労災補償の話題

オープニング画面


2008/09/17 人命救助中の労災認める-名古屋地裁判決

 2008.9.16共同通信の記事はつぎのように報じている。

「岐阜県大垣市の国道で1998年、トレーラー運転中に交通事故の現場に出くわし、救命作業中に後続の車に追突され死亡した愛知県江南市の男性(当時33)に労災が適用されないのは不当として、妻(44)が遺族補償年金などの不支給処分の取り消しを国に求めた訴訟の判決で名古屋地裁(遠藤俊郎裁判官)は2008.9.16、労災と認定し不支給処分を取り消した。」
(人命救助中の事故が業務上の災害と認められるかが争点となっていたが、)遠藤裁判官は判決理由で「事故車の同乗者からの要請を受けての救助行為は、長時間の自動車運転を行う労働者が業務の上で当然なすことが予想される行為」と指摘。「業務遂行中の災害と認めるのが相当」と述べた。

訴状によると、男性は1998年3月、トレーラー運転中に、軽乗用車が横転した事故現場に遭遇。車内に閉じ込められた女性2人を助け出し、車を移動させようとした。しかし、後続の乗用車が軽乗用車に衝突。男性はこの軽乗用車とトレーラーに挟まれて死亡した。 妻は同年9月、半田労基署に遺族補償年金などの支給を申請したが、「自らの判断で業務を中断したと認められ、業務上の災害とは言えない」と退けられた。
愛知労働局への審査請求と厚生労働省の労働保険審査会への再審査請求も棄却されていた。」



(編注)これは古くて新しい”労災担当者泣かせの事例”だ。
 労災保険理論は、救助者の行為を「作業に伴う必要行為か(かつ、それは合理的行為だったか」という観点からこの救助に当たった運転手の行為を見る!

 つまり、この救助に当ったのはトレーラー運転手であるから、当該労働者が担当業務を遂行する上で必要な行為だったか、と見る訳である。
 そのように、マジに正面から問われると困った問題なのである。”あくまで純粋な人間としての人命救助であって、荷物を運搬するという彼の担当業務を遂行する上で必要な行為だった訳ではない”のだから、、、。
 かくて、監督署長はかかる善意の行為は業務外と判定し、裁判では大岡越前よろしきが出てきて業務上にせよ、となったのである。

(※)私見だが、労基署長は、この種のケースの判断を、今後、改めてはどうだろうかと思う。
 事業主の特命があれば、本件のケースの救助行為は業務認定できるわけだから、(余程、特異にして好奇心の塊りからとしか思えない行為は除くとしても)、たまたま事故に出くわし自然な流れで行った救助行為は、あらかじめ事業主から”包括的な特命”を受けていたものとし、当該救助は事業主特命を遂行中のものであったという整理が可能であるように思うのだが、、(はたして)。


2008/07/20 外食「すかいらーく」の契約店長-長時間労働で過労死認定!

 2008.7.18新聞各紙は、
 埼玉・春日部労基署が、外食大手「すかいらーく」の有期契約店長、Mさん(当時32歳)が脳出血で死亡したのは長時間労働が原因の過労死と認定した旨報じている。
 7月18日の毎日新聞記事にによると、
 「Mさんは91年にアルバイトで「すかいらーく」に入り、06年3月から1年契約の契約店長になった。昨年10月、仕事中に腹痛で倒れ、入院中に脳出血で死亡した。タイムレコーダーなどの記録では、月40時間程度の残業だったが、家族の認識では毎日午前0時を回る帰宅だったことから、労災申請した」という。
 労基署の調査結果では、「Mさんには月100時間以上、平均80時間の過労死ラインを越える残業が確認された。」

 なお、同毎日新聞記事によると
 すかいらーくの契約店長は全国2484店中58人!

(編注)
 正社員でもない契約社員店長の過労死として、世間にショックを与えているが、Mさんに対する店長処遇の実態等は現時点では不明である。
 店舗の長時間営業は見直しの時期かも知れない。
 アルバイト確保に支障を来す現状から、長時間営業への対応責任(負荷)が最終的に店長の一身にかかっている現状を改善する必要がありそうだ。
 (しかし、要員確保に関して、本部、エリアで応援派遣体制が組まれていないとは不思議だが、、)


2008/07/10 駅員への暴力行為-2007年度の1年間で「748件」

 日本民営鉄道協会は、JR,大手私鉄など全国21社の駅員等に対する暴力行為の発生状況を、7月9日発表した。
 2007年度1年間の総件数は、748件
 12月に最も多発し、その61%の乗客は飲酒していたという。
 発生時間帯は、22:00-翌5:00の深夜時間帯が一番多い。

(編注) 駅員が応戦しない限り、業務上災害として労災補償が受けられる。


2008/07/05 パワハラ自殺で賠償命令(松山地裁)

