社や仕事に対する不満や不安について
  
ホ 自己の職務能力の認識
  
へ 今後希望する仕事
  
ト 今後の就業継続希望
  
チ 受け入れ可能な負担
(2)企業からみたパートタイム労働者の活用の実態
  イ パートタイム労働者を雇用する理由
  
ロ 類似作業
  
ハ 期待勤続年数
3 パートタイム労働に係る処遇・労働条件の現状
(1)労働時間・労働日数
(2)賃金、退職金
  イ 正社員の賃金の構成
  
ロ バートタイム労働者と正社員の比較
  
ハ 賃金の決定にあたって考慮する事項
  
ニ 就業調整
(3)その他の処遇
  イ 人事制度
  
口 正社員への登用
  
ハ 福利厚生制度
  
二 教育訓練
4 パートタイム労働者の労働条件に係る意識の実態
(1)事業所の意識
  イ 正社員との賃金等のバランスの考慮
  
ロ 正社員との処遇の格差を縮める必要性
(2)労働者の意識
  イ 賃金の差に対する納得性
  
ロ 望ましい賃金水準
  
ハ 賃金以外に充実させてほしい処遇
5 まとめ




(H12.4「パートタイム労働に係る雇用管理研究会報告」参考資料1より)

パートタイム労働の現状について



 本研究会においては、事業所及び労働者にアンケート調査を実施し、「職場における多様な労働者の活用実態に関する調査」としてとりまとめたところであるが(概要については別添1を参照=省略)、以下では、当該調査(以下「アンケート調査」という。)と既存の調査(別添2を参照=省略)とを併せてパートタイム労働の現状を述べていくこととする。
 なお、「アンケート調査」における「短時間労働者」に係る記述は、調査対象とした「非正社員」のうち、同じ事業所の正社員より所定労働時間が短い者を指している。





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1 パートタイム労働者の現状





(1)パートタイム労働者の数

 総務庁「労働力調査」によれば、平成11年には週の就業時間が35時間未満の雇用者は1,138万人(うち女性773万人)、雇用者中に占める割合も21.8%(女性同37.4%)に達し、10年前である平成元年の602万人、13.1%から大きく上昇している(図1)

 また、同調査によれば、産業別では、「卸売・小売業、飲食店」(367万人、32.2%)、「サービス業」(352万人、30.9%)、「製造業」(196万人、17.2%)の3業種に週の労働時間が35時間未満の雇用者の約8割が集中している。
 企業規模別にみると、1〜29人規模の企業で働く者が38.2%と最も多いものの、ついで多いのは500人以上規模の企業で、21.4%である。
 また、平成7年の労働省「パートタイム労働者総合実態調査」(以下「実態調査」という。)によれば、パートタイム労働者を雇用している事業所の割合は47.9%であり、企業規模別にみると、従業員数が「1,000人以上」の企業では44.0%、「500〜999人」で52.4%、「300〜499人」で52.5%、「100〜299人」で49.9%、「30〜99人」で48.4%、「5〜29人」で47.5%である。





(2)パートタイム労働者の属性

 総務庁「労働力調査特別調査」(平成11年2月)でパート・アルバイトの職種をみると、「事務従事者」が20.8%、「技能工、製造・建設作業者」が19.6%と多く、次いで「保安職業、サービス職業従事者」が16.5%、「販売従事者」が11.7%、「専門的・技術的職業従事者」が10.5%と続くが、近年は特に「保安職業、サービス職業従事者」、「事務従事者」、「専門的・技術的職業従事者」が増加している(平成6年2月と比較するとそれぞれ56.4%、24.6%、13.0%増加)。
 また、平成7年の「実態調査」によれば、役職等に就いている者の割合は4.6%で、平成2年の3.3%に比べ上昇している。また、その内訳も、平成2年と平成7年を比較すると、「班長クラス」が62.1%から62.6%、「主任クラス」が11.9%から14.8%、「係長クラス」が1.2%から2.9%と、いずれも増加している。
 さらに、労働省「賃金構造基本統計調査」でパートタイム労働者の平均勤続年数を平成5年と10年とで比較すると、女性は4.6年から4.8年に、男性は2.9年から3.0年となっている。
 また、「実態調査」によれば、平均雇用契約期間は7.5ヶ月(平成2年)から8.6ヶ月(平成7年)となっている。
 以上から、パートタイム労働者について、事務従事者のみならず、サービス職業従事者や専門的・技術的職業従事者の増加や役職者の増加などの職域の拡大・多様化及び勤続年数や雇用契約期間の長期化の傾向がうかがえる。





