36協定の記載例(育児・介護労働者の時間外労働の制限を考慮した例)
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時間外労働・休日労働に関する協定届
事業の種類 |
事業の名称 |
事業の所在地(電話番号) |
|||||||
金属製品製造業 |
GBF金属工業(株) |
東京都○○区○○2−22 (03−888−3333) |
|||||||
時間外労働をさせる |
業務の種類 |
労働者数 |
所定労働 |
延長することができる時間 |
期 間 |
||||
1日 |
1日を超える一定の期間(起算日) |
||||||||
1カ月(毎月1日) |
1年(4月1日) | ||||||||
@ 下記Aに該当しない労働者 |
臨時の受注・納期の変更等 に対応する必要がある場合 |
製造課 |
34人 |
1日8時間 |
2.5時間 |
42時間 |
360時間 |
平成○年4月1日 |
|
クロムメッキ(槽)の業務 |
製造課 |
2人 |
同上 |
2時間 |
25時間 |
200時間 |
同上 |
||
当日内に事務処理を終了 せる臨時の必要がある場合 |
内勤事務 |
11人 |
同上 |
2時間 |
30時間 |
240時間 |
同上 |
||
月末決算を含む経理事務 |
経理課 |
5人 |
同上 |
5時間 |
45時間 |
360時間 |
同上 |
||
顧客の都合で臨時の業務を行う場合 |
営業 |
7人 |
同上 |
5時間 |
45時間 |
360時間 |
同上 |
||
A 1年単位の変形労働時間制により |
|||||||||
@Aのうち制限開始日が月の初日(起 |
上記の各事由 |
上記の各業務 |
|
同上 |
2時間 |
24時間 |
150時間 |
同上 |
|
休日労働させる必要のある具体的事由 |
業務の種類 |
労働者数 |
所定休日 |
労働させることができる休日 |
期 間 |
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顧客の都合で臨時の業務を行う場合 |
営業 |
7人 |
毎週 土・日曜日 |
1カ月のうち1回まで。8:00〜17:00 |
平成○年4月1日 |
||||
協定成立年月日 ○ 年 3 月 20 日 職名 GBF金属工業株式会社 製造第二課 協定の当事者である労働組合の名称又は労働者の過半数を代表する者の 氏名 田中彦一郎 (印)(法令様式を協定書そのものとして使用する場合) 協定の当事者(労働者の過半数を代表する者の場合)の選出方法 ( 投票による選挙で選出 ) ○ 年 3 月 25 日 職名 GBF金属工業株式会社 代表取締役 使用者 氏名 佐藤一郎 (印) ○○ 労働基準監督署長 殿 |
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新・36協定の
作成心得と届出実務
上記記載例に沿って作成の要点を解説します。
解説を書くに当たっては一部、労基署への電話取材等も行いましたが、あくまで文責は当方にあります。
(「ここに書いてあった」ということを、労基署の窓口で主張の材料にはしないでください。当方の理解不足の点があるかも知れませんから、、。)
また、以下の記載心得は、さらに研究してよりパーフェクトなものに改訂していきたいと思っています。
2002.2.25 労務安全情報センター
通し 番号 |
様式の欄 |
記載心得 |
1 | 業務の種類 | 業務の種類は、細分化が要求されている(告示第69号第1条)。細分化の基本は、労働時間管理が独立して行なわれている(職場)単位ということになる。(記載例では50人弱の事業場を想定したが、規模が大きくなるに従って細分化の要求は強くなる。法令様式を協定書代用にするには限界があり、別紙形式の協定書作成が必要となろう。この場合、届出においては、法令様式の所定欄に「別紙、協定書のとおり。」と記載し、協定書を添付して届け出る。 |
2 | 業務の種類 | 記載例のケースにおいて、クロムメッキ(槽)の業務は、労基法第36条第1項但し書で指定された有害業務であるから、上欄と同じ製造課であるが、区別して記入しなければならない。 |
3 | 延長することができる時間 | 36協定は、「1日」・「1日を超える3箇月以内の期間(通常は1ヶ月とするケースが多いだろう。)」・「1年間」の3区分に応じた延長限度時間が協定されていないと、要件不備として受理されない。 なお、フレックスタイム制を採用している場合は、一定期間の欄は、「精算期間」及び「1年間」について協定することとなる。 |
4 | 延長することができる時間 | 忘れがちなのが、起算日だ。起算日は記載例のように(括弧)書きする。 未記入を窓口で指摘されてその場で書くことは避ける。労基署によっては、協定ものだから一方当事者が目の前で勝手に書くものではない、と注意を受ける。(実際、届出の持参人には使用者側当事者としてもそこまでの権限が付与されていない場合が多いだろう。)また、届出実務上の問題もさることながら、この起算日は法的にはかなり重要なものだから、出向く前によくチェックしよう。 |
