H18.4後施行・労働関係改正法のポイント整理
HOMEページ
法改正の直後は、あれこれ詳細をチェックした憶えのある改正内容も、日時の経過とともに、虚ろとなるのはやむを得ないことです。
ふり返って、ここ数年の労働関係法律の改正ポイント(詳細に非ずして、記憶喚起を促してくれそうな-そう「箇条書き的なもの」)をシンプルに確認したいことがあります。
(何を隠しましょう)当編集部でもそのニーズが高かったのです。
ならば、企業の人事労務担当者にも、似たような需要があるかも知れないと思い、以下のページを編集してみました。
2008.7.7 労務安全情報センター
最近の労働関係法律の改正について
平成18 年4 月以降に改正・施行されている労働関係法律は、次に示すようにかなり広範多岐に渡っています。以下、改正の要点等を、箇条書きにしました。[参考]初期PDF版
[施行日順]
法律 | 規則等 | 改正等 | 施行日 | 関連資料へのリンク | リーフ等 |
労働基準法 | 本法他改正 | H22.4.1施行 | 労働基準法施行規則の一部改正(案) 労働時間の延長限度基準の一部改正(案) |
||
労働安全衛生法 | 結核健康診断の廃止 足場・仮設通路・作業構台からの墜落防止対策の強化 |
安衛則改正 安衛則改正 |
H21.4.1施行 H21.6.1施行 |
新旧対照条文 改正安衛則の施行について |
厚労省版/労働安全衛生規則(足場等関係)が改正されました |
〃 | 石綿障害予防規則の改正 ( 建築物の解体等の作業における石綿対策) |
石綿則改正 | H21.4.1施行 | 厚労省版/建築物の解体等の作業における石綿対策 | |
〃 | 有害物ばく露作業報告(新対象物質等) 特化則の改正(ニッケル化合物等) |
改正 特化則改正 |
H21.1.1施行 H21.1.1施行 |
厚労省版/ニッケル化合物等の対策(2頁,3頁,4頁) 薫蒸作業へのホルムアルデヒドの追加について |
|
最低賃金法 | 改正 | H20.7.1施行 | 図解/最低賃金法 | ||
パート労働法 | 改正 | H20.4.1施行 | パートタイム労働法とH19年改正 | ||
労働契約法 | 新法 | H20.3.1施行 | 図解/労働契約法 | ||
労働基準法 | 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準 | 改正 | H20.3.1施行 | ||
労働安全衛生法 | 石綿関係の規制強化(特殊検診及び健康管理手帳) 健康診断項目の改正 特化則の改正(ホルムアルデヒド等) 粉じん障害予防規則の一部 改正 |
改正 改正 改正 改正 |
H20.12.1施行 H20.4.1施行 H20.3.1施行 H20.3.1施行 |
厚労省版/石綿健康管理手帳の交付対象業務の拡大について |
|
雇用対策法 | 改正 | H19.10.1施行 | 新・外国人雇用管理指針等 | ||
男女雇用機会均等法 | 改正 | H19.10.1施行 | 改正男女雇用機会均等法のあらまし | ||
労働安全衛生法 | 改正 | H18.4.1施行 | |||
高年齢者雇用安定法 | 改正 | H18.4.1施行 |
最低賃金法(H20.7.1改正施行)
主要改正点
(1) 最低賃金は「時間」によって定める。 旧(日、週又は月)の設定は削除。
(2) 地域別最低賃金—地域労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して決定(第9条A)。なお、生計費の考慮に当たっては、生活保護費との整合性に配慮(第9条B)。
(3) 最低賃金の減額特例-「適用除外」を廃止して「減額特例」(許可制)を新設。対象は、
a 精神、身体の障害により著しく労働能力が低い者
b 試用期間中の者
c 認定職業訓練であって厚生労働省令で定める者
d 軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者
(注) 最低賃金の時間額一本化に伴い、「所定労働時間の特に短い者」は減額特例の対象から除外された。
(4) 派遣労働者の最低賃金適用-派遣労働者の最低賃金は派遣先事業場の所在地の最低賃金を適用する(第13条)
(5) 労働協約に基づく地域的最低賃金等の廃止(旧法第11条〜第16条の3)
(6) 特定最低賃金-労働者又は使用者の代表者が「一定の事業若しくは職業に係る最低賃金」を決定するよう申し出ることによって設定(15条)。
(7) 地域別最低賃金違反の罰金額の上限が2万円から50万円に引き上げられた(40,42条)。
また、労働者の申告権が明定された(34条)。
パート労働法(H20.4.1改正施行)
主要改正点
(1) 法律の目的として、適正な労働条件の確保等のほか「通常の労働者への転換の推進」をうたい、「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて」福祉の増進、社会経済の発展に寄与するものへと改正を図った(1条)
(2) 労働条件の文書交付義務(労基法15 条の事項に加え、特定事項-昇給、賞与、退職金の有無-の明示を義務付けた)(6 条1項)
(3) 「業務の内容及び責任の程度が通常の労働者と同一の短時間労働者」であり、かつ、「期間の定めのない雇用契約」者のうち、事業場慣行からみて、雇用の全期間おいて、人材活用の仕組みや運用が通常の労働者と同視すべき短時間労働者については、「賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について差別的取扱いをしてはならない。」(8 条1 項)
(4) 「業務の内容及び責任の程度が通常の労働者と同一の短時間労働者」に対しては、通常の労働者と同様の教育訓練を実施する義務(10 条1 項)
(5) 福利厚生施設(給食施設、休憩施設及び更衣室)の利用について、通常労働者と同様の機会を与えるように配慮しなければならない(11 条)