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2 パートタイム労働に係る意識の実態

(1)パートタイム労働者の意識


イ 働いている理由

 平成7年の「実態調査」でパートタイム労働者の働いている理由(複数回答)をみると、「家計の足しにするため」を挙げる人が53.5%で最も多く、次いで「生活を維持するため」(33.8%)、「余暇時間を利用するため」(27.0%)、「子供に手がかからなくなったから」(21.9%)、「生きがい・社会参加のため」(21.3%)となっている。


ロ バートタイム労働を選んだ理由

 平成7年の「実態調査」でパートタイム労働を選んだ理由(複数回答)をみると、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多く55.0%、「勤務時間・日数を短くしたいから」が24.0%、「仕事の内容に興味がもてたから」が19.6%、「家事・育児の事情で正社員として働けないから」が15.4%、「正社員として働ける会社がないから」が13.7%、「体力的に正社員として働けないから」が5.9%、「病人・老人等の介護で正社員として働けないから」が1.7%となっている。
 また、「アンケート調査」によれば、短時間労働者のうち「自ら非正社員を希望した」人は52.9%であり、一方「正社員として働きたかった」人は28.0%となっている。
 正社員として働くことを希望しているパートタイム労働者の割合が両調査で異なるのは、「アンケート調査」についてはその設問が「自分から希望して『非正社員』になった」「『正社員』として働きたかったが、自分の希望に合う勤務先がなく、やむを得ず『非正社員』になった」「どちらでもよかった」の3項目のうち1つを選ぶ形式となっているが、「実態調査」の設問は11項目で、複数回答ができる形式となっている違いを反映していると思われる。なお、平成7年の「実態調査」のうち、「正社員として働ける会社がないから」と家事、育児、介護、体力的な事情等で「正社員として働けないから」と答えた者を便宜的に合計すると36.7%となっている。


ハ 正社員との類似作業の有無について

 「アンケート調査」によれば、短時間労働者のうち、正社員が、自分と同じ(又は類似した)職務や作業に従事することが「よくある」又は「時々あ
る」と答えた人は77.0%にのぼっている。


ニ 今の会社や仕事に対する不満や不安について

 平成7年の「実態調査」によれば、今の会社や仕事に対する不満や不安があるとするパートタイム労働者は41.2%である。その内訳(複数回答)をみると、「賃金が安い」が最も多く52.3%、次いで「雇用が不安定」が18.8%であり、以下「人間関係がよくない」16.8%、「正社員になれない」16.7%、「福利厚生が充実していない」15.9%、「有給休暇がとりにくい」15.3%、「仕事がきつい」14.1%、「労働時間が希望にあわない」12.0%と続く。


ホ 自己の職務能力の認識

 「アンケート調査」によれば、自分の職務の内容やレベルを管理職以外の正社員(以下「一般正社員」という。)と比較して、「入社1〜2年目」と思う短時間労働者は40.7%、「入社3〜4年目」は22.8%、「5年目以降」は16.2%、「グループリーダークラス」は5.4%、「それ以上」は2.2%である。
 一般正社員との職務レベルの比較については、基本的には、現在の職場での就労期間に比例して自己の認識する職務レベルが高くなる。しかしながら、入社5〜9年目の短時間労働者のうちの26.7%、入社10〜19年目の短時間労働者のうちの19.5%が、自己の職務レベルを1〜2年目の正社員と同じだと認識しており、勤続年数が長いにもかかわらず、自己の職務レベルを低く認識している人が少なくないことがうかがえる(図2)