5 | 延長することができる時間 | つぎは「延長限度基準」(告示第69号第3条)だ。一般基準で、1ヶ月45時間、1年360時間。1年単位の変形労働時間制では、1ヶ月42時間、1年320時間が限度となる。限度基準を超える36協定は、原則として窓口で受理されず、返戻される。 現実問題として、この告示ラインを部署によっては超えてしまう場合の対応だが、 (1)特別条項付36協定(特別の事情が生じたときに限り、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を定めた36協定)で届け出る−−−−−これも実は問題がある。労基署が特別条項付36協定をマークするようになっていることだ。つまり、目立つから臨検監督でねらわれやすくなるという欠点だ。臨検監督を受ける場合、36協定のことだけを調べられるわけではないので難しいところだ。 (2)実態を無視して、告示の限度基準一杯で届け出る−−−−−協定をオーバーした時間外労働は、直ちに違反となる。36協定が原因で臨検監督を受けることはないだろうが、ほかの理由で監督された場合、労働基準法違反として代表者が是正勧告を受けることになる。 (臨時的に限度基準を超える必要が生じる場合は、面倒でもその都度、追加協定を締結・届出することで違反を回避することができるが、恒常的残業があるケースではこの方法も困難だ。) 結局、限度基準が守れるように、時間外労働の計画的削減(所定外労働削減要綱)に取り組むしかないのかも知れない。 |
6 | Aの欄 | Aの「1年単位の変形労働時間制により労働する労働者」欄は、対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制を採用している場合について記入する。上記協定の記載例は、1年変形制を採用していないものとして作成しているので、この欄が空欄となっている。 1年変形制を採用している場合は、必ずこの欄を使う必要がある。その場合、1ヶ月と1年間の延長限度時間は、それぞれ、42時間、320時間となるので注意する。 なお、1年変形制を採用している事業場でも、全員が対象者ではないケースがあるから、この場合様式@とAを併記する必要がある。注意する点は、@とAの労働者数に矛盾が生じないようにすることか。 |
7 | @Aのうち制限開始日が月の初日(起算日)となるように育児・介護休業法上の時間外労働の制限を請求した労働者 | 1.36協定の「起算日」と育児・介護労働者が請求する時間外労働の「制限開始日」を合わせて、統一的な限度時間管理を行う場合に、協定する。 2.具体的には、労働者の請求する「制限開始日」を、毎月1日等に統一するために、ずらすか、前倒しすることになりますので、当事者であらかじめ協議しておく必要がある。 3.「労働者数」欄は、斜線とし記入しない。 |
8 | 休日協定の欄 | 休日協定の欄は、記載例を参考にすればいいだろう。ポイントは、「1カ月のうち○回まで」と明確に記載することだ。 |
9 | 有効期間の欄 | 協定の有効期間は1年とする。(理由は、「限度基準告示」(第69号)によりかならず1年間についての延長時間を協定することが義務づけられたからだ。) もっとも、協定事項である「1日」・「例えば1ヶ月」・「1年間」の3つの協定区分のうち、「1日」と「1ヶ月」の2区分の有効期間は3ヶ月とか6ヶ月のように1年未満の期間とし、「1年間」の区分の有効期間だけを1年間とすることは可能だ。この場合は協定欄が小さくても無理矢理小さい字で書き込むしかない。この2段階有効期間方式の場合、その協定の有効期間を1年だと思い込みしないこと。つまり、短い方の有効期間に合わせて、36協定の再協定・届出手続きを行うことが必要となる。逆に、有効期間を1年以上3年までとすることは過半数労働組合を協定当事者とする場合、法的には可能だ。但し、「36協定は定期的に見直しを行うべきものであるから有効期間は1年間とすることが望ましい。」として、強力な窓口指導をうけることとなる。 |
10 | 協定の当事者 | 労働者側の協定当事者は、「労働組合」又は「労働者代表」となる。いずれも場合も法適用単位となる事業場において、労働者(管理職を含む。)の過半数を代表するものでなければならない。とくに「労働者代表」の選出方法において民主的手続きが踏まれていない場合、36協定自体が無効とされるので注意する。 |
11 | 36協定の効力発生時期 | 36協定は届出をもって有効となる。所轄労働基準監督署の受理日付が重要だ。 届出のことを考えると、協定有効期間の始期から1週間程度前には、協定の締結を済ませるのがいいだろう。この協定日を様式の「協定成立年月日」欄に記入する。 |
12 | 労働者代表欄の協定「印」 | 36協定の法令様式には、使用者欄には(印)があるのに、労働者欄にはこれがない。 本来、この法令様式は別紙「協定書」(当然、両者捺印する。)を作成し、それを添付した上で、使用者の責任においてこの様式を(頭紙に)使って届け出ることを想定しているのだ。中小、あるいは大企業でも届出事業場単位でみると小規模な事業場の場合、この法令様式を協定書代用にして協定を締結することがある。この場合、労働者欄に(印)がなければ協定書として意味をなさないから注意する。 |
13 |
届出 |
36協定は、原則として所轄労基署に持参して、届出する。届出は、協定有効期間の前日までなら可だが、要件不備を指摘(返戻)された場合の対応を考慮すると、1週間少なくとも2〜3日前までには行う方がいいだろう。(なお、届出が有効期間の始期以降であっても、受理はされる。有効期間のうち、受理印以前の日は無協定=違法残業となる理屈だ。) 問題は郵送による届出だが、これも、返信用封筒を同封する方法により一応認められているようだ。ただ、要件不備がある場合「受理印なし」で返戻されることがある。これは企業の担当者(部署)としては一番困ることだ。 今回の法改正で36協定の窓口チェックが厳しくなっているほか、企業サイドでも「新・36協定の実務」に慣れていない現状では、郵送届出はあまりお奨めできない。 なお、返信封筒が同封されていないものは、「要件適合」「要件不備」の如何にかかわらず「預かり」扱いだ、そうである。つまり、事業場には返送されない。(36協定は「受理印の押されたものが確実に手元に残っていなければならない。」のだから、この点は注意した方がいいだろう。) |