(6) 通常の労働者への転換のための選択的措置義務(12 条) (「募集条件の周知」、「応募機会の付与」、「転換制度の整備」のうちいずれかの措置を講ずる義務)
(7) 短時間労働者の求めがあったときは待遇の決定経緯(考慮した事項)について説明する義務(13 条)
労働契約法(H20.3.1施行新法)
新法の概要
(1) 労働契約の成立又は変更は「合意の原則」によるべきことを明らかにしたほか、労働契約の民事的効力等の基本的事項を定めた新法としてH20.3.1から施行された。(1条)
(2) 労働契約を締結する場合において、「合理的な労働条件が定められている就業規則」を「使用者が周知させていた場合-労働契約の締結と同時である場合を含む。 」には、特約のある場合を除いて効力が発生する。(7条)
(注) この条項は「労働条件の詳細を定めず労働者が就職したような場合=入ったとき既に就業規則が存在していたような場合のみに適用されるものであること。
(3) 労働契約の不利益変更は原則禁止(9条)。ただし、不利益変更が@不利益の程度A変更の必要性B変更内容の相当性C労使交渉その他就業規則変更に係る事情に照らして、合理的なものであり、かつ、使用者が周知させたとき、不利益変更も効力が発生する。この場合も特約事項には影響を及ぼさない。(10条)
(4) 就業規則の作成、変更手続きは労基法による(11条)。
(5) 安全配慮義務を規定したこと(5条)。
(6) 「出向、「懲戒」、「解雇」について、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利濫用として無効とすると規定したこと(14,15,16条)
(7) 「期間の定めのある労働契約」において、使用者はやむをえない事情がある場合でなければ契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇することはできない(17条)。
雇用対策法(H19.10.1改正施行)
主要改正点
(1) 労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない(10条)
(2) 外国人雇用状況届の義務化(事業主による在留資格、在留期間その他厚生労働省令で定める事項の確認義務)(28 条) 前記届出情報の法務大臣への提供(29 条)
男女雇用機会均等法(S60制定、H9改正、H18改正平成19年4月1日改正施行)
主要改正点
(1) 女性差別禁止から性差別(男性に対する差別も)禁止へ(×例=職種採用を男女のいずれかのみとするなど)禁止差別の追加=降格、職種変更、雇用形態の変更(例/パートへ)、退職勧奨、雇止めを追加。従来から禁止対象=@「教育訓練、福利厚生、定年、解雇」(S60)A「募集・採用、配置・昇進」(H9)
(2) 次の3つを間接差別として禁止したこと。
@募集採用にあたって身長・体重・体力を要件とすること、A総合職の募集採用にあたって転居転勤を要件とすること、B昇進にあたって転勤経験を要件とすること(均等則第2条)。
(3) 妊娠、出産、産前産後の休業(※1)、母性管理/保護措置を受けたこと、妊娠・出産による能率低下又は労働不能が生じたこと理由とする解雇等不利益取扱の禁止
(※1)妊娠中、産後1 年以内の解雇は事業主に裁判上の挙証責任を転嫁、事実上、解雇を無効化)
(4) 事業場として、セクハラ排斥方針を明確化し、行為者には厳正に対処する旨を就業規則に規定すること等、9つのセクシュアルハラスメント防止措置の内容を「指針」において定めたこと(派遣先事業主にも適用あり)。
労働安全衛生法(H18.4.1改正施行)
主要改正点
(1) リスクアセスメント条項の新設(28条の2新設)
(2) 製造業等の下請混在作業現場における統括安全衛生管理(作業間の連絡調整)(30条の2新設)
(3) 化学物質の製造・取扱設備において分解、内部立ち入り作業を伴う仕事の注文者は、危険有害情報を文書交付によって提供する義務を負うこと(31条の2新設)。
(4) 化学物質の表示・文書交付制度の改正と有害物ばく露報告制度の新設(安衛則95条の6)
(5) すべての健康診断結果の労働者への通知(積み残し案件=特殊健診結果の通知義務を追加)
(6) 長時間労働者に対する医師の面接指導制度の新設(66条の8,9新設)
[関連]健診事後措置の追加改正(産業医の意見の委員会等への報告)、産業医の職務の追加(規則改正)、秘密の保持義務の追加
(7) 安全衛生マネジメントシステムの実施事業者に対する計画届の免除制度(88条改正)
(8) 委員会の調査審議事項の追加、総括安全衛生管理者の職務・安全管理者資格の見直し、職長教育カリキュラムの追加(17-19条、10条、11条、60条)
(9) 免許・技能講習制度の見直し
(10) 衛生管理者及び安全管理者の「事業場専属の者」とする要件の一部見直し
高年齢者雇用安定法 (H18.4.1改正施行)
主要改正点
(1) 65歳未満の定年の定めをしている事業主は、高年齢者の65歳(段階引き上げ-H19.4.1=63歳)までの安定した雇用を確保するため、次の@からBのいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければならない。
@ 定年の引上げ
A 継続雇用制度の導入
B 定年の定めの廃止
労働基準法 (改正=2009.12.5国会承認、平成22年4月1日施行)
(1) 割増賃金率=1 か月60 時間を超えた時間の労働に対しては、5 割増以上の率で計算して支払う義務。但し、中小事業主の事業には、当分の間、適用しない。(37 条1 項但書、138 条)これ−37 条1 項但書−は、過半数代表者との書面協定により代償休暇の取得をもって代えることができる。(37 条3 項)
(2) 1か月45時間を超え60時間までの時間外労働に対する割増賃金については、25%を超える率とするよう努めることとされた。(36条2項)
(3) 年次有給休暇=過半数代表者との書面協定により年休の時間単位付与を定めた場合、5 日を限度として労働者の請求に基づき時間を単位として付与できる。(39 条4 項)