へ 今後希望する仕事

 平成7年の「実態調査」により、今後希望する仕事についてみると、「今と同じ仕事がしたい」とするパートタイム労働者が41.5%を占めているが、「教育訓練を受けるなどして技術・技能、資格を生かした仕事をしたい」という人が平成2年の6.0%から平成7年の13.9%に増加している。
 「アンケート調査」によれば、今後の働き方に対する希望について(転職する場合も含む。)は、「より多くの収入を得たい」と答えた短時間労働者が80.7%、「長期間勤務したい」が64.6%、「専門的・高度な仕事をしたい」が48.0%である。一方、「正社員になりたいと思う」が40.6%で、「なりたいと思わない」が49.5%、「責任のある仕事をしたい」が42.3%、「したくない」が47.2%となっている。
 特に正社員への希望がない者の割合は、今の職場での就労期間が「1年未満」では49.9%、「3〜4年」では52.0%、「5〜9年」では56.8%、「20年以上」では81.1%と、勤続年数が長くなるほど「正社員になりたいと思わない」人が増える傾向が見られる(図3)


ト 今後の就業継続希望

 平成7年の「実態調査」でパートタイム労働者の今後の就業継続希望の状況をみると、「パート等で仕事を続けたい」が67.2%、「わからない」が16.1%、「正社員になりたい」が12.5%となっている。
 「正社員になりたい」が12.5%と、「アンケート調査」で40.6%が「正社員になりたいと思う」としたのに比べて少ないのは、「実態調査」においては、今後の希望としてパートタイム労働者のまま仕事を続けたいか、正社員になりたいか、自営業などを始めたいか等の選択肢の中から1つを選ばせる質問形式であったのに対し、「アンケート調査」においては、単に正社員になりたいか否かを質問する形式であったことの違いが理由であると考えられる。


チ 受け入れ可能な負担

 「アンケート調査」によれば、今後、働き方を変更する場合(転職する場合も含む。)に、受け入れることが可能な負担については、「教育訓練を受けること」と答えた短時間労働者が最も多く78.7%、次いで「より長い所定労働時間」が57.7%、「より長い残業」が41.3%、「事業所内配置転換」が58.9%である。一方、受け入れることが困難な負担は「転居を伴う配置転換」が78.7%、「より長い残業」が50.1%である。
 以上のように、パートタイム労働は、家事、育児等家庭生活との両立を図るなど自分の都合にあわせやすいという理由で選択されてきた側面が多いものの、パートタイム労働者本人は、実際には正社員と類似の業務を行うことがあり、自己の職務能力は勤続年数とともに伸長していると認識している状況にある。このような中で、より積極的な就業意欲を持つ者が増加し、そのための負担も辞さない者が多くみられるなど、その就業ニ一ズの多
様化が進んでいるといえる。





(2)企業からみたパートタイム労働者の活用の実態


イ パートタイム労働者を雇用する理由

 平成7年の「実態調査」によりパートタイム労働者を雇用する理由(複数回答)をみると、「人件費が割安だから」(38.3%)が最も多く、次いで「1日の忙しい時間帯に対処するため」(37.3%)、「簡単な仕事内容だから」(35.7%)、「業務が増加したから」(29.8%)が多くなっている。
 平成2年と比較すると、「人件費が割安だから」「仕事量が減ったときに雇用調整が容易だから」が増加している(それぞれ21.0%→38.3%、6.4%→12.4%)ものの、「経験・知識・技能のある人を採用したいから」も増加しており(9.9%→13.2%)、人件費に対するコスト意識の高まりのみならず、パートタイム労働者に対する専門的業務への即戦力としての期待の高まりも、パートタイム労働に対する需要の増大の要因となっている。


ロ 類似作業

 「アンケート調査」によれば、職場(部門、ライン等)の中で、一般正社員と非正社員が同じ(又は類似の)作業に従事することがあるか否かについては、「よくある」とする事業所は39.8%、「時々(人によっては)ある」事業所が41.1%であり、合計で80.9%にのぼっている。一方、「ほとんどない」は14.5%で、「同内容の作業を行うことはありえない」とする事業所は3.4%である。


ハ 期待勤続年数

 「アンケート調査」によれば、事業所側が、雇用する短時間労働者に勤続してもらいたいと考える期間は、「本人の業績による」が最も多く33.8%、「特に希望はない」が16.1%、次いで「3年以上5年未満」が13.3%、「5年以上10年未満」が13.1%、「3年未満」が10.6%、「10年以上」が9.0%である。