 [道路舗装大手「前田道路」の社員だったIさん(当時43)がうつ病で自殺したのはパワーハラスメント(パワハラ)が原因だとして、遺族が同社に損害賠償を求めた訴訟の判決で、松山地裁は2008.7.1、自殺との因果関係を認め約3100万円の賠償を命じた。]

----判決によると、
Iさんは2003年4月に東予営業所(愛媛県西条市)所長に就任。架空出来高の計上などの不正経理をし、発覚した。
----(このため)上司らは是正のため過剰なノルマ達成を強要、「会社を辞めても楽にはならない」などと何度もしかった。Iさんはうつ病を発症し2004年9月、営業所敷地内で首つり自殺した。
----というものだ。(以上は、7月2日日本経済新聞記事を参考に編集した)

 松山地裁高橋正裁判長は、判決で、上司による過剰なノルマ達成の強要や度重なる叱責は「違法と評価せざるを得ない」と指摘する、、、が、では、どのように対応すべきか。
(判決への評価は別としても、考えさせられてしまった。)


2008/06/18 通勤途中で家族の介護を行う労働者への通勤災害の適用追加について

 (2008.4.1から適用) 通勤災害においては、労働者が通勤に係る移動の経路を逸脱し、または中断した場合においては、当該逸脱または中断の間およびその後の移動は、「通勤」としないこととされていますが、これについては法律で例外が設けられており、日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤となります。
 今回(2008.4.1から)、この法律で定める例外の一つに、「通勤途中に家族の介護を行う場合」が加えられたのです。具体的には、下記(5)のとおりです。

(1)  日用品の購入その他これに準ずる行為
(2)  職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
(3)  選挙権の行使その他これに準ずる行為
(4)  病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
(5) 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る)


2008/06/17 事業主期間が長くとも、労働者期間10年は-労災認定が相当

 労災が認められたのはMさん(61)。Mさんは2004年にじん肺と診断され、池袋労基署に労災の給付金を申請した。しかし同署は事業主の期間が労働者の期間より長いとして、労災と認めなかった。
 しかし、労働保険審査会が審査請求の過程で労災と認める裁決を出していたことが11日、分かった。
 事業主と労働者の区別がつきにくい建設従事者の石綿肺が労災かどうか判断する場合、労基署は労働者だった期間と事業主だった期間を比較。旧労働省の通達に従って事業主の期間が長いときは労災と認めていないケースが多かった。


2008/06/15 持ち帰り残業で直前の残業月260時間-労災認定

 沼津労働基準監督署(静岡県)は13日までに、自宅に仕事を持ち帰り長時間残業を続けたキヤノンの富士裾野リサーチパーク(静岡県裾野市)に研究職として勤務していた男性社員(当時37歳、2006年11月30日、電車に飛び込み自殺した)について、過重な業務で精神疾患を発症したのが原因として労災と認定した。

 男性の職場は午後10時までしか残業できない決まりだったが、男性は帰宅後や休日も深夜までパソコンを使って仕事をしていた。パソコンから自宅での労働時間を確認した結果、同年8月末から10月下旬まで54日間休まずに働いており、社内での勤務時間と合わせると、自殺前1カ月の残業は263時間に上った。

 また直前にあった研究成果を発表する「成果展」の準備のため長時間残業を強いられた上、当日は慣れない研究分野の発表で質問にうまく答えられず、大きな精神的ストレスを受けたという。


2008/05/25 脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況(平成19年度)について

 脳心臓疾患(過労死)関係認定率は、43.4%から45.8%へ。精神障害関係認定率は、25.1%から28.1%へ、いずれも前年から上昇している。
詳細は下記URLへ
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/05/h0523-2.html


2008/05/23 残業時間は少ないが、海外出張による疲労の蓄積をみとめ労災認定

 2008.5.22東京高裁判決
 判決によると、元社員は2000年11月から亡くなる直前の2001年9月まで海外出張を10回(計183日間)した。一カ月の平均残業時間は30時間未満だった。
 一審判決は、平均残業時間が一般に過労死と認められる45時間を超えなかったため労災と認めなかった。しかし、青柳裁判長は「海外出張では航空機による長時間の移動を余儀なくされ、ホテル生活は食事、睡眠が不規則。自宅で過ごすのとは違い、精神的、肉体的に疲労を蓄積させるのは明らか」と指摘し、疲労によるくも膜下出血発症を認めた。
 元社員は2000年11月から海外の生産拠点の技術指導を担当。中国や米国、チリなどへの出張を繰り返し、帰国直後の2001年10月、出張先の東京都内のホテルで死亡した。


2008/03/30 「石綿労災」2167事業所公表へ

 厚生労働省は、2008.3.28、石綿ばく露作業による労災認定等事業場2167事業所名を新規に公表した。
 これで、公表事業場数は既公表分164事業場、特別加入者91人、事業場不明92事業場を含めて2,514事業場(労災認定件数等:3,382件)が公表された。

 URL  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/03/h0328-4.html


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