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3 パートタイム労働に係る処遇・労働条件の現状



(1)労働時間・労働日数


 労働省「毎月勤労統計調査」によれば、女性パートタイム労働者の月間総実労働時間数は、平成10年では95.8時間で、産業別には卸売・小売業,飲食店及びサービス業がそれぞれ94.5時間、83.7時間で比較的短くなっているが、製造業では114.9時間となっている。また、月間出勤日数は17.0日となっている。
 また、平成7年の「実態調査」によれば、パートタイム労働者の1日の平均所定労働時間は5.6時間、週平均出勤日数は4.7日となっている。



(2)賃金、退職金


イ 正社員の賃金の構成

 労働省「賃金構造基本統計調査」(平成8年)によれば、一般労働者の賃金の構成は、所定内給与額が71.6%、年間賞与その他特別給与額が22.2%等となっている(図4)
 さらに、労働省「賃金労働時間制度等総合調査」(平成8年)により所定内賃金の内訳をみると、賃金表等に基づき支払われる基本給が83.8%、諸手当が16.2%となっている(図5)



ロ バートタイム労働者と正社員の比較

(イ)所定内給与

a 支給状況

 「賃金構造基本統計調査」(平成10年)によれば、1時間当たり所定内給与額は、女性については一般労働者1,295円、パートタイム労働者886円となっており、男性は一般労働者2,002円、パートタイム労働者1,040円となっている。
 一方、「アンケート調査」によれば、入社時の平均給与額は、高卒が月給15.6万円、大卒が月給18.9万円、短時間労働者が時給883.5円となっている。

b 比較

(a) 「賃金構造基本統計調査」によれば、女性一般労働者の1時間当たり所定内給与を100とした場合の女性パートタイム労働者の賃金は平成10年は68.4であり、10年前である昭和63年の71.4と比較すると3.0ポイント低下するなど、長期的に見てその開きは拡大する傾向にある(図6)
 このような賃金の差が出る要因としては、パートタイム労働者は、@正社員と比べて比較的単純ないし定型的な業務に従事する者が多いこと、A就業調整が時給の上昇を抑制する効果を持つと見られること、B勤続に伴う賃金の上昇程度が正社員の場合と比較して低いこと、C最近の所定内労働時間の短縮の結果、月給制が一般的な正社員の方が時間当たり賃金が計算上上昇していること、などが影響していると考えられる。


(b) 「アンケート調査」によれば、短時間労働者の入社時の時給を、高卒一般正社員の入社時の月給を時給換算したものと比較した場合、正社員に対する比率(以下、この項目では単に「正社員に対する比率」という。)は、「81%〜90%」となる事業所が30.5%、「91%〜100%」となる事業所が21.9%、「101%以上」となる事業所が21.9%となっており、正社員に対する比率が8割を超える事業所が全体の74.3%となっている(図7)
 また、同調査によれば、正社員に対する比率が8割を超える事業所の割合は、類似業務の実施可能性が「ほとんどない」ときは62.6%、「時々(人によっては)ある」ときは75.8%、「よくある」ときは76.3%であり、類似業務の実施可能性が高いほど、パートタイム労働者の給与は正社員に近づく傾向がある(図8)


(c) 正社員に対する比率が8割を超える事業所の割合は、事業所内の短時間労働者の実際の勤続年数が「3年未満」のときは79.1%、「3年以上5年未満」のときは73.2%、「5年以上10年未満」のときは67.0%、「10年以上」のときは78.1%であり、勤続年数が長くなるほど正社員との差は拡大する傾向がみられる(図9)



(ロ)諸手当、賞与、退職金の支給状況

a 支給状況

 平成7年の「実態調査」でパートタイム労働者に対する賞与、退職金の支給に係る制度の導入状況(複数回答)を事業所数割合でみると、賞与については、正社員が91.9%、パートタイム労働者が56.4%、退職金については、それぞれ78.6%、9.0%であり、特に退職金について大きな開きが見られることが分かる。
 また、平成7年の「実態調査」でパートタイム労働者に対する手当の支給に係る制度の導入状況(複数回答)を事業所数割合でみると、通勤手当について正社員に支給する事業所の割合は88.7%、パートタイム労働者に支給する事業所の割合は70.2%と正社員とパートタイム労働者との間の開きは小さいが、一方、役職手当にっいてはそれぞれ74.7%、6.8%、家族手当にっいてはそれぞれ69.0%、2.0%、住宅手当については48.2%、1.2%と両者の間で大きな開きが見られる(表1)。特に役職手当の違いについては、労働省「女性雇用管理基本調査」(平成10年)で「係長相当職の女性管理職あり」とする企業が39.6%存在することから、係長相当職に就いている正社員(男女計)の割合は高いことが推計され、さらに、係長クラスのパートタイム労働者が平成7年の「実態調査」で2.9%であることから、正社員に比べて役職に就いているパートタイム労働者が少ない状況がその差の理由であると考えられる。

b 比較

 「アンケート調査」によれば、短時間労働者の年間賞与額の高卒一般正社員に対する比率については、「0」の事業所が37.8%、「1〜20%」が19.5%、「21〜40%」が17.1%であり、6割以下の事業所が全体の74.4%を占める(図10)
 また、一般正社員に対する比率が2割を超えると答えた事業所は、短時間労働者の実際の勤続年数が「3年未満」の事業所では25.6%、「3年以上5年未満」では42.9%、「5年以上10年未満」では58.4%、「10年以上」では75.7%であり、勤続年数が長くなるほど正社員との差は縮小する傾向がみられる(図11)



(ハ)賃金の支払形態

 「賃金労働時間制度等総合調査」(平成8年)及び「実態調査」(平成7年)によれば、賃金の支払形態は、正社員は月給制が89.7%と最も多くなっているが、パートタイム労働者は時間給が85.8%と最も多くなっている(表2)




ハ 賃金の決定にあたって考慮する事項


(イ)パートタイム労働者の採用時の賃金決定


 平成7年の「実態調査」によれば、パートタイム労働者の賃金(初任給)について、61.1%の事業所で地域相場を考慮して決定するとしている(複数回答)。
 ただし、同調査で地域相場を考慮して賃金を決定しているとする割合は平成2年の70.6%から平成7年の61.1%に減少している。また、平成7年の同調査では、「仕事の困難度に応じて」賃金を決定するとする割合が28.5%、「経験年数に応じて」賃金を決定するとする割合が28.4%であり、総じて、地域相場のみならず、パートタイム労働者の実情を考慮して賃金を決定する傾向が広がっていることがうかがえる(表3)


(ロ)昇給

a パートタイム労働者の昇給の状況

(a) 平成7年の「実態調査」によれば、パートタイム労働者の昇給(べ一スアップ、定昇等)を行っている事業所は全体の80.1%であり、その決定にあたって考慮している事項(複数回答)としては「経験年数に応じて」(43.5%)、「地域の同じ職種のパートの賃金相場」(39.0%)、「能力の伸長に応じて」(36.2%)が多い(表4)

(b) また、「アンケート調査」によれば、短時間労働者の昇給基準は、「一般正社員と同じ基準」とする事業所が11.3%、「独自の基準」とする事業所が84.2%である。
 このうち、「独自の基準」があると答えた事業所において、その具体的な昇給基準(複数回答)は、「本人の業績」(39.5%)が最も多く、「勤続年数」(38.9%)、「地域相場」(30.3%)、「能力の伸長」(26.7%)、「仕事の困難度」(21.8%)と続く。


b 正社員の昇給の状況

(a) 「賃金労働時間制度等総合調査」(平成8年)によれば、正社員の定期昇給制度がある企業は87.6%であり、そのうち84.1%が従業員全員を対象にしている(表5)
 また、基本給の決定に当たっては、仕事の内容(74.9%)や職務遂行能力(78.4%)などの仕事的要素、年齢、勤続、学歴等(87.2%)などの属人的要素の両方が考慮されている(複数回答)(表6)

(b) 一方、「アンケート調査」によれば、一般正社員の昇給基準(複数回答)は、「本人の業績」(81.6%)とする事業所が最も多く、「勤続年数」(64.1%)、「能力の伸長」(58.6%)、「年齢」(56.6%)と続く。



c 勤続年数と賃金上昇の関係

 労働省「労働経済の分析」(平成9年)によれば、労働者の勤続に伴う賃金の上昇程度については、正社員とパートタイム労働者では大きな違いがあり、この差は10年前と比較してもあまり縮小していない(図12)。その理由としては、後述するように、パートタイム労働者に対して昇進昇格制度、職能資格制度、役職への登用制度が適用される割合は正社員より低く、そのため、正社員に比べて賃金の伸びが抑えられていることが考えられる。




ニ 就業調整

 平成7年の「実態調査」では、年収が非課税限度額(103万円)を超えそうな場合に「就労調整を考慮する」パートタイム労働者は31.6%となっている。また、同調査によると、所得税以外の理由での年収を調整する者が30.0%存在し、調整理由(複数回答)で内訳をみると、「税制上の控除がなくなる」が77.4%、「健康保険の加入義務が生じる」40.1%、「配偶者手当がもらえなくなる」32.9%、「雇用保険の加入義務が生じる」7.3%、「配偶者の会社に知られる」2.2%となっている。
 一方、「アンケート調査」によれば、課税限度額等を考慮して、年収が一定額を超えないように、就労日数や就労時間を調整する「就業調整」を行っているパートタイム労働者は42.3%、行っていない者は56.7%となっている。




(3)その他の処遇

イ 人事制度

 平成7年の「実態調査」によれば、昇進や配置転換などの人事制度がパートタイム労働者に対して適用されている事業所の割合(複数回答)は、昇進・昇給が14.8%、配置転換が14.5%、職能資格制度が3.1%と全体的に少なく、正社員との差が大きい(正社員については、それぞれ68.5%、49.5%、28.4%)(表7)





ロ 正社員への登用

 平成7年の「実態調査」によれば、パートタイム労働者から正社員への転換制度がある事業所は42.2%となっている。
 一方、「アンケート調査」によれば、正社員への登用制度が存在している企業は33.3%であり、そのうち65.5%が実際の登用を行っている。ただし、短時間労働者の勤続年数が「3年未満」の事業所で実際に登用を行っているのは68.3%、「3年以上5年未満」では70.9%、「5年以上10年未満」では60.9%、「10年以上」では42.9%となっており(図13)、短時間労働者の勤続年数が「3年以上5年未満」を越える事業所では正社員への登用が減少することから、正社員に登用されるのは比較的勤続年数の短い場合が中心であるといえる。
 勤続年数が長くなるほど「正社員になりたいと思わない」人が増えるという傾向と併せると、早い段階でパートタイム労働者の能力や適性の範囲において、正社員への登用をはじめとして働き方の選択の機会を付与することが、その能力の有効発揮に資するものと考えられる。


ハ 福利厚生制度

 平成7年の「実態調査」によれば、福利厚生制度の導入状況について、@財産形成制度をパートタイム労働者に実施している事業所割合は14.2%、正社員に実施している事業所割合は46.5%、A慶弔見舞金についてはそれぞれ58.2%、82.5%、B定期健康診断についてはそれぞれ47.4%、74.6%となっており、これらが特に正社員とパートタイム労働者との差が大きくなっている(表8)



ニ 教育訓練

 平成7年の「実態調査」によれば、教育訓練については、いずれの内容においても正社員よりパートタイム労働者の実施割合が低くなっており、特に管理監督者教育や簿記等事務処理教育でその差が大きくなっている(管理監督教育について正社員に実施している事業所割合は29.2%、パートタイム労働者に実施している事業所割合は1.7%、簿記等事務処理教育についてはそれぞれ14.8%、5.2%)(図14)







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4 パートタイム労働者の労働条件に係る意識の実態


(1)事業所の意識


イ 正社員との賃金等のバランスの考慮


(イ)単位時間当たり賃金額

 「アンケート調査」によれば、「単位時間当たり賃金額」について、一般正社員とのバランスの考慮については、「一般正社員のことは特に考慮しなかった」とする事業所が63.3%と最も多く、次いで「差を一定に保つようにしてきた」26.2%、「差を縮小するようにしてきた」7.3%、「差はもともとない」2.3%と続く。


(ロ)昇給率

 「アンケート調査」によれば、「昇給率」について、一般正社員とのバランスの考慮については、「一般正社員のことは特に考慮しなかった」とする事業所が63.0%と最も多く、次いで「差を一定に保つようにしてきた」26.3%、「差を縮小するようにしてきた」6.7%、「差はもともとない」3.4%と続く。


(ハ)諸手当


 「アンケート調査」によれば、「諸手当」について、一般正社員とのバランスの考慮については、「一般正社員のことは特に考慮しなかった」とする事業所が62.2%と最も多く、次いで「差を一定に保つようにしてきた」20.3%、「差はもともとない」11.5%、「差を縮小するようにしてきた」6.1%と続く。上記(イ)及ぴ(口)と比較すると、「一般正社員との差はもともとない」が相対的に多い。




ロ 正社員との処遇の格差を縮める必要性

(イ)短時間労働者の種類

 「アンケート調査」によれば、「正社員と職務内容がほとんど同じ短時間労働者」がいる事業所は58.6%、「管理業務や専門業務に従事している短時間労働者」がいる事業所は26.0%、「正社員とほぼ同じ勤務時間で、残業や事業所内の配置転換もある短時間労働者」がいる事業所は20.1%、「就業調整を行わず、できるだけ多くの所得を求める短時間労働者」がいる事業所が46.6%、「勤続期間が相当程度長期化(10年以上)している短時間労働者」がいる事業所が49.5%である。


(ロ)正社員との処遇の格差を縮める必要性

 上記(イ)のような様々な特質をもつ短時間労働者が事業所にいる場合、その処遇や労働条件面について、特質が類似する正社員との処遇の格差を縮める必要性について、「必要性が高い」又は「一定の必要性がある」と答えた事業所の割合は、「正社員と職務内容がほとんど同じ短時間労働者」では48.4%、「管理業務や専門業務に従事している短時間労働者」では53.0%、「正社員とほぼ同じ勤務時間で、残業や事業所内の配置転換もある短時間労働者」では47.3%、「就業調整を行わず、できるだけ多くの所得を求める短時間労働者」では37.2%、「勤続期間が相当程度長期化(10年以上)している短時間労働者」では35.8%となっている。
 この調査の結果から、正社員と職務内容がほとんど同じ短時間労働者、管理的・専門的な業務に従事している短時間労働者、正社員とほぼ同じ勤務時間で残業や配転もある短時間労働者については、事業所側に、正社員との処遇の格差を縮める必要性についての広範な理解があるとみることができる。
 同時に、このような事業所側に正社員との処遇の格差を縮める必要性が認識されることの多い類型の短時間労働者が存在する割合が高いことは、正社員との処遇の格差の縮小が幅広い事業所における課題であることを示すものといえる。





(2)労働者の意識


イ 賃金の差に対する納得性

(イ)納得性

 「アンケート調査」によれば、職務レベルが自分と同程度と認識している一般正社員と比較した場合の時間当たり賃金の差で、「自分の方が低い」と思う短時間労働者は75.2%であり、その差について納得できる人は51.2%、納得できない人は29.6%である。
 また、類似作業が多いほど、自分の賃金を低いと思う短時間労働者の割合がやや増加する(図15)
 さらに、現在の職場での就労期間が長くなるほど、また、自己の認識する職務レベルが高くなるほど、賃金の差に納得できないとする人が増加する図16図17


(ロ)納得できない理由

 「アンケート調査」によれば、賃金の差に納得できない理由(第1位)は、「職務内容や責任が同じだから」(51.8%)が最も多く、次は「職務内容や責任の違いに見合っていないから」(29.4%)である。一方、「勤務時間が同じだから」(0.9%)、「勤務時間の違いに見合わないから」(4.1%)、「残業がある(多い)から」(1.7%)、「配転等がある(多い)から」(0.9%)を挙げる人は1%〜4%程度である。
 現在の職場での就労期間が長くなるほど、「職務内容・責任が同じ」を理由とする人が増加する傾向にある(図18)
 また、自己の認識する職務レベルが高くなるほど、「職務内容・責任が同じ」を理由とする人が増加し、自分の職務レベルを正社員の「1〜2年目」とする人では40.7%であるのに対し、「グループリーダークラス」になると62.3%になる。また、「職務内容・責任の違いに見合わない」を理由とする人は、「1〜2年目」で35.0%、「グループリダークラス」で23.0%と、減少する傾向にある(図19)
 以上のような結果から、パートタイム労働者は、自己の認識する職務レベルが高くなると、正社員と職務が同じであるのに賃金の差があることに不満を感じるようになるといえる。


(ハ)納得できる理由

 「アンケート調査」によれば、正社員との賃金の差について納得できる理由(第1位)は、「責任の重さが違うから」が最も多く(32.9%)、次いで「勤務時間の自由度が違うから」(29.0%)、「職務内容が違うから」(22.2%)と続く。一方、「残業がない(少ない)から」(7.0%)、「転勤等がない(少ない)から」(5.3%)を挙げる人は5%程度に過ぎない。
 現在の職場での就労期間が長くなるほど、「責任の重さが違う」を理由とする人が減少し、「勤務時間の自由度が違う」を理由とする人が増加する傾向にある(図20)
 さらに、自己の認識する職務レベルが高くなるほど、「職務内容が違う」を理由とする人が減少する傾向にあり、自分の職務レベルを正社員の「1〜2年目」とする人では24.7%であるのに対し、「5年目以降」では11.9%である。ただし、「グループリーダークラス」では27.0%、「それ以上」では46.2%と、「グループリーダークラス」以上になると、逆に「職務内容が違う」を理由とする人が増加する(図21)
 以上のことは、上記2の(1)でみたとおり、勤続年数が長くなるほど自己の認識する職務レベルが高くなり、正社員と職務が同じであると認識する者が増加することから、「責任の重さが違う」ことで賃金の差に納得できる者が減少し、相対的に「勤務時間の自由度が違う」ことで納得する者が増加すると考えられる。また、このことは上記(ロ)の結果とも整合的である。



ロ 望ましい賃金水準

 「アンケート調査」によれば、望ましい賃金は、一般正社員の「80〜89%」とする短時間労働者が25.7%で最も多く、ついで「70〜79%」が15.4%となっており、「90%未満」が望ましいとする人は52.6%を占める。
 望ましい賃金水準については、自己の認識する職務レベルが高くなるほど、また、一般正社員との賃金の差に納得できないほど、「8割以上」が望ましいとする人が増加する図22図23



ハ 賃金以外に充実させてほしい処遇

 「アンケート調査」によれば、賃金以外の処遇で、一般正社員と比較した場合、もっと充実させてほしいと思うもの(第1位・複数回答)については、「賞与」と答える短時間労働者が59.9%と過半数を占め、次いで「退職金」(17.4%)となっている。このように、賃金以外に賞与や退職金の充実を望むパートタイム労働者が多いにもかかわらず、正社員に比べてそれぞれの支給に係る制度が整っていない現状がみられる。
 また、現在の職場での就労期間が長くなるほど、「賞与」を希望する短時間労働者は減少し、「退職金」を希望する人が増加する傾向が見られる(図24)






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5 まとめ


(1) 以上みてきたように、パートタイム労働者の就業実態やニ一ズは様々であることから、パートタイム労働者に係る雇用管理については個々の就業実態、ニ一ズを踏まえた合理的なものとして行われることが必要である。


(2) このような合理的な雇用管理の重要な課題の一つとして、通常の労働者との均衡を考慮した処遇・労働条件の確保があるが、企業が格差を縮小する必要性が高いと認識しているパートタイム労働者の属性や、パートタイム労働者の正社員との賃金の差に対する納得性、働き方を変更するために受け入れられる負担などに鑑みると、職務内容や責任について類似性がある場合、勤務に対する自由度が低い(正社員と勤務時間がほとんど同じ、残業がある、配転がある等)場合には、処遇の均衡を考慮する必要性が高い。
 特に、パートタイム労働者の勤続年数が近年延びてきているが、勤続期間の長期化に伴う職務遂行能力の向上に対する評価が適切になされていないことが賃金の差への不満につながっていることが考えられ、職務レベルに見合った適切な処遇や労働条件を設定していくことが課題であることがうかがえる。


(3) また、働き方を変更するための負担については、教育訓練を受けることを受け入れる者が大多数であることから、個々のパートタイム労働者の就業実態や就業ニ一ズに応じて、能力や適性の範囲において、必要な教育訓練を実施して企業の戦力として活用することが、パートタイム労働者、企業の双方にメリットとなるといえる。
 さらに、勤続年数が長くなるほど「正社員になりたいと思わない」人が増えるという傾向と併せると、早い段階で、働き方の再選択の機会を付与することが、その能力の有効発揮に資するものと考えられる。